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2.好奇心は猫、あるいは梟をも殺す

 好奇心は猫をも殺す、というがね、あれは間違いだ。

 正確には、好奇心は猫、あるいはふくろうをも殺す、が正しい。

 好奇心とは、それほどに飼いならすのが難しいのである。


 ……いかにも。

 ここに魔女がいるという噂を流したのは梟の吾輩である。

 ふうむ、そうじゃなあ。好奇心とはいやはや末恐ろしい、とでも言えばよいのか。

 吾輩は、魔女に会おうとする奇怪な奴らに興味があるのである。


 ある者は魔女に弟子入りしようとしておった。吾輩はその覚悟がいかほどのものか興味が湧き、道案内と称して惑わし、幾日もさまよわせてやった。初めはキラキラとした眼をしていたが、たった数日飲まず食わずで歩かせ続けただけですっかり濁り切った瞳になり、最後には何もかも諦めた様子で動かなくなってしまったわい。

 またある者は魔女の悪行を正すのだと義憤に駆られておった。吾輩はその正義がどこから来るものなのか興味が湧き、魔女に会うための試練と称し気の向くままに問いかけを繰り返し、その者の過去や心の内を洗いざらい聞き出してやった。初めは真摯に答えておったが、次第に苛立ち始め、あらかた問いかけ尽くすころには癇癪を起して吾輩に襲い掛かって来たものだから、あわてて逃げだしてしまったわい。


 さて、おぬしらはなぜ魔女に会わんとするのだ?

 魔女とは恐ろしく、意地が悪くて残酷で、嫉妬深いということを知らぬ訳ではなかろうて。

 特に、ぬしのように小さく弱くみすぼらしく腹の足しにもならんシジミチョウなどという虫けら、魔女と面会した途端に恐ろしさのあまり死んでしまうのではないか?


 ふむ? カエルのおぬしは、元は人魚? 魔女に姿を変えられたので文句を言いに来たのであるか。それはそれは……なんとも面白い!

 吾輩、グルメであるからして、カエルはあまり好まぬのだが、元人魚のカエルとあらば話は違うのである。

 さすれば早速、ありがたく賞味させてもらうとしよう。


 これ、虫けら、吾輩の邪魔をするな。

 ……ふん、弱々しくすぐに命尽きるのであるのだから、そのままそこで大人しくしておるのである。

 

 ほれ、逃げるな逃げるな、どうせ吾輩からカエルごときが逃げ切れぬのだから、諦めて味を確認させるのだ。ふうむ、元人魚といことは、おぬしを食せば吾輩は不老不死になるということかね? まったく、興味深い!


 暴れるでない。どうせ無駄なのだから。吾輩の爪にかかれば……おや、おぬし、何やら身体が大きくなってはおらぬか……。

 なんだ、どうなっておる? こんなサイズの獲物、吾輩の爪でも……。

 痛い痛い、何をするか! 翼が……吾輩の翼が……。

 なんと……なんと、おぬしは……。

 ああ、ああ、人魚か、人魚の姿に戻ったのか。本当に興味深い。

 美しい鱗、つるりとした肌、うるんだ瞳に、鋭く生えそろった歯。


 帰るだって? どこへ? なぜ尾びれを地に叩きつけている? ……2、3、4、……9回。おお、地面が揺れたのである。まるで水面のように揺らいでおる。水音までし出したのだ。

 先ほどまでカエルだった人魚が、地面に飛び込んだのである。ぽちゃりと音を立て、人魚が地の中へ吸い込まれて行きおった。


 ああもう、まったく、これだから魔女に関わろうとする者には興味が尽きぬのだ……。

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