ヨール
「あらあら。リアちゃんは甘えたね」
「私は、リデル様の前では、ずっと子供です!!」
リアラスタは、甘えるように、リデル様を抱きしめる力をさらに込めた。
それに対して、リデル様は、あやすようにリアラスタの頭を何度も撫でた。
「ふふふ。私にとっても、リアちゃんは、大切な子供よ」
「私は、リデル様の1番になりたいです」
「あらあら。今日のリアちゃんは、積極的ね」
リデル様にとって、リデルフルールにいる住人は、すべて自分の子供のように思っている。
リデル様は、優先順位をつけるような事は、しない。全てにおいて平等なのだ。
リデル様は、みんなのリデル様なのだ!!
リアラスタの言動は、リデル様を困らせるだけなのである。
「お前、いい加減にしろ!!」
私は、リアラスタの首根っこを掴み、リデル様から距離を取らせた。
「あらあら、ヨール。いつもリアちゃんの見守りありがとう」
「こんな奴、私に必要ありません!!」
リデル様は、私に労いの言葉をかけてくださった。
もう、それだけで天にも昇る気持ちである。
まぁ、もうすでに天界にいるのだけれど。
それを、リアラスタが、否定して、水を差すとは万死に値する。が、リアラスタと違い、私は大人気ない事はしない。
「私は、リアラスタが、余計な事をしないか見張っているだけです。人間社会というものは複雑難解なのですよ?
それなのに、リアラスタは、秩序を乱し、人間社会に波紋を残している。
リデル様のご意志を尊重しているとはいえ、もう少し軋轢を生まない手順で物事進めるという事が……」
「軋轢よりも、ご意志に反する法律を、1秒でも早く改正しなければ、それに苦しむ民がいる事をお忘れなく」
私の話を、リアラスタの棘のある声が、さえぎる。
無礼な奴だと思いながら、そちらに目を向けるとリアラスタの瞳に影が落ちていた。それは、リアラスタの幼少期を思い起こさせる。
私は、一瞬言葉に詰まった。
今の内容は、リアラスタが身をもって、感じた事だからだ。
私もそれを知っているが故に、言い返せずにいた。
私が、幼い頃のリアラスタを救い出した時、リアラスタは、劣悪な環境にいた。その姿が呼び起こされた。
リアラスタは、私の反応を見て、ニヤリと笑う。
「フフン。流石の守護精霊であるヨールでも言い返せないなんて、私が天界でリデル様の守護精霊になろうかしら?
ねぇ? 黒ずくめのおじさん!!」
「なんだと!?
誰のせいでこんな格好をしていると思っているのだ!!」
確かに、今の私は、黒づくめの格好をしている。リデルフルールに降りる際は、これが基本だ。
リデルフルールにいる守護精霊は、人々の目には映らないが念には念をという事でこの格好なのだ。闇夜に紛れ、監視をするには、これが1番だと思っている、
それに、私は、年長者ではあるが、見た目はそれ程おじさんではない!!
リデルフルール基準で言えば、二十代後半の優男だ!!
白に近い黄金の髪も、黄金の目も守護精霊にとっては高い地位を表すのだ!!
他の精霊からは、「ヨール様、素敵!!」って言われるくらいモテるのだそ!!
「別に頼んでないし。聖気がダダ漏れだがら、私からしたらいつも眩しくて鬱陶しいだけよ」
私としては精霊の聖気は、極力絞っているが、リアラスタには、見えるらしい。聖気は、一般人には見えない。リデルフルール内で、そんなに敏感なのは、守法人でもリアラスタくらいだ。
「まぁまぁ。2人とも落ち着いて?
本当に2人は仲がいいのね?」
「「良くありません!!」」
「まぁ! 息ぴったりね?」
私達が言い争っていると、コロコロと微笑みながら、リデル様が仲裁に入った。




