リアラスタの過去 前世編 後半 sideリアラスタ
私は、叔母の機嫌を伺うことに長けていたからか、意外にも化粧映えする顔立ちだったからかは、わからないが、夜の街で、それなりの売り上げを出していた。
と言うか、煌びやかな服や装飾品を借金して買ったので、何が何でも稼がねばならなかった、のもあるかもしれない。
夜職の給与は、当時、現金払いだったので、叔母に取られる事は無かった。専用金庫を買い、仕事場に隠した。
夜の街は、情報戦、そしてそれをいつ、どう使い、どう対応するかで、売り上げが変わる。お客様の顔と名前は勿論、趣味嗜好、性格、職業、社会情勢、株……様々な情報が飛び交うのだ。
気づくと、本職よりも、時間数は少ないのにも関わらず、倍以上の給与を貰うようになっていた。
そんなに大きくは無い地方都市の繁華街。
世間は狭かった。
訪れる顧客の中には、本職の取引関係の人、叔母の知人、自身の同級生なんかも含まれていた。
化粧映えする私は、本職では全く化粧をしていない差もあって、その人達のお相手をしても全くバレる事はなかった。皆、酒に酔っていた為かもしれないし、もしかしたら、知らないフリをしてくれていたのかもしれない。
もしくは、知っていて、態と私に聞かせていたのかもしれない。
私は、漸く気がついた。
そして人生イヤになった。
叔母は、私の両親の遺産と保険金目当てで、私を無理やりに養育していた事。
両親の遺産は相当のものだったらしいが、全て使い果たしてしまっている事。
本来なら祖父母の家で暮らすはずだったのをわざわざ引き取っていたのだ。
私の養育が忙しいと言い、働かず、祖父母にまでお金をせびっていたらしい。
そして、今は私の稼いだお金で、あくせく働く事もなく怠惰に暮らしている。
本職で優しく、頼りになる先輩と出会った。その人は、会社の社長息子であり、様々なことを相談するうちに、お付き合いに発展していった。
初めて人を頼れる事が出来て、周りが見えていなかったのだろう。
が、その人は別に本命の人がいて、私はキープだったこと。
いや、キープですらなく、私の事は金蔓と家政婦だと周りに言っていた事。
それを、本職の従業員は皆、その事を知っており、陰で私を馬鹿にしていた事。
小さな職場だ。たとえ、私が声を上げても、私が解雇させられるだけ……。なんせ、社長息子だ。きっとその事も織り込み済みなのだろう。
もう、全てがイヤになった。
誰もが、私を金蔓としか思ってない。
使い潰す事しかしない。搾取される人生。
誰も私のことなど、心配などしていなかった。
そんな中、夜の仕事の控え室。
何気なく貯めていた金庫を開けた。
普段なら給料日しか見ないのに何かに導かれるように。
お金が無かった。
夜の勤務中。鍵は持ち歩けない。
鍵は、ロッカーの隠し扉に入れていた。
ロッカーの暗証番号は、数字4桁で、個人で設定する。
知られてない筈だが、4桁を全て試したのだろうか?
そこまで追い詰められていた誰か??
控え室は、同じキャストしか入れない。
盗んだのは同じキャスト仲間しかいなかった。
キャスト仲間は、皆、何かを抱えて、こんな仕事をしてる人が多い。きっと、必要だったのだろう。
そこに、怒りなどの気持ちはわかなかった。
ただただ、ここでも搾取される側になっていたのだと、虚しくなっただけだった。
その日、夜の勤務中、私はヤケになっていた。
特に、職場の先輩の事を信頼していたのに、裏切られた事にショックを受けていた。
夜の仕事をはじめてから、酒には、ある程度慣れていたが、あまり強い方では無かった。
いつもなら、飲み過ぎないように、さりげなく躱す一杯も、とことん飲んだくれた。
飲んで、飲んで、飲んで……。
いつの間にか、私の意識はどこかへ消えていった。




