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嫌がらせ少女は大志を抱けない。~めっちゃ強い少女はただ無双する事が出来れば良いなぁって思いました~  作者: せいゆ


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早め早めにするべき その4



 バルトハイネは一人とある町の飲食店で干し肉を齧っていた。

 そんな場所へプレイヤーの一人がやってくる。


「あっ、プレイヤーさんですぅ」


「えっ」


 幼い姿の少女、名前にミナモと表示されており、久しぶりに見るプレイヤーに目を丸くしていた。


「やったー、数日ぶりのプレイヤーさんだぁ、お兄さん」


 きゃっきゃっと燥ぎ近づき、その手を取り笑みを向ける。

 困惑以外にも、浮かんだ笑みが和やかになっており、可愛い女子のプレイヤーに触れられるのは嫌じゃない様だった。


「ま、俺なんだけどな、ササクレー」


「……え?」


「げひゃひゃひゃ、その顔きもきも~、お兄さんったらゲキヤバー」


 表情が凍り付き、わなわなと震える。

 既に頭の中で目の前の少女がポコ太郎なのだと答えを出しているのだが、それでも認めたくはない。

 この世の崩壊を前にした様な顔だ。


「な、なんで…」


「ネナベしてたからなぁ、男だと思っただろぉ?」


 邪悪な笑みを浮かべて向かいの席に座る。


「嘘だ、…嘘だろ」


「嘘なわけぇだろ、現実を見ろ」


 バルトハイネは何だかんだとミナモに憧れていた。

 浮沈を貫き、宇宙を掛けるその姿に憧れ、そして羨ましく嫉妬もしていた。

 カッコイイ男性像に見えており、現れた少女の姿があまりにも精神を抉る。


「さっさと行こうぜササ」


「…ろ」


「ん?」


「パーティクルにもそれやれよ!」


 半ば切れる姿に笑いながら立ち上がる。


「んじゃまぁ、行こうぜ」


 パーティクルの居る最初の世界へ飛ぶ。

 向かうは人気の無い国の首都、その一角、少し大きな樹木の根元に青い髪のエルフが居た。


「おっすー」


「ん? あれひょっとしてポコ太郎?」


「お、やっぱり分かってたかぁ」


「ま~ね~、なんか時折女の子ぽい感じの振る舞いというか言葉が飛んでたから」


 パーティクルは薄々気付いており、今の姿を見て推測が当たっていた事に少し喜んだ。


「…分かってたのかよ」


「そりゃねぇ」


 疎外感に何とも言えない気持ちになっていた。

 不貞腐れながら、強制的に転移で別な世界へと飛ぶ。


「何処、ここ?」


 湖畔にあるロッジ。

 周囲には石造の破片などが転がっている。

 そこは少し前までミナモが使っていた場所で、周りの石像はカルフがやった盗賊や討伐に来た騎士達だ。


「ちょっと前に使ってたところ、誰もないし一先ずここで話そうか」


 何があったのかは語らず、ロッジの中にある椅子に各々が座る。


「さてと、改めて、こっちじゃミナモって名前になってるから、よろしく~」


「俺も変えてる、同じなのはパーだけか」


「ころころ変えるんだ」


「変えてるよ、決まった名前は無いかな」


「俺は何となくこっちがいいかな、折角のファンタジーだし」


 積もる話を始めようとしたが、バルトハイネは本題が気掛かりで首を振った。


「って、今は、その、…すまないが」


「はいはい、わーってるって」


「ササやんせっかちだなぁ」


「うぐっ、当事者じゃないからって適当に言いやがって」


「まあ、他人事だし」


「面白そうだとは思うけどねぇ」


 羨ましそうに睨み付け、それを見二人が笑う。


「じゃあそろそろ可哀想だし、適当に考えますか」


「おー」


「適当じゃ困るんだよ…」


「って言っても、こっちから先手討てばいいだけじゃん」


「先手?」


「要はLo10が公平な組織だから、一般プレイヤーと繋がるのは控えようぜって宣言すれば良いだけだろ」


「確かに、流石ポコ太郎」


「ふふん、もっと褒めるがよい」


「どうやって伝えるんだよ」


「どうって、…機能にないの? 宣言系コマンドとか」


「いや、まだ詳細が分からない」


「流石にあるんじゃないか? 例えば掲示板にイベント日程を書き込むとか」


「ああ、確かにそう言うの無いと困るよね」


 バルトハイネは早速コマンドを確認し、機能の事について読み漁る。

 その間二人は子供の様に燥ぎ、何故かパーティクルを触手で持ち上げて遊んでいた。


「ガキか、ってか、何だその触手」


「アールじゅうはちきん」


「いやぁー、犯されるぅ」


「逆だろどう見ても。

 ってそうじゃねぇ、コマンド見つけたぞ。

 確かに掲示板と、プレイヤー全体に告知できる」


「やるやん、後は宣言するだけだな。

 はいお終い」


「い、いや、待ってくれ」


「どうしたの?」


 バルトハイネは腕を組み悩む。

 二人は少しだけ嫌な予感がして先手を打った。


「仕返し系ならやめとけ、ベストなタイミングを見計らって気を逃す事もあるかもしれんし」


「そうだよ、絶対にろくなことにならないんだから、さっさとやった方が良いよ」


「えっ」


 図星を突かれ、視線が泳ぐ。

 二人は溜息をつき呆れ、バルトハイネの頬を突いたりして、弄り始めた。


「あのさぁ、もう少し考えようよ」


「流石に僕でもそこまで馬鹿な事しないよ」


「う、うるせぇ」


「じゃあちゃっちゃと宣誓しちゃって、読み上げる文章とかも考えてあげるからさ」


「ついでに停滞しているイベントも解決しちゃおうよ。

 でも、僕たちが決めるのは駄目だろうし、Lo10に頑張って貰うけど」


「…はぁ、仕方ないかぁ」


「仕方ないだぁ?」


「手伝わないぞ」


 頬を押す力が強くなり、口の中で頬の内側同士がくっ付く。


「ほめん…」


 あまり納得しないバルトハイネと共に、文章を作り上げていった。


「じゃあ始めようかぁ」


「集会があるかもしれないのに、そこでぶちまけたかった」


「集会?」


「新しく設立したクランの集会をして、そこで資金を集めるとかなんとか」


 それを聞き、ミナモの顔つきが変わる。

 しかしパーティクルがその頭を叩き。


「悪だくみは駄目だよ」


「…っすね」


 唇を尖らせ、台本を再確認し、バルトハイネに視線を向けた。

 緊張して来たのか、溜息の回数が多くなっており、二人は背中を叩く。


「な~に、一時の恥だ、人のうわさも七十五日という話もある」


「ササやんなら大丈夫だよ」


「…不安だ」


 そう言いながらも、震える手でボタンを押し、宣誓を始めた。


「あーあー、聞こえてますか?」


 ミナモはすぐそばでしか聞こえず、その事に眉をひそめた。

 パーティクルは残像のように響く声に耳を覆いながら頷いた。


「聞こえていると仮定して言葉を続けます。

 えー、この宣誓も含めた業務連絡を持って、イベント『議会の秘密を探れ』の終了を告知したいと思います。

 ご参加された方の心よりの感謝を申し上げます」


 パーティクルが頷き、続けるように促す。

 同時に掲示板などを見て、他の者達に伝わっている事も示していた。


「昨今の混迷した事態を各々が心に抱える心境も各々違うしょう。

 その上でLo10の一人、私は、中立性を宣言しプレイヤー全体にイベントの定期開催をする事を誓います」


 中立、これは少し難しい。

 この後も議論が巻き起こるだろう。


「Lo10は前任者達を責めるつもりはもとうありません、Lo10の事実に辿り着いた物は、先程までを含めて211人ほどまでしか確認されておりませんでした。

 しかし知ってしまった以上、本来のイベント運営という立場を改めて表明させていただきます」


 カウントが跳ね上がっていく。

 ログイン時間が一番多い時間を狙ったその宣言により、千単位の人数まで増えていた。


「本来であれば独立して運営していかなければならないのでしょう。しかしながらLo10メンバーも一プレイヤーにすぎません。

 誰かの手を借りなければプレイも困難と考えております。

 ですが、イベントで特定の誰かを優位にしない為にも、メンバーならば適切な距離を求めなければなりません、プレイヤーの皆様にもご協力をお願い致します」


 只管釘をさす。

 それは無視すればバッシングされる内容なのだ、もうLo10という立場を利用して成り上がる事は出来ない。


「大変難しい事と理解しています。

 ですので、現在選択可能なイベント、その期間、内容などを纏めて公式サイトに掲載を予定しています。

 仕様などの公表も致します、後任のLo10になる方々の参考になれば幸いです」


 必ずいちゃもんを付ける者達が現れる。

 その為にも透明性をある程度確保する必要があった。


「さて、Lo10はイベント運営という立場にある為、前任者たちの様なプレイスタイルを行う事は難しいと考えております。

 そして所謂バンディットと言われている方々も含めた公平に体裁を行います、イベントの参加もその中で行う行為も咎めるつもりはございません」


 これは賛否が分かれる、Lo10が正義の為に、アンダーグラウンドに睨みを効かせていたというのは周知の事実だ。それを今更変える事は戸惑う者達もいるだろう。

 しかし必要な公平的な体制であった。


「アンダーグラウンドの方々について、どの様な組織なのか、それについては情報はございません。

 そちらはそちらでご活躍程をお祈りいたします」


 一部の就活生にその言葉は刺さるが、ミナモとパーティクルが悪戯で入れた文面であった。


「改めまして、今後ともLo10を温かく見守っていただければ幸いです。

 これにて宣誓と業務連絡を終了とさせていただきます。

 イベント『議会の秘密を探れ』のイベントに参加していただき誠に感謝いたします、ありがとうございました」


 これで告知などは終わりであった。

 そして一つのイベントを単独で告知した。

 チャイムが鳴り響き、再び口を開く。


「現在一時間後より、期限がギリギリなイベント、『されど竜人は誰と踊る』の開催告知をさせていただきます。

 ちなみに三時間後開催不可能なイベントになる為、急遽イベントを行う事を先んじて謝罪させていただきます」


 晴天の霹靂とはまさにこのことだろう。

 皆が驚愕し、ミナモ達はその姿を想像してほくそ笑む。

 公式サイトが自動で更新され、イベントの開催日程、この場合時間が即座に公表された。


「それでは良き結末を迎えることを祈っております、以上イベント運営委員会Lo10でした」


 通話が終わり、ちゃんと切れている事を確認したバルトハイネが椅子にもたれ掛かり深々とため息をついた。


「はああああ~~~~、もう、…一生分働いた気分」


「凄いね、こういう仕事してるの?」


「そうだよ、よくすらすらやれるねぇ、ボク絶対につまずいて初々しさ全開になると思ってたのに」


「俺も~」


「……お前等楽しそうだよなぁ」


 子供の様に二人を睨み付け、さらにバルトハイネは骨が無いんじゃないかというほど姿勢が崩れていく。


「まあ、お疲れ~、と言っても」


「これからが本番だろうけどねぇ」


 本番はこれからなのだ。

 イベントは後は自動的に始まる、しかしLo10内部の事が一番問題であった。


「いいかい? 改めて言うけど、君が勝手にしたんだ、だから自分も勝手にした、それだけを言うんだ」


「…いいのかねぇ?」


「録音されて晒される前提の会話をするんだ。こちらも最初から録音して、編集の余地をなくす。

 ただし保守的にならない様に、毅然とした態度で挑んでくれよ、プレイヤー側も絶対に理解してくれる、理解しない奴は頭がおかしいだけだから」


「……分かってるよ」


 バルトハイネは頬を叩き気合を入れた。

 そして緊急招集というコマンドがLo10の誰かから発令される。

 再び気合を入れなおし、バルトハイネは円卓へと出向いた。

 緊急招集に応じたのは六名。

 クランを作った人物は一人だけで、メインのデウシンは来ていない。


「ど、どういう、事なんですか!」


 後を追う様にクランを作った女性が緊急招集を実行した様であった。


「そっちが勝手にしたんだ、なら俺も勝手にさせて貰うだけだよ」


「あ、あああ、ああ! 私、私! 私のクラン、人抜けたり、大変な事になってるんですけど!」


「そうヒスするな。

 だが公平性は必要だろ?」


 席に座り、やる気無さそうに天を仰ぐ。

 興味無さそうな態度をバルトハイネは貫くが、内心声を荒げる二人の態度にビクビクと怖がっていた。やはり人が感情的になる様は精神に響く。


「さ、流石にこれはやり過ぎなのでは?」


 クランを持とうかと考えていた者が口を挟む。


「じゃあお前、このイベント運営を公平的にやっていけるのか?」


「いや、…それは」


「それ以外の一番いい方法があるなら提言どうぞ」


「晒してやる! 晒してやるからな!」


「こっちも録音はしてるからどうぞ、そのままアップロードしろよ」


 ぐっと声がつまり、その女性は机を叩き泣き出した。


「んで? 罵る為だけに集まったんじゃないだろ?

 俺はこの後のイベント、何をするのかの対処にも備えないといけないんだ。

 俺はそのまま頑張るから、お前達はイベントを楽しんでくれ」


「いや、俺も手伝うよ。

 元より貴方と同じ意見だったから」


「私も、です」


 三名ほど今回の宣言で心から安堵していた。

 ある意味適切な距離と、そしてプレイヤー達の視線を少しは緩和できる。


「話は以上か? 今以上に煮詰める話をしたかったのだが」


 意見を求めるが、誰も何も言わない。


「後で意見も出てくるだろう、その後にまた話あうとしよう。

 とは言え、結局さほど変わりはないだろうが」


 そして立ち上がる。

 その時一人が尋ねた。


「あの」


「ん?」


「…このイベントって、本当ですか?」


「丁度良いだろ、選択できる時間がなく、それでいて、その難易度」


「……攻略難易度最高、適正レベル不足、…こんなのクリア不可能なんじゃ?」


「一応どれほどの難易度が知りたいだろ? 今後の運営的にも、プレイヤー全体としても。

 触りたくないとか、力を付けないと、みたいな誘導ができる」


「決まりだな」


 試金石の様な役割をイベントにさせようとしていた。

 しかし問題もまたある。


「…これって異世界の事?」


「さあ?」


 竜人という存在は分からない。

 誰も分からないイベントに挑もうとしていた。

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