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嫌がらせ少女は大志を抱けない。~めっちゃ強い少女はただ無双する事が出来れば良いなぁって思いました~  作者: せいゆ


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早め早めにするべき その1


 その日プレイヤーに衝撃が走った。

 突如公式サイトにてLo10のメンバーの更新という発表がなされた。

 何を基準に選ばれたかは不明だが、選ばれた者が初めてLo10になったという事を認識した。

 そのLo10のメンバーははぽつりとつぶやいた。


「…前の全員居ないじゃん」


 前回のLo10メンバーは現在全て除名されており、現Lo10メンバー一覧に名前が載っていなかった。

 噂と状況証拠から前回のメンバー全員の名前は割れていて、公表されていなくても筒抜けになっていた。


「っていうか、うへぇ、俺がなっちゃったよ、マジかよ、どうしよう…」


 そのプレイヤー、バルトハイネは苦虫を潰した様な表情で深々とため息を吐く。

 二枚目の面が歪みとても嫌そうな表情だ、黒を基調とした中二病チックな着衣ともミスマッチ、コートを弄り、ストレスからなのか双剣に触れてカチカチと抜いたり入れたりを繰り返す。

 草場に座り込み、頭を掻きむしりLo10から自らの名前を消せないかと専用操作端末で確認するが、除名する事は出来なかった。


(なんで俺が選ばれたんだ?)


 有名でも何でもない、サービス開始から遊んでいるわけでもなく、ジャンル違いのゲームから移住してきたただの一般プレイヤーである。

 そもそもソロプレイを貫き、他との接触は殆ど無く、なんなら正義の味方とも言えない行動を取った事もあった。


(NPC殺したり、盗みもしちまってんのに、どういう選出方法なんだろ)


 善良とも言えず、選ばれた理由も皆目見当もつかない。表に名前が出るという事に対して難色を示すしかなかった。


(まいったな、俺が漏らさなくても他が勝手に公表しちゃう可能性もある、迷惑この上ない…)


 バルトハイネは悩み、ある考えに辿り着いた。


(やっぱり先手必勝、Lo10の会議? みたいなのに行って、公表しない様にって釘を打たないと。

 ……問題はその理由だな)


 公表させない理由を全員が納得してもらわなければならない。

 しかし個々によって理念も思考も違う為簡単にはいかない。


(裏方に徹するっていう理由だと、絶対に自尊心ある奴が拒否するだろうし、リーダーシップある善人の場合リーダー的なポジでプレイヤーを導くとか言いかねない。

 そう言う奴等だと俺とは水と油なんだよな)


 陰でひっそりと平穏に活動する者と表立って活動する者は相容れない。


(まあ、どういう性格なのかを確認する為にも行ってみるか)


 コンソールから専用のスキルを使い、会議室という場所に移動するバルトハイネ。

 辿り着いた円卓を模した室内には、新たにLo10に選ばれた者4名が顔を合わせて話をしていた。


「お? 新しい人が来たか」


「こんにちは」


 バルトハイネは軽く手を上げて挨拶して、適当な席に座る。


「大変だな、突然選ばれて、何か選ばれた理由知ってる人居る?」


「いや、それを今話し合っていたんだ」


「私達も皆目見当がつかなくて」


「そうなのか」


「逆に何か理由を知ってないか?」


「俺もさっぱり、ただ正義の味方的な事は殆どしてこないし、…ヤバイ依頼とかもしちゃったりしたからな」


 少し賭けだが、詳しい内容を濁しながら、悪事を伝えると、彼等は苦笑いして答えた。


「はは…、私も前にちょっと盗賊に関わる事をしてたみたいで、あの時は偽依頼だとは思わなかったなぁ」


「よく下調べしないと痛い目を見るからね、俺もそうだったよ」


 よくある事ではあるが、後ろめたい気持ちを抱えていた者が、同じ状況になっていると知ると吐露して安堵しる。

 ただし全員というわけではなく、残り二人は苦笑いをしていた。


(犯罪系をしても選ばれるのは確かか、他の二人はそう言うのが無いみたいだが、何かしら知らずしてる可能性もあるか)


 推測をするがまだ確証を得れず、バルトハイネがさらに情報を引き出す為に話始める。


「そうなると別にLo10は正義の味方じゃないかもしれませんね。

 ひょっとしたら、元からそうなのかもしれませんし」


「そうだと助かるんだけど」


「何かあったんですか?」


「いや、俺はソロプレイ専門で、クランに所属しているわけじゃないんだ」


「わ、私もです、…それどころか今異世界放浪中でして」


「君もなのか、俺もなんだよ」


「え? 貴方も?」


 異世界に足を延ばす者が多い様で、共感を得られて盛り上がり始める。


「じゃあもしかしたら今回は異世界に行ってる人が選ばれる可能性がありますね」


「僕は行ってないです…、申し訳ないです」


「い、いや、別に責めてないよ。

 そうなると謎ですね」


「あ、あの、…僕、どうしましょう、他の人にLo10であることをばれたくない、別にクランマスターじゃないのに」


「それは俺もだ」


「なんか嫌ですよね、他に名前が広まるのって」


「う、うん…」


 女性のプレイヤーは少しだけ残念そうにしていて、少し有名になりたいという欲があったようであった。


(今の所陰の者が多いが、他の五人はどうか?)


 ログイン時間が判明せず、自分がまだLo10に選ばれている事を知らない可能性があった。

 これ以上待っていても居心地が悪くなるだけだと思い、こんな提案をする。


「そうだ、残りのメンバー五人にメッセージを残しましょうよ。

 紙がありますから、ここに置いてればメッセージ残せるでしょうし」


「そうだね、じゃあ今から三日後くらいに集まろうよ、時間帯を決めよう」


「良いですね」


 五人は話し合いをして、日程を調整して、それをメモしてテーブルの上に残した。

 それから三日経過して再び会議室へ向かうと、五分前から既に全員が集まっていた。

 全員互いの事を知らず初見が多く、有名な人物は居ない。

 全員が席に着き、沈黙が流れる。


(あっ、これ、誰かがリーダーやらないと動かない奴だ)


 バルトハイネは独特な雰囲気を全体から発した時に、視線で誰がリーダーをするのかと追う。

 しかし誰も視線が泳いでおり、誰かが指揮を執るのを待っていた。

 そんな時前に座った男性がバルトハイネに視線を送り尋ねた。


「えっと、…バルトハイネさんがこの会合をしようと言いだして、俺、私も賛同しました。

 そ、それで、バルトハイネさん?」


 言い出しっぺが何とかしろという重圧を与えると、バルトハイネは冷や汗を流し立ち上がった。


「あ~、その、……いや、ルールを一度作らないかなって」


 視線が一気に突き刺さりながらも、必死に言葉を絞り出す。

 全員がルールという言葉に首を傾げていたが、バルトハイネは勢いに任せて自分の意見をぶつける事にした。


「前任者達が何をしていたかは知らんけど、その、変に名前公開せずに、波風立てずにしていこう、……いやそうやっていきたいと、個人的に思う」


 席に座り一息つき、周りを見回すとしどろもどろとして、言葉を発さない。

 何か一言でも言って欲しいと思っていると、おずおずとドワーフの女性が手を挙げた。


「そ、その、良い、と、…思います。

 わ、私も、その、こういうの、嫌なので」


 賛同する様に一部が頷いた。

 ただそれ以外は静観と、もう一つの意見がエルフの男性から飛び出す。


「…僕は、前任者達の様に、助ける活動とか、した方が、良いともう」


「だ、だよね、それがLo10、だし」


 そちらの意見に賛同する者もまた居る。

 違う意見が飛び出し、互いにぶつかる事を思うと憂鬱で発言者までもが顔を青くしている有様だ。

 バルトハイネは一度深呼吸をし、それに対して答えた。


「…良いとは思う、ただ各々好き勝手にして行こう、ただし、他の人の名前とか出すのはNGで」


「え、でもそれって、…いいの?」


「Lo10が何をする組織なのかも不明だから、前任者はそういう、正義の組織として運用したかったみたいだけど、…それって運営が決めたってわけじゃないし」


「え?」


 人助けをする派閥の者は、正義の味方がLo10という組織の存在理由だと信じて疑わなかった様子。


「待ってくれ、流石にそれは無いだろ?」


「いや、公式サイトにも、ここにも何もないはず、二日前にこの場所をくまなく探したけど、何も出てこなかった」


 そんな事は無いと否定しようとしたが、記載には何も載ってない。

 部屋も密室で、何か仕掛けがあるというわけではない。


「それに今異世界に行って帰れない人とか居るだろ? 力を合わせて、なんて出来ないと思うが」


 バルトハイネの言葉に自然と最初の提案の方針になるのかと大抵の者が思い始めた。

 しかしそれでも諦められられる者は居て、手を上げて立ち上がる。


「で、でも、だからって、良くない、…良くないよ」


「いや、だから、個々で頑張って欲しい、後俺達の名前は非公開で、という話だよ」


「だって、僕達Lo10だよ」


「…まいったなぁ」


 食い下がる相手にバルトハイネは困り頭を掻き答えた。


「正直俺は辞められるならすぐにでもLo10を辞めたい、こんなの俺には重しでしかないから」


「それは、俺もだな」


 同調してくれる者も居て、反対派の中にも同じ意見の者は居た。

 前任者が偉大に見えているからこそ、Lo10になった重責という物を感じていた。


「じゃ、じゃあ、前の人達に相談しようよ」


「それは、…止めた方が良いと思う、炎上の件知らない?」


「炎上?」


 バルトハイネも炎上という言葉に首を傾げた。

 知り得る限りバルトハイネもゲーム情報を調べてはいるが、炎上の話は聞いた事が無い。


「いや、その、炎上って言ってもかなり局所的で、エンパイアってクランあったでしょ?」


「確か白狼騎士団とツートップのエンパイアだったか?」


「そのエンパイア」


「炎上って話は聞きませんが?」


「内部に居る幹部が大荒れなんですよ、エンパイアに所属している友達からの音声データ見せましょうか?」


「えっ、マジもん?」


「いや、流石にまた聞きはまずい、プライバシーに反する」


 好奇心を示すが、一人がその話を制止させる。


「君も迂闊に公表しようとするんじゃない」


「あ、いや、多分ですけど、近いうちに暴露されるかも、です」


「え?」


「音声データはまだでしょうけど、噂として広まるはずです」


「まさか君が流した?」


「いえいえいえ、私じゃありませんよ、内部でのごたごたを嫌がってる人達です」


 そこまで知ると、好奇心が勝ってくる。

 誰か再び言い出さないかと思っているとバルトハイネへ視線を送る者が居て、その視線の意味を理解し尋ねた。


「…どんな内容なんだ?」


「元々Lo10の為に作られた組織だから、存在価値が無くなった、と」


「あぁ…、権力が無いならってことか」


 梯子を外され、基盤が無くなった以上組織を継続する理由もない。


「それじゃ解散したらアンダーグラウンドはどうするんですか…」


 その名前を言った途端三人ほど噂を思い出したようで、その事について話す。


「そうだった、確かLo10はアンダーグラウンドに睨みを利かしてるんだった」


「前線で排除してるんでしょ?」


「確かそう言う話は聞いたな…、けど、そもそも前線って今もう機能してないんじゃない?」


「異世界に場を移そうって言う流れで、元の世界はある程度探索が終わってるし、もう前線は、…何処なんだろ?」


「けどアンダーグラウンドが…」


 一般的にアンダーグラウンドの存在は凶悪犯で皆殺しにして回っているという印象であった。

 その印象はあながち間違いではないが、全てのバンディットの話が混じっていて、尾ひれが引いているだけだ。


「んで、渡り合える人って言うのはここに居るの?」


 それが出来たら苦労はせず、誰もその問いに名乗りを上げる者は居なかった。


「結局そういう結論に至るから、大人しくしてるのが良いと思うんだが」


「……それじゃ、一から組織を作るって言うのは?」


「この間自称Lo10って言う人がそれしてたと思うけど」


「あ、その動画見ました」


 この期を狙い一旗上げようと思って活動する胆略的な者も居る。

 自分がLo10である証拠も見せられない為、自称するしかなく、権力を振りかざす事は出来ない。


「じゃあ、なんで僕が選ばれたんだ…」


 選ばれた事で使命感や勇気が持てたのだろうが、実際は謎の選出に改めて悩まされる事になる。

 沈んだ空気の中、バルトハイネが先に言った通りのルールが出来上がりつつあった。


「一先ず今期、俺達のLo10のルールとしては、自己判断で行動、名前を絶対に明かさない。これは確定して欲しい」


「……俺はそれでいいが、他は何かあるのか?」


「後は、そうだな、指名手配は個人の感情や考えではしない、悪用したり私怨でされても困る、NPCの神罰もそう」


 持っている権限を悪用する事は簡単だ。

 しかしその権限を使う事で、自分達の首を絞める事にもつながる為、簡単に使えない様にする事を提案する。


「指名手配をする場合はここに集まって過半数を取る、くらいか」


「オーケー、それは必要なルールだ」


 その意見には全員が賛同した。

 他にルールが欲しいか尋ねるが、今の所思い浮かぶ事がない様で意見はない。


「ルールとは違うけど、何かあった時はどうするんですか?」


「何かってなんだ?」


「例えば戦争が始まるとか、何か起きるとか」


「それは……、どうする事も出来ないと思う。

 それこそ何か組織を作り上げるとか?」


 結局は個人で頑張るしかない。

 ただバルトハイネも危機的な状況に遭遇した時を思うと、何らかの組織は必要なのではないかと思った。

 現状伝手はなく、例え情報を得ても伝える相手も打つ手も無い。


「…本当になんで俺が選ばれたんだか、はぁ、誰かを任命出来る術はない物か」


 愚痴をこぼしているが、頭の中では対策を幾つか思い浮かべていた。

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