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嫌がらせ少女は大志を抱けない。~めっちゃ強い少女はただ無双する事が出来れば良いなぁって思いました~  作者: せいゆ


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落ちぶれて落ちぶれず その2




 ミナモは監獄の生活風景が気になり観察する事にした。

 目標が無いわけではないが、見知らぬ土地という事で観察対象にはなっている。


(…1~2時間程度でどっかいくか、見ててもたいして面白さも無いし)


 この監獄での生活基盤を整える為に各々が道具などを作ったりしていた。

 眺めていても面白みも無く、独特の雰囲気を味わい十分堪能したところで、この場を出て行こうとする。

 そんな時出入り口で話しかけてきた男性が再びミナモの元へやって来て話しかける。


「お前は何をやってるんだ?」


「ただ眺めてた」


「眺めてても仕方ないだろ」


「そうだね。

 …けど、逆に聞くけど、皆なんでここを出ないの?」


「……出れないんだよ」


「なんで?」


「外は強いのが多すぎる、直ぐにやられて出戻りになる」


「ふーん」


 弱いモンスターはこの監獄周辺にしかおらず、そこから一歩先に足を踏み入れれば途轍もなく強いモンスターが跋扈する様になる。

 意味もなく出歩く事も出来ず、厳しい環境となっていた。


「ただここを出て行った者、オルバならきっとルートを築いてるはずだ…」


「でもアバター消したかもしれないんでしょ?」


「そうは言われてるが、…俺は消したとは思えない」


「その心は?」


「あの頃からすでにアンダーグラウンドとして活動していた、一から再び活動してまたアンダーグラウンドに登り詰めたとも考えにくい」


 彼は自信満々に少しだけ誇る様に口にした。

 ミナモはその事からモンスターを倒しながらこの場を抜けて行った強者と判断し、オルバという者に興味が湧いてきた。


(手合わせしてみたいものだ、…とは言え、この世界じゃない所に居るみたいだし、そろそろ戻ろうかな、この世界に用事も無いし)


 ミナモは彼との話を得て帰ろうかと思っていると、その時頭上から階段を使わずに一層ずつ飛び降りてくる者の存在を感知した。

 軽快な足取りで降りてきて、近くに降り立つと、その音に反応して話しかけていた彼はそちらの方に視線を向けた。


「―――オルバ」


 アンダーグラウンドのオルバ、噂のその人が偶然にも目の前に現れた。

 オルバはカーキ色のマントを羽織り、口元を覆わないドミノマスクの様な黒い般若の面を被った男性であった。

 彼は驚きながらも唖然とし、そんな彼の前にオルバが歩いてやって来る。


「……まだここに居たのかシェザイア」


 彼、シェザイアはその言葉に息を飲み、そっぽ向いて俯いた。


「お前と俺とは違う…」


「そうだな」


「――ッ」


 素直に口にするオルバの言葉にショックを受け、シェザイアは拳を強く握りしめる。

 ミナモは二人に何かしらの因縁があると分かったのだが、口を出す事も無く雰囲気を変える為にフランクに立ち回る。


「やあやあ、なんか関係あるんだろうけど、普通に挨拶は大事じゃぞ」


「何だお前は」


「一時間くらい前にここに来たものだよ、親しき中にも礼儀ありですぞ」


「お前には関係ない」


「せやな、だが挨拶は大事、つまり挨拶をする、ドーモよく分からない人さん、ミナモです」


 馬鹿らしくなったのか、オルバは視線を逸らし挨拶をする事は無かった。


「…空気良くならんなぁ、さてはコミュ障だな」


「もう良いから」


 そんな事を言っているとシェザイアがミナモを止める。

 ミナモは口を閉ざし、二人のやり取りを見守る事にした。


「…シェザイア、ここを出ろ」


「弱いから、出れない、直ぐにやられる。第一何処へ行けばいいんだ」


「何度も試せ、限界以上の力を出せ。

 それにこの世界は力をくれる、だからこそ俺は舞い戻って来た」


「力?」


 シェザイアが尋ねると、オルバは懐から一丁の拳銃、リボルバーを取り出した。

 5発装填できるシリンダーの付いた変哲もない銃器である。

 しかしそれを見てシェザイアは目を見開き驚く。


「銃、だと? …使い物になるのか?」


「無論だ。

 俺はこれを修理に来た」


「使い物に……、そんな、あれだけ苦労したのに、まさか、そんな…」


 シェザイアはとてもショックを受けていた、それだけ革命的なものである様だ。

 このゲームでの銃は使い物にならないというのが定積だ。銃自体は作れるのだが、火薬を使って打ち出すと銃本体を多くても二発程度しか撃てず内部から壊れてしまう。

 火薬の量を減らしてしまうと威力が落ち、強敵と戦うとなると、火薬の火力を上げ弾丸の威力を上げてもモンスターに太刀打ちできなくなってしまう。造るのも大変で、さらに本体を使い捨てとして扱う為、ただの嗜好品や趣味で持ち歩く武器となっていた。


「見せて」


 ミナモが手を出すと、オルバは無視してシェザイアに銃を手渡す。

 シェザイアは銃を手に取ると、解体する様にパーツを取り外していき確かめ始めた。


「…本当に何発も撃ってるのか? それにしては破損が、これは、なんだ?」


 シェザイアは魔法を使い小さな光を作り出すと、見えない部分を照らし、さらに拡大鏡を取り出し内部を確認し始める。

 銃身とその内部のライフリングと呼ばれるらせん状の突起を眺めて、そこに何かがあるのを確認し、シリンダー内部と照らし合わせて確認し始めた。


「これは、文字? こっちは、…ここが破損してるのか」


「そうだ」


 二人は何処か楽しげな様子である、しかし真逆にミナモはその銃を少しだけ凝視すると、溜息を深々と吐き興味を無くした。


「この文字の細工が強度を上げているのか?」


「正解だ」


「これが必須だというのならば、相当な技術が必要だぞ…。

 金型でどうにかなるのか? いや、そもそもライフリングも付けなければならない。

 弾丸、それと火薬にも手を加えなければならないのに、……凄い技術だ」


 シェザイアは感動するほどその銃器に関心を向けていた。

 しかし同時に何故この場所に舞い戻って来たのか、それがシェザイアの感動を少しだけ削がれていた。


「この銃については理解した、だが何故突然今ここに来たんだ? 壊れたから以外にもあるんだろ?」


「…近々戦争が始まる、NPCとPC、全て巻き込んだ大きな戦いだ」


 その言葉に再び興味がわき、驚くシェザイアを差し置いてミナモが尋ねた。


「それは何時開戦するんだい? 情況的に少し先になりそうだと私は思ったんだけど、切っ掛けを作るのかい?」


「それは知らん、だがアイツが自信あり気に言っていた、近い内に――――」


 そこまで口にし、突然オルバが振り返る。

 そちらの通路を凝視し、素手で構えた。


「久しぶりじゃぁないかぁ、オルバくん」


 暗闇からぬっと少し筋肉質な男が現れる。

 上半身をはだけさせ、下半身はジーンズを世紀末風に飾り付けた格好であった。

 目がぎょっとしたパイナップル顔の男が、ぎょろりとオルバの睨む。


「スタルコ…」


 名前を呼ばれればニッと笑みを浮かべ駆け出した。

 オルバも踏み込み彼が遠慮なしに足を大きく上げて円を描く様に横から蹴りを入れる。

 その速さにシェザイアが少しだけ驚きながらも、腕で防ぎ、受け止めきれずに転がり打ち付けられる。


「弱くなったなぁ、オルバく~ん、自慢の銃はどうしたんだぃ?」


 そしてゲラゲラと笑うと、癖の様にオルバが銃を引き抜く。

 スタルコはぐっと拳を構えて何時撃たれても良いように防御姿勢を取るが、オルバは銃を損傷を思い出して仕舞う。


「な、なんだぃ? 撃たないのかい? …撃てよ、撃ちなよぉ!!」


 叫び再びオルバに襲い掛かる。

 スタルコの猛攻にオルバも迎え撃つが、肉弾戦ではオルバは防戦一方で反撃が出来ない。


「そうやって見下してぇ! お前はいつもそう!」


 何も言わず、ただ相手を睨むオルバ。

 時に踏み出して反撃をしようとするが、付け焼刃の肉弾戦にスタルコの方に分があった。

 拳を顔に叩き込まれ、転がり情けなく地面に横たわる。


「このぉ! 糞…、何時も何時も、お前は」


 その時、ミナモは隣に居て慌てた様子のシェザイアに手を引く。

 次の瞬間、スタルコの腹部から爆発が起き、吹き飛び地面にめり込む。


「な、なにが、お、きて」


 爆発音にくらくらとして、シェザイアがよろめく。

 洞窟内部で高音は犯罪的なほど効く、真面に耳が機能するようになるまで時間がかかりそうだ。

 しかしダメージは無く、不思議そうにしながら周りを見回し、慌ててオルバの元へ向かった。


「だ、大丈夫か?」


「……ああ」


 よろりと起き、血まみれのスタルコを睨む。

 どちらもダメージは大きいが、一撃でスタルコの体力が一割まで削られてしまった。


「なにを、したんだ?」


「手榴弾をズボンに仕込んだんだよ。

 手癖悪いねぇ」


 ミナモが解説すると、オルバはちらりと見て答えない。


「ところで、爆発から守ってあげたんだから、感謝は?」


「え? そ、そうなのか?」


「感謝は?」


「あ、ありがと…」


 納得が出来ないが、感謝するしかない。

 ミナモは水玉を作り出すと、壁にめり込んだ彼へとかける。

 傷が治っていき、力任せに壁から這い出て落ちる。

 何故回復したのか、シェザイアは慌てながら無言で睨むが、ミナモは一切反応が無い。


「君、回復して上げた私に感謝は?」


「すまねぇな、ありがとよぉ」


「どういたしまして」


 スタルコはシェザイアと違いノリが良さそうだ。

 しかしオルバを見ると眉間の皺を寄せて鼻を鳴らす。


「道具に頼り切ってぇ」


「人間は道具を扱ってこそだ」


 睨み合い雰囲気は最悪である。


「お前は何時も、輪を乱して」


「ゲームは自由だ、分から弾いて無視すれば良い」


 ミナモは一人欠伸をして退屈そうにそのやり取りを眺める。

 なんとかしおとシェザイアが揺すり、その一触即発の状態を何とかしてと訴える。


「主義主張が違うなら、こういうのはぶつかり合って禍根を残すか残さないか、どっちかで別れればいいんだよ」


「な、なんでそう言う事言うのかなぁ!」


 求めていた答えにはならず、シェザイアは思わず突っ込みを入れてしまった。


「お、良い突っ込みだね、ツッコミキャラ向いてるよ」


「ボケをする場じゃないから!」


 そのやり取りで気を抜けたのか、2人は深々とため息をつく。


「やる気がうせたぁ」


 そしてスタルコは振り返り洞穴へと戻っていく。

 シェザイアは先程の戦闘でボロボロになった着衣に土ぼこりを払い、囚人街の方へと歩て行った。

 慌ててシェザイアもついて歩き、ミナモもその後ろを追う。


「君等楽しそうだね」


「…お前だけだぞ、そう思ってるの」


「他人事だから」


「うぐっ…」


 殴りそうになったが、殴った所でひょうひょうと避けていくのが何故か分かった。

 そんなミナモにオルバが尋ねる。


「お前、相当な実力があるな」


「あったりめぇよぉ」


「しかし名前も見た目も噂には無い」


「そりゃそうだ、あ、でも指名手配されてたみだいね」


 オルバは調べると、該当がありあまり似ていない似顔絵を見て鼻で笑う。


「宗教に喧嘩を売ったのか」


「あっちが売って来たんだよ、買わなきゃ損損」


「お前濡れ衣だって言ってなかったか?」


「それはそれ、これはこれ」


「お前なぁ」


 馴染まない理由を察しながら、オルバへと尋ねる。


「これからどうするんだ?」


「少し狩りをして装備を整える。

 そして街へ向かう」


「…あるんだな、本当に」


「俺達は文明人だ、揃えて、後は頭を使って行くだけだろ」


 ついてこいというオルバに、シェザイアが押し黙る。


「そんな迷う事?」


「…何度チャレンジしても、森から抜け出せない。

 それに、あの先、山まであるんだぞ」


「それを試行錯誤で行くのが良いんじゃないか。

 ま、ルート君が分かるみたいだけど、ついていくなら別にそう悩む必要だってないでしょ」


 しかしそれでもシェザイアは悩む。

 ミナモは何故悩んでいるのかある程度推測がついていた。

 オルバは分からないようである。


「何故悩む、行かないのか?」


「おいおい、悩んでいる理由も分からないのかい?」


「何故だ?」


「プライドさね、君にもあるだろ、プライド」


「…プライド」


 確かにプライドはもっている、それでも分からず、口を閉ざして見守るしかない。


「おんぶにだっこ、意外と嫌なもんだよ」


「一々言うなよ」


 察したなら黙っていて欲しい、そう願うもミナモは気にせず口にする。


「良いじゃないか、言われて改めて認識できるってもんよ。

 一度気を許してしまうと、次、また次って頼りっぱなしになっちまう」


 シェザイアは一歩を踏み出せず、頼れば頼りっぱなしに、限界を感じていた。


「だが動くしかないだろ」


「その通りだけど、…できないって結構負担なんだよ、分かるでしょ?」


「その為に足掻くんだ」


「違いない」


「……足掻く」


 動く事で始まる、その動く選択肢に光が見え、プライドという檻がその先へ進む事を拒んでいた。


「ふぇぇぇ、一歩踏み出す勇気が出ないよぉぉ」


「ぶっとばすぞ」


「そこでぶっ叩かないあたり、行動力低いよなぁ」


「…普通見ず知らずの相手に戦いないだろ」


「それもそうだけど、バンディットプレイしてるんだから別に良いじゃん」


 押し黙ってしまい、ミナモはオルバに睨まれた。

 肩をすくめ、ミナモの口を閉ざして人々の営みを眺める。


「…まあ、きっと、そういう落ちこぼれてしまった、ここはそんな世界なのさ。

 辛気臭くて、光を求めて輝けない」


 そしてミナモはシェザイアの頬を抓り。


「光を浴びに行きなさい、ここに居ると腐り落ちるよ」


 傍では上層の死体を輸送している者達が居た。

 そちらの方へ向けさせ、虚ろな目で淡々と運ぶ者達を見せる。

 自分がそれと同じだと思うと、とても嫌な気分になり、シェザイアは振り払い走り出した。


「青春だねぇ」


「お前もだろ?」


「良きかな良きかな」

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