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嫌がらせ少女は大志を抱けない。~めっちゃ強い少女はただ無双する事が出来れば良いなぁって思いました~  作者: せいゆ


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落ちぶれて落ちぶれず 1部エピローグ されど人形は崩れ落ちる




 不思議と犠牲者もなく、やっと街へと辿り着いた。

 オルバの助けもあり、魔物の比較的に居ないルートを只管進み、食料がそこを尽きる頃にやっと着いた。


「ほ、本当に街が、しかも、無事辿り着けた…」


 ジェザイアが安堵し、思わず腰が抜けて尻もちをつく。

 周りも同じ様に街を見て感極まり、抱き合う姿が見受けられた。


「休んでいる暇はないぞ、こいつ等の食い扶ちも考えないといけない」


「わ、分かっている」


 よろよろと立ち上がり、街に向かう。

 街は現代風の街並みだが、全てがボロボロで廃墟の様だ、しかしそこに暮らす者達はその廃墟を利用し、当たり前の様に生活していた。

 そこに住む種族は見た事も無く、青肌の悪魔の様な姿や、赤い肌の鬼など、様々な悪魔や妖怪の様な見た目の種族が多い。

 観光を堪能したいが、オルバの歩幅に合わせては観光できる余裕はない。


「く、車? バイク? しかも少し浮いてる、あんなものまであるのか」


「魔動車だ、……手の施しようがない程高い」


「…じゃあ乗るのも無理か」


 二人は眉間に皺を寄せて、羨ましがりながら道なりに進む。


「地下鉄の入り口?」


「この下に転移装置がある」


「転移装置、ギルドの奴と同じか…。

 こっちでも稼ぐ必要があるのか?」


「それはない、自由にこの世界の街を移動できる」


「それを聞けて良かった。

 だが、…移動する必要があるのかどうか」


 地図と照らし合わせ、細道を抜けて辿り着いたのは工場の様な場所だ。

 敷地に入ると、出入り口付近でバイクの様な物をいじくる下半身が蛇の女性が居た。

 その女性が二人に気が付き、話しかける。


「なんだい? 銃の注文? それとも魔動バイクの修理かい?」


「え、あ、その、招待状を貰って」


「ん?」


 そして羊皮紙にを手渡すと、二人の知らない文字で書かれた物を読み、女性の顔が見る見るうちに明るくなっていった。


「え!? ミナモちゃんからだ! 何処にいたのか!?」


「え、あ、その」


 その招待状が本物で安堵したが、女性がジェザイアの肩を揺すり、そしてジェザイアを肩に下げて建物へ入って行った。


「ミナモちゃんに会った人が来たよ! 手紙もある!」


 そこに居たのは死んだ目になりながら銃器を作る作業をしている者達が居た。

 その光景にジェザイアは目を丸くして感動するが、その目が死んだ者達はまるでゾンビの様にふらふらとしながらラミアの女性に縋りつく。


「ミナ、モォ」


「しご、とぉ」


「もど、て」


「しごと、いや、かえり、たい」


「ひぇ…」


 その光景にシェザイアは怯える。

 後ろで見ていたオルバも引いてしまうほどだ。


「寄るな寄るな、ミナモちゃんは帰ってこないんだ、頑張って仕事しないといけないんだよ。

 ほら、戻った戻った」


 本当にゾンビの様に唸り声を上げて席に戻っていく。

 シェザイア達は安堵から不安へと突き落とされた。

 そして奥からミナモが言っていた白い男性がやってくる、その表情はあからさまに不機嫌で、モノクルを外して睨みつける。


「ハイリーン騒がしいですよ」


「バッティ、見て見て、ミナモから手紙だよ」


 九尾の男性は、ミナモという単語を聞き、あからさまに嫌な表情をしながら近づき、ハイリーンというラミアの女性から手紙をもぎ取る。


「…はぁ」


 バッティは心底呆れた様に溜息を吐き、鋭い視線を二人へ向けた。


「バッティ、どうしたの?」


 渡された手紙を無言でハイリーンへと差し出す。

 それを見て笑った。


「140人近く? 難民?」


「全く面倒な事を押し付けて」


「でも、南の『スラック』潰したって書いてるよ。

 それにこき使っていいって」


「え?」


 こき使う、その言葉にシェザイアは目を白黒していた。


「使い物にならないかもしれないけど、鍛えても良いって、ミナモみたいに消えちゃったりするみたいだよ」


「チッ、アイツが仕事をすれば少しの納期を短くできるというのに」


「あ、あの」


「来い、さっさとやりますよ」


「な、なにを?」


「お役所を動かすのは大変です。

 付き合ってもらいます」


 有無を言わさずシェザイアを連れて席に座らせる、そして何故か外に居たはずのオルバが突然室内に飛ばされ目を白黒させて固まった。


「え?」


「逃がしませんよ、さっさと席に付け」


「て、転移?

 …お、俺は強くなる為に」


「四の五の言わずに書類を書け。

 後で強くしてあげます、どの道銃器には知識が必要なのです、全て覚えてもらいますよ」


 とんでもない所に来たと二人はやっと後悔し始めた。


 ☆☆☆


 とある平凡な街の一角で、ミナモが一人木に寄りかかり空を眺める。

 街外れにあるその木は大きく、街を見守っている様であった。


「久しぶり」


 ミナモは誰も居ない場所へ目掛けて声をかける。

 次の瞬間そこからすっとかつて出会った男性が現れた。

 彼の名前はフォルン、その人物はゲーム開始後初めての依頼でミナモ達を監視していたアウトセンスを使う人物である。


「何か様?」


「返答を聞きに来ました」


 返答、それはかつてフォルンが掲げた目標。ミナモから見ればただの願望である。

 その願望を聞いた時、ミナモは目の前の人物の正気を疑った。


「まだあの言っていた事をやるつもりなの?」


「はい」


「面倒な人だなぁ、やりたければ最初の街、…名前なんだっけ、メルなんとかを壊滅させればいいだけじゃない」


「それでは意味がありません。

 それにこの半年、貴方はこの世界がどんなものか把握したでしょう?」


「把握ねぇ」


 ミナモが半年を通してこのゲームの事をどう受け止めたかと言えば、至って単純。


「みんな一様に己の楽しさを見つけようとしてるけど」


「本当にそうでしたか?」


「……周りに合わせて生きてる感じがしたかな」


 ミナモから見れば楽しそうだとは思うが、実際は何かに囚われており、身勝手に動けないそんな様子を見て取れていた。


「ある奴等は情勢に振り回されて、ある奴は面白みも無くプレイしたり、初心者は型を押し付けられて困ってたりと。

 …自由なのに窮屈な思いしてるって印象」


「ええ、それは私も思います」


「…君さ、一体何が望みなの? 好き勝手やらせておけば良いじゃない」


 難色を示すと、フォルンがため息を吐いて呆れる。


「だから意識改革ですよ」


「そうじゃないよ。

 君自身の本当の目的、上っ面じゃない方」


 真意でも見透かしたようにミナモが口にする。

 フォルンは無意識に目を泳がせたが、動じないよう様子を見せて話を続ける。


「…つまらなく無いですか?」


「その人にもよるとは思うよ、私は楽しいと思う事もあれば、退屈も感じてるけど。

 逆に君って、普通に楽しんでるよね?」


「はい?」


 尋ねらられた時フォルンは心外そうに首を傾ける。


「だってどうやって煮て焼いてやろうか、みたいな感じで口角上がってるじゃん」


 本当に心外だったのか、自分の口に手を当てて不思議そうにしていた。


「私、見てたよ、君があの崩壊した街を見てほくそ笑む顔」


 清廉の化身が街を壊滅させたとき、あの場にはフォルンが居た。

 その表情は誕生日に欲しいおもちゃを手に入れた子供の様に、心の底から無邪気に微笑む表情そのものであった。


「普通嫌ならやらない、嫌になっても続ける人は居るけど、それは心の何処かでそのゲームの何かに縋ってる、希望を感じてるからだよ。

 君はこのゲームに何かを期待してるよね?」


 表情が消え、無感情な能面を張りつかせた顔に変わった。

 フォルンは改革をしたいと言っていた。

 このゲームのプレイヤー全ての意識改革を目指している事は分かっていたが、その改革内容をミナモは分からなかった。

 しかしこの半年を過ごしてフォルンのしたい事が分かった。


「他ゲーにルール持ち込むとか、過疎化の心配に懸念を抱いてるみたいだけど、…それって本来の目的の副次的な面だよね?

 例えば、メインの目標は……大事な誰か?」


 その一言で空気が凍りつき雰囲気が張り詰めた。

 フォルンとミナモの中間の地面に亀裂が走る。


「ははは、冗談だよ冗談、そう怖い顔しなさるな」


 地雷を踏み抜いた様であるが、ミナモはそれをたいした問題とは捕らえていなかった。


「まあまあこのゲームに掛ける情熱はすさまじい人が多いのも分かるよ。

 他で迷惑かかっているのも知ってる」


「…私はただ他にルールを持ち込んで欲しくないだけですよ」


 最近はWLMを知り初めてネットゲームを始めたという層が多く見受けらていた。

 その為ゲームルールをWLM基準にして、そのルールを他のゲームに持ち込む場合があった。

 WLM事態ローカルルールが蔓延しており、そのルールが他に持ち込まれるのは健全でない為、非常に周りから嫌われていた。

 さらに事態を悪くしているのは、他のゲームに人が集まらない事だ。


「確かに私もそれは思うけど、それも一つの楽しさじゃないかな」


 時代が変われば楽しみ方も変わる、このゲームを切っ掛けにネットゲーム自体の人口は増えていた。

 停滞していた環境に新しい風を取り入れる事は悪くない。

 しかし他のゲーム目線で言えば、新しい風を素直に歓迎は出来ない。


「まあ、他ゲにルールを持ち込まれてうざいのは確か」


「…なら」


「だから、私は君の、君達のやろうとする事は応援はするよ、手を貸したり支援はしないけど」


 すっとミナモ周りに6人の人影が現れた。

 それは威圧をしている様であるが、ミナモはそれを涼しく流して鼻で笑う。


「なにせ、私はそろそろ他のゲームに目を向けるつもりでいるからね」


「辞めるのか?」


「辞めないよ、ただ別にこだわる必要もないと思っただけだよ」


「合理的だな、だが、他のゲームだと?」


 フォルンとは違う人物が尋ねる。


「昔のゲームだからと嫌煙してたけど、なかなかどうしてプレイしてみると面白いもんだよ、VRじゃなくてもね。

 それにあと少しで他のネトゲも始まるんだ」


「それは羨ましい事で、人が来ると良いな」


 皮肉を投げかけるが、感謝で返す。


「ありがと」


「…皮肉か?」


 煽り返されたと思ったのか、好戦的にその人物が一歩踏み出した。

 ミナモはニコリと笑い。


「退屈凌ぎをしましょう、君達だってその口でしょ」


「話が早いな」


 退屈は戦いで埋める、ごく一部の思考の持ち主ではあるが、フォルン達のグループの一部は退屈を持て余していた。

 ミナモが立ち上がると、可愛らしいため息を吐いた女性の一人が指を鳴らす。

 次の瞬間には何処とも分からぬ黄昏の荒野に放り出さる。その場には全員が居た。

 さらに次の瞬間にはミナモと喧嘩を売った男が接近し、ミナモの片足が吹き飛び、男の体に無数の傷がついた。


「ひぇッ…」


 誰もが強いわけではない。

 その場には状況を理解できていない者も居た。

 非力な者達をカバーする様に、強者が半透明なバリアを展開して離れた位置に急いで転移する。


「どうした! その程度の攻撃か! 早いだけで致命傷にもならんぞ!」


(受けきってカウンターぶち込みやがった。

 そうか、このゲームあの超Zクソゲーと違って、こういう事も出来るんだな…)


 アウトセンス前提の格闘ゲームでは、互いの防御力や体力が同じで、攻撃を耐え忍んでカウンターを撃つという事が出来なかった。

 ミナモはそのゲームを基準に戦いに挑んだため、愚策だったとこの時後悔した。

 瞬時に欠損部分を再生させようとするが、相手側は再生される前に攻撃を仕掛けてくる。


(私の方が早いが、…一撃が重い、スペック不足か?)


 相手の攻撃力はミナモよりも高く、そして防御力も高い。

 純粋なステータス負けており、今のミナモではこのままでは負けてしまう。


(けど、相手もダメージは食らってるし、何とかなるだろ)


 相手の攻撃を受け流し、攻撃を拳を叩き込むのだが。


「チッ…」


 強く叩きこんだ時、拳から腕にかけて亀裂が走った。

 亀裂が入り腕が歪み、次仕掛けた攻撃の間合いが狂い隙を生まれる。

 相手がその隙を見逃すことなく反撃を叩き込んだ。


「オラッ!!」


 一撃は胴体を貫き、体に大穴を開けてミナモが吹き飛ぶ。

 さらに追撃を入れようと吹き飛んだミナモに肉薄するが、ミナモは体制が整っており逆に相手へ攻撃を叩き込んで落下させる。


「…脆い体だな」


「ハッハッ…、お前、なかなかやるじゃないか」


 純粋な腕だけはミナモに分がある。

 しかし本気の一撃を叩き込んだ時のミナモのアバターがそれについていけなかった。


「貴方の意思ではそのアバターがついて行かない」


 何処からともなくフォルンの声が響き渡る。

 ミナモはため息を吐きその言葉を受け入れ、八つ当たりに相手へ神速の一撃を叩き込む。

 相手は何が起きたのか分からず、地面に埋め込まれて空を見上げていた。


「……ヤベェな、その一撃」


 体を見ると、自分がしたように穴が開いていた、その穴を埋める様にミナモの腕が二本食い込んでいる。

 その腕はハラハラと消滅していき、穴が開いた状態になった。

 焦り汗を流す男がミナモを見上げると、魔法による攻撃を開始しており、波の様に様々な魔法が降り注ぎ始めた。


「シューティングゲーしよう、寧ろSTGと言っていい」


 体は再生しており怪我などない。

 しかしそれは相手も同じで、回復しては攻撃を食らい、どんどんと接近していた。


「クソッたれぇ!」


 小賢しい攻撃を突っ切り、互いに削っても削っても終わらない戦いが始まった。

 どの攻撃も致命傷にはならない、泥沼な戦いで、その戦いを見ている者は呆れるばかりだ。


「本当にこのゲームはおかしい」


 その言葉はアウトセンスに至れない者の発言。

 異常な戦いについて行けない、だから呆れるしかなかった。


「ゲームバランスが終わってる」


 それは戦いについていける者の発言。

 強くなり過ぎて、体力を削り切る事が出来ない状態の為、対人戦で勝敗が付かない事を嘆いていた。


「では、幕引きにしましょう、彼女は手を貸してくれそうにもないので。

 それに楽しんでもらっては困ります、我々は都合のいいサンドバッグじゃない」


 フォルンはミナモに楽しまれているのが癪であった。

 退屈しのぎに対立され、自分達で暇つぶしをされては困る。

 それを聞き、実力者数名が飛び上がり男に加勢する。


「それで笑うか」


 状況は完全にミナモが不利ではあるが、乱入者を見てミナモの口角が釣り上がった。

 楽しませるわけにはいかず、一瞬で決着を付けようとした。

 その目論見は一瞬で叶い、息の合った連携で一瞬にしてミナモの身体が硬直し、そして右半身を消し飛ばして地面へと叩きつける。


(くっそ、なんか変な能力的なので一瞬で体が動かなくなった、…つまらん)


 恨みがましく睨み付けていると、そのミナモの元へフォルンが降り立つ。


「永続的にこのゲームから退場してもらいたいほどです。

 本来ならばここで呪いで行動不能にしたい…のですが、貴女のその体は異常なくらい脆いですね」


 フォルンは深々とため息をついて目を細める。


「その体、偽物ですか?」


 強さと肉体の強度が釣り合っていない。

 レベルが低いというわけでもなく、純粋に肉体が貧弱なのだ。


「残念ながらこれが本気だよ」


「……下手な呪いをかけるのも危険そうですね」


「あら?」


 フォルンの手にはどす黒い靄が沸き上がっていたのだが、それが消えて行き踵を返す。


「動いているだけで身体に亀裂が走っていたようですが、どうすればそこまで脆弱な肉体になるのか。

 今の状態なら封じる必要もなさそうですね」


「おいおい、放置していくのか? 計画じゃ呪いを植え付けるって話だったじゃないか」


「呪いは強い力です、それを下手に取り込まれたりすればそれはそれで厄介な事態になりかねない。

 弱体化しているならばそれに越したことはありません」


「…チッ、弱体化してるのかよ。

 全力と戦って見たかったぜ」


「それはどうかな?」


 ミナモが口角を吊り上げるが、フォルンはたいした興味がなさそうで5人の居る場所へ飛んで行った。

 戦っていた男は不満そうにしていたが、7人が揃うと踵を返してその場から去って行った。


「はぁ…」


 ミナモは退屈そうに天を仰ぐ。


(本当にクソゲ上位だったのか? それともこのゲームだったから警戒した?)


 戦いのさ中見ていたフォルンからは余裕を感じられなかった。

 直接戦ったわけではないが、かつて見た上位陣の風格や雰囲気は感じられない。


(けど、どっちにしろ今の私じゃ無理か)


 肉体の再生が終わり、立ち上がろうとしたのだが、力を込めた足と地面についた手がボロっと崩れ落ちる。


「…この肉体の限界か」


 魔力を込めて浮遊して起き上がるが、魔力を込めただけで肉体にヒビが入り肉体は乾燥した泥の様に割れていった。


「んー…」


 唸ると砂の様に崩れ去っていき、そしてミナモは『目を開けた』。


「はぁ、結局これが限界か」


 ティーテーブルの上にカップを置き、視線を逸らすと湖畔から反射する光に目を細める。

 小鳥のさえずりを聞きながら背を伸ばして一息つき青空を見上げながら呆ける。


「めんどくさい縛りだなぁ、本当に」


 小綺麗な白を基調としたロリータ衣装に身を包み、優雅に紅茶を啜っていれば何処かのお金持ちの子女に見える。

 紫色の瞳が宝石の様に煌めくと、ミナモは再び目を閉じて溜息をついた。


「お嬢様、御代わりはいかがですか?」


 音もなく近くから女性に声をかけられる。

 そこには文字通りの青白い肌をした女性がゴシックのメイド服を着こんでいた。

 頭部から烏賊のエンペラ状の白い角が生え、どす黒い青色の髪が垂れ下がる。

 一見角と肌の色が違うだけに見えるが、下半身は烏賊や蛸の様な八本の足が生えている。艶やかで艶めかしい足には整った吸盤とその先の一部に金魚の様な綺麗なヒレが生えていた。


「カルフ、もういいよ」


 2.5メートルほどの大きな彼女はにこりと微笑み、少し長い腕と指を器用に動かして紅茶のカップをかたずけていく。

 カルフと呼ばれた彼女はNPCであり、ミナモに付き従う従者の様な者だ。

 カルフはロッジ内部に頭を下げて入っていき、奥にある台所で片づけを始めるが、傍には石が転がっていた。

 その石は人間の手の様形をしており、他にも頭部や足といった、石像の破片が転がっている。

 それだけではない、このロッジの周りには石像がバラバラになり転がっていた。


(頭が痛い、一か所に留まるものじゃないな…。

 まあ、所詮盗賊だから別に良いけど)


 周りの石像の破片は実際に生きていたNPCである。

 それをカルフが石像に変えて芸術品として飾っていた。


『景観が損なわれる』


 その言葉度と当時にカルフはショックを受けた。

 次の瞬間には有無を言わさずにすべての石像を砕き笑みを浮かべていた。


(変なのに懐かれたよな、まあ、便利だから良いけど)


 元々はどこか適当な場所に封印されていた存在だが、それをミナモが封を開けて一方的になぶって倒した。

 それを引き金に何故か懐かれてミナモに従順な従者となってしまった。

 それ以上のことなど一切無い、それがカルフとの語る事も無い出会い。


「はぁ、…現世に干渉できないの辛い」


「わたくしが用事を済ませましょうか?」


 吐き出した愚痴を聞きつけてカルフが瞬間移動をして傍に現れる。

 ミナモが立ち上がろうとするそぶりを見せると、瞬時に椅子を引いて手を差し伸べる。

 長い指に手を乗せて立ち上がると、カルフはお姫様抱っこをする様にミナモを抱えた。


「新しい身体の素材を取りに行こう」


「かしこまりました」


「自由に動き回りたい…」


「今はご自愛くださいませ」


 ミナモは黙り、身体を預けて別な世界へと消えて行った。

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