表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌がらせ少女は大志を抱けない。~めっちゃ強い少女はただ無双する事が出来れば良いなぁって思いました~  作者: せいゆ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/58

おい、今この情報特価セール中だぞ! その4




 地図を頼りに結界の中心へ向かうが、その場所は城と街の中間付近にある騎士団の駐屯地である。

 しかし現在騎士団は壊滅状態で、生き残っている者は存在しない。

 敷地内は強いアンデッドが跋扈しており、迂闊に足を踏み入れる事は出来ない。

 探索をする事すらままならず、一部プレイヤーが強行して探索をしているだけだ。


「あまりプレイヤーが居ないな…」


 変装している三人が騎士団の敷地を眺めるが、鉄柵の向こうに鎧を着たゾンビなどが居るだけで、プレイヤーの姿は敷地の外にあった。


「ゾンビ系ってやたら強い、特にNPCがアンデッド化すると手に負えない」


「う~ん、ふと思ったんだけど。

 なんでNPC強いんだろ? 周りの雑魚敵は弱いのに」


 ちょっとした疑問にシェドは呆れながら答えようとするが、先ほどミナモが口にした言葉で思いとどまる。


(…そう言えばそうだ、なんでNPCが強いんだ? この世界基準の強さなら別に雑魚敵だって強くないとおかしくないか?)


 ゲームだから、そう切り捨てようとしたが、切り捨てるにはNPCの強さが理解できない。

 モンスターの強さはプレイヤー基準ならば丁度良いのだが、NPCの兵士基準ならばあまりにも弱すぎる。


「戦わないNPCは弱いのは理解できが、その他は何でなんだ…」


「さあ」


 情報屋すら分からない。

 考察は色々あるが、どれも確かな情報ではなく妄想の域を出ない。


「分からんのかよ」


「推測でなら、街を守る結界みたいなのがあって、そこ周辺は弱体化している、っていうのが定番」


「結界なんてあるのか?」


「無いよ」


「じゃあ違うじゃねぇかよ…」


「そうだね、ふふん」


 ミナモは何処となく何かを知っている様子だ。

 聞いてもはぐらかされる様な気がして、これ以上は尋ねられない。


「騎士団、か」


「じゃあ突撃じゃ」


「…う~ん」


 三人は騎士団へ足を踏み入れようとするのだが、そこへ話しかけてくる人物が居た。


「少々宜しいですか?」


 ミナモは怪訝そうな表情を向けると、その人物もケラケラと笑い、片手を挙げる。黒いスーツを着込んだ姿はこの世界では浮いているが現実だとごく一般的な社会人の男性である。面が二枚目風で、間違いなく現実に居たらモテるだろう。


「あはは、歌姫さん、相当警戒心あるねぇ」


「君じろじろ見すぎ」


 男は少し顔が強張るが、変わらず笑みを浮かべていた。


「いやいや、これでも反省を生かして常に狙撃場所を移動するようにしたんだよ」


「ふ~ん、まあ、私には無意味だけど」


「そうみたいだね」


 その人物は互いに初見ではない、こうして近づき会話するのは初めてだ。

 それは王が狙撃され暗殺された日に、ミナモを撃ち抜き、ミナモは山一つを消し飛ばし倒した相手であった。


「リベンジマッチ? 出来るならまた今度にして欲しいけど」


「いいや、今が良い。

 君もこの街じゃ本気を出せないだろ?」


「そう言われると痛い」


 何者なのかとシェドたちは聞けず、そして張り詰めた空気に後ずさりしていく。

 しかしさらにタイミングが悪く、新たな乱入者が現れた。


「良いね喧嘩、私もそこのアイドルちゃんと戦ってみたかったんだよ」


 現れたのはごく普通の一般的な冒険者NPCという見た目の女性だ。

 革の装備、鉄の剣、駆け出しの冒険者風な風貌。好戦的な雰囲気以外は弱く見える。


「えー、やだー、握手会は一人一回までなのにぃ」


 ぶりっ子で返すミナモだが、2人は変わらず引くようなことはしない。


「ふむ、…誰かに依頼された様だね。

 足止めと撃破か」


「おーおー、正解、すげぇなぁ」


 女性が手を叩いて褒め、男の方は溜息を付き頭に手を当てる。


「依頼について明かすのは請け負った者が行う最低の行為」


「あん? おめぇの事は知らねぇが、同じ依頼をされたみたいだなぁ」


「はぁ」


 次の瞬間女性が飛び出す。

 ミナモはすかさずリボルバーのハンマー部分で剣を受け止める。

 さらにもう片方の手には同じ形の銃が握られており、それを男の方へ向けて引き金を引く。

 男も既に大きな対物ライフルを構えて引き金を引いており、放たれた銃弾が激突して消滅し合う。


「んだ!?」


「これはこれは…、ここまでの実力者であったとは」


 互い驚く。

 一番驚いたのは、普通なら発生するぶつかった時に起きる衝撃波が起きない事だ。緻密な威力の調整をしない限り相殺は難しい。

 そして女は見た目見寄らずその力は異常だ。簡単に受け止められた事に驚愕していた。


「引いてくれませんかねぇ」


「力があろうがお嬢ちゃんの肉体はそうはいっておらんよ」


 ミナモの足元の影から少し年老いたような声が聞こえる。

 次の瞬間には鋭い針、レイピアが飛び出していた。

 しかしミナモは最初から攻撃が来るのを分かっており、攻撃を仕掛ける二人を往なしながら身を捻り飛びのく。


「んだお前? また変な爺が出やがった」


 地面がらずずずっと湧き出るかのように少し恰幅の良い筋肉質な初老の男が出てくる。

 

「ちゃんと肉体は鍛えておるか、お嬢ちゃん?」


「無意味な事はしない主義なんだ」


「無意味な事こそ人生の楽しみなのだぞ」


「じゃかしぃ! 戦いに水差すな老いぼれぇ!」


「元気があるな粗暴な嬢ちゃんは」


「次から次へと私の知らない奴等が…」


 三者三葉の者達にミナモは首を傾げる。


(全員依頼人が同じ? あの狙撃手の独り言的には互いを知らないみたいだった。

 同じとみるべきか、違うと見るべきか)


 考えながらも、戦闘を仕掛ける三人に対峙していく。

 被害を出さない様に発生した攻撃の余波を相殺しながら戦う。


「ああ、くっそ! 気持ちわりぃ戦い方しやがって!」


 力負けもしているが、自分1人以外にも対応されている事に腹が立っていた。

 

「腹立つわぁ! 全員本気でやり合えよ!」


「…この街が吹き飛んでも困ります」


「はっはっはっ、無関係なヤッコに被害なんて出せんじゃろ。

 それに、お嬢ちゃん限界なんじゃろ?」


 ミナモの肉体の限界を見抜いたお爺さんはカラカラと笑う。


「本当に困るんだよねぇ、リスポーンが三日間かかるのに」


 本来なら明かす必要などない、しかし明かす事で何処に情報が流れるのか判断できる。


「力の代償かのぅ?」


「ふむ?」


「んだそれ?」


 相手は手を緩める事も無く、寧ろ力が増した。

 女性の攻撃を受け止めたはずなのだが、肩から腕が取れて女性の斬撃が後ろに飛び、家々が両断されていく。


「あちゃぁ」


 そして放った銃弾の反動でもう片方の腕が飛び、神速の攻撃を回避するだけで足が悲鳴を上げた。


「困ったねぇ」


 再生させて銃を構えるが、持つ手が震えて制御しきれない。


「これで無力化したって事にして帰って貰えないかな?」


「無理に決まってんだろ、オレァお前を倒す為に来てんだ」


 他の二人は足止めが主だが、男性の方は若干違っていた。


「台無しになったスーツと銃の借りは返してもらいます」


「ホント困る」


 そして畳みかける様に攻撃を仕掛ける。

 連携などなかった三人であるが、場慣れしており、恐ろしい程の連携を見せつける。

 斬撃を女性が放ち、それを支援する様に二撃目の弾丸を放つ、さらに影からお爺さんが追撃する。ミナモは対抗しようとするが、肉体がそれに追いついて行かなかった。

 足と半身が抉られ、地面に立つ事も難しい。

 足の代わりに、ミナモは片腕で地面を叩き飛び上がり、射撃を行う為に銃を構える。

 しかし男性が銃をリロードする事も無く投げ捨て、新たな銃を構えてミナモよりも早く撃ち放った。リロードの時間があまりにも邪魔だったのだ。


「チッ」


 ミナモは何故か突然奇行に走る、咄嗟に上へ向けて銃弾を放つ。

 そして男性の放った弾丸は片手を盾に犠牲とし、致命傷だけを避ける。


(ん? なんだその行動?)


 その速さについていける三人だけが、ミナモの奇怪な行動に違和感を覚え警戒した。

 しかしその行動も新たな乱入者によりすぐに分かる事になる。


「無粋な」


 天空から降り注いだ槍が目の前に差し込む。

 それに驚く襲撃者の三人だが、それよりも前に槍が爆発する様に弾け飛びミナモへ幾多もの針となり襲い掛かる。

 回避も間に合わず、魔法でバリアを張るがそれをいともたやすく貫きミナモを串刺しにして壁へ張り付けられた。

 肉体はすでにボロボロで手も足も出ない、幾つもの槍に貫かれて身動き一つできなかった。


「んだ!?」


「アウトセンス外からの攻撃? 気配が分からない」


「…しかしお嬢ちゃんだけが対処しおったな」


 槍の攻撃を三人が気付く事は出来なかった。

 だが先ほど頭上へ向けて放った弾丸はその対処の為だったと分かった。

 ミナモが天へ放った弾丸は槍の弾道を逸らす為である。あのままなら確実にミナモを串刺しにしていた。


「冥王殺しぃ、こんなチャンスが巡って来るとはな」


 黒い影が突然ミナモの前に現れる。

 ミナモは顎や喉が消失しており、答える事無く黒い影を睨み付けた。


「ヒヒッ、大人しく指をくわえて見ておけ、この世界が終わる様をな」


 次の瞬間には放たれた闇の光がミナモを消滅させ、そして影もまたその場から消え去った。


 ☆


 ミナモは深々とため息をつく。


「まったく、介入してこないと思ったらこれか」


「最近消費が激しいですね」


「困ったもんだよ」


 カルフに愚痴を言っていても仕方なく、何時もの様に抱き抱えられハルシーの情報屋へ向かった。


「あれ? どうしたんですか?」


「やられた」


「誰にですか?」


「冥界からの脱走者、それともう一組ってところかな」


「ふむ?」


 ミナモは録画したデータをハルシーに見せた。

 PC達にハルシーは見覚えがない様であったのだが、彼等を動かした存在の方に思い当たる節があった。


「阻止した者達は知りませんけど、彼等を動かした組織はある程度分かります」


「そういうの居るの?」


「ギルドですよ」


「…ギルド? 何処の?」


「そのままの意味のギルド」


「…ふむ、商業系か」


 本来のギルドというのは商人組合の事を指す。中世に存在した実際の組合である。

 しかしこのゲームでは冒険者組合を指している言葉として多く使われる。

 ハルシーの言っているのは前者の本来の意味合い、そしてミナモも知らない新たな組織である。


「ええ、元々は組合というよりは、商人同士の衝突を避けるために造られた組織だったのですが。

 何時しか情報屋も兼ねた大きな雲の様な存在になっていきました」


「雲?」


「コミュニティーではあるのですが、実態が無いと言いますか、…一筋縄でない組織ですね」


「形骸化してるとか?」


「実際に動いているみたいなのですが、それが元の組織かと言われると微妙ですね」


「つまり私の行動阻止は、…金に繋がる?」


「でしょうね。

 彼等は利益こそ優先されますから」


「面倒なのに目を付けられたか」


「その様ですね。

 …ところで」


「ん?」


「リスポーンしてますよね?」


「これは分体だよ、一般人の強さしかない」


「なるほど、よく分かりませんが難儀な状態ですね。

 しかし護衛の継続は不可能という事で宜しいですか?」


「それで構わないよ」


 ミナモは片目を開けてきょろきょろと目を動かし、もう片方の目も開けた。

 突然不気味な行動にハルシーは若干引いて眺める。


「な、なんかあるんですか? 猫みたいに意味ありげに見ないでくださいよ」


 ミナモの瞳は全てを見通す千里眼だ。

 今は街の様子や現在地で誰か監視していないかを確認している。


「うっ、…目が回りそう」


「大丈夫ですか?」


 しかし情報が大量に流れてくるためあまり多用は出来ない。

 一点集中で眺めれば良いのだが、広範囲を見ようとするとその情報量は膨大で、それらが視界いっぱいに表示される。


「護衛対象は問題ないみたいだけど、監視がついてる」


「使い魔を使った監視みたいなものですか」


「そういうもん」


 ミナモは適当にはぐらかして情報を偽った。


「まあ、私が居ても居なくても、襲う事は無いだろ」


「情報吐かせるために捕縛されませんか?」


 ミナモは口をすぼめて目を伏せた。


「良い奴だったよ、多分」


「適当に敬礼しないでください」


「けど大丈夫? 信頼関係とか?」


「相手方も完全にダメ元での依頼でしたし、襲撃者の撃退と何者かの情報は渡しました。

 十分な仕事はしたでしょう、お疲れ様です」


「不完全燃焼感が半端ない」


「何かできるのですか?」


「な~んもできん、食っちゃ寝くらいならできる」


 完全に使い物にならないミナモに何とも言えなかった。


「けど本当に何とかしないとなぁ、ホムンクルスくらいなら行けるけど、強いプレイヤー相手だとどうしようもないし」


「前に降臨がどうとか言ってましたけど」


「正式な方法の場合はある程度制限なくなるんだよ。

 まあ、その召喚側のMP馬鹿食いするから、結局その人が戦った方が良いってオチ」


「本当に難儀な状態ですね」


 ハルシーは幽かな会話から、ミナモがどんな状態なのか推測する。


(召喚、分体、リスポーンに三日。

 分体という事は完全に何処かに本体があって、それ以外の場所に行けない?

 …つまりは、召喚獣やそれに該当する存在になっているという事でしょうか?)


 推測は概ね当たっていたが正解ではなかった。


(存在の進化というものでしょうか? 種族の変化というものもありますし、従魔の様になってきましたね)


 元々テイマーの為のゲームとして設計されていた。開発者インタビューの記事にも記されている事実だ。

 プレイヤーの種族変化が起きても不思議ではない。

 ハルシーは一人で納得し、退屈そうにするミナモに一つの提案をした。


「出張情報屋でもやりませんか?」


「出張情報屋?」


「移動先で情報を売るというだけです」


「別に良いけど、プレイヤー付近に行くならこうするよ」


 ミナモは自分の頭の上へ指を指す。

 ハルシーは首を傾げたが、表示されたミナモの名前がNPC表記になった事に気が付いた。


「ふむ、あるとは思ってましたが、実在していましたか」


「小手先で変えれるみたいだね。

 とは言え…」


「何かあるんですか?」


「間違いなくこの三日であの街、というか国で事が起きる、それを眺めないのも惜しい」


「なるほど、でしたらかつて使っていた私の拠点をお使いください、そこでしたら知っている者しか訪れませんし、近くで眺める事も出来るでしょう。

 丁度結界の外ですし、変なプレイヤーはあまり来ないでしょう」


「じゃあそうさせてもらうね」


「しかし、その起きる事というのは?」


 悪戯っ子の笑みを浮かべ、ミナモは口を開き、そしてハルシーは与えられた情報に頭を抱えた。


「これを阻止しないなんてありえません、ギルドはとち狂ったんですか?」


「まあ、事態が絡み合った結果だよ」


 頭を抱えるハルシーに場所を教えてもらいミナモはこっそりと感知される事無くハルシーの旧宅へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ