表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/25

第十九話

裁判長の声が、法廷の空気をさらに引き締めた。


「証拠調べは終結しました。これより、最終弁論に移ります。検察官、発言を許可します」


カイ・フォン・レオンハルトが静かに立ち上がった。

その姿は冷徹で、声は澄んだ刃のように響く。


「本件の本質は、第一王子殿下の故意性ではありません。

断罪劇における判断は、魅了魔法の影響下で行われた可能性が極めて高い。

魔力波形の解析結果、証人の証言、そして学園監視術式の映像記録――これらは一貫して、殿下の意思が歪められた事実を示しています」


傍聴席がざわめく。

カイは淡々と続けた。


「よって、殿下の責任は限定的であり、むしろ聖女候補ミリア・フォン・エーデルシュタインの過失が重大です。

彼女は、神殿より推薦を受けた立場でありながら、無意識下とはいえ魅了魔法を発動し、王家の判断に影響を与えました。

さらに、神殿の管理体制にも重大な瑕疵が認められます」


カイの視線が一瞬、ミリアを射抜く。

彼女の肩が震え、唇が白くなる。


「本法廷は、王国法と神殿法の両方に基づき、これらの責任を明確にすべきです。以上です」


カイが静かに一礼し、席に戻った。


裁判長が視線を弁護官に向ける。


「弁護側、発言を許可します」


弁護官が立ち上がり、声を張った。


「殿下は魅了魔法の影響下にあり、責任はありません!

むしろ、神殿の管理不備こそが問題であり、聖女候補の過失も故意ではない以上、軽微なものです。

本件で過度な処分を下せば、王国の政治的安定を損なう恐れがあります!」


傍聴席がざわめく。

弁護官はさらに続けた。


「よって、殿下には免責を、聖女候補には教育的措置を――」


その声は必死だったが、論理は崩れ始めていた。

証拠の重みが、言葉を押し潰していく。


ミリアの視線が宙を泳ぐ。

――これは、バッドエンド?

そんなはずない。

私はヒロインなのよ。

この世界は、私のためにあるはずなのに……。


「悪いのはセレナ……原作を壊したのは彼女……私は……」


彼女の胸の奥で、必死の言葉が渦巻く。

だが、法廷の冷徹な空気は、その幻想を容赦なく切り裂いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ