光「世界の始まり、ここにあらん」冬前「プロローグです」
これを読めば貴方も中二病に!?そんな不思議な世界の入り口はすぐそこです!!
では、楽しき時間を過ごしたまえ。
「くくくっ、よくぞ参ったこの紅蓮の世界へ。我が世界に入ったものはもう抜け出せぬというのに。しかし、それでもなおかつここにやって来た貴様らを誉めてしんぜようぞ」
「わぁ〜ったから、風呂入ってこい」
俺はなにやら痛い発言をしている妹、光の空色の髪を持つ頭を軽く叩きながら風呂に入るように促す。
「我が分身がそう言うのなら仕方ない。行ってきてやろう」
「はいはい」
俺は桜色の髪を触りながらため息をついてながす。するとキララは「なんじゃ、その態度は……」などと、ぶつぶついいながらお風呂場へと向かっていった。
このまま、ソファーに横になりたい気持ちをおさえながら俺は台所にいき、皿洗いを開始する。
この春から高校二年生になる男子が風呂をいれたり、部屋を掃除したり、皿洗ったりと家事全般を請け負わなければならないなんて他の同学年の奴にとっては考えられないのじゃないかと思う。しかし、これは仕方ない事だし、自分が望んでやったことなのだから文句はない。
俺―――小鳥遊冬前は私立愛澤学院高等部の二年生だが、両親は仕事の関係で三年前から海外に行っている。本来はら俺達も行かなければならないなかもしれないが俺もキララも外国行きを拒否して日本に残っている。だから、家事全般も俺が請け負っているのだ。これらをこなしながら学業も専念しなければならないのは分かっているのだが不安の要素が一つある。その不安は……不治の病、中二病を発病してしまった妹、キララだ。キララは現在公立の中学に通う二年生だ。しかし、ちょうど両親が海外に引っ越した辺りから発病してしまった。原因は『地獄魔法少女・琉死腑亜』という深夜アニメだ。どういう経緯でこのアニメを知ったのかは俺は知らないがいつの間にかどっぷりはまってしまったらしい。しかもそのアニメの主人公、琉死腑亜の髪の色がキララと同じ空色でさらには瞳の色までもが、緑色と同じなのだ。因みに俺の瞳は朱色だ。
言うまでもないが俺達は別に髪を染めたりカラコンをいれたりしてるのではない。俺達はクォーター……というやつなのか?自分でもよくわからない。というのも親父が日本とアメリカのハーフでお袋がイギリスと日本のハーフなのだ。どういう流れで日本で出会って結婚する事になったのかを俺は知らないがなんだか、本当によくわからない。というか、この桜色の髪はどこからやって来たんだ?
なんて、皿を洗いながらそこに写る自分の顔を見ながら考える。
「き、キャーーーー!!!お、お兄ちゃーん!!」
「うわっ、キララ!!」
突如叫び声を上げて裸のキララが俺に抱きついてくる。
「どうしたんだよ?」
「お兄ちゃん。くもがくもが〜」
「雲?あ、あぁ〜。蜘蛛か」
「お風呂場におる〜!!」
半泣きで俺に訴えるキララ。別に俺はいいんだが裸で半泣きの少女が抱きついてる構図を他の人がみたら誤解を真似かねないな。
「分かったから、すぐ取っ手やる」
俺はティッシュを幾つか取って風呂場に行く。中をのぞくと……本当に小さな蜘蛛が一匹。まぁ、キララは虫が嫌いだからな……蝶ぐらいなら大丈夫だけど。
そのまま俺はたんたんと蜘蛛をティッシュで包む。
「ほらっ、取ったぞ」
「う、うぅ〜。我が分身よ、よくやったぞ……」
未だに怯え声をあげながらそんなことを言うキララ。こんなときまで設定を貫くキララの根性はある意味称賛にあたいするかもしれない……ある意味だけど。
「クシュン」
「ほらっ、体が冷えてるんださっさと暖めてこい」
俺はキララの背中を押して風呂場に行かせる。
やれやれ、まだ主要メンバーが全員揃ってないのになんだこの始まりは……ん?主要メンバー?なんの話だ?まぁいいか。神からのお告げってことにしとこう。
ベランダに行き蜘蛛を逃がしながら自分に言い聞かせた。
毎週日曜日の朝七時に更新予定です。作者の都合により変更する場合もございますがご了承下さい。
また次回からは前書きと後書きにはキララ達が出現します。そちらもお楽しみに。
*追記
2015年より毎週日曜日に加え水曜日も増えました。