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第九話
法廷に静寂が戻ると、裁判長がゆっくりと口を開いた。
「被告人、前へ」
重厚な椅子が軋み、第一王子リュシアン・セレストが立ち上がる。
その姿は王族としての威厳に満ちていたが、どこか傲慢さも滲んでいた。
「氏名を述べよ」
「リュシアン・セレスト。第一王子だ」
「年齢は?」
「十八」
「所属と身分は?」
「王家直属、王位継承第一位。セレスト王国第一王子」
裁判長は一瞬、沈黙した。
その肩越しに、傍聴席の記者たちが魔導録音石を光らせる。
「本法廷では、王族であろうと例外はない。
本日は、王権侵害、暴行教唆、公的場での秩序破壊の容疑により、あなたの行為が審理される。
身分は尊重されるが、法の前では平等であることを忘れぬように」
リュシアンは鼻で笑った。
「……法が王族に勝るとでも?」
その瞬間、検察官席のカイ・フォン・レオンハルトが、静かに視線を上げた。
彼の瞳は冷たく、しかし揺るぎない。
「王族が法を軽んじるならば、王国は崩れる。
我々は、その崩壊を防ぐためにここにいる」
法廷に、再び緊張が走った。




