第二十二話
王宮の謁見の間は、静寂に包まれていた。
重厚な扉が閉ざされ、外界の喧騒は一切届かない。
そこに集うのは、王家の血を引く者たちと、数名の高位神官のみ。
この場は、王国の法廷ではない――王家の裁きの場だ。
王が玉座に座し、その視線をゆっくりと王子へ向ける。
その瞳には、王としての冷徹と、父としての痛みが宿っていた。
「リュシアン」
低く響く声が、広間を震わせる。
「王として、そして親として、決断を下さねばならぬ」
王子は顔を上げる。
その瞳には焦燥と恐怖が混じっていた。
「父上……私は……」
王は手を上げ、言葉を遮った。
「お前の行いは、王家の名誉を傷つけた。
断罪劇という愚行、魅了魔法に影響された判断――それが事実だ。
そして、その結果として、婚約者を不当に貶めた。
この瑕疵を、王家は許さぬ」
王子の肩が震える。
「そんな……私は騙されただけだ!魅了魔法のせいで……」
王の声が鋭く響く。
「だからこそ、治療を受けさせる。
だが、その後は――お前は王子ではない」
広間に沈黙が落ちる。
王の言葉が、冷徹に続いた。
「リュシアン。この瞬間をもって、王位継承権を剥奪する。
婚約は破棄とし、王家の名を守るため、神殿に入れ。
魅了魔法の治療を受けた後、一生を神官として贖罪の日々に捧げよ」
王子の顔から血の気が引いた。
「そんな……父上、私は……!」
「黙れ」
王の声が、広間を切り裂く。
「これは、王家の決断だ」
王子は言葉を失い、膝を折った。
その姿に、王は一瞬だけ目を閉じる――父としての痛みを隠すために。
「退廷せよ」
廷吏が王子を連れ出し、重い扉が閉ざされる。
その音が、王家の歴史に新たな章を刻む鐘のように響いた。




