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嫌がらせ少女は大志を抱けない。~めっちゃ強い少女はただ無双する事が出来れば良いなぁって思いました~  作者: せいゆ


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湧きあがれ、内にあるかもしれないやる気よ その2



 王城の手前には大きな城壁があり、さらに手前には堀がある。

 周りには騎士団や貴族街があり、さらに小さな壁が貴族街を守るように建てられている。

 その貴族街へ立ち入るには許可が必要であり、検問が敷かれている為プレイヤーが気軽に立ち入る事は出来ない。


「ここでいいか」


 とあるプレイヤーは城壁よりも高い場所を探して移動すると、プレイヤーにより作り上げられた時計塔に辿り着いた。

 個人の私有地ではあるが、全プレイヤーに開放していて出入りが自由、それを眺めてそのプレイヤーが悪い笑みを浮かべる。

 プレイヤーがその塔にはいる様で、上で街の様子を監視している様であった。


「こんちにちは、性が出ますね。

 観光ですか?」


「ん? 街を守るために監視しているんだよ、ボクはこれでも警備隊長だかね」


「良いから集中しろ馬鹿マスター」


「酷いなぁ」


 ダンガードという人物とその部下が居たが、部下が上司に悪態をついていた。


「ほんじゃちょっと失礼するよ」


 彼等のやり取りを興味無さそうにしながら、その男は吹き出しから外に出る。

 プレイヤー達の一部は今回のメルシュ王国と教団による会合の場の安全を守るために駆り出されており、厳重体勢で警備にあたっていた。


「わっ、危ないよ!」


 そのまま屋根に乗り、屋根の天辺に聳え立つ針の場所から周囲を見渡し、そして城の方へ視線を向ける。


「ふむ、……なるほど」


 そして再び屋根を降りて吹き出しから時計塔の内部に降り立った。


「機敏だね、前線で活躍してた? うちに来ない?」


 ダンガードが誘うが、彼は別な事を尋ねた。


「前線って何?」


「え? 知らないの? ほら、この世界を探索して前線で活躍する人たち」


「…すまない、それは分からないんだ」


「…え、あ、…そ、そうなんだ」


 このゲームで前線という言葉は知らない者は無いというほどの知名度である。

 それを知らないと言われるとダンガードは少しショックを受けた。自慢の一つだったという事もあるが、興味無さそうな態度も落胆が大きい。


「いや、まあ、最近そう言う話題とか無いってのも分かるよ、うん、けどね、これでもボク結構さ。

 えっと…」


 話しかけても相手は反応が無く、ダンガードは目を細めながら相手の名前を確認する。


「…ず、ずんどこぽこ助、…さん?」


 名前を尋ねるが、彼は首を傾げる。

 しかし少しすると手を叩き自分の名前であることを思い出した様であった。


「ああ、俺だ、…なに?」


「あ、いや、か、変わった人だなって、どっか、荒野から来たガンマン風な衣装だし、珍しいなって」


「当たり前だ、一応スナイパーだからな。

 今回も依頼で暗殺稼業さ」


「はぁ」


 そして徐に巨大な砲身の銃器を取り出した。

 それはマテリアルライフルと言われる対物のライフルで、口径の大きな銃弾を発射する為の専用ライフルだ。


「へ?」


 呆ける二人を無視し、握るほど太い弾薬をライフルを弾倉に幾つも押し込めてライフルに装填する。

 安全装置を外し、スコープの下にあるボルトを引くと、内部に銃弾が装填され、それを城の方へ構える。


「え、えっと、それで、どうする――――」


 スコープを覗き見ると、城の内部が透過して見え、ある気配のする人物目掛けて銃弾を発射した。

 音もなく放たれ、銃身が飛び上がる。傍から見えればその反動はとっては軽く、しかし他の者が引き金を引けば確実に体と痛め、手がへし折れる。

 遅れて乾いた音が響き、銃弾は狙った者の元へ届く。

 次の瞬間城の一部が粉砕し、当たった者を抉り遠くへ弾丸が抜けてさらに奥の城の壁が消え去っていく。


「邪魔されずに仕事が出来る。

 楽な仕事だ」


 城が壊れるのは何処からでも見えるほどで、固まっていたダンガードもまた銃と城を交互に見えて呆けていた。

 ボルトを引くと、薬莢が排出され、次弾が装填される。


「な!? お、え!? ちょ、ちょっと! 何やってんの!?」


「取り押さえろマスター!」


 ダンガードは慌てふためいているが、部下は取り押さえる為に武器を抜き襲い掛かる、遅れてダンガードも武器を取り出そうとしたのだが、次の瞬間には時計塔の壁に押し付けられていた。


「え!?」


「クッ、こ、これは?」


 身動き一つできず、指の一本も動かせない。

 そんな二人を無視し、城内の様子を確認する。

 内部に居た天使が慌てふためき、自らが釣り出した清廉の子兵を操り庇い、そして遠方の狙撃手を居場所を漁らせる。


「お客さんか、頭を潰しても動く事には変わりないか」


「え!? ぼ、ボク達は先に手を出してないぞ!?」


「そっちじゃねぇ馬鹿マスター」


 部下の方が冷静で、固唾を飲んで見守る。


「け、憲兵さん、た、助けて」


 やって来たのは兵士であるが、兵士は鎧から白い触手を伸ばして攻撃してくる。

 彼は目もくれずに何処からともなく取り出した拳銃を一発発砲する。

 銃弾が触手を貫いていき、体の中央に入ると爆発四散し、兵士が鎧だけを残して消えて行った。

 さらに他の兵士と僧侶が時計塔を登り、姿を変えて襲ってくるが、一発ずつその兵士に叩き込んでいく。


「雑魚には用はない」


 合間にマテリアルライフルから銃弾が発射され、それが天使を守る別な天使の体を抉り取り、城の一部を破壊する。


「あの白い奴って報告にあった…」


「え、なに!? どうなってんの!?」


 今度は自動でボルトが動き薬莢が排出される。


「次はゴム弾じゃないぞ」


 両手でマテリアルライフルを構え、えぐり取られた天使目掛けて本命の一撃を放った。

 刹那爆音が鳴り響き、衝撃波が塔の一部を吹き飛ばす。

 放たれた銃弾は一瞬すら長く感じるほど刹那の速度で天使を貫き消滅させる。隣にいた位の高い天使すらも体をほぼ全て削り取られていた。

 次の瞬間、忘れていたように衝撃波が走り、射線上にあった建物が屋根や押しつぶされ吹き飛ぶ様にダメージが入る。

 砲撃を受けた城はその上部から崩れ落ちて行き、その下まで倒壊し始めた。


「さて、ホムンクルス共はどう動くか」


 狙撃により時計塔の内部に埃が舞っていたが、次第に埃が晴れるていく。


「な、なに、それ…」


 マテリアルライフルの砲身は熱がこもっており目に見えるほど熱で白く変色していた。

 振り払うとシューッという音を立てて色が元通りの黒に戻って行き、彼はそれを仕舞うと二丁の銃を構えて、偽らなくなった清廉の子兵へ銃弾を叩き込み始めた。

 身体を粘度の様に自在に変化させうねり攻撃してくるが、お構いなしに銃弾は貫通していき、その奥に居る清廉の子兵すらもまた撃破していく。


「せめて終盤に居る胎動セシ栄光くらいの強さが良いなぁ、思い出補正があるんだろうけど」


 敵の強さに愚痴をこぼしていると、時計塔近くから悲鳴が聞こえてくる。

 既に清廉の子兵が集まってきている様で、騒ぎになっていた。


「なあ、君等」


「な、なに?」


「あれ、面白い祭りだ、君等にも楽しみを残しておくぜ」


「えぇ?」


 手を振り、無責任に彼はそこから転移で姿を消した。

 いつの間にか解放された二人は、襲い掛かってくる清廉の子兵を相手に泣き言を言いながら対峙し。


「くそったれがぁ!!」


「泣きたいよ…」


 戦力的に手も足も出ず、リスポーン地点の自分達の拠点へと戻って行った。


「んで、情報は?」


 ダンガードが正座させられ、彼の腹心のミッドレアに説教を受けていた。

 それとは別に、彼が何時も座るリーダーの席には先ほどの部下が座って足を組んでいた。


「まあいいじゃないか、俺が録画してたんだから」


「本当に助かったよ、まめに録画してもらってて」


「最初は定点カメラ的な状況だったんだが、役に立つとは思わなかったぜ」


「…で、クランマスターさんの成果は?」


 わざとクランマスターという事を強調すると、ダンガードはそっぽ向き小さく呟いた。


「パワハラ…」


「パワハラはな、上に立つ者が使うハラスメントだよ」


 ニコニコとミッドレアが説明すると、ダンガードは素直に謝った。


「ごめんなさい、完全にオフモードでした」


「…まあいい、んで、録画見せてもらうが」


「あー、いや、……えー」


 部下が眉間に皺を寄せる、とても見せられないと言った様子であった。


「あまり撮れていなかったのか?」


「いや、寧ろばっちり取り過ぎてて、……こんなの公表して良いのか?」


「見せて貰わないと困るわよ」


 その場で黙って見ていた花鳥風月のクランマスターナガレと。


「見る必要があります」


 その妹のエルニカであった。

 この二つのクランは同盟を結んでいて、清廉の子兵について調べ探っている。

 関りが強いからこそ、他のクランとは提携せず、同盟のみで独自に行動していた。


「分かった」


 そして録画した記憶を、時間通りの場所まで飛ばす。


「え、銃?」


 そして銃器を見せられ全員が驚愕する。


「本当にすごかった、壊れずにあの威力」


 撮影者も何度も確認して驚き、さらに片手間で敵を倒している姿にエルニカですら驚く。

 極めつけは強烈な一撃、そして一部崩れる城。

 意味深い言葉も強く引かれて、何度も録画を見直すほどだ。


「……ねえ、エルニカちゃん」


「何姉さん」


「あの子じゃないわね」


「そうだね…」


 あの子とはミナモの事である。

 しかしスロー再生でもわかるほど凄い腕のプレイヤーに驚くしかなかった。


「…化け物って多いのかしら」


「そうだ、ね…」


「あの子って、噂のミナモ、か?」


 エルニカは無言で頷いた。

 噂と言っても街が壊滅した時以降の話を聞かず、その行方も知れない状態であった。

 さらに現れた化け物級のプレイヤーに頭を抱える。


「結構離れた場所で山が一つ吹き飛んだって話もあるし、わけわからないよー!」


 ダンガードは頬を膨らませて叫ぶ。

 事情が分からず頭を抱えているのはこの場に居る全員だ。


「…流石に連絡つかねぇか? 俺はもう意味が分からな過ぎてどうにかなりそうだ」


「ボクもそのほうが良いと思う。

 だって、王様死んじゃったし、説明が欲しいよ」


 この国の王が死んだ。

 彼の狙撃に巻き込まれて肉片すらも残らず消滅した。


「……ログイン中だから、掛けてみる」


 エルニカは恐る恐る連絡を試みる、するとミナモが直ぐに応答した。


「うい~っす、お久さ~、暇人かい?」


 気さくな挨拶に、思わず驚いた。

 彼女達からしてみれば神秘性の塊、それが気さくに対応するのは違和感が強い。

 なによりも今の重苦しい空気とは場違いであった。


「ミナモちゃん、時計塔で、なんか凄いライフルみたいなの撃った人居たんだけど、何か知っていたりする?」


「え? ライフル? 動画とかある?」


「流石に私の動画じゃないから見せられないけど」


「う~ん、どういうのか分からないから何とも言えないかなぁ。

 所で街の城が半分吹き飛んでるんだけど、何したの?」


 ミナモはやっとメルテトブルクへ辿り着いたのだが、街の騒ぎ様に驚き首をかしげている状態であった。


「その、王様が狙撃で」


「…ふむ、なるほど。

 これは面白くなって来たね、しかしライフルか、…あれと、あの威力とするなら、…ふむ」


 様子から何か知っている事は明白で、ミナモに件の動画を見せて更なる反応を引き出したい。出来るならば答えすらも聞きたい。


「会えないかしら?」


「う~ん、…まあ、いいか、お姉さんの肉体も気になるし」


 緊張が走る。断られて話してくれないと思たからこそ、対応に息を飲んだ


「それじゃあ、……何処で落ち合いましょうか?」


「私この街の地理とか分からないから任せる。

 あ、けど出来れば人目のない所で」


「分かったわ。

 あ、それと知り合いを同行させたいのだけれど大丈夫かしら?」


「…う~ん」


「あ、無理にってわけじゃなくて、動画撮影した人とか。

 そうじゃないと見せられないし」


「まあいいか、良いよ」


 それを聞き安堵し、人気のない場所よりも人が立ち入られない場所を指定した。


「サンライト?」


「一応有名なクランなのだけれど、そこのクランの敷地なら人目が無いわ」


「…人通り多い所行く?」


「あれ? そういう人目が無い所って言う意味?」


「ちょっと色々あって風体的に見せたくないって感じかな」


 メイドに抱えられている状態というのは見せられない。

 透明化が出来るが、良くも悪くも実力者などには看破される為下手な透明化は逆に目立ち目に付けられる。狙撃をされたのも原因があると思っていた。

 出来る事なら人の居ない場所で落ち合う必要があった。


「それじゃあこちらから出向くわ、場所は、…そうね、あそこが良いかもしれないわね」


 指定したのは貴族街付近であった。

 送られた座標値地点とルートなどを指示され、ミナモはそれを遠目に見て納得する。


「なるほどNPCばかりが住んでる地点はプレイヤーの介入は少なそうだね」


 プレイヤーが殆ど立ち入らない場所の為、人目につく事は無いだろう。

 ミナモは受け入れ、街の外から透明化し、さらに気配を消して近づいていった。

 そして待ち合わせの場所、その寂れた喫茶店の様な場所に入る。

 そこには先ほどまでダンガードと仲間二人と、エルニカとその姉が待っていた。


「ちわーっす」


 ミナモは軽く手を振り挨拶する。

 カルフは軽く頭を下げるだけで無言のままであった。

 全員一様に挨拶はするがぎこちなく、目をぱちくりして驚いている。


「久しぶり、ね。

 ……変わったわね」


「変わったというよりも、なんと言うか、最初からこんな感じだったというか」


 ミナモはカルフに支えられるようにしながら降りて、そのまま手に支えながら席に付き介護される様に座る。


「…どうしたの?」


 あまりにも弱々しいミナモの姿に全員が噂と実力の乖離に困惑している。


「大きすぎる力はこの世界を傷つけてしまうだけさ、ふっ」


「この子、中二病なんだけど、噂と違うんだけど、ポンコツぽいんだけど」


 ダンガードがツッコミを入れるが、それをミッドレアが頭を叩いて黙らせた。


「えーん、しくしく、このお兄ちゃんが虐めるよぉ」


 ボケてみたが、どの様に反応すれば良いのか分からない面々は苦笑いを浮かべるしかない。


「突っ込みが無くて寂しい」


「え、つ、ツッコンで良いヤツ?」


 距離感が掴み辛そうにしている為、話題を変える。


「じゃあ手っ取り早く本題に入ろうかぁ、件の動画見せてぇ」


 撮影していた一人が生唾を飲み近づき動画画面を表示させて共有させる。

 ミナモは目をつぶったままその映像を眺めて溜息をついた。


「予想とは違う知らない人だね。

 とは言え、このタイプだと、なるほど、あっちの工房産か。

 どっかからの雇われの様だけど、…手っ取り早いのはあそこで聞けばいいか」


 一人納得して呟く様に、周りはもどかしさを覚えた。


「つ、つまり?」


「私が分かるのは武器の威力とその材質と当人のある程度の実力のみ。

 所属や依頼人とかは専門外だね」


「…依頼人って、何かあるのね」


「あるだろうねぇ」


「目的は何かしら?」


「推測で良いなら」


「お願いできるかしら」


「多分手遅れの王の排除、それに伴う流れの修正、戦争賛成派か阻止派なのかこの後の流れを見ないと分からいかな」


「手遅れ? それに戦争って、本気で戦争が起こるはずだったの?」


「今ここ等辺でダラダラやってるプレイヤーの認識ってどうなの?」


「認識?」


「戦争が起きるかどうかって言う」


「えっと、噂程度で、何か起きるんじゃないかなって程度。

 これと言って危機感とか無い感じなの」


「ふ~ん」


 トントンとテーブルを叩き考えていると、カルフが何処からともなく紅茶セットを取り出して並べて紅茶を注ぐ。

 ミナモはそれを口に付けて一息ついてから口を開いた。


「戦争の有無よりも、一番はアレに対するけん制かな」


「あの、アレとか、手遅れの王って言うのはどういう事なの?」


「う~ん、ネタバレ気にする派? それとも許容派?」


 この期に及んでネタバレ云々を言われると、本当に深刻な話題ではないという錯覚すら覚える。


「ボクは気にしない派。

 寧ろ先にネタバレ見て考察を深めるのが好きだよ」


 ダンガードが真っ先に口にすると、ミナモは頷く。


「それも一つの楽しみだよねぇ」


 続いてミッドレアが小さく息をついて頷く。


「あまり意味の分からない状況に長く晒されてる、いい加減種明かしが欲しいんだ」


 何処まで種明かしをすれば良いのか、ミナモは一瞬考えたがある程度のネタを明かす事にした。


「どうせ今回の事は伝わらないし、ネタバレしちゃうと、国王は、所謂モンスターになって、国乗っ取り状態だったみたいだね」


「え…」


 懸念していた事をさらりと口にされ、なおかつ危機的な状況であったことに理解が追い付かない。

 しかしミッドレアだけはミナモに詳細を尋ねた。


「それはコイツが成ったって言う化け物化か?」


「そうだよ」


 ナガレに起きた変化、それだけでさらに危機感が強くなる。

 街にさらにはびこっていると思うと恐怖心に出入口へ視線が向かい警戒心湧き出て来る。


「名前はなんなんだ?」


「名前って言っても個体によって違うし、弱いのが清廉の子兵、動画内で襲って来た奴等ね」


「あれで、雑魚?」


 眩暈がしそうだ、しかししっかりと足に力を入れて、ゆっくりと席に着きリラックスする。


「わ、私が、なったのは?」


「お姉さんがなったのは生誕する善意って奴」


「な、名前がちょっと…、それに善意って」


「はぱぱっと検索すれば出て来るよ」


「え?」


 突然検索すればと言われても、困惑するだけだ。


「ど、何処を?」


「何処って、普通にネットブラウザで検索しなよ」


「そっち!?」


 未知のものをネットで検索という考えはあるが、誰も知らなそうな内容の物を検索したところでであるわけがない。それが一般的な思考である。


「超ネタバレされるよ」


「ちょ、ちょっと待って、探せば出るの?」


「出るで」


「ちょっと待ってて!」


 急いでブラウザを開いて検索を仕掛けると、ヴァルハラアクセスの攻略サイトが一番最初に表示される。

 確認すれば、姿や形、特性や攻撃方法、ステータスが書かれていた。

 ちらりと見た別なリンク先の画像には、見た事のある姿を見つけて小さく声を上げた。


「あ、あの」


「ん?」


「ひ、左下の、画像」


「ん? 画像? ああ、アイコンか、超ネタバレだね」


 震える指で別ページを確認する、そこには清廉の子兵などの情報が載っており、どういう経由で生まれたのかが載っていた。

 さらに最近のコメント欄に書き込みがあり、こんな事が書かれていた。


『例のゲームで本当に出てきて草生える』

『運営に聞いたら普通に関係してそうだな』

『魔法使えたわ、確定だな』

『教えたらアンチ扱いされた、信者うぜぇ…』

『つか胸糞運営関係してて萎えた』

『同窓会しようぜ』

『普通に嫌だわ、あんな事あって会いたいと普通思えるか?』

『絶対にない』

『俺もねぇわ、けど無ければ会いたかった』

『俺もだ愛してる』

『俺も俺も』

『どうぞどうぞ』


 かつてプレイしていた者達が小さなコミュニティーで話し合いをしている。

 もう既に疑う余地もなく、エルニカは茫然とする。


「お~い、生きてるかぁ?」


「生きてるわ…」


「して、情報マウントネタバレされて楽しみ奪われたけど、どんな気持ちだい?」


「どんなって…」


 エルニカから見てミナモはずれている、根本的なものが違うとしか思えなかった。

 皆が見ている世界と、ミナモの世界は同じでまるで違う景色なのだ。


「どうでもいいゲームならネタバレされても良いけど、ハマっててやり込みたいっていうとネタバレされると嫌じゃん」


「それは、そうかもしれないけど。

 分からない事が多すぎるのよ…」


「ふむ、確かに、けど調べてるんでしょ?」


「調べて出てこないのよ」


「う~ん、そうかぁ」


 ミナモも思い当たる節があった。

 ホムンクルスは隠蔽の傾向にあり、身を隠して表舞台に殆ど姿を現さない。

 気配を探ってやっと分かるという状態で、普通ならば見つかる事は無いだろう。


「確かに難しいかもね、でもゲーム的には終盤に登場なのかも? プレイヤーの強さ的に」


「急にメタに…」


「いやだってそういう感じじゃん。

 あーでも、他の強さを加味すれば、バランス調整ミスな気がする強さかなぁ」


 プレイヤー全体の事を思えば敵の強さが異常に高い。

 複数人で殴って倒すというのならば、丁度良いバランスではあるが、一対一を想定すると極端にバランスが悪くなる。


「まあ、この運営バランス調整ゴミだし、アウトセンス無ければ正直テイムモンスターありきの調整な気がするよ」


 エルニカからしてみれば堂々と運営を馬鹿にする事を言うのは初めてで、そして強いからこそその言葉に説得力が生まれた。

 そして今何故テイムモンスターなのかと首を傾げる。


「んでんで、教えて欲しい情報はそれだけ?」


 敵についてはこれから理解を深めて行ける。

 しかしまだ謎が多数転がっている。


「敵については、分りたくないけど、これを見ればわかったわ。

 ただ、…ミナモちゃんやこの人達の強さって、なんなの?」


 強さの理由、それが一番知りたい事であった。

 相手が強力な異常自らもそれに合わせて強くならなければならない。


「う~ん、アウトセンスの一部だけど、様は体を鍛えるって事と同じなんだよ。

 アウトセンスによる肉体の限界を超える為に肉体がそれに合わせて強くなっていく。

 ただレベル上がるのは太ってるだけにしか過ぎないっていうか」


「ふ、ふと……」


「はいはーい、じゃあ銃は?」


「銃は作り方次第だよ」


 ミナモは何処からともなく一丁のリボルバー拳銃を取り出した。

 無駄に回転をしながら一発の銃弾を華麗に装填して窓の方へと構える。


「何の細工も無いならこのまま壊れる、作り方次第では通常の武器の様にそう簡単には壊れなくなる」


「へぇ、良いなぁ、どっかで作り方とか教えて貰えるの?」


 ダンガードがとても興味深そうに尋ねるが、それを聞いてミナモはにへらっと悪い笑みを浮かべた。


「そろそろ情報屋に怒られそうだから内緒」


「情報屋、…裏稼業の奴等か」


 一般的に情報屋と聞けばアウトロー気質の気を許せない存在というのが一般的な認識となっている。

 しかし実際は殆どが健全に情報を商材として扱い対価によって運営されるただの商人である。


「やっぱり知りたければ一番はそっち側に頼るのが良いかねぇ」


「馬鹿言え、そう簡単に情報を手に入れられるわけないだろ」


「それは外れの情報屋じゃないかい? 私が情報屋の存在を知ったきっかけはゲーム始まった時に、エルニカさんと出会ったじゃないですか」


「あの時?」


「変装して乗り込んでたんですよ一人だけ。

 あの後しばらくして接触する事があって、たまーにチラホラ話を聞いてたりしたんですよ」


「…紹介って、して貰えないかしら?」


「どうでしょうね、かなり人を選んで仕事をしているみたいでしたから。

 まあ、後で聞いてみましょうか」


「お願いするわ」


 そんな中話半分に聞いていたダンガードが銃に視線を釘付けにされていた。

 横で切れながらミッドレアが小突く。


「あまりじろじろ見るな」


「えー、良いじゃん、カッコイイし。

 …撃ってみたいなぁ」


 キラキラとした視線を向ける。

 ミナモはそれに対して笑みを浮かべて答えた。


「これを撃ったらその先が5万メートル四方が消滅する」


「え!?」


 空気が凍り、苦笑いを浮かべて尋ね返す。


「じょ、冗談だよね?」


「半分はね」


「は、半分?」


「実際は撃つ前にMPが枯渇、さらに生命、スタミナとか空腹HPを全て奪い取って撃てずに死亡」


「…マジ? え、君、撃てるの?」


「撃てないよ」


「だ、だよね…」


 しかし半分は冗談でないことは確か。浮かべた笑みは引きつり続けた。


「この分身体では一般的な子供と同等の力しかだせないのだもの。

 不便で仕方ないわぁ、はぁ、誰かちゃんとした手順で降臨させてくれないかなぁ」


 ミナモが求める様に視線を送るが、誰もが意味を理解できずに首を傾げる。


「一般的な子供って、ミナモちゃんあんなに強かったのに、駄目なの?」


「あれはバグ技みたいなもので、本体から中継地点のこの身体でさらに分身体の子機を使う事でなんとか。

 そう言う事で、この後何か起きても私は手を出せないんだよ」


 相変わらず理解には辿り着けないが、それでも分かる事はあった。


「…それはつまり、助けてはもらえない?」


「ま、そう言う事、出来ないものはできないの」


 助けてほしい、その一貫した気持ちは顔に書かれていた。


「私達だけで解決、そして強くなっていかないといけない」


 自分達だけで、その考えが過るがミッドレアだけは違った。


「…依頼して誰かに解決してもらうというのも手だろう」


「え? でもそれって」


「情報屋、そこから今回のあのスナイパーの様な強さを紹介してもらったりさ。

 少なくとも一日二日で強くなれるわけじゃない、…時間が必要だ」


 現実的な視点でみればミッドレアの考えが一番である。


「私そういうさっぱりした考え好きだよ。

 そんな君には一つアドバイスを送ろう」


「アドバイス?」


「この国の金ではなく、他国の金を使った方が良いと思う。

 この国の通貨は価値が殆ど無いから」


「…なるほど」


 メルシュ王国には価値がないと遠回しに言っている様なものだ。

 しかし外から見ればそのような状況で、さらに王が死んだ以上その価値もさらに変わるだろう。


「さて、そろそろお姉さんの身体でも調べて帰りますかね」


 もっと知りたいという気持ちはあるが、それを抑える。

 ここでがっつけば幽かな信頼も消えてしまう可能性がある、それだけは絶やす事は出来ない。


「わ、私の身体?」


「ぐへへへ、隅から隅まで蹂躙して、っと、威厳が無くなる」


 既に半分以上無い。

 ミナモは近づき、うっすらと片目を開く、そして二秒ほど眺めてから目を閉じた。

 そして両手を合わせて。


「ご愁傷様です」


「え?」


「キャラデリできるならした方が良いよ、今すぐ。

 出来ない状態なら、…旅に出た方が良いかもねぇ」


「なになになに!? なんかなってるの!?」


「それじゃあカルフ、帰ろうか」


「かしこまりましたお嬢様」


 何とも言えない表情で助けを求めるが、ミナモはカルフに抱えられて一瞬にして消えて行った。

 放り出されたナガレはエルニカに助けを求める様に涙目の視線を向けるが、苦笑いを浮かべるしできない。

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