表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/25

第十七話

裁判長の声が低く響いた。


「次に、聖女候補が主張する『被害者によるイジメ行為』の有無を確認します」


傍聴席がざわめき、視線が証言台と魔導記録石に集まる。

記録官が術式を起動し、結界に淡い光が広がった。

魔導映像が浮かび上がる――池のほとり、制服姿の少女が立っている。


裁判長が説明する。


「これは学園の監視術式による映像記録です。聖女候補が主張する『池に落とされた』場面を確認します」


映像が動き出す。

少女――ミリアが、池の縁で立ち止まり、周囲を見回す。

次の瞬間、彼女は自ら足を踏み出し、水面に飛び込んだ。


傍聴席がどよめく。


「……自分で……?」


裁判長の声が冷徹に響く。


「映像に、他者の干渉は確認できません」


ミリアの顔が青ざめる。

唇が震え、声にならない言葉が漏れた。


「そんな……違う……これは……」


裁判長は続ける。


「次に、教科書破損の件について。学園側の記録を確認します」


学園長が証言台に立つ。

白髪の老教師が、厳粛な声で告げた。


「セレナ・フォン・グランディールが、その教室に入った記録はありません。出席簿にも、懲罰記録にも該当事項はない。教科書破損は、確認できませんでした」


さらに、周囲の生徒たちが証言する。


「普段、クラスも授業も違うので、関わりはありません」

「池に落とされたなんて、見たことがない」

「教科書が破れていた?そんな話、聞いたこともない」


魔導結界が淡く光り、嘘はないことを示す。




弁護官が立ち上がり、声を張った。


「裁判長、映像は角度が悪い。水に落ちたのは事故の可能性もあります。教科書についても、誰かが持ち出した可能性は否定できません!」


その瞬間、王子が椅子を蹴るように立ち上がった。


「そうだ!この証拠は捏造だ!俺を貶めるための偽りだ!」


法廷が騒然となる。

裁判長の声が鋭く響いた。


「静粛に!殿下、これ以上秩序を乱すなら退廷を命じます」


王子はなおも叫ぶ。


「俺は騙されてなどいない!これは陰謀だ!」


裁判長が手を振り下ろす。


「退廷を命じます。廷吏、殿下を控室へ」


廷吏が王子の腕を取り、傍聴席がざわめきに包まれる。

ミリアは震える手で胸を押さえ、視線を落とした。


――断罪劇の正義が、音を立てて崩れていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ