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嫌がらせ少女は大志を抱けない。~めっちゃ強い少女はただ無双する事が出来れば良いなぁって思いました~  作者: せいゆ


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おい、今この情報特価セール中だぞ! その2


 シェドは無言で睨み付ける。


「…大変な事になるんだぞ」


 皆の憧れ、指標、Lo10の名声が地に落ちれば混乱に陥る。

 シェドはただでさえ混乱に陥る未来で、Lo10が希望の象徴としてプレイヤー、ひいてはNPCすらも導いて欲しいと思っていた。

 しかしそんなシェドの想いなどつゆ知らず、ミナモは気さくに答える。


「残念だけど、どちらかと言えばアウトロー側だからね。

 それに元からLo10なんてプレイヤー代表なんて思ってないし。

 運営だってそんな事一言も言ってないんでしょ?」


「……そう、なのか?」


 価値観が崩れている今だからこそ、その言葉をしっかりと受け止める事が出来た。


「確かにそうだな」


 ゴトウもその事は認識していた。

 しかし何時しか代表という事に違和感を覚えず、プレイヤーの為に頑張る正義の味方という認識がついていた。


「公式サイトにもただ選出されただけって感じの事が書かれていたかな」


 急いでシェドも確認すると、確かに何も代表だとかそう言う事は書かれていない。

 ただ選ばれてよく分からない権限が付与されただけに過ぎない。

 指名手配の手段、対象への微量な弱体化など、それらのせいで正義の味方という印象が強まった。


「それじゃあ話を戻そうか」


「え。ま、待ってくれよ」


「いや、待たない、Lo10は今の所存在意義不明な組織にしか過ぎないんだから、それを前提にして欲しい」


 押し黙り、もごもごと何か反論を言おうとしたが、結局根拠となる物を出せない。


「んでまぁ、ケーントゼッハと国王がという状況を教えたね。

 次は、もう一つの勢力、この国で起きてる騒動かな」


「騒動? 確か町中でアンデッド系のモンスターが現れたり、具合が悪いNPCが増えてるって奴か?」


「その騒動」


「なんなんだあれは? 現国王は別な国が不浄をばらまいているとか言ってたが、ケーントゼッハと協力して当たるという話だが」


「あれは完全なるイレギュラーが起こした騒動。

 どの組織も不意打ちだと思うよ」


「イレギュラー…」


「実の所私はそのイレギュラーをどうにかしようとここに来たまである」


「ケーントゼッハと敵対してるのか?」


「さあ? 一応敵対はしてると思うけど、共闘は絶対に出来ないよ」


「…一体何なんだ、そのイレギュラーって」


 ミナモは一度考えるそぶりをしてから口を開いた。


「死者の世界って言ったら信じる?」


「はぁ?」


 一様に二人は同じ反応であった。

 しかしミナモもこれ以上適切な説明は出来ずそのまま続ける。


「そこの監獄から脱走した囚人たちがこの世界に来ているんだ。

 私の仕事は護衛の他にもその囚人たちの冥界への送還もあるのだよ」


 一方的に説明するものだから、2人はミナモの正気を疑った。


「その視線を辞めなさい。

 だから異世界を知らない人に説明するのは困る」


「…異世界って、あるのか?」


「あるよ」


「……マジなのか?」


「信じて貰ないと話が進まん、話半分でも良いよ」


 いきなり信じる事は出来ず、話半分として一度受け止める。


「…まあ、あるんだとしてだ。

 倒せるのか?」


「無理だよ」


「無理なのかよ」


「手も足も出ないだろうね。

 完全に相手が有利」


「駄目じゃねぇか」


「駄目だねぇ。

 まあ、私が居るから迂闊には近寄れないさ」


「何でボロ負けするのに近づけないんだよ。

 全く意味分からん、…本当に大丈夫なのか」


「ははは、信じる者は救われる、まかせんしゃい」


 シェドは溜息をつき不安を抱え、ふとこの街の状態の詳細が語られていないことを思い出す。 


「っとまだ街の状態を聞いてない、一体どういう事なんだ?」


「冥界から持ち込まれた術と毒がね、この街を覆っているんだよ」


「毒…?」


「龍脈から流れる毒、それが水に混じり人体に影響する。

 術の反動も強くなってるから、この街周辺の水を飲んでる人とか具合が悪くなってると思うよ」


「……なら急いで止めなければ」


 立ち上がり急いで報告しに向かおうとするが、何処からともなく現れた鋭い爪の骨の手が無数に表れシェドを遮った。


「っ!?」


「まあまあ待ちなされ、事を急いでは仕損じると言う言葉があるんですよ」


「いやだカッコイイ、やりたいシーンベスト10に入る」


 茶化してかどうなのか、ゴトウはキラキラとした眼差しでこの状況を眺めていた。

 シェドは恐る恐る下がり、ゆっくりと席に座った。これ以上行動すると護衛対象であっても殺害される可能性があったからだ。


「へへっ、まさかこんな所でよくありそうなシーンを再現出来るとは思わなかったぜ」


「イェイ」


「イェイ」


 ミナモとゴトウが手をわせる、その姿は本当に兄妹じゃないのかと疑うほどだ。


「ゴトウ…、お前、よくそんな気楽に…。

 今はそんな雰囲気じゃないだろ」


 場違いというしかない雰囲気に、シェドは気が狂いそうであった。

 出来る事ならばこの場でツッコミ続けて全てを吐き出したいほどだ。


「いやだって、普通に詰みの状況でしょ、気楽に行きましょうよ」


「そうですよ、気楽にやってこう」


「状況が気楽じゃない。

 ってか詰みなのかよ!」


「普通に詰み」


 ミナモは宣言した。

 しかし聞いただけで納得は出来ない。


「…術と毒はどんなもんなんだ?」


「体を侵食してアンデッド、レブナントとかになるかな。

 プレイヤーも対象だと思うよ」


「…またさらりと」


「事実ですし。

 んでまあ、教団と冥界が組んでない理由は、方向性が異なるからかな」


「方向性?」


「教団は多分大量に血を流させて、龍脈に注ぎ『アレ』をしようとしている。

 冥界は似たような事をしようとしてるけど、龍脈に汚れた力を増幅させて、各地の汚染や混乱が目的じゃないかな?」


「龍脈って何? 漫画とかによく出て来るけど、この大地のエネルギーの流れる場所みたいなところ?」


「そう取ってもらって良いよ、実際にそれが正解だから」


「…教団の『アレ』というのはなんだ?」


 まるでよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに、どこかいじめっ子の様な笑みを浮かべてミナモが口を開く。


「こっちに重要なモノを持ってきたいのサ」


「重要?」


「ふふ~ん」


 しかし肝心なところは答えずにいた。

 支払った以上のさらなる対価が必要なようだ。


「……阻止は、毒は除去できないのか?」


「阻止は出来るし、除去もできる」


「なら」


「けど阻止はさせないし、毒も除去させない。

 それに相手や別な第三者がそれを許すかも分からないし、…私も下手に動けないんだよねぇ」


 至って真面目に、外道な事を宣言する。

 ここでやっとシェドはミナモが護衛以外にしないと言う事を察した。


「…護衛、以外はしないのか?」


「護衛が仕事だからね」


「なら護衛以外の仕事を」


「駄目だよ、さっきも言ったけど私は護衛以外をしない。

 与えられた役割と情勢が護衛だけをしろと言っているんだ」


「…そこまでしてこの街を滅ぼしたいのか?」


「MMOでスーパーマンが一人で解決なんて展開されても仕方ないでしょ」


 得体のしれない存在は街を救う事は無い事は確定であった。


 ☆☆


 メルテトブルクに夜の帳が降りた。

 そこでシェドは一つだけミナモに提案をした。


「一人だけ、そいつに話がある、可能ならば呼んでも良いか?」


「別に良いよ」


「さっきの事教えるかもしれないんだぞ」


「情報を購入してるんだからどうぞ」


「阻止されるかもしれないのにか?」


「阻止は出来ないよ、リミットは過ぎてるし」


「て、手遅れなのか!?」


「街の様子知ってる人に聞いてみたら?」


 ミナモはロッキングチェアに揺られながら、何故か回転して遊び、対抗してサンダルゴトウも同じ様に遊んでいる。

 呆れる様な状況にシェドは緊張の糸が切れてしまい。


「遊んでる場合か!」


 対してミナモとゴトウが。


「ゲームで遊んどるんじゃ!」


「ゲームで遊んでいるんだ! 邪魔しないで貰いたいぞごすじん!」


 何故か逆に怒られてしまい、シェドは引き下がる。

 しかし正当なのは自分だと気が付くと再び立ち上がり。


「もっと真面目にという話だ!」


「おー、ノリツッコミ良いね、ゴトウくん、良い上司を持ったね」


「おう、自慢の上司だ、良いだろ?」


 例え尋常じゃない人物でも、ゴトウという存在(頭のおかしい)だと思うと、対応も同じで良いとさえ思い始めた。


「とりあえず呼ぶからな」


 意見も聞かず、一人の人物を呼び出すのだが。


「来れないって…」


 何故かゴトウは涙ながらに呟く。


「どうした?」


「お前と付き合うとバンディット扱いされそうだからって。

 辛い…」


「ご愁傷様。

 バンディットプレイも楽しいと思うよ」


 そんなアドバイスを送ると、ゴトウもそれに乗る。


「バイクに乗って鉄パイプで暴れ回ろうぜ」


「あ、古の暴走族ってやつか、楽しそうだね」


 そんな気楽に話す二人を見て、シェドは何故そこまで気楽にやれるのかと頭を掛かる。


「なんでお前らはそうなんだ?」


「そりゃネトゲだから」


「一期一会だろうに」


「ネトゲだからって言っても、こんな…」


「何言ってんの、ネトゲの寿命なんて半年程度以下、それ以上は高望みしすぎ、このゲームは異常なんだよ」


「…それは、知ってるが。

 それだけ長いから思い入れもある。

 それにプレイヤーの為にがんばったのに」


「ヘラるな、基本的に人は保身に入るんだ、こういうものだって思っておけばいいじゃないか。

 人の為なんて身を粉にしてたら馬鹿を見る、適当で良いんだよ」


「そうそう」


 シェドはそれでも落ち込んでいる様で、一言告げてログアウトしていった。

 それを見てゴトウは一息つき。


「大臣してる時は毅然としてるのに、折れるとボロボロ」


「その時は楽しかったんでしょうなぁ。

 けど何時ログインするかもわからんし、こりゃ大変だ」


「ローテーションを組もう」


「じゃあ、それで」


 ミナモはゴトウと打ち合わせし、時間分担で守る事にした。

 そして交代し合っている時、偶然ミナモが屋敷に踏み入った者達を撃退する事に成功する。


「ふむ、退屈しのぎにもならんか」


 先遣隊がやられたと知り、また襲い掛かってくるが、相手は訳も分からず撃退されていき、リスポーン地点へ送り返される。

 ミナモは退屈しのぎに近くで屋敷に踏み入るプレイヤーを襲う事にした。

 装備を破壊し、見られない様に殺害する、それを一瞬で行い、次々とプレイヤーの心を折って行く。

 次第にその周辺にプレイヤーが立ち寄らなくなり、ミナモは時間一杯まで暇をつぶし。


「あ、適当に周辺に居たプレイヤー全滅させておいたから」


「助かる、俺楽ちん。

 どれくらい来たの?」


「この家は3人組が3回と別動隊らしき人達がじゅう~何人か」


「うむ、苦しゅうない」


「じゃあちょっと仮眠取る。

 ってか護衛対象、居ないの困るよぉ」


「ホント困る」


 そんな愚痴を吐き出しつつログアウトした。

 そして事が動き出す。

 遠方に居た、ある者達がミナモの存在が消えたのを皮切りに事を起こした。


「これは行幸」


「鬼の居ぬ間に何とやら、ですか」


「…チッ、空き巣をやってるようで気に食わねぇ」


 そう言いながらも龍脈へと彼等の力を注ぎ込む。

 活性化された毒素がさらに凶悪になり、伝染する様に広がっていく。

 メルテトブルクを中心とした地の底で、幽かに怪しく魔法陣が浮かび、地上へと影響をさらに与えて行った。

 さらに時間が過ぎ、次ミナモがログインすると、頭を抱えるシェドがソファーに座っていた。


「どうしたどうした?」


「ま、街が…」


「ああ、ゾンビパニックね、良かったね、新ジャンル開拓だよ」


「銃があればな…」


「へへ、あるぜ旦那」


 おもむろにハンドガンを取り出す。


「でかした」


「行くぜ、俺達の新天地はすぐそこだ。

 野郎どもカチドキを上げろ」


「おー」


 ゴトウがシェドを両手で持ち上げる。

 そして表に出て、近くを血色が悪い状態で歩くNPCの姿を見つけた。


「第一ゾンビ発見、射殺します」


「うむ」


 一見外傷がないが、その貴族の男は死んでおりゾンビ化していた。

 ミナモはハンドガンを構えて射撃し、頭を吹き飛ばして特殊部隊よろしく周囲をクリアリングして無言でゴトウへ来いと合図を送る。


「して、何処に行きたい?」


「……どこでも良い」


「それじゃ困るよ大将、しゃっきりしなさい」


「自分で歩け」


 ゴトウが無理やり降ろすが、シェドは転がったまま起き上がろうとしない。


「もう分からん」


「こりゃ重症だ。

 全く、そんな責任持つ必要ないだろうに。

 今回の事だってただのイベントかプレイヤー探索漏れが原因みたいなものでしょ」


「探索漏れって、頑張ってるのに」


「実際に探索はずさんでしょ、もっとこの大陸から全員が離れて行けばよかったのにさ。

 今だに異世界があるって事が大っぴらに公表されてないってのもその原因だよ。

 小さな村でもその裏で何かあったりするし」


 ミナモは項垂れるシェドを片手で拾い、首が無い状態で起き上がるゾンビに弾を叩き込む。


「う~む、予想以上に干渉が強いな」


「干渉? それは何か外的な要因で動けるようになっているのか?」


「そう、龍脈の力なんだろうけど、ここまで力が増しているとは、予想以上に事態は悪い方に行ってそうだな」


 少し歩けば、その事態の悪くなっているという状態の一端を見る事になる。


「わぁ、グロイ」


「なんだ、よあれ…」


「融合してるねぇ」


 近くではゾンビ同士が食い合い、体に取り込み変質して行っている様子が見て取れる。

 さらに遠くでは体が結合し肉塊の球体となり走り回り、NPCに襲い掛かっている姿が見えた。


「良いねゾンビパニック、次ゾンビサバイバル系のでないかな。

 いい加減他のゲームがしたい」


「ファンタジーは過食気味なのわかる」


「私はロボとか何かに搭乗する系統が出来るならいいかな、たまにこういうサバイバル系統も良いけどさ」


「ロボか、最近テストになったって聞いたけど」


「それやったんだけど、運営君が調整するって言ってて不安なんだよなぁ。

 変な調整しないと良いけど」


 遠くで肉塊のゾンビが兵士と対峙するが、成すすべなくやられて取り込まれていく。

 シェドは目を伏せてポツリと呟いた。


「何処でも良い、もうこの街から出たい」


「ういよ」


 シェドとゴトウを抱えて、一飛びで屋根に飛び乗り、そのまま屋根をとことこと走り出した。


「ご乗車ありがとうございます、この先は国内脱出、国内脱出となっております、ご忘れ物の無いようにお願いします」


「運転手さん、運転荒いよ」


「ったりめぇよぉ、地獄への片道切符だからよぉ」


 しかしその速度が下がり、ついには立ち止まってしまう。


「どうしたんだ?」


「閉じ込められた」


「ん?」


「街の周りに結界が張られた」


 脱出のタイミングで思わぬ鳥かごに閉じ込められてしまった。


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