キララ「かわゆる願い」アキ「別のお願い」
今更気づいた。この章レギュラーメンバーがAkiしかでてない。
Kirara「初期は我がたくさん出ておったのに……」
ご、ゴメンネ。もちろん、Kirara主役の章も考えてるから。
Kirara「ならよいが」
ほんとにね。では、本編。
Kirara・Tsubasa「銀幕のあける舞台。さぁ、物語の始まりだ」
食事を終えて一息つく。味は悪くなかった。近くに他のレストランが無い分競争しなくていいので値段がやたら高かったり、味がよくなかったりする店はたまにあるがここは良心的だった。
「御手洗い行ってくる。その後出発しよう」
陸人さんが立ち上がりながらそう言う。時刻は一時半。渋滞に巻き込まれなければ三時半には帰れるか……。といっても、どうせ巻き込まれるだろうが。行きも少し巻き込まれた。渋滞を考慮にいれると四時頃になるだろう。
「はい。わかりました」
「アキくんはいかないのかい?」
「俺は大丈夫です」
「あっ、じゃあ荷物見ててくれる?私もいきたいから」
「わかりました」
俺は二人を見送る。荷物を見るといっても目の前に人が座っているのに取るバカはいないだろう。
手持ちぶたさになって瞳を窓の外に向ける。秋を象徴する紅葉が目に写る。それをぼんやりと眺めていたら、いきなり視界が夏喜さんの顔で一杯になる。
「わっ」
「ふふっ。気づかなかった?」
いたずらっ子のような笑みを浮かべる夏喜さん。そのまま目の前の席に座る。
「どうしたんですか?」
「ちょっとアキくんと話したくてね」
「俺とって……御手洗いに行ったんじゃ……」
「それはトイレがどれくらい混んでるか見たかったからついた嘘。男子トイレも結構人いたから旦那が帰ってくるまでそこそこ時間がかかる。アキくんとどれだけ喋れるかわかるわけ」
「な、なるほど」
思わず苦笑いを浮かべる。なんとも夏喜さんらしい。
「で、話って?」
「ナナのこと、かな」
「ナナの?」
「うん。事故にあって、ここのが死んで……。自分が猫なんか見つけたから、早くその場からどいていればって。あのときはずっとそんなこと言ってたからね」
「恨むべき相手というのがいませんでしたからね」
あの事故は悲劇としか言いようがなかった。車の運転手である四十代半ばの男性が急性の心臓発作を起こし車の制御ができない状況になりこの事故が起こってしまった。男性は心臓発作が原因で死亡している。業務上過失致死の容疑で男性は被疑者死亡のまま書類送検はされたがそのまま不起訴となった。
もし、この事故が飲酒によるものやわき見によるもの、薬物等によって起こされたものなら俺たちは恨む相手を見つけられていた。しかし、実際には防ぎ用の無い運命だ。男性側にも家族がいる。彼の妻と高校生の息子が土下座をする勢いで陸人さんたちに謝罪をしたらしい。彼女らも、大切な一柱を唐突に失ったというのに……。だからこそ、彼女等を責めることも出来ずに、形式的にはここのさんの遺影に手を合わせ線香をあげることで和解という形になった。
「そうなのよね……。今のこの状況も乗り越えたわけじゃないし」
「逃避、ですね」
ポツリと呟いた言葉。その言葉が今のナナにはピタリとあっていた。
「うん。アキくんたちのおかげでナナが自己嫌悪に陥って自分を攻めるということは無くなったけど結局はなにも解決してないのよね……。アキくん。お願いがあるの」
姿勢を改めて俺の目を見据える夏喜さん。俺も真っ直ぐと見つめ返す。
「ナナにキチンと向き合わせてあげて」
「それって……」
「私があの事件の後に頼んだことの反対よ。あのときは励ましもなにもせずに、ただ普通に接してあげてと言ったけど、もう今は違う。あの子はきっと現実を見据えるぐらいには強くなったはずよ。だから、アキくん。お願い」
「……分かりました。俺に出来ることを最大限までやってみます」
正直俺がナナにどれだけのことをしてやれるかは分からない。だけど、夏喜さんの願いなら、それがナナを救うならやってみせる。ここのさんの為にも……!!
「ありがとう。ゴメンね。アキくんだって辛いだろうに、いつも面倒なことを押し付けて」
「えっ?いや、俺は別に……」
「うそ。ここののこと好きだったんじゃないの?」
「っ……あっ、えっ?」
「ナナやキララちゃんはごまかせても私はごまかされないよ~?」
「な、夏喜さん……」
「ふふっ。ごめんごめん」
真剣な目からまた少しからかうような目に変えて俺も体の緊張を解く。とにかく、大変な役目を仰せつかったわけだ……。
―――頑張ら、なくちゃな。
マジ夏喜さん、お母さん。
Nana「意味わかんないんだけど」
いいひとすぎ。そして、むちゃくちゃ真面っていうことでもないからシリアスからネタへの変換も簡単で小説キャラとしても扱いやすい。
Nana「なんか、べた褒めだね」
ただただ扱いやすい。旦那の陸人は扱いにくい。
Nana「ものすごい凸凹だね」
こういう正反対の性格の方が結婚後上手くなるらしいからね。
Nana「なるほど」
うん、それでは次回。
Nana・Tsubasa「encoreのその先へ。拍手の続く限り」




