リアラスタの過去 リデルフルール編⑱ sideリアラスタ
えぇっと、理由はどうあれ、ヨールは、女神リデルの意向で私達を見つけ、助け出した訳で……つまり、女神リデルのお陰で私は助かったという事になる。
それなのに私は、この世界を恨み、女神リデルが管理するこの世界に悪態をついた訳で……直接的に女神リデルを侮辱したのではないけど、ヨールが激怒したのは理解できた。
でもさ? 何の説明もなくこの世界を恨んでるかって聞かれたから本音を言った訳で……。
うん。言い訳はやめよう。背景がわかってしまったら、このままじゃ私は、恩を仇で返す様な人間だ。
知らなかったから悪くないなんて、子供のする事だ。
ここは素直に謝る一択である。
「助けていただいてありがとうございます。
その……この世界の事を悪く言ってごめんなさい」
「いいの。あなたのおかれていた状況はヨールから聞いているわ。あんな事があったんですもの。この世界を恨むのも仕方ないわ。私が不甲斐なくてごめんなさいね」
謝罪したら、逆に女神リデルに謝罪し返された。
その後ろで、ヨールが私に向ける殺意が増した様な気がするが、無視だ。
女神リデルは、この世界を良くしようと奮闘し、天界にある仲間達と様々な対策をしているが、うまくいっていないらしい。
女神リデルは、対策の為に、私の半生を詳細に知りたがった。自分の傷を抉るようだったので、後ろ向きだったが、女神リデルの懇願に訥々と話す。
話していくに連れ、女神リデルの目には涙が浮かび、ホロホロと泣いている。
女神リデルとの会話の中で、天界に地上民が招かれるのは、ごく稀な事で、ますます私は幸運の上に助けられた存在だったのだと自覚した。今世は、まだ捨てたもんじゃないのかも?
それに、女神リデルと話していればわかる。
この女神は、争いを好まない。皆が平穏で安心して生活できる世界にしたいと本気で願っている。
この世界の理……同じ種族が身体的に危害を加える事ができない。
素晴らしい理だ。女神リデルらしいなとも思う。
ただ、その根幹を揺るがす私の内容は、女神リデルに衝撃を与えたようだ。
最後は泣き崩れてしまった。
それをヨールが支えている。勿論私に睨みをきかせているのもセットだ。もう、ヨールとは決裂だろうな。ここまで来たら、今更ヨールの事はつつかないほうがいい。私はヨールを涼しい顔で受け流した。
「どうしたら、無くなるのかしら」
ポツリと呟いた女神リデルの声に、私は思いを巡らせた。
どんなに対策をしたって、無くなる事はないだろう。
どうしたってその枠から漏れる人は出てくるのだ。
全ての人を救う。言葉は簡単だ。
けれど現実は、不可能だ。
人は、様々な欲がある。
悪知恵だってはたらく。
新しく対策しても、すり抜けて悪さをする人は必ず現れる。
常に監視して新たな改良をその都度していくしかないだろう。
「なら、お前がやれ」
「?」
私が思案していると、ヨールが棘のある声が響いた。
ヨールに目線を向けると、やはり今も睨んでいる。
何をやるのだと思ったが、そう言えば心の声が漏れているのだった。私に、世界の監視をしろと?
貴族たちが知っている法律すら知らないのに?
「学べばいいだろ。中央神殿には全ての女神の理が記されている。人間が作った法律とやらも、全て、そこにある。神殿に奉納しないと効果を得られないからな」
この世界の根幹に触れているようで感心していると、さらにヨールはたたみかけるように、挑発してきた。
「自分の思う通りに生きたいんだろ?
貪欲に知識と情報を集めると言ってたのはお前だろ?」
なんか、全てを見透かされてるのは、やだな。
思っただけで言ってはない。言葉にはしていないんだけどな。
「やるのか? やらないのか?」
都合悪くなったらスルー?
そう思ったら、ヨールの殺気が増した。あぁ。怖い怖い。
……まぁ、来世やろうと思っていた事が、今世で出来るチャンスが巡ってきたのだ。自分が優位にたてるチャンスだ。
やってやろうじゃないか。
「なら、交渉成立だな。
お前、リアだっけか?
名前が短いと同じ名前のやつが多いから、混乱するだろ?
だから、これからお前はリアラスタな!」
「は?」
そう言って、私の名前は改名された。
更に、ヨールが私の守護精霊になるという。
守護精霊は、主人を守り、助言もする役割を本来は持つ。
いや、ヨールは私を嫌っているよね?
守るんじゃなくて監視でしょ!?
私が法律の監視をしても、ヨールが私の監視をしていたら息が詰まるでしょ!!
迷惑なんですけど!?
私は、後でもっと後悔する事になる。
神殿での生活も前途多難だったのも。
女神の理と人間の法律がこんなにも難解なのも。
ヨールの監視が鬼だったのも。
全ては後の祭りだった。




