リアラスタの過去 リデルフルール編⑤ sideリアラスタ
私は、初等部卒業後、父を手伝う為に商業科の中等部を受験する。
中等部からは、希望学部の入学試験に合格しないと授業すら受けさせてもらえない。
商業科は、入試問題はかなり難しくて、前世の知識を持ってしても、合格したかは不安だった。
父からはまだ早い。数年かけて合格すればいい。と言われていたのだ。
合格するかヒヤヒヤしたが、合格通知を受け取った時は、思わずガッツポーズをしたものだ。
母は、手放しで喜んでいたが、父は笑みを浮かべながらも、複雑そうな顔になっていたのが気になった。
父は、その時から何かを感じていたのかもしれなかった。
文化の違いから、風習、やり方が異なる事も多かったが、前世の事務経験から簿記を少し齧っていたので、商業理論は、概ね問題なくこなしていった。
私は、その時は気にしていなかったが、10代の子供達の中に5歳の子供がいる事は異質だった。
特に商業科は、難易度が高かったみたいで、10代後半の人達も多い。
それに気づかず、私は父の役に立ちたくて、懸命に学んだ。寧ろ、目立つ事で、両親に恩返しできているとさえ、思っていた。
生徒同士のディスカッションでも対等に意見を述べたし(ちゃんと発言しないと単位をもらえないので)、大人顔負けだったのかもしれない。
前世で言えば幼稚園児が、中学生の中に混じり、しかも課題に対して語り合う。
中等部の授業を問題なく熟す逸材。商業科に通う生徒達から親そして世間へと情報は拡散していった。
私、リア=ジャガールの名はあっという間に知れ渡っていた。
そして父の商会であるジャガール商会は安泰どころか、もっと大きくなるだろうと、多くのものが予想した。
実際に、私の名が広がると商機が生まれた。
父は、的確な判断をしていき、予想通り商会は大きくなっていった。
父の手腕が無ければ、ここまで大きくなってはいない。
商会が大きくなったのは、父の力であり、私はきっかけを作ったにすぎなかった。
そんなある日、事件が起こる。
父が事故で急逝したのだ。
商談の帰りに、酔っ払いが運転していた馬車に轢かれたのだ。
人同士の争い事は、理によって【拒否】されるが、馬と人では種族が違う為、【拒否】される事はない。
同じ種族と定義されている理は、対応できないのである。
不幸な事故として処理された。
酔っ払いは、正当な裁きを受け、刑務所行きになったが、父が帰ってくるわけでは無い。
母と私は悲しみにくれた。
それでも時は私達を待ってくれない。
こんな時、商会の規模が以前より大きくなってしまっていたのは裏目に出る。
大きくなった商会の運用は少しずつ母の精神も肉体も削っていっていた。
一瞬の判断が商機を逃す……。その判断は母にとって重荷になっていたのだ。
私も出来る限り手伝いはした。
それでも私は5歳にしては優秀であっても所詮は中等部に通うひよっこだ。
こちらでの実務経験は全く無い。
商業科の逸材と言われていたけれど、こんなものかと人々は離れていく……。
そして、莫大な借金が残ってしまう。
どうにもいかなくなり、廃業しようと考えていた時、ある貴族が母に救いの手を差し伸べる。
従業員も商会の借金も全て肩代わりする申し出は、一見、素晴らしい提案に聞こえる。
それは、更なるどん底への階段だった。




