キララ「見えない再開」アキ「お墓参り」
どうでもいいかもしれないけど今回のサブタイトルはいいと思う、うん。お墓参りを見ない再開って。よくないすか?
Nana「まぁ、確かに一理あるよね」
というか、実際に見えたら怖いか。いや、知り合いなら……どうだろ?
Nana「人によるんじゃない?」
かもね。どうなんでしょうか。では。
Nana・Tsubasa「銀幕のあける舞台。さぁ、物語の始まりだ」
午前11時頃、目的地につき俺たちは車を降りる。この季節にあった美しい紅葉と、山手にあるがためかビル等の無く、抜けるような空を見上げるのに邪魔するものは無かった。
「綺麗なもんだな……」
思わず漏れてしまう。夏喜さんはそうだよねと笑い後部座席から荷物を取り出す。俺も花束をもち備え付けの桶に水をいれて柄杓をつっこみ、しきびをいれるための容器も手にする。
サクッサクッと草を踏みしめる音を鳴らしながら一つの墓標を目指す。
『白由利家』
こう書かれた前面と裏面にはここに眠る人の名と享年。ナナの祖父母にあたる存在。そして、白由利色取としたためられた名。享年十三歳。俺たち三人は墓の前で手を合わせる。それから柄杓で水をすくいかけて丁寧に洗っていく。といっても、汚れはほとんどなく綺麗なものだったが。
「ここの、アキくん来てくれたわよ」
夏樹さんがタオルで撫でるようにしながら言う。俺は特に言葉は漏らさず黙っていると黙々と手を動かしていた陸人さんが口を開いた。
「アキくん、毎年ありがとう。ここのも喜んでいるよ。もちろん、母さんたちも喜んでいるだろうしね」
「俺は……ただ、来たいから来てるだけです。逆に陸人さんたちには感謝してます。俺を連れてきてくれて」
言いながら、去年七回忌が行われたから今年でここのさんは二十歳になったんだということに気づく。夏喜さん……というより、陸人さんのことだから、先々月の命日である三日近くに訪れたときはなにかしら持ってきていただろう。もしかすれば、お供えものにショートケーキをこしらえていた可能性もありそうだ。
そのことを探るためにも少し聞いてみようか。
「ここのさん、今年の九月九日で二十歳なんですよね」
「そうなのよ。だから先々月ね、着物を持ってきてあげたの」
「着物……?」
「ええ、成人式には出れないから変わりにね」
「そうなんですか……」
あてが外れたなという気持ちと夏喜さんのアイディアかなと考える。
「でもね、この人ったらホールケーキにクラッカーまで持ってきようとするのよ」
予想以上だったな。さすが陸人さんだ。
「なんでだ!!誕生日なんだから当たり前じゃないか!?アキくんも持ってきて当然だと思うだろ!?」
「いや、ケーキは生物ですし、クラッカーは場違いでしょ」
「なぜ共感してくれないんだ!!」
「あなたうるさい」
冷静な夏喜さんのつっこみに項垂れる陸人さん。まあ、当たり前だ。
そんなことを話ながらも掃除を終えて横に並び黙祷を行った。
終わり際夏喜さんが呟いた来年こそはナナも……という言葉が妙に耳じたに残った。
一応解説。色取とかいてここのと呼ばせていますがこれは旧暦九月の異称からきています。
Nana「だからここのなんだ」
はい、ここのつからつを取り外してここのにしました。
Nana「異称好きだね」
というより白由利家だからというのもあるんだけどね。それではまた次回。
Nana・Tsubasa「アンコールのその先へ。拍手の続く限り」




