第二話
衛兵たちが姿勢を正し、貴族たちは一斉に跪いた。
ざわめきは消え、空気が張り詰める。
ゆっくりと、威厳ある足取りで現れたのは、壮年の男。
白金の刺繍が施された王衣を纏い、深紅のマントを翻しながら、堂々と壇上へと歩を進める。
その人物こそ――王国の主、アルフォンス三世。
彼が一歩踏み出すごとに、道が開かれる。
誰もが頭を垂れ、息を潜める中、王の声が厳かに響いた。
「その者の申し出は最もである」
静かでありながら、全てを制する力を持った声だった。
壇上に立った王は、第一王子を見据える。
「リュシアンには裁く権利はない。ましてや王家が決めた婚約を無断で破棄するなど、謀反を起こす気か?」
リュシアンは顔を青ざめさせ、言い訳を始める。
「違う!悪いのはセレナだ!私は……私は彼女を守ろうと……!」
「その判断を下すのは、裁判所だ」
カイは静かに言い放った。
「本件は、王家の名誉、貴族の秩序、そして法の尊厳に関わる重大事案。よって、特別検察官として、正式に調査と裁判を開始します」
王は頷き、法務大臣に目配せする。
「この件、任せるぞ」
「御意」
カイは一礼し、セレナ・フォン・グランディールに視線を向ける。
彼女は、毅然とした態度で立ち尽くしていた。
その瞳には、恐れも、怒りも、涙もない。ただ、誇りだけが宿っていた。
一方、聖女候補――ミリア・フォン・エーデルシュタインは、王子の背に隠れるようにして、
カイを睨んでいた。
その視線は、まるで“邪魔者”を見るような冷たさ。
カイは、取り巻き令息たちにも目を向ける。
いずれも名家の御曹司。だが今は、聖女候補に盲目的に従っているように見える。
「それでは、関係者を貴族監察院の隔離室へ。証言と証拠の収集を開始します」
衛兵たちが動き出す。
第一王子と取り巻き令息たちは、抵抗することなく連行されていった。
卒業の宴は、静かにその幕を下ろした。
そして、法の下で真実を問う審理が始まる。
次回は、日曜日




