第二十一話
法廷に、再び裁判長の影が戻った。
重い扉が開き、荘厳な衣をまとったその姿が、静寂を切り裂く。
魔導結界が強化され、記録石が眩い光を放つ。
空気が張り詰め、誰もが息を呑んだ。
裁判長の声が、冷徹に響く。
「これより、判決を宣告します」
傍聴席がざわめき、すぐに沈黙が訪れる。
その沈黙を切り裂くように、裁判長は言葉を紡いだ。
「第一王子リュシアン殿下――
本法廷は、殿下の故意性を否定し、魅了魔法の影響下にあった事実を認定します。
しかし、王家の名誉を守るため、以下の処分を命じます。
一、殿下を謹慎とし、公務を停止すること。
一、王位継承権を剥奪し、廃嫡とすること。
一、殿下を神殿に入れ、贖罪の儀を義務付けること」
傍聴席がどよめき、誰かが息を呑む音が響いた。
「次に、聖女候補ミリア・フォン・エーデルシュタイン――
本法廷は、あなたが無意識下で魅了魔法を発動し、王家の判断に影響を与えた事実を認定します。
よって、以下の処分を命じます。
一、聖女候補の資格を停止すること。
一、神殿において再教育を受けること」
ミリアの顔が青ざめ、唇が震える。
――そんなはずない。
これは、バッドエンドなんかじゃない。
私はヒロインなのよ。
この世界は、私のためにあるはずなのに……。
「悪いのはセレナ……原作を壊したのは彼女……私は……」
その声は、胸の奥で渦巻くだけだった。
「最後に、神殿――
推薦制度の管理不備を認定し、監査命令を発する」
裁判長の声が、冷徹に響き渡る。
「以上をもって、本法廷の審理を終結する」
魔導記録石が光を放ち、判決が封印された。
傍聴席のざわめきが、歴史の重みを告げる鐘のように広がっていった。




