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嫌がらせ少女は大志を抱けない。~めっちゃ強い少女はただ無双する事が出来れば良いなぁって思いました~  作者: せいゆ


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早め早めにするべき その3



 一度咳払いして話しかける。


「本当に、懐かしい名前だな、どうしたんだ」


 ミナモの声帯から出てきた声は男のものであった。

 ボイスチェンジャーにより、相手にも男の声に聞こえる。


「よ、よう、ポコ太郎、久しぶりだな、元気か?」


「ぼちぼち元気だよ。

 なんかしたのか?」


(あれ、声が違う様な?)


 聞こえる声に違和感を覚える。

 しかし半年も前の記憶の為、その差異を抑えつつ本題を切り出した。


「いやぁさ、……突然だけどWLMやってたり、しない?」


「ん~、まあ、暇だからやってるけど」


「あ、良かった」


 少し安堵した様な声色が漏れる。


「頼む、もうお前にしか頼めん、助けてくれ!」


「なんか切羽詰まってるみたいだけど、…期待に答えなくはないなぁ」


「そこを何とか」


「せめて今まで付き合いでもあれば別だけどさ、いきなりこれって嫌じゃん」


「うっ、確かに、そうだけど…」


 頼られても困るというよりも、良いようにされるのが見えている。それは互いに分かっているが、バルトハイネはそれでも頼るしかない。

 ミナモはちょっとした意地悪であったが、相当行き詰っているのか察していた。

 乗る気でないのは先ほどまでメイアとの会話で失敗し、あまり相談事は避けたい気分であった。


「まあ、話だけなら聞くよ、つってもくっそほど重いみたいだけど」


「いや、…そうだな、重いと思う、パーにも相談したけど、無理って言われたし」


「パーやんもやってるんだ、じゃあ俺にも無理だ」


「そこを何とか、不沈のポコって言われるくらいのカリスマ、それを生かして人望でどーんっと、さ」


「人望って、今の俺が無い物だが」


「…マジ? バンディットプレイしてる?」


「そんな感じ、適当に目についた奴からバッサリさ」


 半分本当の話だ。


「…異世界とか、行ってる?」


「行ってんねぇ、ひょっとして普通の所の話?」


「…うん」


「じゃあアキラメロン、相談する相手を間違えたな、パーやんかマツルクスにでも頼んどけ」


「マツルクスは消えてる、アプリのアカウント事消したみたいだぞ」


「え? マジ?」


 つるんでいたもう一人の相手に試しに連絡を試みるが、アカウントが存在していないと返された。


「ありゃ、マジだ」


「…パーティクルかぁ、あの雰囲気じゃ無理そうだな」


「物は試しだろ、今この場に呼んでみたらどうだ?」


「お前からも説得してくれるか?」


「約束はしかねる」


「よし、呼ぶ」


 先ほどまでかけていたパーティクルをグループに誘うと、十秒後に合流した。


「やっぱりかかって来た」


「久しぶりパーやん」


「ポコも久しぶりさー」


 気さくな様子は変わらずで、それがとても懐かしい。


「今ポコは何してるの?」


「WLMだよ」


「同じだねぇ、じゃあ何処にいるの?」


「異世界だよ」


「え~、いいなぁ、ボクも行きたい」


「適当に探せば異世界の入り口なんていっぱいあるから探しなよ」


「うっそだ~」


「マジマジ」


 和気藹々と話し始めた所でササクレーが咳払いをした。


「すまん、ちょっと、…マジで助けてほしい」


「あ~、やっぱりボクの所に回って来るよねぇ」


 ある程度予想はしていたようだが、答えは変わらない。


「でも無理、それにさ、ササやん、…結構はぐらかしてるでしょ? 実際の所どうなの?」


「あー、…う~ん、やっぱ分かるよな」


 詳細な話を聞かない限りはパーティクルも話に乗る事は無い。

 只管悩み、そしてゆっくりと口を開く。


「あのさ、…俺、……どうやらLo10に選ばれてしまったようなんだ」


「「は?」」


 声が重なり同じ様に首を傾げる。


「え? マジで言ってる?」


「嘘じゃないの? ササやん本当?」


「マジのマジ」


 ミナモは視線をメイアの去って行った方へと向けた。


「……なんか面白い事なってんねぇ、それは少しやる気が出て来たよ。

 んで、現状を知りたいのだが?」


「現金な奴め。

 現状は、ちょっと話が長くなるが聞いてくれ」


 最初は穏健だった者達が変わっている事など、昔のLo10の様な組織になっていて、それに反抗しようとしている事を話してくれた。


「今はその流れが劣勢、みたいな感じ?」


「そう言う事だ。

 隠遁した組織にする派閥は3、静観が2、回帰派が5」


「静観と回帰を引き込む必要あるって事だねぇ」


「いや、明確なカウンターを仕掛けないと駄目だ、いくら票を取った所で、元を何とかしない限り厳しい」


「元、かぁ」


 ミナモは頭を回転させる。

 ありとあらゆる手段を使えば対処は可能だが、それをする利点が無い。

 さらに言うならばギルドの様子も伺う必要があった。


(あの組織な~んか、ちょっとなぁ、何しようというのかも全貌がつかめない、あれかなぁっていうのはあるけど)


 答えが出ない限り妄想の域を出ない。

 変な推測で動くとかえって検討違いな事をして失敗する可能性もある。

 ギルド関係の話を切り捨てる事にした。


「具体的には何をするの?」


「具体的に、…やっぱり前任者たちの様な正義の組織を辞める事かな。

 どうもLo10っていう組織は本来の使い方じゃない気がするんだ」


「公式サイトに正義の味方だって載ってないやつか」


「そう、それ。

 もしかしたらまた別な理由があるんじゃないかと思ってさ」


「理由ねぇ、ボクはさっぱりわからんよぉ」


「無い知恵を絞って全員で考えてくれ」


「無い知恵って言われてもさぁ」


「ひでぇ事言いやがるぜ。

 だが正解だ!」


 ミナモも検討もつかないが、一つずつわかる範囲でLo10の事を口にしていく。


「Lo10は十人、多数決が出来ない人数」


「あ、確かに、それなら11人欲しいよねぇ」


「言われてみれば」


「後は、権限があるんだっけ?」


「ああ、ある。

 指名手配、対象NPCの弱体化、Lo10の緊急要請」


「呼び出し、弱体、指名手配、…う~ん、分からんねぇ」


「指名手配とか弱体化がなんか考えを阻害してる気がする」


「でも阻害って言っても、あるなら関係はしてるんだろ?」


「そうだけどさ、これ見たら全員じゃあ正義のためにって、なっちまうだろ。

 おまけにアンダーグラウンドっていうのまで居る始末」


「あっちは明確に悪もんだしなぁ、なんでササやんはあっちに行かなかったん?」


「悪い事は、……そんなしてない。

 ってかあっちも別に決まってないだろ」


「あれ? そうだっけ?」


 アンダーグラウンドもまだどんな組織なのかは不明だ。

 既に知っている可能性もあるが、公表はされていないのは確定である。


「どっちにしろ何でLo10にササやんが選ばれたん?」


「だから分からんのだ、それでLo10が正義の組織じゃないっていう確信を得た」


 三人がうんうんと唸るが答えは出ない。

 そんな時ポツリとパーティクルが呟いた。


「久しぶりにこんな集まってるのに、頭使う事だけって寂しいなぁ。

 会ってパーッと遊びたいよ」


「確かにそれもいいな、…他のゲーム何かあるか?」


「他なぁ、SFのガンアクション系は?」


「それって戦う以外ないでしょ? ボクもっと遊ぶ、って感じのが良い」


「そうなると、カジュアルな、無重力で遊ぶ系?」


「お、良いな、な~んか常に歩きっぱなしみたいな感じになってるし、そう言う事したい」


 話が脱線していくが、気晴らしには丁度良い。バルトハイネを除いて。


「皆でワイワイやりたいな、大人数に、他の、あったかな? いや、このゲームに取られてるか……」


「っていうか、遊ぶって言えば、ボクたちゲーム始めてから全然イベント無くなってるけど、このゲームイベントやらんの?」


「それを俺に聞くなよ、個人で主催するしかないだろ」


 ミナモ達が始める数日前まではイベントをやっていた。

 しかし開始後から一度もイベントが始まっていない。今に至るまで一切無いのだ。


「Lo10なんだし、なんか機能を生かしてイベント開けないの? 寧ろそういう組織であるべきだよ、Lo10はイベント運営組織、賛成です」


「ああ、確かに良いな、Lo10こそイベント運営には持って来いな組織。

 対象を指名手配しておにごっことか、NPCを追ったりとか」


「そうだな、そういう使い方こそ一番だろ。

 って言っても、誰もそういう活用しねぇし、…まあ、俺がイベント運営とかそう言うのも嫌だけどさ。

 お前らはイベントするとしたら何が良い?」


 しかし返答が返ってこない。


「あれ? 俺の回線不良? アプリフリーズした?」


 アプリの再起動をしようとしたのだが、パーティクルがそれを止めた。


「さ、ササやん」


「ん?」


「…なんか、出た」


「私の所も、変な箱出た」


「はぁ? 何言ってんだ?」


 パーティクルとミナモの目の前にはラッピングされリボンのついた小箱が湧いて出てくる。

 宙に浮かび、恐る恐る触れると心地よいファンファーレが鳴り出す。

 さらに目の前にテキストが表示され、二人はびくりと身体を震わせて、まじまじとそれを眺めて呆ける。


「ふふ、あはははっ」


「くっ、あはは、くくくっ」


 笑い出した二人の声に困惑して尋ね返す。


「な、なんだよ」


「いやぁ、ポーションに着火剤に水筒? 今更? いや、これは、ふふっ」


「ちょっと馬鹿らしくなってくるね」


「いや、マジでなんなの?」


「Lo10はイベント運営組織、復唱」


「え?」


「復唱するんだよ」


「え、あ、…えっと、Lo10はイベント運営組織、これのなに、がぁッ!?」


 バルトハイネの目の前に箱が現れる。

 他の二人の様に触れて、そして表示された文字を口にする。


「ロードオブテンス初期企画解答正解者プレゼント」


 口にし、頭の中で意味を理解していく。


「え」


 そして困惑し、手元にあるプレゼントから入手したアイテムを確認していく。


「着火剤一つ、初心者ポーション10個、水筒一本、……なにこの、スタートした人用の、役立ちアイテム」


「見たまんまだろ」


 しばらく呆け、そして同じ様に笑いだす。


「はぁ、…馬鹿馬鹿しい」


 笑い疲れて出てきた言葉はそれだけだ。

 今まで悩んでいたことが無駄だった事にもつながる。


「あ、そうだ、何かコマンド増えてるんじゃない?」


「あ、そっか、ちょっと見て来るわ」


 会議室へ移動し、部屋内部を確認するが変化は無い。

 専用のコマンドを確認すると、イベント作成と現在発動可能なイベントというイベント関連の選択が増えていた。


「イベント作成、……それと発動可能イベントっていうのもあるが、中は、ん? 灰色の文字と赤と白のがあるな」


「作成は想像つくが、…ふむ、灰色は期間が過ぎたとか、白は選択可能、赤は危険とかか? 説明とかないの?」


「……あった、左上にハテナマークがある。

 お前が言った通りに発動可能期間が過ぎてるって説明であってる。

 白もお前の見立て通り、赤は、……現在のプレイヤー平均レベルに対して不適正難易度ってあるな」


「ふ~ん。

 灰色は選択できたりしない?」


「待ってくれ」


 ヘルプページを読み漁っているが、ミナモも内容が気になる為一つ提案をした。


「SS撮って共有して」


「分かった、ちょっと待ってくれ」


 ページを斜め読みしながら撮影し、それらを二人に送る。


「なるほどなぁ、灰色は期限が過ぎても発動可能ねぇ」


「けど干渉不可能のバッドエンド鑑賞会って感じみたいだよぉ」


「しかも見てくれよこのタイトルと期間、前のLo10の頃で、戦争回避フラグとかあったんじゃないか?」


「『メルシュ王国に巣食う蠢く影』まんまだね」


 内容はタイトル通りで、どれもタイトルだけで判明できる。

 時系列的な話をするならば、ミナモがホムンクルスの清廉の子兵に寄生された村に行く少し前の話に位置する。


「このイベントの内容って、あの崩壊した村関連じゃないか? めっちゃ近い」


 思い返せば村で得た情報には明かされていない事がチラホラとあった。

 事が起きる前に獣の様な咆哮云々の話などが未解決のままだ。


「こりゃ相当ポカしまくってるなぁ」


「運営は鬼か」


「あれ? 一番上のイベント、ひょっとしてこれLo10が何かって言うののイベントじゃね?」


 最上部にある白い色のタイトルには『議会の秘密を探れ』というタイトルがあった。


「あ、マジだ。

 えっと、……え、正解者数211人ってなってる」


「わぁお、え、そんな居るんだ。

 それだけ居て公表されてないの?」


「マジかよ」


 思った以上にLo10の真実を知る者が多かった。全体的に見ればそこまで多い人数ではないが、それでも広まらない理由が分からない。


「よくもまあ、…案外言っても信じて貰えなかったり、愉悦に浸りたい派が居たのかも」


「性格悪すぎる…」


「だがそれが良い」


 知りたい情報も知れて、ミナモは大分満足感を得た。

 しかしササクレーは未だに納得できない部分があった。


「けどよ、前の奴等は行動的で選ばれたって推測だけど、今度の俺達は意思が弱いというか引っ込み思案で表に出ないタイプだけだぜ? どういう理屈なんだ?」


「そのままの理屈じゃない?

 前はブイブイ言ってる奴等だけだったけど、全然だめだったから、様々な真逆な人間性の奴等だけを取り入れた、とか」


「…納得できん」


「強ち間違いじゃないでしょ? ササやん今まで事を起こさなかったし」


「間違いじゃないだろうから納得できないんだ。

 はぁ…、そのお陰で欲に火が付いた奴が何しでかすか分かったもんじゃない」


「それも運営の実験なのかもな」


「イベント打ち切らず、明かさず、この状態だからねぇ」


「性格の悪い運営様だよ」


 三人は笑いあい、これで終わりという流れになっていくのだが。


「って、終わりじゃない、余計にどうにかしないと駄目だ!」


「え? そのまま事実をぶちまけたら?」


「そんなことしたらイベントの主導権があっちに移るだろ、碌なイベントしないぞ、それでもいいのか?」


「…なんか嫌だなぁ」


「それがアンダーグラウンドの役目なんじゃないの?」


「変なイベントしない為のカウンター組織ってか?」


「なんか出た?」


「出ない」


「じゃあアンダーグラウンドはイベント運営の組織、……出ない」


 肩をすくめ、まだまだこれからも話し合いが必要という事を悟った。


「仕方ない、何処かで落ち合おうか、直接顔を見合わせた方が手っ取り早い気がしてきたよ」


 ミナモは面白い状況に人肌脱ぐことにした。

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