リアラスタの過去 リデルフルール編③ sideリアラスタ
誰かに母が、利用される。
そのことに、怒りを覚える。
弱っている立場の人から搾取する。
その事に、私は拒否反応を起こした。
(許せない)
ずっと無気力で、情報収集しかしていなかった私なのに、この事だけは我慢ならない。
私は声をあげた。
「うみゃぁ〜(間違ってる!!)」
なんとも情けない声だった。思っていた以上に弱々しい声。
生まれて殆ど泣かなかったせいで、声量も小さく、口の動かし方もままならない。
当たり前だが、私はまだ数ヶ月の赤ん坊。
思った事を話せる訳が無かった。
悔しい。
それでも両親の気を引くのには成功した様だ。
両親が駆け寄ってきて、私を覗き込む。
私は、表情筋も殆ど使っていなかったので、顔の筋肉が引き攣る様に感じたが、無理矢理に筋肉を動かす。
ひきつった笑みになっているかもしれないが、頑張って口角をあげた。
「うまゅ…(お母さん)」
ついでに言葉も喋ってみる。
とりあえず、母の心配は、私が泣かない、笑わないなのだ。
何か喋ったり、笑えば(笑えているか微妙だが)、母が詐欺師と会うのを止められるはずだ。
詐欺に引っかかってしまっては申し訳ない。
私は、なんとか母を引き留めたかった。
私の様子を見て両親が、目を見開いて驚いている。
まぁ、こんなに喋るのも、顔を動かすのも、今世では初めてだ。
当然だろう。
そして、少し微妙な顔になる。
多分、私が上手く笑えてないからだろう。
鏡が、ないからわからないが、私は一生懸命口角を上げようとしているが、表情筋がうまく働かない。
若干、筋肉が上がったくらいだ。
表情筋に気を取られると、声が上手く出せないので、更に変な声になった。
う……これじゃ悪循環だ。
うん。表情は、とりあえず捨てよう。
私は声を出す方に、全力を出す事にした。
「うっ、うみゃ、うみゃ、うみゃ!!(詐欺師に会いに行かないで!!)」
自分では、ちゃんと言葉を喋ろうとするが、土台無理な話だった。とりあえず、なんでもいいから声を出すことに、集中した。
私の表情が無になったので、両親はまた暗い顔になったが、私が声を出し続けた事で、両親は、お互いに顔を見合わせた。困惑顔だ。
「私達に喧嘩をするなと言っているのだろうか?」
「どうなのかしら? でも、今までに無い反応だわ。
こんなにお喋りしてくれる事、今まで無かったもの」
「うみゃ、うみゃ、うみゃ」
両親は仲良くいて欲しいな。そう言う気持ちを込めて喋ってみる。
「正解! としゃべってくれているのかな?」
「そうね。そんな気がするわ」
2人の表情が、少し明るくなってきた。
「それに……さっきの表情は、笑おうとしてくれた?」
「ふふふ。
きっとそうね、不器用さんが頑張ってくれたのね。
……そうよね。リアは、リアらしく成長しているのよね」
母の顔が少し良くなってきている。
冷静になってきている様に思う。
後、もう少し?
「あうあうあう!」
私は、母を見て声をあげ続けた。
「ふふふ。私にお祓いに行かないで欲しいの?」
「あう!」
母の問いに、今までで1番声をあげた。(つもり)
「お祓いすることなんてない。
私は悪く無いと言ってくれている?」
「あう!!」
「リアは、ラーラをお祓いに行かせたく無かったんだね。
賢い子だ」
「まぁ。全てルイのいい様にとるなんて、少し親バカよ?」
母は、目に涙を浮かべながら、優しい笑みが溢れた。
母の腕が伸びてきて、私は母に抱っこされ、抱きしめられた。
父も、それに安堵の笑みを返した。
母の涙が、私に落ちてくる。
「そうね。お祓いに行くのはやめるわ。
よく考えれば、確かに怪しい所はあったし。
それに、リアは、今日1日でこんなに成長したのだもの。
他の子と、比べるなんてダメな母だったわ。
この子はこの子なりの成長をしてる」
母は、なんとか思いとどまってくれた様だ。
とりあえず一安心?
これからは、母を心配させない様に、赤ちゃんらしく過ごそう。そう決心した。




