表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海月とゆめの終わり  作者: ここやまいぬこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/5

おはよう

「おはよう」


誰の声かもわからない声が頭の中に響いて、私の1日は始まる。


わかっていること

・私の記憶は1日しか持たない

・毎朝机に伏せている格好で「おはよう」の声で目が覚める

・放課後ピアノを弾き終わると目の前がブラックアウトする

・どうやら高校生らしい

・どうやら友達もいないらしい

・ついでに担任にも無視され嫌われているらしい


1限目の授業がはじまる。ノートを広げる。何か書いてある。

書いてあるけどぼやけて全く読めない。多分視力が0.1以下の世界だ。

もしかしてメガネっ子なのか!?と鞄の中を探してみたけど、それらしきものは何もなかった。


お弁当は毎日用意されている。

みんな好きに机を移動させて思い思いに食べている。

学食へ行く子もいるようだ。


お弁当が用意されているということは、私は家へ帰っているんだろうか?

家への帰り道を全く思い出せない。名前もわからないんだから住所なんて難易度高すぎか。


今日は記憶をなくして何日目なんだろう?

ただ今日だけが特別なんじゃないってことを肌で感じる。


「あ」

しまった。考え事をしていたら教科書を落としてしまった。

まあいいか。だって明日にはこの恥ずかしさも忘れてしまうんだから。


拾おうと屈んだ視界に、突然白くて綺麗な手が現れた。


「はい」

教科書をパンとはたいて差し出される。


「あ、ありがとう」

「どういたしまして」


なんだか久しぶりに人と会話した気がする。

すごくきれいな女の子。ボーイッシュな顔立ちで、耳にはピアスがいっぱい。

一昔前ならヴィヴィアンウエストウッドのアクセサリーを身につけていそう。

そしてシドとナンシーに憧れるんだわ。


「あたしのこと、忘れてるでしょ?」

「へ?」

「同じクラスだから、探してみて」


次の授業。教科書を拾ってくれた彼女の姿を探す。

確かに同じ教室にいた。耳にイヤホンが刺さってる。


彼女がチラッとこちらをみた。目が合った。

ヒラヒラと手を振ってくる。ドキドキして教科書で顔を隠した。


放課後、彼女が席までやってきた。周りがヒソヒソしてる。


「あの、私、病気で」

「うん、知ってる」

「あんたはあたしのことクラゲみたいな髪型だから”クラゲちゃん”って呼んでる」

「クラゲちゃん…」

「あたしはあんたのこと”お嬢”って呼んでる」

「なんでお嬢?」

「ピアノ…上手だから」


訂正。

どうやら友達はいたらしい。


「あの、私って家からきて、家へ帰っていますか?」

「家からきてるかは知らないけど、途中まで一緒に帰る日もあるよ」


よかった。帰る家もあるらしい。


「ノート!これみて!ぼやけてて読めないんです」


私は思いっきりノートを開いてクラゲちゃんの前に突き出した。


「え?普通に読めるけど?遠視?眼鏡買いな」


ノートを近付けたり、遠ざけたりしてみる。だめだ、読めない。

ふふっとクラゲちゃんが笑う。


「今日は予定あってピアノ聴けないんだ。また明日ね」

「うん、また明日」


「忘れていいからね」

「え?」

「また明日自己紹介するから」


頭をポンポンしてクラゲちゃんは教室から出ていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ