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おっさんバックパッカーは異世界へ行っても自由気ままに旅をする。  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第43話 マリスラ遺跡

「ふむ、実に良い朝だ!」


 昨日の夕日や夜景も実に良かったが、キラキラとした眩しい朝日が光り輝く朝の遺跡もすばらしい。


 簡単な朝食をとり、テントを撤収してバックパックを背負い出発する。


「……この石の壁に絡みついたコケやツタが良い味を出しているよなあ。日本の軍艦島とかもこんな感じだったか」


 前世には古く放置された施設や建物が好きな廃墟マニアがいたが、その気持ちも分からなくはない。


 マリスラ遺跡は大きな石造りの建物が密集した都市の残骸で、石畳の道もひび割れ、雑草に覆われている。そんな廃墟の中を歩いていると不思議な気分になるな。


 長崎県にある世界遺産の端島の通称である軍艦島は元々炭鉱の島で有名だったが、50年ほど昔に住民がすべて退去して、今では朽ちていくコンクリートの建物と壁が残る廃墟となっている。あの場所もボロボロになった廃墟に濃い緑色のコケやツタが絡んで趣深い場所になっていたな。


 しかし軍艦島よりもさらに古そうな廃墟だし、むしろ某天空の城の方がこのマリスラ遺跡に近い雰囲気かもしれない。例の呪文を唱えた時のように崩壊しないことを祈るとしよう。


「魔物とかはほとんどいないらしいが、気を付けるか」


 この遺跡には魔物の食料になりそうな植物が生えていないため、魔物はほとんど存在しないらしいが、油断はしないようにする。


 いつでも瞬間転移スキルで逃げることができるとはいえ、即死攻撃を受けないように気を付けなければならない。


「ひとつひとつの家にそれぞれの家族が生活していた痕跡が残っているのはおもしろい。さすがにここにあった魔道具なんかはすべて回収されているか。まあ、いくらなんでも今の時代にその魔道具は稼働しないと思うが」


 遺跡の中のひとつの建物の中に入る。中には完全に崩壊してしまった建物もあるので、そこそこしっかりしている建物を選んだ。さすがに木製の家具なんかはすべて朽ちていたが、石造りの台所らしき場所や石造りのテーブルなんかがそのまま残っている。


 大昔にこの都市で多くの人が生活をしていた名残だな。


 魔法都市というだけあって、古代の魔道具なんかも残っていたらしいが、さすがにそれはすべて回収されてしまっているらしい。前世でいうところの土器とかにあたるのだろうか。あるいは武器や当時のお金なんかも歴史館とかに展示されているものな。


「ふむ、そいつはわからんぞ。大昔の魔道具の中には今も魔力さえこめれば当時と同じように稼働する魔道具も存在するようじゃからな」


「っ!?」


 突然背後から声がした。いつもの俺の独り言に反応があり、飛びあがりそうになる。


「おっと、驚かしてしまってすまんのう。別になにもしたりしないわい」


 瞬時に背後を振り返りながら瞬間転移スキルで逃げようとしたところ、そこにいたのは一人の老人だけであったため、慌ててスキルの発動を止めた。


 老人は白くて立派な顎髭を生やしており、紺色のローブを身に纏っていた。そしてその右手には先端に緑色の結晶が付いた杖を持っている。この風貌は魔法使いと呼ばれる者で間違いない。


「この辺りを歩いていたら声が聞こえてのう。儂もひとりでのんびりと歩いておるのじゃが、お主もひとりなら一緒にどうかと思ってな」


「………………」


 どうやら俺の独り言を聞かれてしまっていたらしい。ひとりで旅をしているから、つい独り言は増えてしまうんだよなあ。ちょっとだけ恥ずかしかったりもする。


 ふむどうやら。魔法に興味があって、このマリスラ遺跡を訪れた魔法使いのおじいさんか。今のところ悪意は感じないし、気配をまったく感じなかったので、何かするつもりだったら先ほど先制されていただろう。


「ええ。見ての通り俺もひとりで旅をしている身なので、せっかくでしたらご一緒させてください」


 旅先で同じような旅をしている人と一緒に行動することはよくある。危険な世界だし、連れがいた方が多少は安心できるし、いい話し相手になってくれるのだ。


 こういうのはノリと勢いが大事なのである。もちろん人畜無害そうな老人であれ、悪意を持って近付いてくる者もいるこの異世界では油断なんてしないつもりだが。


「ほっほっほ。ただの隠居したジジイじゃて、そんな畏まった言葉遣いは不要じゃぞ。儂はタルムじゃ、よろしくのう」


「わかった。俺はガクトだ。よろしくな、タルムさん」


 タルムさんと握手を交わした。


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