お金って、性格が出ますよね。
「では、将軍さま? 一体なぜお金がらみの政は健全ではないのでしょう?」
「そ、そ、それは決まっておるではないか。金というものに心や自分の考えまでも売ってしまうのはとても卑しい行為だとされているからじゃ」
「いかにも、たしかにそれはその通りだとわたしも思います。そういうのって、神仏の教えとかいう、そういうしがらみっぽいものを超えたところにそういった気持ちがあるような気がします」
「うむ、そうじゃな。なんだか無意識にやるせない気持ちになるでな」
「はい」
「し、しかしじゃ、そんな気持ちを持つ一休どのが、またなぜ健全な政治に金、などと?」
「いやあ、わたし自身もあんまりお奨め出来ないんですけどね、そういった方法がある、とだけ将軍さまにお教えしたかったのですよ」
「なぬ? それはどんな」
「簡単な事です。人々の価値観を変えてやればよいのです」
「か、価値観?」
「はい、人々……というか、民衆の価値観を少しだけ変えてしまえばいいのです」
「価値観? 変える? よく分からんな。ちと予にも分かり易く説明してくれんかの」
「はい、では、あまり人に聞かせたくは無いので、少しばかりお耳を拝借してもよろしいでしょうか?」
「うむ、苦しゅうない。一休どの近う寄れ」
「はい、では僭越ながら……ゴニョゴニョゴニョ」
「ほうほう、なるほど。ああしてこうして、それでああして……と」
「いかがですか?」
「うむ、参考になった。しかしこんなことで、世の人々の価値観が変わるもんかの?」
「いや、まあ、今わたしが言ったことはほんのお遊び程度のことです」
「そうか……ほんのお遊び程度のことか。まあよい、今日はそなたに気苦労をかけたな。もう下ってよいぞ」
「はい、わたくしもとても有意義な時間を過ごさせて戴きました。何かあったらお呼びください」
※※※
「一休さーん! 大変でござる! 大変でござる!」
「どうしたんですか新右衛ェ門さん?」
「上様が、上様が……!?」
「えっ、将軍さまがどうかなされたんですか!?」
「それが……それが……」