リアラスタの過去 リデルフルール編⑭ sideリアラスタ
暴力行為があります。
ご注意下さい。
「さぁ、お仕置きの時間だよ」
そう言って、カレルが私にムチを振り下ろした。
腕で顔を庇うと、鋭い痛みが走り、思わずうめき声を上げ倒れ込む。
それを見たカレルは、薄ら笑いを浮かべた。
母は、駆け寄ろうとするが、ジョドジーに阻まれた。
その母も悲鳴を上げている。
カレルは、まるで、私達親子が悪いことをして、言い聞かせるように言っているが、私達は何ら悪い事はしていない。
もし、私達が侵した罪があるのなら、無知だったという事だ。
情報弱者は、どの世の中でも切り捨てられる。
知らなかった貴方が悪いと。
日々の生活だけで必死の人々が、情報を得られる時間はどれだけあるのだろう?
特権階級の人たちが隠した情報を知る事が出来るのだろうか?
今世、私と母が、契約書の本来の意味をどれだけ理解できる事が出来ただろう?
今、残虐な行為を受け入れざるを得ない状況に、陥った私達が、そんなに悪い行いをしたのだろうか?
先程打たれた左腕は、だらりと垂れ下がり動かない。おそらく骨が折れているのだろう。カレルは容赦がない。私たちを物のように扱っている時点で、加減もしないだろう。
私は、ここで死ぬの?
(間違ってる)
沸々と怒りが湧いた。
どんなに努力したって、どんなに足掻いたって、最初から終わる未来は決まっていたなんて。
(おかしい!)
(こんな世界間違ってる!!)
だらりと垂れた左手の甲の紋様が赤く光り、激痛が走る。
この世界は女神リデルが創造し、リデルの理によって支配されている。
世界を否定する事は、女神リデルを否定することと同義である。
この世界の理を否定する事は、それだけで神罰が下される。
左手の甲にある紋様の赤い光と激痛は、私が女神リデルの世界を否定したからだろう。
「はははっ。人としても見なされていないのに、女神様からの神罰は変わらないのだな。また新たな法則を見つけられて嬉しいよ。
女神に対して怒っているのかい?
こんな穴だらけの法律を作った女神に?
大丈夫だよ? 殺したりしないから?
これは躾だよ? 言う事を聞かせるためだ。
長年かけて作り出したペットだからね。
後でちゃんと治療してあげるからね」
治癒ポーションの瓶を見せて、笑いながらも鞭を振り下ろすカレルの方が、神罰を与えられるべき人物だ。
なのに、なぜ私が神罰までも受けなければならないのだろう?
女神リデルは、争いを好まない。
慈愛の女神、平和の象徴、不暴力。
そう言われる女神であるならば、今の状況はどう説明するのだ!
神罰だろうが、何だろうが、間違っている!
手の甲の赤い光は、どんどん強くなり、声も出ないほどの痛みでおかしくなりそうだが、心の中までは変える気はない。
治癒ポーションは、事故で負った怪我や病気を治す物である。今の怪我を治癒ポーションで治し、カレルは、また暴力を振るうつもりなのだ。
卑下た笑みを浮かべるカレルは、それ以外にも悍ましい事を考えているに違いない。
前世では、搾取される人生。今世は、貴族の玩具にされる人生。いったい私の何がいけなかったの?
今の状況が正しいというのなら、こんな世界は無くなってしまえ!!!
私の中の憎悪が、溢れるにつれ、左手の甲も赤く光る。
手の甲から出る赤い光が、腕を這い上がり全身に広がる。
カレルの暴力よりも、酷い痛みが襲ってくるが、知ったことではない。
契約でどんなに捻じ伏せても、神罰で全身痛めつけられようとも、私の心までは変えられない。
最後まで抗ってやる。
全身に広がる神罰の光は私を包み込み全身が赤く染まる。
『うぉわ!!
すんげー光。
こんなに強い審罰は、久々だなぁ。
お前、根性あるな!!』
この場には、似つかわしくない、あっけらかんとした口調の男の声がやけに響いた。




