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おっさんバックパッカーは異世界へ行っても自由気ままに旅をする。  作者: タジリユウ@6作品書籍化


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第41話 移り変わる景色

「うおおおお~これは絶景だな!」


 先日ヴァルドたちと酒を飲んだ次の日にはミロネスの街をあとにして、新しい目的地へ向かい始めた。


 そして新しい場所へ向かいつつも、瞬間転移スキルを使ってミロネス塩湖に毎日通い続け、ようやくある条件を満たす日に巡りあうことができた。


 条件のひとつとして、前日に一定量以上の雨が降り、その翌日に今日のように晴れていることだ。簡単な条件にも思えるが、基本的に先日のように蒸発して真っ白な塩の大地となっている塩湖は雨が少ないため、そうなっているのである。


「前回来た時は真っ白な塩の大地だったけれど、そこに雨が張って綺麗な鏡のようになっているな。どこまでも青い空が広がっているような幻想的な光景だ」


 昨日降った雨が数センチメートルほど地面に溜まって、美しい鏡のようにこの青空を映し出している。


 ミロネス塩湖の地面は平坦で塩が均一に固まってできている。そのため雨が降るとこうやって地面に水が溜まって、歪むことなく空を反射してくれるわけだ。


 雨の量が多ぎると波が立ちやすく、少なすぎると塩の表面が露出して綺麗に反射しない。そして風が強いと水面が乱れて鏡のように反射をしてくれないため、これらすべての条件を満たすのはかなり難しいのだ。


 結局俺もこの条件を満たすために時間がかかってしまった。とはいえ、これでも運がいい方なのかもしれない。下手をすれば一月以上この景色が見られないなんてこともザラだからな。天候ばかりは個人の力ではどうにもならない。


「……それでも毎日通う価値のある景色だ。前世も含めてこれだけの景色はなかなか見られるものじゃないぞ」


 空はどこまでも深い青、ふわふわと浮かぶ白い雲が水面に完璧に映り込み、まるで湖の底に別の空が広がって、歩くたびにその世界へと踏み込むんでいるかのようだ。


 一歩進めば、水面に小さな波紋が広がるが、すぐに鏡のような静けさへと戻る。空と水面が溶け合う境界は曖昧で、まるで無限の青に包まれているかのような錯覚に陥ってしまう。時折、塩の粒が水面に浮かび、まるで星屑が漂うようにきらめいている。


 前世も含めれば、これまで数多くの場所を巡ってきたわけだが、その中でもこのミロネス塩湖ほど美しい光景はそうないだろう。この光景に出会わせたくれたすべての縁に感謝するとしよう。


「水面はヒンヤリとしていて気持ちがいいな。さて、今日はここでのんびりするとしよう」


 バックパックが地面の水に触れないように気を付けながら椅子を取り出してその上にバックパックを置く。そこからテーブルをセットして、いろんな物を取り出した。


 前日にミロネス湖が雨だったことを確認していたため、ここに来る際靴はすでに脱いでいる。椅子に座りながら足下を地面につけるとヒンヤリとした感触が足から伝わってくる。


 たまにはこうやってなにも考えずに美しい景色をひたすら眺め続ける日があってもいいだろう。それだけで心が癒されていくことが感じられるぞ。




「……思った通り夕日が沈む光景もすばらしいな」


 夕日がミロネス塩湖の果てに沈む瞬間、まるで世界が二つに割れたかのような光景が広がっていた。先ほどまでの青い空と白い雲の二色から、燃えるようなオレンジと深い藍色の空に白色の雲が加わって、さらに幻想的な光景へと移り変わる瞬間に思わず息をのむ。


 同じ場所でも時間が変わるとこれまでとはまったく異なる世界が広がっていく。


 こんな景色が何もせずに作り出されるのだから、自然というものは本当に偉大である。


「朝日だとちょうど反対方向だから、ミロネス山から日が昇っていくんだろうな。その景色もしっかりと見ていくことにしよう」


 現在は地平線の向こうに夕日が沈んでいるので、朝日は反対側から昇ることになる。そうなると大きなミロネス山を背景にして鏡面のように反射するからそちらも気になるところだ。




「この景色が一番幻想的かもしれないな」


 夕日が沈んで真っ暗な夜が訪れた。


 湖面は漆黒の空と無数の星々を完璧に映し込み、満天の星空が水面に溶け合い、まるで湖の底に銀河が眠っているかのようである。


 時折、水面に浮かぶ塩の粒が星の光を捉え、まるで精霊の灯火のように瞬く。空と水面の境界はなく、立っている俺自身がは天地の狭間に浮かんでいるかのようだ。


 空気が澄んでいるからこそ、これだけ美しい星空が輝いて見えるのだろう。


「そしてなにより、この発光する結晶が実にすばらしい」


 今は場所を移して、例の謎の発光する結晶のある場所へと移動してきた。


 湖面には美しい青色や赤色、紫色に発光している結晶が映り込み、まるで宝石箱の中のようにキラキラと輝いている。この幻想的な光景を見るためにはいくら大金を積んでも惜しくはないと思えるほどだ。


 ヴァルドたちにもぜひこの光景を見てもらいたいものだな。


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