リアラスタの過去、リデルフルール編① sideリアラスタ
飲んだくれた後、気がついたら、見知らぬ部屋の天井が目に入ってきた。
いつもの自宅の壁紙、照明じゃ無い。自分の部屋では無いようだ。
目が少し霞んでいるのは、二日酔いの影響なのか?
初めてあんなに飲んだので、よくわからない。
体は殆ど動かなし、怠い。
もう。どうでもいい……。
と、そう思いつつも、身についた癖なのか、素早く周りを見渡し、情報収集した。
そして、現認していく。
飲み過ぎのせいだと思っていたが、体が動かないのは、赤子だから。
どうやら、リアと言う名前で呼ばれている。
両親と思われる2人は、髪色は変えられるとしても、現実ではあり得ない色の瞳……。母親は、銀糸の髪に濃紺の瞳。父親は金髪に薄紫の瞳だ。
髪はブリーチ?、眼はカラコンか? と、思うけれど、目の大きさがオカシイ。顔立ちも、現実ではあり得ない比率。整いすぎている。
どう考えても二次元の人達にしか見えなかった。
そして、私の理解を超えた道具の数々。
なんなんだ。ここは?
最初は現実逃避する為の幻想だと思った。
まだ、夢を見ているのだと。
それか、とうとう自分は狂ってしまったと思った。
幻覚を見ているのだと。
精神的におかしくなっても仕方ないくらいに私は追い詰められていたのだから、あり得る話である。
でも、……うん。
これが、今の私の現実らしい。
私自身は、小説なんか読まない。アニメも見ない。
私に、メディアを扱う権利は、高校生になるまでなかった。
バイトのシフトの為に仕方なく叔母が用意してくれた型落ちスマホが、私にとっての初めての情報源。
勿論、支払いは私自身だったが。
高校生になっても、多忙すぎて、趣味なんか持つ時間などなかった。大抵、情報収集の為のタスクにしか思ってなかった。
社会人になって、会話の必要性から、多少情報収集していたけれど、それだけ。
けれど、叔母が大音量で聴いていたテレビ、ネットから、これは叔母が好きだった異世界というものなんだと、理解する。
叔母が独り言で夢見ていた異世界転生。
そんなものある訳ないと、諦観していた。
実際に自分の身に起きても実感なんてわかない。
状況を把握したところで、それが何だと言うのだ。
また誰かに利用されるだけ。
また、新たな人生など、面倒なだけだと思っていた。
それに、叔母の妄想では、チート能力等があるらしいが、どうやら私にはそういった能力は無さそうだ。
両親が話す言葉は、全く理解できなかった。
ただ、こちらの世界の赤ちゃん言葉なのだろう。
同じ言葉を、短く話してくれる事で、なんと無く言語を少しずつ理解し始めてきている。
無気力なはずなのに、情報収集は怠らない。
自分が、生きる為に長年に渡り、身についた感覚だけは、勝手に動いていた。
今世の両親は、あまり泣かない私を、不思議に思いつつも、せっせと、育ててくれていた。
それはそれは根気よく。
笑わない、泣かない赤子など気持ち悪いと、一蹴されてもおかしくは無い状況。
むしろ、母親は、あの手この手で、笑わそうとしてくる。
母親の変顔は、なかなかの秀逸の芸である。
きっと夜の世界だったらムードメーカーで、どんなに落ち込んでいる客でも笑わせる事が出来ただろう。
少し前の私なら、笑ったと思う。
でも、今の私の心は動かなかった。




