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嫌がらせ少女は大志を抱けない。~めっちゃ強い少女はただ無双する事が出来れば良いなぁって思いました~  作者: せいゆ


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テイマーは面白い? その8




 血の匂いと悲鳴が広がり、火の手が空を照らす。

 叫び声を聞きつけたミナモ達は渦中の白い人型と対峙する。


「な、なんだ、あれ……」


「ひ、人?」


 その中で知っているのはミナモだけで、畏怖を抱く人々の中ミナモだけが懐かしさを抱き眺める。


「久しぶりに見たよ、『清廉の子兵』」


「清廉の子兵?」


「肉体が変化しきった人間の姿」


「……間に、合わなかった?」


「そりゃそうだ。

 まあそんな強くないし、さっさと倒して他の子兵も倒さないと大変だよ」


「ほ、他だと!?」


「そう、この家以外に、あっちの民家とあっち、それからそっちの森の方に三体村人虐殺中だよ」


「どうしてこんな事に…」


「さあ? 何か理由があるんだろうけど、私には分からない」


 山で戦っていたメイアが清廉の子兵を撃破したのを確認し、それが引き金になったのではないかと予想するが、本当の所は不明である。


「ほらほら襲ってくるぞ」


 手をパンパンと鳴らして注意を促すが、プリスターも店主も呆けたままであった。

 判断が遅れたせいか、清廉の子兵が身を縮めたことにもワンテンポ遅れ、身を解放したところで清廉の子兵が高速で飛んできて店主を下敷きにして踏みつぶした。

 衝撃でプリスターが吹き飛び転がり、見上げた時には店主が血の池と肉片と化していた。

 それを見た瞬間プリスターは刀を抜き飛び出し清廉の子兵へと切りかかる。


「―――――ッッ!!」


 しかし。


「カハッ!?」


 剛腕の振り下ろして再びプリスターが吹き飛んだ。

 同じく振り落とした衝撃波が、ミナモのそばに居たイトウが跡形もなく消し飛び、天に召され消えて逝った。


「あ~あ、イトウさんの無死亡記録が終わっちゃった…」


 従魔は死んでも復活が可能だ。

 しかし死亡時にペナルティがあると言われていて、進化や何かに影響があるともっぱらの噂である。

 死亡時のペナルティについて検証しようにも、育て方や個体で差がある為検証しようもなく、あくまで噂だけが広まっていた。


「まあ、仕方ないか、何時かどっかで終わると思ってたから」


「姫!」


「姫じゃないよ」


 プリスターが再び戦線に復帰し、居合切りで相手に攻撃を仕掛けるが、攻撃は腕にめり込み途中で止まる。


「此奴ッ!?」


「武器を離して逃げた方が良いよ」


 驚くプリスターに警告するが、切った場所が瞬時に回復していきどんどん刀を取り込んでいく。

 なんとしてでも引き抜こうとするプリスターだが、腕を振り回されてプリスターが吹き飛んで行ってしまった。


「予備とか無いの?」


 地面に叩きつけらたプリスターに尋ねるが、返答する余裕はない。

 予備ではなく別な剣、鋭いサーベルを取り出してなんとか起き上がり武器を構える。


「がんばれがんばれ、これを倒して後16匹ともう一匹別な奴だ」


(何が、弱い、ですか…、滅茶苦茶、強すぎますよ、…おまけに後16? 冗談でしょ?)


 ミナモ基準というよりも、ヴァルアク基準で言えば清廉の子兵は雑魚の部類に入る。

 ヴァルアクでの出現時期を考えると中盤付近。その頃には色々と対天使用の武具や魔法などあり、道中に出てくる雑魚でしかなかった。


「それよりも姫! 攻撃来るよ!」


「あー、そうだね」


 ぐぐぐっと清廉の子兵が手を挙げて拳を握る、天高く掲げた手はミナモの方を向くと今にでも振り下ろそうとしていた。


「五月蠅い奴ね」


 清廉の子兵の口から女性の声が聞こえてくる、それにプリスターは驚き目を白黒していた。


「一応言っておくけど、私に攻撃しちゃダメだよ、死ぬよ」


「それが命乞い? もっと必死に強請ったらどう? 貴女のちっぽけな命よりも大きく、ね」


「本当に攻撃しちゃダメだよ、フリじゃないからね、絶対だよ」


「どちらにしろ生かさない、この世界を浄化しなくてはならないのだから」


「姫ぇッ!?」


「だから攻撃は――」


 次の瞬間鮮血が迸った。

 プリスターが叫ぶと清廉の子兵は巨大な拳を振り降ろされ、鮮血を周囲へまき散らす。


「姫ッ……、え?」


 潰された、そう思っていたはずだが、目を閉じた次の瞬間には清廉の子兵の腕が消し炭になっていた。

 尻もちをつき、何が起きたのかわからぬまま清廉の子兵がミナモに視線を向けると、そこにはミナモは居ない。


「浄化が何なのかを教えて差し上げましょう」


 代わりにそこに居たのは真っ赤な炎のドレスを纏い、長い薄紅色の髪を靡かせる、ミナモと瓜二つの少女であった。

 髪の色と服以外にも、瞼の切れ目から青紫色の炎が零れそれが瞳の様に見える。

 ミナモが手に持っていた大剣は、ひび割れた場所はまるで血管のように深紅が張り巡らされ胎動しはじめる。


「…姫?」


 プリスターが小さく呼びかける、それに答えることなく、プリスターが瞬きした次の瞬間には清廉の子兵が上半身から蒸発するように消え去っていた。

 ミナモは大剣を突き出していただけで、何をしたのか理解できていない。


「強さはたいして変わらない、かもしれないなぁ」


 瞬き、次の瞬間にはミナモがプリスターの傍に立っていた。


「姫、一体何が、起きてるの?」


「クックックッ、我はこの世界を滅ぼす破壊神なり~、って、そういうロールプレイの雰囲気じゃないよねぇ」


 腰を抜かしていた一般人が慌ててミナモ達の元へやってくる。


「た、助かるのか?」


「え~、助けるのぉ? どうしよっかなぁ」


 ぶりっこの様な声色は場違いで、悪夢でも見ている気分であった。


「…竜神様、助けてくれぇ」


 村人が無意識に祈りを捧げる。

 そこでプリスターが竜と言う単語にハッとなり村人の肩を掴んだ。


「竜神、竜神様です! そうです! 竜神様を祭る場所になにかあるかもしれません!!」


「竜神様の、…祠がある! 西の湖、西の湖だ!」


 村人が先導して走る、ミナモという不確定要素に縋る事はしない。

 プリスターは一瞬走り出すが、ミナモに求める様な視線を向ける。


「まあ、頑張ってきなさい。

 私は行かないよ」


 口を開き、何かを訴えようとしたが、その言葉を飲み込み涙をためて走り出す。

 その後ろ姿を見送り、ミナモは深々とため息を吐いた。


「今回は、まあ、特別って感じで」


 一度メイアの居る山の頂上を眺めて、人差し指と親指を向ける。


「テイマーという暇つぶしを教えてくれたお礼だぞ」


 その刹那光の柱が山の一角に二つ降り注ぐ。

 一呼吸するとるとミナモの姿が消え、清廉の子兵が一体、また一体と消滅していった。


 ☆☆☆


 メイアは片手を必死に動かして這いつくばり、倒れているユニコーンの元へと向かう。

 ライオンはユニコーンの攻撃に巻き込まれて力尽き姿は無かった。


「もう少し、…ヘムイ頑張って」


 跡形もなく消え去ったキートの事よりも、今は子供達を連れて一刻も早くこの場を去ることを考えていた。

 自然回復したMPを使い、倒れるているユニコーンに回復を行う。自分は残ったポーションを飲み干しユニコーンに近づく。

 ユニコーンが何とか身を起こしたところで必死に騎乗した。


「よく頑張りました、とても素晴らしかったです。

 けど、もう少し頑張ってください、子供達を街まで非難させます」


 背につかまっているのが手一杯でヘムイを撫でることは出来ない。

 言葉だけでもヘムイはしっかりと伝わっており、ヘムイは必死になり立ち上がり、子供たちの方へと足を向ける。


「みなさん、もう大丈夫です、出てきてください」


 呼び掛けると木々の影から恐る恐る泣きじゃくりながら顔を覗かせる。

 出てきたのは三人しかおらず男女二人が消えていた。


「三人だけ? 二人ははどうしたんですか?」


「光が、ぱーって、消えちゃった」


「光?」


 ユニコーンの攻撃を受けたにしては距離があり、その光というのも該当する魔法などが思いつかない。


(敵の攻撃? もう分けわからない、けど迷っている時間はない、あんなのがもう一回現れたらもうお終いよ…)


 行方知れずの子供を探している余裕はない。

 メイアはヘムイに指示をして座らせ、子供達に乗る様に言いかける。


「わたくしは腕がふさがっています、どうかしっかりと捕まっていてください」


「ミイちゃんは…」


「……すみません、ですが今は貴方達の方が重要です、お願いします」


 女の子と仲の良かった子はしゅんとしながら背に乗り込む。


「姉ちゃん大丈夫?」


「ええ、大丈夫です、とは言いづらいですが、今は大丈夫です。

 全員しっかり乗りましたか?」


「…うん」

「だい、じょぶ」


 返事は弱弱しい、乗り込んだところでこの場から逃げるようにして空を駆けだした。

 村の方を見ると火の手が上がっており、その光景に子供達は言葉をなくしていた。


(もう、滅茶苦茶、……一体何が起きてるのよ)


 意味の分からないことに巻き込まれて、訳の分からぬ敵を倒し、一度たりとも死んだことのなかった従魔が力尽き、散々な結果であった。

 ただすべて悪い事ばかりではない。


(…一歩踏み出した、様な気がします、色々犠牲になった気がしますが)


 言葉では表せないが、達成感や一歩踏み出して気がしている。あくまで感覚だけの話である。


(一先ず強力な戦力を連れてこないと…、ロードオブテンス、その一人がメルテトブルクに居るはず)


 Lo10を頼る理由はただ一つ、それぞれが強力な力があるからだ。

 メイアもそのLo10の一人であるが、存在を公表しているわけではない。とは言え、その知名度からLo10の一人ではないかという声が多く上がっていた。


(ロードは基本的に暇なしの人が多い、けどご意見番の様にメルテトブルクに居城を構えているのは幸いですね…)


 Lo10は納得の人選が多い、それゆえ多忙で出会うことすらままならない。

 不測の事態に備えてLo10の一人が最初の街メルテトブルクに拠点を構えていた。

 他にも白狼近衛騎士団が居るが、メイアとは付き合いも無く、街を離れているという事もあり頼る事はできない。


(くっ、流石に遅い、わたくし以外は子供ですが、怪我を治し切れていないと…)


 ヘムイは翼の一部が負傷しており回復魔法をかけても治ることは無い。その為速度が出ず、20分もかからない距離が40分以上かかりそうであった。

 切断などの大きな怪我は専用の魔法を何分か続けてかけないと効果が無く、メイアはそういった魔法を覚えてはいない。


(朝が来る、……今日ばかりはこの時間がもどかしい)


 空が光に滲み始め、紫紺の色に染まっていく。

 街の明かりが見えるのにそこまで辿り着くには時間がかかりとてももどかしかった。

 やっとの思いで街の上空に辿り着き、Lo10のダンガードの根城前までもう少しだ。

 ダンガードの根城はいくつもあるが、どれも隣接していて大きい。一部は商店として利用しており、そこに最新の珍しい素材などが並べられていた。

 プレイヤーは夜明けだというのに多く行きかい、近場で露天などを出していた。

 そんな中に突然メイアが降り立つと周囲が一度迷惑そうに視線を向けるが、酷い怪我と雷光のメイアだと知ると驚愕して慌てだす。


「すみません、退けてください、急いでいます」


 呼び掛けるとどんどんと退けていきダンガードの商店の前までの道が出来る。

 従魔ごとなんとか頑張って店に入ると、店で働いていた店員が難色を示すが。


「お願いします、至急ダンガードさんを呼んできてください」


 従魔を連れて行くのはマナー違反だが、メイアという看板とその惨状を見た店員は息を飲む。


「なんですか、騒々しい」


 そんな時奥からダンガードの作ったクランのサブリーダーを務める、すらっとした黒い礼服を纏った男性が顔を覗かせる。


「ミッドレアさん、そ、それが、その」


「店員なんですからしっかりと対応してください。

 それからそこの方、ここは大きな従魔の立ち入り、は……、天雷のメイア? それに、その姿。

 何をぼーっとしているのです、すぐに医療班とダンガードを呼んできなさい」


「は、はい!」


 即座にただ事ではないと悟ったミッドレアは、子供達を抱えさらにメイアを椅子に座らせる。


「今日は一時的に店仕舞いです、お客様、どうかお引き取りください」


 残っていた店員が来客たちを追い出していく。

 店の内部には店員とメイア達しかいなくなったところで、ミッドレアがメイアに尋ねた。


「何があったのです?」


 メイアは地図を取り出し、名前の分からぬ村を指さして。


「化け物が出ました、……人間が化け物になったのか、それとも化け物が人間に化けているのか、分かりませんが、どちらにしろ危険な化け物がまだ複数体居ます」


「……何匹居ましたか?」


「分かりません、少なくともわたくしはその一体を倒すのが精一杯、手塩にかけた従魔が持っていかれ、そしてこのザマです」


 メイアの戦闘力は全員が認めるものだ、それが一体でボロボロにされたとなれば頭を抱えるしかなく、ミッドレアは頭に手を当てて唸った。


「人に擬態でその強さ、シャレにならないな。

 コミュニケーション能力は?」


「あります、…会話も、できました」


 さらに考え、すぐにある事に気が付いた。


「……いや、強さもそうだが、化けてるって時点で相当やばいことになる」


「やばい?」


「この事が公けになってみろ、絶対にNPCに対して疑心暗鬼になってNPC狩りの理由が生まれてしまう」


「え?」


「それは…」


 周りの者達が凍り付く。


「思ったよりも根が深い事件になりそうだな……、こりゃバカマスターには荷が重い。

 ロードの緊急招集が必要だろう」


 ミッドレアの言う緊急招集というのはLo10のみ使える特殊なスキルである。

 緊急招集を発動させると、Lo10の人間が異空間へ呼び出す事が出来る。呼び出した先で会話なども可能であった。


「治ったならすぐに緊急招集を発動させてほしい、村への対処は俺達が受け持とう」


 ダンガードのクランは間違いなくミッドレアが頭脳である。

 ダンガードは象徴であるのだが、クランなどの行動ではミッドレアが指示しなければ成り立たない。


「けど、…あれは人数だけでは駄目です、数と質を両立しないと」


「質と量か、……どっちにしろロード全体に話を通さないと話にならん、俺達が行って負けたならそれだけだ」


「けどそれでは村人が――」


「何難しい話をしてるの? というかメイアさんがボロボロって本当なんだね」


 話に割って入る男の子、幼さ残る15歳ほどのうさ耳を生やした少年であった。

 にこにこと場違いの笑みを浮かべていて子供にしか見えないが、Lo10のダンガードその人であった。

 後ろからは数名の回復術師と薬師がやって来て、メイアと子供達の面倒を見始めた。


「バカマスター、早く緊急招集を発動させろ」


「いきなりひどい言われよう、けど、そんなやばい事態なの?」


「天雷のメイアが回復次第すぐ移動できるように温めて置け、少なくともこのゲームの根幹に関わる事だ」


「え? …あれ? ボク呑気にしてる場合じゃない?」


「呑気にしてていいならここには呼ばない」


「……ありゃぁ」


 ダンガードの笑みが消えて、心配そうにメイアとミッドレアを交互に視線を向けるが、どちらも深刻そうで居心地が悪くなる。


「一応ちゃんと説明しておく、違ってたら天雷が口をはさんでくれ」


 ダンガードに懇切丁寧に説明すると、事態を把握したダンガードはかなり困惑しているようであった。


「……これ、ひょっとしてかなり一大事、だよ、ね?」


「一大事だバカ、それと緊急招集はちゃんと発動してるんだろうな?」


「え? いや、その、まだ」


「はぁぁぁ!? 馬鹿かおめぇわよ! 重要で一秒も余裕がないって言ってるだろ!」


「ご、ごめんなさい」


 上下関係は完全に逆転しているが、これでも二人の仲はとても良好だ。


「こちらで発動しました」


「…あっ、そういえばメイアさんもLo10だったね」


「噂にはなってたが本当だったのか、助かるぜ。

 腕や足の再生も十分したみたいだな、まだ酷いと思うが頼むぞ」


「分かりました」


 メイアの怪我などは完治しているが、生やした新しい腕や足は馴染むまで少しだけ時間がかかりステータスにも下方補正がかかる。

 今は下方補正がどうこう言っている時間は無く、軽く動かして、メイアは発動中の緊急招集をさらに発動させる。するとその場から掻き消え、同じように緊急招集を発動させたダンガードもその場から掻き消えた。


 ☆☆


 ミッドレアはメイア達の会話をしている最中でも、クランチャットで実力者と戦闘要員に準備を呼びかける。

 二人が消えた所で、自分も即座に準備をして集合場所へと向かう。


「みんな揃ったな、今回は非常に危険な話だ。

 これから起こる事は全て他言無用、そして迅速な行動を心掛けてほしい」


 集まったクランメンバー達は総数30名のみ、これ以上の人数を集めるとなると時間がかかる為、待つことは厳しい。

 そしてミッドレアからの言葉に今回集められた理由がいかに重要かを察し、全員に緊張感が増して表情が引き締まる。


「詳しい事は省く、村人の救助と、化け物退治だが、強力で勝てるか厳しい。

 だがそれでも我々はそこへ向かわなくてはならない、心してかかる様に」


 それだけ延べると軍隊の様に全員が移動の準備を始める。

 飛行系従魔をすでに宿舎から連れてきていて、後は乗り込むだけだ。

 全員が乗り込んだところで、目的地へと飛び立った。


(ついてくる奴は、…やっぱり居るか)


 メイアがダンガードに助けを求めにやってきた時点で話は広がっており、同行を伺うプレイヤー達がすでに準備をしていた。

 分かり切っていたとはいえ、話題を絶対に広げたくない、追跡者が邪魔で仕方が無かった。

 だからこそ。


「撃ち落とせ、全員だ」


 手練れ五名が追跡者に向かい攻撃を仕掛ける。

 予想もしなかった攻撃に追跡者たちは成すすべなく従魔だけをやられて墜落していった。


「いいんですか?」


「今回ばかりは良い子ちゃんぶっていられない、やるなら徹底的にだ。

 それからお前たちにはこれからの話がどれだけ重要か話しておく」


 詳細を語るミッドレア、その語られる内容に半数以上は表情を暗くしていた。

 そして30分ほどして村が見えてくる。


「……こいつは」


 酷い惨状であった。

 村があった場所は焼け、周囲の木々も未だに火の手が上がりもくもくと黒い煙を吐き続けていた。


「十分警戒して散開、何かあれば逐一知らせてくれ、村人を見ても不用意に近づくなよ」


 恐る恐る警戒しながら探索を始める。

 時に木々が倒れる音に驚き、緊張感が最高潮の状態で只管探し続ける。

 すると一部の班が生存者らしき影を見つけ、身を潜めているという報告を受ける。


(三人で当たらせるわけにはいかないか、合流するのが一番か?)


 少数での接触は避けることにし、全員が生存者らしき影を見た場所へと集める。

 山側にある洞窟前で、村人達が氷室にしている場所であった。

 警戒しながら数名が先行して前に進んでいく、すると洞窟の暗闇から女性がゆっくりと顔を出した。


「プ、プレイヤー?」


 女性はプリスターその人であった。

 互いにプレイヤーであることが分かり、驚きながらも警戒する。

 ミッドレアが前に躍り出て、プリスターに尋ねた。


「天雷のメイアによる救助要請で来た、村人はどうした?」


「…守って、いました。……ほ、他の人は」


 憔悴した様子で、幽かな希望に縋る様に尋ねるが、その様子は諦めの色を隠し切れない。


「いや、お前たちだけだ」


「それじゃ、もう……」


 プリスターは尻もちをついて一息ついた。

 すると洞窟の木陰から様子を見ていたNPCが恐れながら顔を出す。


「NPC全員収容急げ! この場に居る者だけでも連れて帰る!」


「了解!」


 助けに来たと村人に話しかけるも、NPC達は怖がって奥へと逃げていく。


「君、あの人達を説得して欲しい。

 それから我々について来てもらう、強引だろうが拒否権は無いと思ってほしい」


「……分かりました」


 プリスターはよろよろと立ち上がり洞窟の方へ向かっていく。

 木々の隙間から朝日が仕込み、ミッドレアはやっと一息つく事が出来た。


「地獄の様な場所だ…」


 奥から恐る恐る出てくる、たった7人の生き残りを眺め、ここが安心安全な最初の街メルテトブルクの近くなのかと疑問に感じるのであった。

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