夕陽色
「おはよう」
誰の声かもわからない声が頭の中に響いて、私の1日は始まる。
あれ?なんかデジャヴ。
今日もさっぱり授業内容が頭に入らない。私は頭が悪いのかもしれない。
時々靄がかかってるみたいになって、頭痛がするときもある。
この記憶障害は命にかかわったりしないんだろうか。
「はい、あたしはあなたのお友達」
突然目の前に椅子を持った女の子が現れた。
向かい側に座ってコンビニの袋からパンとペットボトルのミルクティーを取り出す。
周りの子たちがこっちをみてクスクス笑っている。
すごくきれいな女の子。ボーイッシュな顔立ちで、耳にはピアスがいっぱい。
一昔前ならヴィヴィアンウエストウッドのアクセサリーを身につけていそう。
そしてシドとナンシーに憧れてそう。
「あたしはこの髪型でクラゲちゃん、あなたはピアノが上手だからお嬢」
「病気って知ってる。帰る家もある。文字が読めないのは遠視」
すごい、私の不安要素をきれいに取り除いてくれる。
「今日は放課後ピアノ聴けるよ」
放課後、音楽室へ行くとクラゲちゃんがいた。
夕陽に照らされて髪の毛が透き通って綺麗。
「なんでそんな風に左右別々に指が動くの?」
「わからないけど指が勝手に動くの」
「あたしはこういうクラシックみたいなやつよりロックがすき」
「そうなの?」
「あたしバンドやってるの。ベースの重低音なんか体の芯に響いて最高だよ」
「ベースなの?」
「ううん、ボーカル」
わかる。クラゲちゃんの声はハスキーで色気があってメロい。
「お嬢は覚えてないと思うけど、時々あたしが歌って、それにあわせてピアノを弾いてくれたんだよ」
「え!聴きたい」
予想通りクラゲちゃんの歌声は最高だった。心が震えて口元が緩む。
自然と指が動く。ああ、そうだ、この感じは初めてじゃない気がする。
穏やかな時間がながれる。この時間に色をつけるなら間違いなく夕陽と同じ色だ。




