第十三話
裁判長が静かに告げる。
「証人、ミリア・フォン・エーデルシュタイン。証言台へ」
ミリアはゆっくりと立ち上がり、証言台へと歩み出る。
白銀の髪が揺れ、聖女候補としての清廉な雰囲気を纏いながらも、その足取りにはわずかな震えがあった。
魔導結界が展開され、証言台を囲む。
虚偽の証言を防ぐため、魔力反応を検知する術式が起動する。
裁判長が確認する。
「証人、あなたは現在、聖女候補として神殿より推薦を受けている立場にあります。
本法廷では、あなたの証言が王家の判断に影響を与えた可能性について審理されます。
虚偽の証言は、神罰と法罰の両方を受けることを理解していますか?」
ミリアは小さく頷いた。
「……はい。理解しています」
カイ・フォン・レオンハルトが立ち上がり、証人に向かって歩み寄る。
「ミリア・フォン・エーデルシュタイン。
あなたは、断罪劇の中心人物として、第一王子リュシアン殿下に対し、ある令嬢の罪を主張しました。
その際、あなたの魔力に“魅了”の反応が検出されたことを、あなたは認識していますか?」
ミリアは目を見開き、言葉を探すように口を開いた。
「……私は、そんな魔法を使った記憶はありません。
ただ……その時、頭がぼんやりしていて……王子の言葉が、すごく……心に響いて……」
魔導結界が淡く反応する。
嘘ではない。だが、完全な真実でもない。
カイは冷静に続ける。
「あなたの魔力波形は、断罪劇の直前に“魅了魔法”の特性を示していました。
それは、無意識下で発動された可能性が高く、王子の判断に影響を与えたと考えられます。
あなたは、その責任をどう受け止めますか?」
ミリアは唇を噛み、震える声で答えた。
「……私は、聖女候補として、誰かを操るつもりなんてなかった。
でも……もし、私のせいで誰かが傷ついたなら……それは、私の……罪です」
傍聴席がざわめく。
聖女候補の告白は、王国の信仰制度にまで波紋を広げる。
カイは一礼し、証言台から離れた。
「以上、証人尋問を終了します」
裁判長が記録官に目配せし、魔導記録石が証言を保存する。




