第三話
王都・検察庁。
そこに設けられた司法準備室は、静寂と緊張が支配する空間だった。
俺――カイ・フォン・レオンハルトは、検察庁検察官として、事件の予審に臨んでいた。
机の上には、分厚い報告書の束。
魔道具による映像記録、学園の出席簿、破損した教科書、そして聖女候補の魔力鑑定書。
「……魅了魔法の痕跡、微弱ながら検出。意図的な発動ではなく、魔力の自動流出によるもの」
宮廷魔術師の鑑定結果は、そう記されていた。
(つまり、本人の意思とは別に、魔力が“働いていた”ということか)
俺は眉をひそめる。
禁術の中でも、魅了魔法は特に危険視されている。
それが無意識に発動していたとなれば、本人の責任はどうなるのか――判断は難しい。
「カイ様、弁護人の選任が完了しました」
補佐官が報告に来る。
「第一王子リュシアン殿下には、王家法務顧問のエルヴィン・ロート。
令息たちには、それぞれ貴族法務協会から中立弁護士が割り当てられました。
聖女候補には、魔術法専門の弁護士が担当します」
「親族からの介入は?」
「ありません。全員、弁護人に一任とのことです。……ただし、内々では“家名に傷をつけるな”
との通達があったようです」
(……見限ったか)
俺は報告書を閉じ、立ち上がる。




