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嫌がらせ少女は大志を抱けない。~めっちゃ強い少女はただ無双する事が出来れば良いなぁって思いました~  作者: せいゆ


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百歩進んでニ十歩くらい下がって その7



 プリスターは差し伸べたその手を取る。

 しかし突然空から一筋の光が戦場へ降り注いだ。


「ん?」


 誰もがその光を見上げる。

 次の瞬間空から赤い装束を纏った――。


「忍者!?」


「アイエエエ!?」


 ミナモが奇声を上げる。

 マスクなどをした忍者が三十名以上空から降下してくる。

 それはプレイヤーたちであった。


「な、何者だ!?」


 NPC達が驚愕し、襲い掛かるが、一瞬でその首が身体から別たれた。


「首切りです!」


 サラナは興奮しながら叫び、そのノリについていけないミナモが呆ける。


「なんなんアイツ等…」


 忍者はばっさばっさとなぎ倒して行く。

 突然の事に驚くが、その倒し様は爽快であった。


「ニンぽっ、トトン!」


 土埃が舞い上がる。

 その土埃の中ある忍者が目を閉じ意識を集中する。

 そして近づいてきた気配へ必殺の一撃を放った。


「イヤッ!」


 その気合の籠った声の後。


「なにしてるネ!」


「しまたデござる!」


 聖獣を細切れになった。


「アヤァァァァ!?」


 鶏肉のみじん切りである。

 羽が混ざり食べた物ではないが、肉塊になった聖獣はもう息絶えていた。


「な、なにやっとんだぁぁ!?」


 仲間にどやされる。

 周りから蹴られ殴られ、酷い状況だ。


「くっ付けばまだいけるよ」


「急げ急げ」


 慌ててくっ付けようとするが、既にこと切れており、元には戻らない。


「えぇ…」


 皆が一斉に同じような反応をしていた、ただただ途方に暮れて奇跡に縋る様に。

 聖獣をミンチにした忍者へ視線が突き刺さる。


「ごめんちょ」


 切った者はてへぺろっと笑みと舌を出して誤魔化す。

 それに連動してか、聖獣の肉もさらに崩れていった。


「レアモンス、どうするよ!」


「金づる!」


「お前身体売ってこい!」


「ファ〇〇!!」


「ああ、もう、滅茶苦茶だよ」


 ミナモは適当に情報を集めていき、急いで撤収準備を始めた。

 プリスターを脇に抱え、視線でカルフにイトウを持つように訴えかける。

 一瞬で姿が消え、一蹴りで彼等から距離を取る。


「せ、聖獣様は?」


「あれは無理だね、もうドロップ品だよ」


「なぜ逃げるのですか?」


 サラナは情報だけを手にするならば話しかけるのが良いと思った。

 しかしミナモはその意思が相手に無い事を察している。


「あれは会話が通じないと思う。

 それに戦闘は避けたい」


 その証拠に、NPCが壊滅したのだが、ミナモ達が居た場所へと爆弾が投下されて爆発する。

 既に去った所だが、先程までいた場所を遠目に見ていたプリスター達は、目を見開き驚いていた。


「しくったなぁ、追撃してくるよ」


 おまけに透明化していても、周りの大気の具合などで、ある程度の位置を確認し、火縄銃らしきもので打ち抜いて来る。

 無論当たるわけはないが、その銃弾で小さなクレーターが一つ出来上がった。


「――――め、滅茶苦茶です!?」


「ふ~む、困った困った」


 この世界での戦闘はできない。

 あくまで漏れ出る力で影響を与えないようにしただけで、一たび攻撃に移れば再び世界が物理的に震撼する。


「お嬢様、わたくしが―――」


「駄目、今のカルフでも駄目、絶対に被害が大きくなる。

 君が思っている以上に力が膨れ上がってるから」


 カルフは引き下がり、このまま転移で逃げること考える。

 しかしそれも問題があった。


「多分転移追跡もしてきそうだし、何かいい手はないものか」


 転移を追尾する事は容易だ。

 ミナモは決め手がない事が歯がゆく唸り出す。


「…あの転移装置は使えませんか?」


「転移装置? ……ああ、あれか」


 古代遺跡の転移装置、それを使えば間違いなく撒けるだろう。

 入った瞬間全く別な世界へ飛ばされてしまうのだから。


「君等、覚悟して、って言っても、出来ないよねぇ」


「か、覚悟ですか?」


「装置による移動は追跡され辛い、しかもランダムならば猶更。

 で、だ。

 ……正直私達は無事でも、君達二人が確実に無事じゃなくなる。

 一緒に飛べる可能性も低い、というか無い」


「ど、何処へ飛ぶ?」


「異世界」


「えっ」


「安全な場所って、ないです、よね?」


「無理だなぁ」


 このまま転移して、安全な場所で迎撃もできるが、咄嗟に移動する先は基本的に街の中が基本だ。

 その世界のランダムな場所にも可能だが、街中に出てしまう可能性もある。


「さて、じゃあ覚悟はできたかな?」


 谷に落下し、崩れた入り口へ飛び込む。

 そしてフレンド申請を二人へ送った。


「話せるなら、運が良ければ助けに行ける」


「や、やばいんですよね?」


 プリスターは覚悟など出来ていない。


「このまま死んでリスキルされるかどうか、異世界の危ない場所を彷徨って、ワンチャン強くなるか」


「リスキルって、リスポーン場所を特定してって事ですよね?」


「私は出来る、彼等も出来ると仮定した方が良い」


「くぅ…、行くしかないですよね」


 プリスターの了承も取った。

 そして転移装置の場所にも辿り着いた。

 相手も入り口へと辿り着き、いともたやすく崩れた岩などを退けて中へと入って来ていた。

 ミナモは転移装置の上に乗り。


「ナムサン」


 転移装置に魔力を流して転移していった。


 ☆☆☆


 プリスターは燃えるような世界へ投げ出された。

 燃えるようなではない、そもそももう既に燃えているのだ。


「な、なに!?」


 HPが見る見るうちに減っていき、身に着けている物も燃え尽きていく。

 そして体力が底をつき、リスポーン地点へと戻る事になった。

 視界が暗転し。


「わ!?」


 再び火が付き燃え上がる。

 急いでミナモへ助けを呼ぶために、フレンドチャットから連絡を試みる。


「姫! 助けて!」


「何処に居るの?」


「燃えてる! 燃えてすぐ死んじゃうの!」


「まあ落ち着いて、リアルにダメージは無いんだから。

 何か見えない?」


「えっと、えっと、……えっと」


 燃え尽きて暗くなり、その間に見えないか調べるが、そこに映るのは燃え盛る火柱くらいだ。


「火柱の様な物が、見えるような、見えない様な…」


「う~ん、太陽の中ぽくないし、空の色も分からない?」


「ごめん…」


「私が記憶している場所に該当する場所がないなぁ」


「あ、…何か動いてる」


「む?」


 プリスターは燃え尽きている時、画面の端に映った何かを見つける。

 そして死んでは凝視し、それを繰り返していると、それが生物の様に動いている事が分かった。


「動いてる…生きてる。

 火に、手足がある感じ」


「手足が、…ごめんやっぱり分からないや」


 やはり覚えのない生物で、ミナモは新たに世界を探索する事を迫られそうであった。


「どうしよう…」


「こうならったらその世界で修行かな。

 結構スパルタになるけど」


「修行、強くなれるんですか? すぐに死んじゃうのに」


「肉体に耐性ついて来ると思う、ただし、ただ死んでるんじゃなくて、試行錯誤しながらじゃないと耐性はつかないよ」


「試行錯誤、…サラナさんの様にサイコキネシスみたいな感じで避ける、とか?」


「寧ろ取り込むイメージかな。

 種族事変わる勢いで」


「変わるんですか? あ、いえ、確かアンデッドになった人もいらっしゃいましたよね」


「そうだね。

 そして丁度良いんじゃないかな、強くなるには」


「……やってみます」


 プリスターはこのピンチはチャンスだと思った。

 このままゲームを辞めるのは容易い、しかしこの状況は欲している力を得られる確実なチャンスとも思えていた。


「暇なら私が話し相手になるよ。

 それと並行して検索もするから、ちょっと首を長くして待ってて」


「分かりましたっ!」


 プリスターは気合を入れた。

 そして話に出たサラナは水の中へと沈んで行っていた。


「ミナモさん! 沈んでます!」


「…そっちは水?」


「はい! うわっ、さ、魚大きい!?」


 その魚が餌だと勘違いし、サラナを食い破った。


「わー! 死んだ!」


 そして死んでも海の中から再スタートとなる。


「敵見つけたら画像を送って」


「分かりました」


 人形がなくなり、再び肉塊となって海に漂う。

 それは魚から見れば絶好な餌でしかない。


「き、来た!」


 早速撮影し、腹の中に入りながらミナモに撮影した画像を送った。


「…知らない水の世界だと思う、…もしかしたら、あの転移魔法だと結構シビアな所に送られるのかもしれない」


「ええ!?」


「プリスターちゃんにも言ったけど、その世界に適応するには良いかもしれない。

 進化したり、身体を自在に動かすのにも水の中は最適だろうし」


「死に続けろと!?」


「ピンチに力を発揮して強くなってほしい。

 …話し相手にはなるし、ある意味普通にやるより早く成長はするよ」


「くぅ~、…私がアイディアを出したとはいえ、…昔の私を恨みますっ!」


 それで通信が終わり、二人の奮闘が始まった。

 そしてミナモも、真っ暗闇の森に一人降り立つ。


「これはこれ、少し楽しそうになりそうです」


 周りには黒い狼が群がる。

 先ほどの忍者なんかと比較にならないほど強力な化け物。

 腕の中に仕舞われていたボロボロの剣を取り出し、顔を歪ませて殴り掛かった。


(イトウさんも別々だろうな…。

 カルフは別に大丈夫だろうし、寧ろ体の感覚を正常にするには丁度良いか)


 その言葉通り、カルフもまた綺麗な空の上で、天使の様な生物に襲われ撃退していた。

 久しぶりに暴れる感覚に、彼女もまた口端を釣り上げていた。


「定時連絡ー」


 ミナモは定時ではないが、事の次第をハルシーへと伝えた。


「なんと言う事…」


「死ぬは想定外?」


「ええ、まあ。

 しかし考えようによっては何かしらの計画を失策させたとも、…見ますが」


「そうか、死体も何かに利用できる可能性があるか…」


 シェーロ達とのやり取りで、討ち死体を何かに利用可能な事を思い出した。


「それでどうする?」


「報酬はこちらに来てから、…そして可能ならば一体攫いたいところですね。

 殺害しても構いませんが、遺体の回収をお願いします」


「了解。

 …と言っても、な~んか、ちょっと、まずいかも」


 ミナモの不味いという言葉はハルシーは強く警戒した。


「どうしました?」


「これ、この感じ、…絶対にガイアと同じ気配、同格、…簡単に帰られないかも」


「ガイア? …神の名前ですか?」


「通話きる、なんかまずい」


 不穏な気配を感じ、会話を中断して周囲を見回す。

 手加減の装備など使っている余裕はなく、ボロボロの剣を地面に突き刺し身構える。

 胸元の時計に手を置き、もう片方の手で触手を展開した。

 そして目を開いた途端に事が動いた。


(空間が断絶された…)


 暗い空間が覆い、そして伸ばした触手が絶たれる。

 胸元の時計にある上部のボタンを押せば、世界がぐっと遅く、そして止まりかける。


(時間停止で止まってくれる相手じゃないだろうけど…)


 ミナモの予想通りに暗闇の中で何かが動き、身構えていた腕が消し飛ぶ。

 しかしその攻撃された一瞬で相手を蹴り飛ばす事に成功する。


(辛うじて見えた、気がする)


 条件反射で蹴り飛ばしたが、目では追えていない。

 さらに意識を集中すると、頭上から闇の雨が降り注ぎ、それをするりと流れる様に避けながら気配の元へと走り出した。

 再生しない腕から魔力の腕を伸ばすが、突然魔力の腕がかき消され、そのかき消された不思議な力が襲い掛かる。

 見えない力はミナモを捕らえ、地面にたたきつけて踏みつぶそうと迫る。


(加減されてる)


 潰そうと思えば一瞬で倒せる相手であるが、試されているのかミナモを殺そうとしない。

 それを利用して、一瞬力を膨れ上がらせてその拘束から逃れる。

 ミナモが一歩踏み出すと、幻影が揺らぎそれがどんどんと広がり相手へと襲い掛かる。

 どれも本物と言えるほどで、相手もそれに少し惑わされたのか、一部の幻影に手を伸ばしては怪しい幻影へと攻撃していた。

 そしてミナモはやっとその人物を目視に成功した。


(コイツ、…多分エレボス)


 その見た目は闇の衣を纏った、神経質そうな男性であった。

 オールバッグの黒髪と、細い目がミナモを捉える。

 見た瞬間後ろから気配を感じ、いつの間にか首根っこを摑まえられる。


(終わった…、最悪どっかに監禁されるかも)


 殺すならば良いが、捕らえられると脱出に難がある。

 ミナモは不貞腐れた様な表情を相手へと向けた。

 男は訝しむ様にミナモを見て、そして臭いを嗅ぐ。


「ガイアの臭い、…お前、ガイアの娘か?」


「違う、しばかれて、変なの飲まされた」


「ならガイアの娘だ」


(どういう裁定なんだよ…)


 男はミナモを脇に抱え、一瞬で転移で移動する。

 そこは何処かの暗闇の城であった。

 薄暗くしっとりとした闇が絡みつく、そんな不思議な場所である。

 闇の帳の廊下から金細工の付いた黒い空の扉を開け、その中へ踏み入る。

 その先に居るのは、美しい女性、闇のドレスを纏った光の様な方である。


(多分ニュクス…)


 男、エレボスと同格という事が気配で分かる。

 その女性、ニュクスはニコニコと微笑み手で招かれる。

 エレボスは彼女の前に移動すると、ニュクスの膝の上にミナモを置いた。


「可愛いガイアの娘ねぇ」


 わしわしと頭を撫でられ、ミナモは軽く会釈をした。


「ど、どうも」


 頬に触れられ、引っ張られもみくちゃにされてニュクスが尋ねた。


「ガイアは元気?」


「はい…、冥界で書類仕事に追われています」


「あはは、何時も通りなのねぇ。

 それでお名前は?」


「ミナモと申します。

 失礼ですが、ニュクス様と、エレボス様、で、宜しいでしょうか?」


「正解」


 もにゅもにゅと何故か頬を揉まれ、ただ弄られる。

 ただ弄っているだけなのだろうが、ミナモはあまり生きた心地がしなかった。


「あのぉ、娘と言われまして、よく分からないのですが」


「ガイアはそう言う所があるから、大変ねぇ。

 姪でもあるんだから、そんなかしこまらなくてもいいのよ」


 当人は緊張をほぐす為に揉んでいるのだが、ミナモは困惑するだけだ。


「初対面の御方には緊張してしまって」


 相手が何を考えているのか、神という存在の理解が出来ずに困っていた。

 エレボスが襲ってきた理由も分からないのだ、警戒しない方が無理である。


「じゃあミナモの事を教えて貰おうかなぁ」


 優し気なまなざしで尋ね、どうしてもその視線に警戒心が和らいだ。


「色々と旅をしているんです、武者修行の旅です」


「若いのねぇ」


「色んな所に喧嘩を売りに行っています。

 目指すはガイアと渡り合えることです」


「あらぁ」


 楽しそうにニュクスは頭を撫で、何処からともなく用意した黒い液体の哺乳瓶を手に取った。


「…それは?」


「あ~ん」


「え?」


「あ~ん」


 口を開ける様に促され、恐る恐る口を開けば、その哺乳瓶を口の中へと入れられた。

 飲めと言わんばかりに微笑み、ミナモは初めての授乳プレイをその身で体験する事になった。

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