第十五話
法廷の空気が、さらに重く沈んだ。
裁判長の低い声が響く。
「次の証人を呼びます。侯爵家令嬢、セレナ・フォン・グランディール」
傍聴席がざわめき、視線が一斉に証言台へと向けられる。
セレナは、緊張を隠しきれない面持ちで立ち上がった。
淡いピンクのドレスが、彼女の震える肩を際立たせる。
魔導結界が展開され、証言台を囲む。
淡い光が揺れ、虚偽を防ぐ術式が起動する。
裁判長が確認する。
「証人、あなたは断罪劇において、第一王子殿下から罪を宣告され、社交界から追放されかけた立場にあります。
本法廷では、その経緯と、聖女候補の発言がどのように影響したかを証言していただきます。
虚偽の証言は神罰と法罰の両方を受けることを理解していますか?」
セレナは唇を噛み、かすれた声で答えた。
「……はい。理解しています」
カイ・フォン・レオンハルトが静かに立ち上がり、証言台へ歩み寄る。
その足取りは冷徹で、視線は鋭い。
「セレナ・フォン・グランディール。あなたは断罪劇の場で、第一王子殿下から罪を宣告されました。
その際、聖女候補ミリア・フォン・エーデルシュタインが、あなたの罪を強く主張したことを覚えていますか?」
セレナの瞳が揺れる。
記憶の中で、あの日の光景が蘇る。
王子の冷たい声、ミリアの清廉な顔、そして自分に向けられた断罪の言葉。
「……はい。覚えています。あの時……殿下は迷っているように見えました。でも、
ミリア様が『その令嬢は罪を犯しました』と……強く言った瞬間、殿下の目が決まったんです」
傍聴席がざわめく。
魔導結界が淡く反応――嘘ではない。
カイは冷静に続ける。
「あなたは、その場で何を感じましたか? 王子の態度に、違和感は?」
セレナは一瞬、言葉を探し、震える声で答えた。
「……殿下は……普段よりも、ミリア様の言葉に強く反応していた気がします。まるで……彼女の言葉が、殿下の心を縛っているみたいで……」
魔導結界が再び淡く光る。
嘘ではない。
カイは一礼し、証言台から離れた。
「以上、証人尋問を終了します」
裁判長が記録官に目配せし、魔導記録石が証言を保存する。
セレナは深く頭を下げ、退廷した。
その背中に、傍聴席の視線が突き刺さる。
――断罪劇の真実が、少しずつ暴かれていく。




