もう、将軍さまったらぁ。わがままなんだから。
「どうじゃな、一休どの。その様子だと降参かな?」
「もう、将軍様ったら、私は答えるなんて言ってないのに……」
「何か申したか?」
「い、いえ、こちらの独り言で」
「のほほほ、答えられぬのなら、予の勝ちじゃぞ」
「むむむむむ……」
「ほらほらどうした」
「あわてない、あわてない。こういう時こそ冷静に」
「ほらほら一休どの、降参かな?」
「い、いえ、大丈夫です。答えは出ました」
「な、なんと! そなた、今何と申した?」
「答えは出た、と申したのです」
「うぬぬぬぬ。……して、そなたの考えやいかに」
「はい。きっと将軍さまは、今から何百年後かの時代に登場する歌詠み(アーチスト)という人たちが綴る恋長唄を鑑みて、こういった難題を世に知らしめたのだと思うのです」
「ほうほう、してその心は?」
「はい。その心はと申しますれば、愛を語るのに愛を知らず、恋を語るのに恋という文字を並び立てるのは、真に滑稽と……」
「ほうほう」
「その時代には、こんな方がおられるようです。友愛だとか世界平和だとか、真に小気味いい言葉のみを全面に並び立てて、その実は自己愛に満ちておられるという……」
「ほうほう」
「だから、将軍さまは、そんな何百年先の政を憂いてこんなことを仰られたのかと……」
「あっぱれじゃ、一休どの。さすがは予の見込んだ者なり!」
「あ、ありがとうございます。過分なお言葉、痛み入ります」
「での、一休どの。実はの、今の答えでは答えになっておらんのじゃが、そちは気づいておろうな」
「ギクッ、やっぱり言わなければなりませんか?」
「そうじゃ、今の答えでは枝葉末節、命題の外側を突いたに過ぎん」
「あぁあ、将軍さまったら、さすがですね。いよっ、天下の征夷大将軍、色男! クヌゥクヌゥ」
「のほほほほ。そなたに掛け値なしにそう言ってもらえると、予も鼻が高い」
「当たり前じゃありませんか。だって、何百年後か先まで憂いておられるなんて、さっすがは天下の将軍さま」
「で、そなたの答えを言うのじゃ」
「むむむ、やっぱり言わなきゃダメですか?」
「言うのじゃ」
「うんもう、しょうがないなあ……。一応これでもわたくし御仏に仕える身なのですよ」
「なにを申す。そなたはアニメではかなり性善的に活躍しておるようじゃが、史実では相当な毒を持っているではないか」
「もう、将軍さまったら。……では答えを言います」
「ほうほう、待っておったぞ」
「答えは……」
「答えは……?」
「はい、世の政治家に、健全な政治を文字も言葉も使用せず表現させる手段は」
「手段は?」
「お金にございます」
「なにいっ!」
俺、何書いてんだ?