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嫌がらせ少女は大志を抱けない。~めっちゃ強い少女はただ無双する事が出来れば良いなぁって思いました~  作者: せいゆ


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百歩進んでニ十歩くらい下がって その1



 チャプター1の終幕。

 その情報は瞬く間に広がった。

 章自体に分けられている事自体が初耳で、それが先の混乱が終幕に導くイベントであった事にも驚き、スケールの大きな話に頷くしかなかった。

 そして次の章も間違いなく同程度のイベントが起きる事を意味し、それに備えた対処をする必要があった。


「ミナモさんは章分けされていた事を知っていましたか?」


「いや、知らん、なにそれ、こわ…」


 茶化した様な言葉であるが、本当に知らないようで困惑している。


「ふむ、なら先の様な厄ネタは?」


「一応色々あるけど…」


 色々、その言葉にハルシーは頭を抱えそうになるが、その問題を知ることが重要で止まっている暇はない。


「それはあの世界で?」


「いんや、他の」


「それらが他の世界に干渉があるの事も?」


「あるねぇ、無いのもあるけど、何時かは影響が出るっていうのがある程度あるかな」


「なるほど、それは少し情報を他に流す必要がありますね」


「解決できるなら良いけどね」


「他の世界の技術などを利用して未然に防ぐ、そういうシナリオ。…なら良いんですけど」


「う~ん、まあ、確かにそういう組み合わせならいける、かも?」


「それだけ聞ければ十分です。が、…問題は探索するプレイヤーですか」


「あの人が行けば? メンタル壊れて駄目になってる?

 相棒さんはそこで寝転がってるけど」


 ゴトウは大の字に寝転がり退屈そうにしていた。

 一度メルテトブルクの様子を見に行っており、駄目な事を確信して戻って来た。


「彼は適任でしょう、普通のプレイヤーが何処まで行けるのか、それを確かめる上でも間違いなく適任。

 NPCを師弟に鍛えるというのにも貢献してくれるでしょう」


「下手なのだとアウトセンスというか、そう言う壁突破できないよ」


「頑張ってもらいます」


「師弟? そう言うシステムあるの?」


 ゴトウは気になる単語に起き上がる。


「要は指導ですね、アウトセンスをNPC視点から指導してもらい壁を取っ払う役割を担ってもらう」


「ほほぅ。

 誰でも良いってわけじゃないんだろ?」


「ええ、だからこそ情報収集が一番、まあ、出会っても稽古を付けてくれるかはまた別だけど」


「…手当たり次第じゃ駄目か」


「でも手当たり次第で試すのも一つ。

 まあ、見極めか、誰か相手の実力を看破できる奴が近くに居れば別だけど」


 視線がミナモに集まるが、鼻で笑い手を振った。


「自分で探しなぁ」


「うえぇぇん、ミナモちゃんが虐めたぁ」


「よーしよし、近づくと噛まれちゃいますからねぇ」


「ガウガウッ」


 適当に茶化して師弟関連の話は終わった。


「んで、シェドって子は何処行ったの?」


「さあ?」


「多分自分を見つめ直しに行ったんじゃないですかね、今回の事で色々とありましたし」


「なるほど」


「それで」


「ん?」


「ミナモさんのその姿は何ですか?」


「本体だよ」


 ミナモの姿はメルテトブルクに降臨した際の姿だ。


「なんか分体が作れなくなったんだよ、アイツに細工されたみたい」


 分体での活動をしようとしたのだが、分体を作ろうとするとメニューを表示する様にウインドーが現れて、デフォルメされたガイアが表示されて手をクロスさせて拒否を示す。


「…大丈夫なんですか?」


 訝しむ様にハルシーが眺めるが、ミナモは首を横に振った。


「意識して抑えないといけない。

 まあ、この世界なら耐久性が高いから大丈夫だけど」


「はぁ、それは幸いです。

 して、どれくらい大丈夫なんですか?」


「戦闘は駄目だね、軽く力を使おうとした段階でヤバい」


「ですのでわたくしがお嬢様の運搬を担当します」


 カルフはミナモを抱えている事が大変満足した様子である。


「…因みにどっちも本体なのでやばいよー」


「火薬庫すぎるっ!」


 ハルシーは普段突っ込みはしない、そんな彼女が渋い顔をして突っ込んだ。

 暇だろうから、雑用を押し付けようとしていたが、それすらできないのだ。


「ジリジリ精神異常デバフが付いては消えてを繰り返してるんだけど」


「何分この窮屈な肉体を維持し続けるのも大変な物で」


 可愛らしく照れるカルフであるが、状況は最悪であった。


「これも一つの修行って事にしようか、繊細な技術を身に着けるっていうアイツの試練だろうし。

 そう言う意味では私の師匠はアイツか」


「とんでもない方ですね」


「一生関わり合いにならない方が良いよ。

 まあ、冥界だし簡単には行けないけど」


「因みにどうやって冥界に?」


「よく分からん神に喧嘩売って最後っ屁にねぇ」


「よく分からんのに喧嘩売るなよ。

 TRPGだとどんな特性の神なのか下調べして、対策たててがセオリーなのに」


「良いの良いの、互いに知らない状態で殴り合うのがフェアだろうし」


「脳筋かよ」


「時と場所によるよ、格上は対策に対策を練らんと無理だし」


「俺達がそこに辿り着く事は可能なのか?」


 それは突然現れたシェドの言葉だ。


「行けるでしょ、まあ、このゲームサ終が先だろうけど。

 プレイヤーの大半はもう萎えてるでしょ」


 ミナモはこのゲームの寿命がもう殆ど無いとすら思っている。

 手も足も出ない状態で拠点が滅茶苦茶にされたのだ、受けるダメージが大きいだろう。


「それはどうもうまくサ終を回避できそうですよ」


「はぁ? マジ?」


 思わぬ返しに目を丸くしたが、その反動で空間が少し歪む。


「ミ、ミナモさん」


「う、うわぁ、ゆ、ゆれ、る」


「うぐっ、くっそがぁ、感情の揺らぎすら許さんのか」


 引きつった顔をしながら空間を修復して息を整える。

 無理矢理穏やかな顔を作るが、強張った状態であった。


「そ、それで、な、何故、…生きてるんだい?」


「プレイヤーという視点から見れば、やっと物語が始まったという事です。

 大災害、不思議な光景と、世界の異変、新天地の気配とチャプターの開始という事です」


「ええ?

 あんな事起きてて?」


「あんなことが起きているからです。

 強いプレイヤーの存在が異世界を示唆した。

 さらに分からないNPC達が世界の危機に追いやったらり救ったりというのが一般的な認識です。

 大半はもうメルテトブルクはただの踏み台としか思っていませんよ」


「…そうらしい」


「あ、ありえん、誰かが世論を誘導している、絶対にありえん」


「陰謀論者みたいな事を言わないでください。

 …とは言っても、本当にありえないわけでもなさそうですね」


 世論の誘導をする存在は心当たりがあった。


「ギルド?」


「それもありますが、今まで続けていた者が、ここでオワコンにさせたいとは思わないでしょうし、無理に擁護するでしょう」


「あ~」


 世論を誘導する者とさらにそれに乗っかる者、そして誘導させる者達。

 ゲームから離脱している者達は少数に収まっている様であった。


「だから踏み台、とされています」


「踏み台?」


「巣立ちの為の、ですかね」


 シェドもメルテトブルクが既に過去の物に成っている事を少しずつ受け入れていた。


「なるほどねぇ、色々家とか苦労して手に入れただろうに」


「それは本当にごく一部、失ってやめる者も居ますけど、ギルドが防げるフラグがあったという噂を流していますから、上手く舵が切れたのでしょう。

 新規プレイヤーの開始地点が少し前から変わっていたというのも大きく響いてます」


「初期リスポーン地点が変わるって言うのは思ったよりも大きいらしい。

 変わった時点でそちらへ移行するのだろうと動き出していた。

 俺は気付けなかったよ…」


「小さな流出でも、どんどんと増えて行けば大きな流れになりますからね」


 動きについては他にもある。


「ああ、そうでした、大きな動きと言えばLo10、アンダーグランドが解散されました」


「ふ~ん」


「興味がなさそうですが、一般では結構な話題ですよ。

 正式に発表されているというわけではありませんが、チャプターの節目という観点からそう推測されているのでしょう」


「確定なのか?」


「ええ、今は混乱を避けるために発表はされてませんが」


「次はどんな人がなるんだろうな」


「最初は活躍していた者という条件でしたが、…次はどうなることやら」


 この場に居るミナモ以外は、活躍と言われて真っ先に浮かぶのはミナモが暴れる姿だ。

 しかし本人は相当興味が無さそうで、例え選出されても仕事としてやることは無いだろう。


「すでに選出されているのか、それとももう少し時間がかかるのか、これから探すのは聊か時間が必要ですね」


 情報収集にミナモも動いて欲しかったが、今は下手に動かれても困る。

 しかしそれを察してかミナモは小悪魔的な笑みを浮かべて。


「よ~し、おじさん張り切って新しい人たち探すぞぉ」


「やめてください、本当に」


「え~、でもなぁ、動き回りたいしなぁ、身体も慣れないといけないし」


「先ほどの状態を忘れた――、いえ、だからやりたいのでしょうけど…」


「じゃあ、従魔を育てたらどうだ?」


「…一喜一憂しないのなら」


「う~ん、するかも」


 そんな中カルフは一つの提案をした。


「矮小な魚風情よりも私をお育てになりませんか?」


「ほぅ、一体どのように?」


「お嬢様とぐんずほぐれつ、まぐわいを」


「まあ、平和的にイトウさんを鍛えてあげるしかないし、そっちに行こうかねぇ」


 自己PRを説明しているが、カルフの説明を聞く耳を持たないミナモ。


「そう言えば従魔と言えば蘇生は出来るようになったのですか?」


「蘇生ねぇ…」


 ミナモの反応は悪い。

 従魔を蘇生する事は従魔ギルドでしかできない。情報屋などが従魔ギルドで蘇生を学ぼうとチャレンジしているが蘇生は門外不出の秘術となっていた。


「その反応、何か知ってるんですか?」


「原理としては、テイムすると魂を固定化? う~ん、なんていうか、冥界に送られる事無く、主人の周りに固定化されるというか」


「ああ、憑りつくっていう事ですか」


「そうそれ、その憑りついた状態で、肉体に入れてって感じなんだけど」


「…なんだけど?」


「不思議と失敗するんだよ。

 例え肉体が完璧だったとしても、NPCも生き返ってるのに、従魔だけは駄目」


「よく分からない理屈ですね」


「な~んかNPCとかPC達と違う感じ」


「従魔は例外、となると、やっぱり少し特殊なのでしょうね」


「じゃあまあ、その特殊な子を叩き起こしに行きますわぁ」


 異世界にもテイマーギルドが存在する。

 ミナモが立ち入れる世界は限定される為、その中から適当な場所で蘇生させる。


(う~ん、異空間というか、そう言う場所に魂が収納されてるんだろうなぁ。

 『視れ』ば早いが、ずるはずるか)


 ミナモの目は何でも見通す目だ。

 これで調べれば早いが、それをするのはポリシーに反する、攻略できるものは極力使わないのがルールである。

 その為最近使用する機会が増え自重を心掛けていた。


「イトウさんや、今日から君が一段と頑張らないといけないよ」


 知ってか知らずか、イトウは何時もと変わらない。

 早速引き連れ、適当な世界へと転移した。


「のどか…」


 喉かな昼下がり、青空の下で寝転がり、ミナモはただ呆ける。

 しかしこめかみには筋が出ており、心をしっかりと保っていないと無意識に力が漏れ出そうであった。


(…これ、いつまで続けるんだ)


 只管抑える事が苦痛だ。

 暴れ回ったその代償でもあるが、この行為にかなりのストレスを感じてしまう。


「…何か修業して手っ取り早く操れねぇかなぁ」


 愚痴を呟けば、カルフが一緒に悩み始め、一つの案を提示した。


「では逆に暴れて力の感覚を理解するというのはどうでしょうか?」


「あ~、それも良いねぇ」


 身を起こし、身体を動かすと、つられてカルフも準備運動を始めた。


「どっかに喧嘩売りに行こうか、なんか適当に」


「それがよろしいかと」


 カルフはミナモのストッパーである。

 近しいNPC、特に頭のねじが外れている者でも、ミナモの行為は頭がおかしい。

 力のある存在に殴り込み、破れても只管笑みを浮かべて戦いに挑む、戦闘の際に世界に与える影響など考慮せずに挑むのだ。

 アクセルを踏まない場所でも踏み、格上の相手であっても何回も挑む。


「ガイアに殴り込もう」


「え…」


「何度も相手にしてくれるのはあの頭のいかれた奴だけだし」


 カルフは自分が外れた側だと自負している。しかし内心ミナモの方が異常という事を思い、自分は正常の内なのではないかという考えすら浮かんでいた。


「流石に段階を飛ばし過ぎかと…」


「う~ん、…なんか嫌がらせしたいんだよなぁ。

 やられっぱなしって言うのも癪だし」


 異常と思っていても、その異常な行動にカルフは興奮を覚える。

 ただ反する様に、心落ち着かせ、大樹の様に静かにして欲しいと願う。


「では適当な世界、耐えられるほどの世界で力を開放し続けましょう。

 準備運動です」


 さりげなく誘導する。


「ふ~む、まあ、そうしてみるか」


 ミナモはその案を受け入れ、イトウを泡で包む。


「一応危険かもしれないからねぇ」


 そしてミナモは異世界へランダムで飛ぶ転移魔法を使った。

 様々な世界に移動できる、無論空気の無いただの惑星であっても。

 一瞬で世界が変わり、そこは見慣れない青々とした樹海であった。

 文字通りの青を基調とした森だ。


「ほへぇ、ファンタジーぽい綺麗な世界」


 それは宝石とも言える綺麗な空色。

 全てが氷や宝石の水晶で出来た樹木が伸びている。

 草木、地面までも樹木で、触れれば感触は見目と同じ。


「やっぱりこういう所良いよねぇ」


 ミナモは背を伸ばし、その場に寝ころぶ。

 これまであまりにも普通の異世界ばかりで、この様な奇抜な世界は数が少ない。

 迷い込んだのは不思議な絵本の世界。それは待ちに待った作品を映画館で見る様な気分だ。


「カルフも寝転んでみなよ」


 若干渋い顔をしていたカルフは、言われた通りに寝ころんだ。

 力を抜けば漏れ出るミナモ自身のオーラが伸びていく、最初の世界ではすでに影響が出るはずだが、この世界ではその力にびくともしない。


「結構強い神様でも居たのかねぇ」


「かもしれませんね」


「神の数、あるいは強さで世界の耐久性が決まる。

 …あの世界に居ないのがちょっとおかしい話ではあるけれど」


 世界の耐久性は神々によって決まる。

 何かしらの神が長く居続ければメルシュ王国があった世界も、今居る世界同様に強固になるかもしれない。

 世界にレベルがあるような感じだ。


「はー、やっぱり楽だわぁ、先の神々に感謝」


 ミナモは目を細めて背を伸ばし楽をする。

 カルフも力を抜けば、ミナモ同様に力が漏れ出すが、その顔はやはり浮かない。


「どうかしたの?」


「……いえ、なんでもありません」


 カルフは内心思った。


(この森、狂気に染まっている。

 この感覚、他の者達が踏み込めば発狂する、多分この世界自体が異常なはず)


 カルフには一切影響はないが、雰囲気が禍々しさを醸し出していた。

 同系統の力を感じ、この世界は『ナニカ』に支配された後の世界である。

 そういう意味で少し警戒したが、ミナモの様子から、支配者は格下という事が分かる。


(まあ、私も問題ない範囲ですし、丁度良い世界でしょう)


 表情が和らぎ、目を閉じてリラックスしていく。

 ミナモは久しぶりの解放感に一つのひらめきが駆け巡った。


「あっ、なんとかなるかも」


 本当に突然である。

 カルフが首をかしげると同時に雰囲気が変わっていく。


「なにがでしょうか?」


「無理矢理閉じ込めてたけど、別なアプローチをしてみようかと。

 ずばり、押し込めるではなく、形作る」


 全てを解放するように力を開放する。

 そしてその漏れ出たものを凝固する様に収縮させ形となしていく。

 見る見るうちに服の様に変わっていき、ミナモの身体も小さな変化が起きる。

 髪はその世界の色に染まり、緩んだ髪が纏まり三つ編みを編んでいく。

 着衣はフード付きの真っ青な合羽の様なローブへ、フードには兎の耳がピン伸びて途中で垂れ下がっていた。


「結構変わるなぁ」


 ローブの裾は地面に付くほど長く、そして中からは青い夜空に煌めく星々があしらわれたフリルが伸びていた。

 背の光輪は青く不思議なヘイローへ変わり、羽衣が首へと下がり、空の色から夜の帳が降りる様に紫色へと変色していった。


「嗚呼、なんか良い気分」


 丸渕の眼鏡が装着され、うっすらと時計の数値と針が浮かぶ。

 どこらかしこにフリルが施され。金細工の腕時計なども所々に取り付けられていた。

 胸元には大きな時計のアクセサリと、羽衣などには金色の文字で数が描かれている。

 一見すると可愛らしい不思議な国の兎の様であった。


「じゃーん、できちゃいました」


「お、おめでとうございます」


 変化した身体を確認し、手を上げるとその裾の中から青々とした複数の触手が伸びる。一本一本腕と同じほどの細さがある。


「ほへぇ」


 そして自在に動かしつつ、まだ慣れない感覚に目を細め意識を集中する。

 普通の小さな手もあり、裾を触手でまくって手を露出させる。


「これ便利かも、慣れないと」


 きゃっきゃと燥ぐミナモを見て、カルフは素直に可愛いとも思った。思ったが『普通』を思い出して、何故そんな肉体が怪異した状態を受け入れているのか、カオスな存在に身もだえもする。


「じゃあ今度はカルフがやってみよう」


「わたくしはそこまで器用には」


「大丈夫大丈夫」


 カルフに馬乗りなると、カルフは異常なまでに興奮し始める。

 ミナモはそんな事を余所に身体をつっと指でなぞり始めた。


「集中して」


「ひゃ、ひゃあい!」


 集中など出来ない。

 しかし無理矢理集められるカルフの力と、ミナモの力に興奮しながらも、操り切れない力の感覚を強制的に感じさせられる。

 それがどんどんと纏っていき、肉体の変化と立派なメイド服に変わった。

 角が大きく身体が若干小さくなり、どことなく人間味が増していた。


「…不思議なものです」


 沸き上がる力と、心地よい感覚に、自分の進化を感じた。

 今までは霧の様に伸びていた力が、芯から形成され骨になる様な感覚を覚える。


「分かれば簡単だねぇ。

 よくできました」


 頭を撫でられる。

 しかしカルフにとってはその行為は劇物、媚薬も薬も効果が強ければ毒でしかない。

 興奮のあまり仰け反った。


「―――あっ」


 無言で仰け反り、ブリッジ状になったのだが、その時視界に入った紅一点にカルフは声を上げる。


「ん?」


 釣られてそちらを見て、ミナモの顔が強張った。

 そこにあるのは血の泡。

 泡となるのは無論、この世界に一緒に来ていた。


「い、いとう、さん?」

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