リアラスタの過去 リデルフルール編⑰ sideリアラスタ
気がつくと、簡素な白いベッドに寝ていた。
全身に力が入らず、少し動かすだけで痛みが走る。
何とか目線だけ動かし、周りを見渡すと、真っ白な世界のままだった。ただ、綺麗な女性がベッドサイドに腰掛けて私を心配そうに見ている。
そのすぐ後ろに、先程の男が立っていて、叱られた子犬の様に縮こまりながらも、私の方を睨んでいる。
どうやら、この女性に叱られた様だ。だが、反省はまるでしていない。
(まぁ、仕方ないかな。)
最期だと思って、言いたい事を言い、彼の崇拝する女神を侮辱した私は、一生、彼に許してはもらえないだろう。
私は、最期くらいと思って本音を言葉にしたけれど、生き残ってしまうと、後々面倒だなと、今更ながら頭によぎる。
けど、まぁ、あの時の晴れやかな気分は、私の世界観を変えた。
言いたい事を言えなくても、理不尽な目にあうのなら、我慢したってしょうがない。
あとは、なる様になれだ。後悔は、していない。
私が、彼を見ながら思案していると、彼女は彼に視線を移し、彼の態度を見て困った様に微笑んだ。
彼は、慌てて取り繕うも、今更遅いのである。
女性は、私の頭を優しく撫でた。
「ヨールがごめんなさいね。
あの子、私の事となると、周りが見えなくなるのよ。
それでも、ヨールの今回の行いは、騎士として許されない事だわ。
そして、その行いは、主人の評価をも貶める。
ヨールは、私の守護騎士としても失格ね」
「うぐっ」
どうやら彼は、ヨールと言う名前で、彼女の守護騎士らしい。私が、ヨールに批判したのはこの世界のこと。この世界の頂点に立つのは女神リデルだ。つまり、彼女の今の発言から、彼女は、女神リデルという事になる。
女神リデルは、太陽の様な眩いオレンジの髪が緩やかなウェーブしており、満月の様な柔らかい黄金色をした瞳は慈愛に満ちていた。
真っ白い絹の様なドレスを着ているが、装飾は一切ない。
それがまた神秘的にみえる。今は、申し訳なさと、ヨールの方を見て悲しそうな顔をしていてるが、絵になる、麗しい方だ。
女神リデルに撫でられた頭から、温かい何かが体に入ってきて、体が軽くなった。あんなに辛かった症状が嘘の様だ。 何故かわからないが、初めて会ったのに安心感がある。
母の様な温かさに緊張を緩めた。
(ヨールが賢崇するのも無理はない。)
「俺は、そんな薄っぺらいことでリデル様に仕えている訳ではない。お前と一緒にするな」
ヨールは、女神リデルに指摘された事柄にショックを受け、かなりのダメージを負っている様子だった。
今にも死にそうな悲壮感があったけれど、言い返してくる元気はある様だ。
それよりも今、気になったのは、ヨールは私の思った事に対して言い返してきている事である。
(やっぱり、心の声が漏れている)
「私達は、精神体なの。だから、近くにいる人の心の声が勝手に聞こえてくるのよ」
申し訳なさそうに話す女神リデルは、様々なことを教えてくれた。
ここは、女神リデルの居住区で、地上の人達からは天界と呼ばれている所で、安全が確保されているという事。
私があの酷い場所から脱出できたのは、私の女神に対する怒りに、ヨールが反応して、あの場に来てくれたお陰だという事。
普通は、手の甲にある審罰で、大抵の人は悔い改める人が殆どだ。
審罰を、受けてもなお悔い改めない場合は、直接、精霊が確認して理由を探るらしい。
どうやら私の反感は相当な物と判定された様だ。
ヨールも、これほど強い反感は、久々でだったので、面白半分に来てみれば、悲惨な状況で、とりあえず私と母を助け出してくれた。
母は、衰弱が激しく、別室で休んでいるらしい。
まだ目を覚ましてはいない。
女神の診断によれば、肉体だけでなく、魂が傷ついているので治療に時間を要する様だ。
ヨールは、悲惨な状況から私たちを救い出した。
全ては女神の思し召し。
にも関わらず、私が女神の事をまだ嫌っている事に怒りを覚えた様だ。
えぇ……。
ヨールは説明が、少々、足りないと思います。




