第六話
王都・政庁の一角。
貴族議会の控室には、重厚な空気が漂っていた。
そこに集められたのは、王国の中枢を担う四人の男たち。
彼らは、息子たちが監察院に収監された報を受け、法務省からの説明を待っていた。
だが、誰一人として声を荒げることはなかった。
◆ヴァルシュタイン団長(アレクの父)
「……騎士としての誇りを失った者に、家名は継がせられん」
彼は、報告書を黙って読み終えると、机の上に置いた。
その拳は震えていたが、怒りではない。
それは、騎士としての信念が、息子の行動に裏切られた痛みだった。
「弁護人には任せる。だが、家としての立場は明確にしておけ」
◆宰相エルンスト(ユリウスの父)
「……あの子が、感情で動いた? 信じがたいが、事実ならば仕方ない」
眼鏡の奥の瞳は、冷静に揺れていた。
彼は、息子の論理的な思考を信じていた。
だが、聖女候補の言葉に盲従したという報告は、信念を揺るがすには十分だった。
「法に従え。私情は挟まぬ。……それが宰相の務めだ」
◆筆頭宮廷魔術師マルグリット(レオンの父)
「魔力の乱れ……魅了か。あの子が、そんな術にかかるとは」
彼は、魔術師としての誇りを持っていた。
息子にも、魔術師としての理を教えてきた。
だが、禁術の影響を受けたとなれば、それは“未熟”の証でもある。
「魔術師としての資格を失ったなら、家名も魔導書も継がせるつもりはない」
◆外務大臣ドレイク(カミルの父)
「外交官の家に生まれた者が、感情で動いたなら、それは失格だ」
彼は、報告書を閉じ、深くため息をついた。
息子の甘さは、外交の場では致命的だと知っていた。
聖女候補の笑顔に惑わされたという記述は、彼にとって“外交的敗北”だった。
「弁護人に任せる。だが、家としては、責任を取らせる」
彼らは、息子たちを見限ったわけではない。
だが、王国の秩序と家の名誉を守るため、冷静に距離を置くことを選んだ。
そして、彼らの沈黙は、裁判の場に重く響くことになる――。




