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第十六話

裁判長が静かに告げる。


「弁護側、反対尋問はありますか?」


弁護官が立ち上がり、声を張った。


「はい、あります」


弁護官は証言台に向き直り、冷静な声で質問を始める。


「証人、あなたの記憶は断罪劇の緊張下で形成されたものですね?

王子が迷っていたというのは、あなたの主観ではありませんか?」


セレナは一瞬、言葉を探し、震える声で答え始めた。


「……それは――」


その瞬間、王子が椅子を蹴るように立ち上がった。


「そんなことはない!お前の勘違いだ!」


裁判長の声が鋭く響く。


「静粛に、殿下!法廷の秩序を乱すことは許されません」


傍聴席がざわめき、王子は悔しげに唇を噛み、ゆっくりと腰を下ろした。


弁護官は続ける。


「証人、あなたが感じた『違和感』は、恐怖や緊張による錯覚の可能性もありますね?」




カイが机を叩き、声を張り上げた。


「――意義あり!!」


法廷が一瞬、凍りつく。

その声は鋭く、空気を切り裂いた。


裁判長が眉をひそめる。


「理由を述べよ」


カイは冷徹な視線で弁護官を射抜き、言葉を叩きつけた。


「その質問は誘導尋問にあたります。

証人の心理を不当に揺さぶり、事実確認の範囲を逸脱している。

本法廷は、魔導結界による真偽判定を基準とする。

証人の証言は、虚偽ではないと確認済みです」


裁判長が力強く宣言する。


「意義を認めます。弁護官、その質問は取り消しなさい」


傍聴席がざわめき、弁護官の顔に焦りが走る。


カイは冷徹な視線で続ける。


「証人の主観を揺さぶるのではなく、事実を確認するべきです。

そして、その事実は――魔力干渉の証拠と一致している」


法廷の空気が、さらに張り詰めた。

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