リアラスタの過去 リデルフルール編⑬ sideリアラスタ
暴力シーンがあります。
ご注意ください。
「まぁ、今更だがな」
ジョドジーは、今までの計画を話し始めた。
自分が、どれ程有能なのか、誇示したいタイプの様だ。
当時勢いのあった父の商会が、元々、気に食わなかったこと。
父の資金を巻き上げようとしたが、上手く乗り切られてしまったこと。その時は、ジョドジーの顔が、一瞬だけ歪んだが、すぐに気を取り直した。
財政面で手が出ないのならと、愛妻家の父が、絶対に拒否するであろうとわかっていながら、態と母を召し上げようと提案した事。
それを口実として、今までの行いに対して、平民ごときが、貴族に逆らうことの意味として見せしめのために、事故に見せかけて殺した事。
父と関わり合いのあった人達は、その意味を充分に理解したのだろう。
火の粉が、自身にふりかがならないように、波が引く様に私たちの商会と距離を取っていたこと。
母と私が頑張って商会を立て直そうとしていたが、うまくいかなかったのは、更に、ジョドジーが裏で手を回し、圧力をかけていた事。
話を聞いて行くにつれ、どんなに努力を重ねても、どうする事もできなかった事実に、呆然とした。
あの頃は、自分の不甲斐なさに落ち込んだけれど、どんなに足掻いても、最初から未来は、決まっていたというのだ。
「あぁ。いいねぇ。お前のその顔が見たかったよ。
さぁて、お前達は、もう、契約上、俺の物だ。
知っていたかい? 物であるお前達には、女神の加護は無いのだよ」
「っ!?」
ジョドジーは、徐に自分のベルトを外し、私に向かって外したベルトを振り上げた。
反射的に、顔は庇ったけれど、腕と脇腹に鋭い痛みが走る。
女神の加護とは、同じ種族間で、暴力行為があった場合、女神が結界を張り守ってくれる行為である。
暴力行為をした者には、女神の罰が与えられるのは、皆が小さい頃から教えられる事だ。
そのお陰で、この世界では、同じ種族では、ケンカや乱闘が起こる事はない。
本来なら同じ種族である私とジョドジー間の暴力行為は、私に当たる事はなく、代わりにジョドジーが女神の罰を受けるはずだが、それがない。
本当に女神の加護が失われたという事なのだ。
奴隷契約ですら、様々な制約の下、処罰行為の時でしか、暴力行為は認められないはずなのに、私たちの契約は一体どういう契約をさせられたのだろうか?
母に、せっつかれたとはいえ、契約書は全て読んだが、その様な記載はなかったはずだ。
「ジョドジー様の研究は、本当に素晴らしい!!
この世界の加護を研究して、その抜け穴を探し出す手腕は流石です。
奴隷契約ではなく、所有物として契約する事で、女神の加護を失わせる効果があるとは、様々な契約と実験を繰り返した甲斐がありますね」
「どこまでが、女神の意思に背くのか、そのギリギリを攻めるのが、また楽しいものだ。
契約の後、この時が、たまらん!!
自分が罰を受けるのか、相手が受けるのか。そのゾクゾクがたまらんなぁ」
いつの間にかカレルがいた。
カレルが嘲笑いながら、こちらに近づきながら、ジョドジーを賛称している。
それに同意しながら、下衆な話をするジョドジーも狂っている。
カレルは、先程の慇懃な格好ではなく、手に鞭の様なものを持ちバスローブ姿なのが、悪い想像が浮かぶ。
私達が契約したのは、確かに所有契約書と書いてあった。
貴族では、女子供は、当主の所有物扱いになるから、この契約になるのだと、その当時のジョドジーは申し訳なさそうに言っていたが、どうやら違ったらしい。
所有物とする事で、同じ種族とみなされなくなり、女神の加護が発動しなくなるという、女神の加護の穴を見つけ出した結果みたいだ。
どうやら、ジョドジーとカレルは、加虐的思考の持ち主なのだろう。
その思考を満足させる為に、今まで多数の契約を結んできたらしい。
どの様な契約をすれば、女神の加護に抵触しないのか。
スリルも味わっていたらしい。
一体何人が、犠牲になったのだろう。
この2人は手慣れている。
あの重厚な扉と、この閉鎖的な空間を作り出したのは、一朝一夕で出来るものではない。
そして次の犠牲者が自分達親子なのだと、その現実が受け入れられないでいた。
「安心して下さい。リアは、母の介護の為に休学届は出しております。まぁ、戻る事もないでしょうが。
平民風情が、高等教育など必要ないでしょう?
数ヶ月だけでも、夢を見られたのです。
もう充分でしょう?」
安心できる要素は何もなかった。
元々、学校が、貴族に何かを言う事は難しいと思っていたけれど、完全に道を塞いだと言いたかったのだろう。
この人達は、絶望が浮かぶ顔を見たかっただけなのだ。




