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第二十話

「陪審員は退廷し、評議を開始してください」

裁判長の声が響いた瞬間、法廷の空気が一変した。

廷吏が結界を展開し、陪審員たちは隔絶された評議室へと移動する。


そこは、虚偽を許さない空間だった。

壁面に刻まれた古代文字が淡く光り、魔力検知装置が静かに脈動する。

外部干渉を遮断する術式が起動し、評議室は完全な沈黙に包まれた。


長卓を囲むのは、王国の三権を象徴する者たち――

貴族代表、神殿の高位神官、そして法務官。

彼らの視線が交錯し、緊張が張り詰める。



「まず、王子の故意性についてだ」

法務官が低く切り出す。

「魅了魔法の影響は明白だ。魔力波形の解析、証人の証言、映像記録――すべてが一致している」


貴族代表が腕を組み、重々しく頷く。

「殿下の判断が歪められたのは事実だ。だが、王家の信用を守るため、処分は慎重にすべきだ」


神官が静かに言葉を挟む。

「聖女候補の過失は重大です。神殿の推薦を受けた者が、無意識とはいえ魅了魔法を発動した。信仰制度に亀裂が入る」


「神殿の管理責任も問われるべきだな」

法務官の声が冷徹に響く。

「術式の監査を怠った結果が、王国の秩序を揺るがした」


議論は続く。

「殿下には謹慎と公務停止を」

「信頼回復の儀式を義務付けるべきだ」

「ミリアには聖女候補資格停止、神殿で再教育」

「神殿には監査命令を――」


そして、重い沈黙の後、貴族代表が口を開いた。

「追加処分として、殿下を廃嫡とし、神殿に入れる。贖罪の儀をもって、王家の名誉を守る」


神官が目を閉じ、低く祈りの言葉を呟く。

法務官が記録石に手をかざし、評議の結論が封印された。


「これは、王国の歴史に残る判決になる」

誰かが呟いたその言葉が、結界の中で重く響いた。

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