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守法人〜白でも黒でも好きな様に変えてさしあげますわ! 私に差し出せるものがあるなら……ね?〜  作者: ルシトア


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辺境伯の窮地 後半

 何が問題になるかと言うと、魔物討伐に関する事である。


 フラル王国の辺境にあり、国境には魔の森と言われる魔物巣窟が隣接している。

 フラル王国の法治結界により、魔物は、()()侵入出来ない。

 魔の森は、資源の宝庫であり、様々な資源は、ランソワー領の貴重な財源でもある。

 更に、魔物の核である魔石は、様々な道具の原動力となり、生活には欠かせないものになっている。

 魔物自体も放置すれば無尽蔵に増え、結界崩壊【スタンピート】が起こるので、ある程度間引か必要がある。


 リデルの【理】は絶対であるが、国毎が定める法治結界と呼ばれる魔法結界は、リデルの【理】程の力はない。

 それでも大多数の人々は、守らざるを得ないものだ。

 国毎の法治結界は、リデルの【理】を解析して作り出した法律を守る為の結界だ。

 この魔法結界の法整備を行なっているのは、国であるが、守法人は、リデルの【理】に反していないかどうか確認とともに、魔法結界にも干渉する事が可能だ。



 ちょっと話が逸れたが、何が言いたいかと言うと、辺境伯には、領地の自治の他に、魔物討伐が必須なのである。



 実務をこなす事が、辺境伯になる為の最低条件であり、【資格】になる。


 ランソワー領の辺境伯の【資格】は、次のとおりである。


 1、ランソワー領の領地経営を健全に行える事。

 3年に一度の監査に合格する事でその資質があるものとする。

 2、ランソワー領に隣接する魔の森のスタンピートを起こさないように、対策をする事。

 有事の際は先頭に立ち、魔物を屠る実力がある事。

 実力は、狩猟ギルドランクのゴールドランク以上とする。

 

 他にもいくつか法律はあるが、ダビッドが抵触しそうな法律はこの二つである。


 

 そう、法律上、記載されてしまっている。


 でっぷりお腹をした怠惰なダビッドが、領地経営、討伐の実務をこなすのは、どう考えても難しい。

 ダビッドは狩猟ギルドにも登録すらされていない。

 今から、ギルドに登録したとしてもゴールドになる事は夢のまた夢。


 法律上、領地経営は、お膳立てしてもらった書類に判子を押すだけでも、いけなくはないが、それでも3年に一度の監査でアウト。討伐は、更に難しいだろう。


 そこで、法改正を願うためにリアラスタが呼ばれたと言う事である。

 守法人は、ランクによっては国が作った法であっても、独断で変更可能だ。

 リアラスタは、独断で法改正が出来る数少ない1人なのだ。


 どうして独断の法改正が必要かって?

 それは勿論フラル王国の中央主権に、法改正を拒否されたからである。


 まぁ。ダビッドはどう見ても辺境伯に不適格。

 フラル王国も、馬鹿ではない。そんな法改正は認められるわけがないのだ。

 なので、リアラスタに法改正をしてもらう必要があるのだ。

 



 ダビッドは、年端も行かぬ小娘など、恫喝すれば、こちらの要望を素直に受け入れると思っていた。 

 今までそうやって、周りを支配してきたからだ。

 リデルの【理】は、同じ種族同士に関して身体的には守ってくれるが、精神的な攻撃には、意味をなさないのだ。

 しかし、リアラスタは、思っていたよりも豪胆だった。


 ダビッドは、早急に法改正をしてもらわなければならない。

 ダビッドにとって、魔物討伐も領地経営もごめんだ。

 定期の魔物討伐は、1週間後に迫っている。

 全て委任出来るように法改正をしてほしいのである。

 辺境伯としての利権は譲りたくない。でも、実務はして欲しい。なんとも自分勝手なやつである。




 このまま居丈高な態度をしていれば、交渉決裂になると思ったダビッドは、方針を変えた。

 更に、金銭では交渉出来ないと悟ったのであろう。苦々しい顔をした後、引き攣った笑みを浮かべながら、手をすりすりさせて、下手に出る。

 ダビッドは、後がないのである。


 まぁ、ダビッドが魔物討伐に出れば、ものの数分で魔物にくいちらかせられるだろう。ダビッドは、必死だった。



『アゼアル国の金でもう十分ではないのかい?

 お金よりも……そう、権力か……ランソワーのトラアナ地方の自治は、どうだい?

 アゼアル国の自治にも口を出しているそうじゃないか。

 口を出すだけでは、物足りないだろう??

 発言権だけではなく、自治権を与えよう。

 どうだろうか? まさに権力だろう??』


 猫撫で声のダビッドは、ちょっとキモ……いのはおいといて、リアラスタは、薄暗い笑みを深める。

 これは怒りを抑えているのだろうか?


 ……恐ろしや〜。


 何せ、トラアナ地方は、当に魔の森と隣接している地域なのだから。


 ダビッドは、法改正をして、誰かに委任出来るようにして、厄介ごとのあるトラアナ地方を治めようとしていた。

 それをそっくりそのまま、リアラスタに丸投げしようとしているのである。


 つまり、報酬ではなく、厄介ごとの押し付けなのだ。

 ダビッドは、トラアナ地方を切り離せば、魔物討伐の必要はなくなり、領主のまま居続けられる。

 トラアナ地方の利権はかなりなものだが、その他の地域でも、採算はとれると、ダビッドは考えた。

 それよりもダビッドにとっては目先の辺境伯と言う地位を死守したいのである。



 ただ、リアラスタ側にとっては、デメリットだけでなく、魔の森の利権も手に入るので、利点もあるのだが……。

 リアラスタ自身は、勿論、狩猟ギルドのゴールドランクでもない。守法人としてはこの上ない地位にいるが、それとはまた別。

 リアラスタもトラアナ地区は管理できないのだが……。


『まぁ? 辺境伯?

 素晴らしい提案ですわ?

 ではその方向、調整させていただきますね』


 早くそういえと言わんばかりに、とても嬉しそうに、笑みを浮かべ、けれど何故か疑問系で了承したリアラスタの本心はいかに?

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