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嫌がらせ少女は大志を抱けない。~めっちゃ強い少女はただ無双する事が出来れば良いなぁって思いました~  作者: せいゆ


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おい、今この情報特価セール中だぞ! その7



 テンションの落ちているシェドと諦め一周周って楽天的になっているゴトウを連れて情報屋の扉を潜った。


「やっほー」


 中には数名の来客が居る。

 顔を隠している者やフードを被っていたり、その姿を完全に伏せているプレイヤー達も居る。


「どもども、取り込み中悪いねぇ」


 ハルシー以外のスタッフは奥に、ハルシーの居るフロアに近づきたくない様であった。

 店の雰囲気は重苦しいが、ミナモはそんな雰囲気を吹き飛ばすような気楽な雰囲気を見せる。


「…丁度良い様な悪い様な、ミナモさんにお客様ですよ」


「はいはい、手短にどうぞ」


「では手短に話そう」


 代表者らしき仮面を付けた女性が一歩踏み出す。


「今回の事態、介入は止めていただきたい」


「おやおや、まあまあ、それで私に何か良い事でもあるのかい?」


 女性の後ろに居た人物が何処からともなく、ミナモが所持していたボロボロの封具を取り出しそれを差し出す。


「…ふむ」


 探していた物とは言え、突然降って湧いた事に少し驚くが、見つからなかった事にも合点がいった。

 ミナモはその剣を手に取り、目を閉じたまま確認をして胸に抱きよせ一息ついた。


「これが何か解って持ってたの?」


「いいえ、偶然手にしまして」


「良かったね使わなくて、これ多分一瞬で龍脈のエネルギー吸いつくしてたよ」


「またまた御冗談を」


「ふふふっ、分っちゃうかぁ」


 ミナモの返答は一切冗談だとは言っていない。その事が分かるのはハルシーくらいなものだ。


「して、何をしようとしているか尋ねても?」


「お答えできません」


「なるほど。それでそれ以外に釘を刺す事はしないんですか? 暴れちゃいますよ?」


「貴方が暴れても問題ございません、それ以上の戦力を既に有しています」


「ふ~む戦力は把握済みって事ですか」


 指でポツポツと唇に触れて少し考えると、答えを出したのかゆっくりと笑みを浮かべた。


「じゃあ私が戦闘狂という事は?」


「その傾向が強いとは聞き及んでおります」


「おやおや、それは困った。

 うん、良いよ、私は何もしないよ」


「ええ、そうしてくださいませ。

 そうでなければ全力で潰さなければなりません」


「怖い怖い」


 用件はそれだけの様で、彼等は去っていく。

 外に出て転移で消えたところでミナモは客席の椅子に座った。


「お嬢様、面白そうな玩具を手に入れたという顔はあまりよろしくないかと」


「え? そんな顔に出てた?」


「終始ニコニコとしておりましたよ」


「駄目だなぁ」


 顔をぐにぐにと弄り顔を元戻そうとするが、笑みが消える事は無かった。


「こちらにも被害が出ますのでおやめください」


 ハルシーは溜息をつき、向かいの席に座り背もたれに体を預けて天井を眺める。

 ストレスから解放された気分であるが、またストレスが再び湧いて来た事にしかめっ面に変わって行った。

 それを見たミナモは、少しだけ安心するかもしれない情報を提供する。


「大丈夫だよ、私は何もしないし、今回の件は別に何もしなくても破綻するから」


「破綻ですか?」


「あれってギルドの人達でしょ?」


「ええ、そうですけど…」


「彼等の行動原理は商売、だと思う。

 龍脈を利用してやる事に対しては既に把握してる。

 けどまさかあの細工がギルドのものとは思わなかったけど」


「一体何をしようというのですか?」


「龍脈を利用したゲートの制作、異世界に行ける事を大っぴらにしたいって所」


 ミナモはメルテトブルク周辺の状態を分かっていた。

 龍脈の異常なエネルギー、さらにはそれを利用しようとしている魔法陣の存在。

 さらにその魔法陣にされた細工や諸々、複雑に絡み合い一筋縄でいかないことをコツコツと調べていた。

 ただだれがどういった組織でどう動こうとしているかは正直把握しきれてはいない。無理難題なのだ。


「…なるほど、確かにそれは商売です、異世界の情報にアイテム、それは金になる事は間違いありません。

 しかし破綻とは?」


「例えばだけど、火球を作り出す魔法陣があるじゃん。

 山を三つ利用した三角型の」


「ありますね」


「それをある一定の大きさにすると魔法陣は意味を失うんだよ」


 ハルシーもシェド達も首を傾げた。


「つまり魔法陣は大きい程形を変えていかなくちゃいけない。

 円の大きさは規模、その規模によって同じ魔法でも違った紋様を記さないといけない。

 まあ、殆どの人はそんな大きな魔法陣なんて作らんけど」


 異世界へ転移する魔法陣というのはかなり繊細で難しい。

 少し弄れば魔法陣の紋様が変わり、行き先によっても変わる。

 まるで万華鏡の一瞬一瞬を描く様な器用さと、構造の理解をしなくてはならない。


「失敗の理由は分かりました」


「転移魔法は簡単な様で難しい、この情報屋に来る転移陣だって簡単に考えられてる様で意外と大変だからね」


 この情報屋は異世界に存在している。

 見つけた転移陣を利用し、気軽に移動してきているが、あくまで移動先が固定されているから楽なのだ。


「転移魔法については構成の詳細を知りたいですが、一先ず置いておいて。

 他にも龍脈を利用したい組織が居るはずなのに、ギルドは相当強い人達を雇ってるんでしょうかね?」


「微妙な所だな」


「でも先程は強いという事を口にしていましたけど」


「う~ん、多分革命家気取りのアイツ等からの情報源か、そいつらが関わってるんだろうけど。

 たいした強さは無いよ。

 寧ろ不味いんじゃないかな」


「え?」


「相手の強さを見誤ってるよ。

 脱走した冥界の奴等って腐っても神秘性の塊、要は神なんだよ、おまけに制限なく無理矢理この世界に顕現している。

 多分依り代として神器があるんだろうけど…、困ったもんだ」


「ちょっと待ってくれ、言ってる意味が分からん」


 シェドのツッコミにハルシーも頷く。


「要は激強の敵が本来ならこの世界に来れないくせに、神器っていう物を利用して現れちゃった。

 その神器を破壊しちゃうととんでもない爆発しちゃうよという話だったんじゃ」


「…あれ? さっき爆発云々言ってなかったような?」


「途轍もないエネルギーを秘めた相手という事ですよね?」


「そうだよ」


「ですが、何故その者達は自分で計画を行わないのですか? 龍脈なんて必要ないのでは?」


「龍脈は自然に多大な影響を与えている。だから直接色々しないといけないんだよ。

 彼等はこの世界の環境を変える事だから」


「待て待て、じゃあここに来る前に話した状況って、もうすぐ起こるって事なのか?」


「そうだねぇ、それはそれで面白いと思わない?」


 何処が、そんな事を心の中で誰も口にする。


「だって世界征服された状態から取り戻していくって王道じゃん」


「確かにそうですが…」


「平和と程遠い」


「まあ、運が良ければどうにかなるでしょ」


 ミナモが気楽にしているが、誰もその明るい未来への展望は見えなかった。


「真面目な話、これからどうすれば平和になるんだ? 復興は二の次として」


「二の次って」


 ゴトウの質問にミナモは少しだけ眉間に皺を寄せて考え始める。

 かなり難しい質問の様で一分ほど考え続けて、ゆっくりと口を開いた。


「…あー、…薄い線でするならば、今暴れ回ってるドラゴンを完全復活させて天使関係を撤退、そのままドラゴンが龍脈のエネルギーをもぎ取っていくパターン。

 とは言え、必ず冥界系のが手を出す」


「ドラゴンが勝つ事は無いのか?」


「相性が悪い。万に一つの可能性があるとは言い難い」


「相性ってのもあるのか」


「今のドラゴンはアンデッド、冥界系の奴等の得意分野さ」


「アンデッドじゃなくなればどうなんですか?」


「無理無理、全盛期の力があっても勝てないよ」


「全盛期? 知ってるんですか?」


「…まあ、ちょっと」


 言い辛そうにしてミナモはそっぽ向く。これ以上は答えないと察し、ハルシーは話題を変えた。


「……それでその件のドラゴンさんですが、絶賛食い荒らしている様ですね」


「あっ、そう言えばアバターロストとかっていう話はマジなのか?」


「ロスト? いえ、5~7割くらいのレベルが吸い取られてしまうという話は聞いてる程度です」


「おや。てっきりロストだと思ったけど」


「二度三度突貫すればその可能性はあるかもしれませんが、怖くて挑めないようですね」


「いやいやいや、何言ってんだ、十分脅威じゃねぇか。

 レベルロストって、長い時間をかけてあげたのが水の泡じゃねぇか!」


「別に良いじゃんレベルくらい」


「別にって…、問題だろ」


 ミナモは一切関心がない様で、レベルダウン現象の原理を考えていた。


「ああ、そう言う事か。

 原理としては納得できる、レベルロストというよりはドレインに近いかな。

 てっきり肉体事吸収されると思ったけど、必要に応じて一部排出される仕組みか」


「……少しお下品ですね」


「想像によってはそうだけど。

 様は魂が食えないし、食ったら影響しそうだから、エネルギーじゃなくて魔力を吸い上げて、さらに血肉を得ているってところかな」


「魂? ひょっとして、レベルや強さって魂に記憶されるみたいな設定?」


 ゴトウは推測した事を尋ねると、ミナモは頷き答えた。


「正解、従魔とかって倒されたりすると消えるじゃん。

 あれと同じ理屈だと思う、設定的にはプレイヤーもその枠なんじゃないかな」


「なるほど」


「それは面白い設定ですね。

 では何かしらの手段で魂というものに魔力や類似するエネルギーを注げばレベルを強制的にあげられるという事ですか?」


「できるだろうけど、難しいと思うなぁ」


「おい、お前ら完全にどうでもいいって風だが、人に寄っちゃ引退レベルだぞ」


「と、言われても…」


 シェドのツッコミはもっともだ。

 時間と努力をつぎ込んだ証こそレベルだ。それを失うというのは精神的に受けるダメージは大きい。


「…街だってそうだ、愛着があって」


 落ち込み様は大きく三人は何とも言えない雰囲気になってしまった。


「まあまあ、それは今後の展開、特にギルドの人達に任せよう。

 一先ず静観しましょう」


「手を打つって話はどうなったんだよ…」


「一応これを受け取った以上契約は遂行されたからね、それを破る事は出来ない。

 特にここに迷惑がかかりそうだし」


「すみませんねぇ…」


 ハルシーの情報屋もギルドという圧力には勝てない。


「けど、まあ、私が何もできないだけ」


 顔の向きをカルフに向ける。


「限定顕現でもしてみる?」


「わたくしは構いません、お嬢様の意思のままに」


 ミナモは持っていたボロボロの剣をシェドの前に差し出した。


「な、なに?」


「そんなに救いたいならこれを指定の場所まで持ってって、そして手順通りにしてみなよ」


「…どう、なるんだ?」


「自分で王国滅亡のトリガーを引くんだ」


 シェドは息を飲み一瞬だが手を伸ばし、すぐにひっこめた。


「駄目だ、…出来るわけがない」


「じゃあ世界滅亡だよ」


「…極端なんだよ」


「そりゃもう瀬戸際だからね。

 冥界の奴等が一番強くて、そして目的はあの世界を自分達の思い通りの世界に作り替える事。

 弱者は消え失せ、残るは混沌とした世界のみ」


 それが滅亡の先に起こる事。


「そして私の案は王国滅亡、その範囲のNPCの壊滅、しかし他が助かる」


 全てを救える選択など無いのだ。


「1割を犠牲にして9割を生かすか、全てを終わりにするか」


 お前はどうするんだ、シェドのそう訴える視線が集まる、しかしその尋ねが無駄だという事も分かってしまう。

 一瞬の逡巡の中で平穏に終わる未来を望んでしまっていた。


「このゲームが終わってしまうかもしれないんだぞ」


「一年以上も続けば大往生でしょ」


 ミナモの認識は数あるゲームの一つでしかない。次の日サービス終了となっても、心残りが幾つかある程度ですぐに次のゲームを探すだろう。

 思い入れの度合いが違う、認識の齟齬に寄ったとしても簡単には近づく事はない。


「…考えさせてくれ」


「どうぞ、他の人にも相談した方が良いかもね」


 ミナモは背もたれにもたれ掛かり、片目を開けてメルテトブルクの様子を眺め始めた。

 シェドは助けを求める様にゴトウに視線を向け。


「シェドさん、私も一を犠牲に多を助ける選択しかできませんよ」


 シェドは俯き頭を抱えてしまった。

 少ししても様子は変わらず、ハルシーが何かヒントでも得られないかとミナモに尋ねた。


「ミナモさん、一を犠牲にする方法の手段というのはどういうものなのですか?」


「具体的な感じ?

 まずはこの剣の中に満たしてある魔力を全消費させて、それから龍脈の魔力を入れるって感じ」


「その全消費で何とかならないんですか?」


「大陸事消し去る?」


「いえ、そんな物騒なものじゃなくて」


「う~ん、大量に消費して、…何かできたかな?」


 今度はミナモがカルフへと視線を向ける。

 しかしカルフも答えは変わらない。


「手っ取り早く安全な方法は、…ないですね。

 申し訳ございません」


「いいよいいよ」


「じゃあ大気を浄化するとか、花畑を作るとか」


「浄化しまくるのも毒だし、花畑は植物の浸食で逆にヤバいと思うよ」


「では別な世界で使って、それを持っていくだけでしたら?」


「私以外が魔力枯渇状態のこれを持った体力事吸われて終わるよ。

 だからその場で使う必要があったんですね」


 引き出した情報はどれも可能性を潰す結果になった。


「…ギルドの奴等碌な事しませんね」


「ごめんねぇ、私が引き金を引くのが一番だろうに」


「ミナモさんの本体は動けないん、ですよね?」


「そうだねぇ、召喚とか降臨させてくれれば別だけど」


「…ならそれをしてみましょうよ」


「それは駄目ですよ」


 止めたのはカルフであった。


「お嬢様が降臨なさるだけで、あの脆弱な世界が崩壊してしまいます」


「…はい?」


 突然スケールの違う話に変わった。

 茶化しているのかとも思ったのだが、冗談だという言葉が続かない。


「あー、…世界にも耐久性というか、容量? みたいなのがあって、あの世界に入れないんだよ。

 かなり時間をかけて正式な儀式と手順を踏んでようやく踏み入れる事が出来るけど、…時間がないよね」


 通常のプレイヤーとは違う存在になっていた。

 次元の違う存在となった以上干渉が出来ないというような状態だ。


「…それで全てが納得しました、…いやはや、そう言う領域があるんですね。

 じゃあ何処に行っても敵なしですか?」


「いや、これでも一方的にボコられる事も結構ある。

 反則級の奴等はゴロゴロしてるよ」


「知りたくなかったそんな世界…」


「ははは」


 ミナモはこれでも手も足も出ずにやられた事が何度もある。強くなってから挑んでも結果は変わらない。


「強くなる為に一方的に喧嘩を仕掛け続けても勝てないんのは反則だよ。

 微妙に攻撃は見えるんだけど、対処が一切できなくてさぁ」


「そ、そうなんですか…。

 えっと、カルフさんも、そんな感じで?」


「わたくしはお嬢様よりも劣ります」


 それに答えるが、突然うっとりとしながら語り出した。


「お嬢様は眠っているわたくしを叩き起こして蹂躙していって、惚れこんでしまいました。

 秩序側や混沌側すら正義も悪も無くただ蹂躙していく、嗚呼、こんなお方初めてでした」


「ハハ、そ、そうでしか…」


 どちらもスケールが分からない。

 しかしその会話で着想を得たのか、突然シェドが立ち上がった。


「そうだ、…もう正義も悪も無いんだ」


「ん?」


「ご、ごす?」


「全員に呼び掛けよう!」


「は、はい?」


 ゴトウはシェドがとち狂ったのではないかと思い始めた。

 自信満々な姿に全員不安を覚え、シェドのする事を見守るしかなかった。

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