大麻(おおぬさ)
「しっかりしてよね」
自分で書いてしっくりこなかったのか首を傾げていた、私も聞いて教えて欲しいぐらいである、一人っ子のヒナの家に弟が居たら私はすごく甘やかすのに、実際には田舎で神主をしているのであるから会えないのは残念だ。
「ここはさっき、来たわよ」
掘っ立て小屋は家の構造の基礎を教えてくれた、杭は私に彼女の事を話しているとそのことをはなしていた、掘っ立て小屋の支柱は家の大黒柱より何周も小さかった、藍の色に混ざるよう蘭の紋様がある。
掘っ立て小屋にしては高級感があるよう感じたが私に掘っ立て小屋の価値を値踏みする知識はもちあわせていなかった。よくわかり合えないかもさくっていないと自分をしらなかった。
「掘っ立て小屋だろ」
「ここに柄杓は無いのか」とシュンが言った、「ならあなたが、探せばいいじゃない」とヒナが言う。日吉神社を一番良く知っているのはシュンであるはずなのに、シュンは何にも知らないのを理由にして無責任な態度取る横柄さに頭が来ていた。
「何よ、分かっていたなら、声ぐらいかけてよ」
彼女に話していると、彼女はヒガンバナの近くでその茎を千切りもう一本手に持った、そして、切り口を自身の口の舌でペロッとなめた彼がものすごい形相で私の前まで来て、そのヒガンバナを取り上げた。
「馬鹿野郎死にたいのか」
男でもないのに野郎と言われた。
「誰が赤の他人へ気軽に話しかけるかよ」
彼はそういうと彼女に水を渡した。
「ありがとう」
かれは照れくさそうだ。
「でも、どうしてあなたが水を持っているの、飲料として使う水は柄杓が掛かってあった水だけだよね」
「お前が来る前に柄杓があったからすくっていれていた」
首を縦に振りその水をもらった。
「でも、他人からもらった飲み物はのめないわ」
掘っ立て小屋の奥は崖となっており、彼女はとても仲が良さそうに見えるが彼女の心が失った目を見れば恋愛以外の何かがあると分かるだろう。
「確かに」
照れくさそうだそれを彼女に私のことを話していた、私は口に話していた賢そうに見えたが、くせ毛が邪魔をする。神道とは簡素につくられるから、鏡が添えられている賽銭をする場所から、手水舎が目立つ。
「これは」
優しそうに見えた鼻先を啜る仕草も彼においては演技だ、私はふと狛犬の目を見た灯篭の灯りに照らされたからだった、狛犬の目は口に獲物を含む肉食獣の目であったと記憶している、野生の熊が人間を野生の生態の中にいる括りに居すわる同胞と認識するように。
「ひしゃくだな」
彼女はうちの影を話していたが、私の事を聞いているかと思った、ことを話しているとひしゃくの水をすくった。「手ですくうなよ」サラサラ、掬う水で手が濡れた、砂を掬い手から離れた時と同じこころもちであった。
「何で柄杓がここにあるの」
柄杓が話をしていた、とりあえずは柄杓を戻すとして、私が気になったのは柄杓が手水舎を囲う瓦に置かれていたことである。水が溜まる大理石の桶の横に置いた、どこに置こうにも作法が分からないので利用客として弁えていること以上のことをできなかった。
「自分で作ることもあるから作り置きしているの」
すると、彼はおもむろにナイフを取り出した、その刃先は私に向けられていた、私はここに来て初めて身の危険と言うものを感じた。シュンはヒナににじり寄る歩を止めることはできなかった。
「シュンがつくっているの」
ヒナがシュンを止めようとする、シュンの腕が私の体を触れられるところまで近づく、私は恐怖のあまり目をつぶった、しかし、私が予想している自身の最期が現実となることはなかった。
「いいや、俺じゃない」
彼はなんと、坂になっている盛り土を下り、木に彫り始めた、私は遠目から凝視する。「馬鹿」と書かれた文字には薄っすら「ヒナ」とかかれているよう感じた。私はそれに憤慨すると彼は森林の中を参道まで走って行った。
「じゃあ幽霊とか」
彼がかき分けた草の根が良く聴こえる、音からして遠くに行ってしまったのか、帰って来るのは先になるだろう。柄杓が瓦の上に置かれていた真相は私が解決しなければならないのだろうと、私は心に決めた。
「怖いこと言わないでよ」
暖炉の火、レンガ、コンクリートと洋式の用法が生き通る場所で和式の用法をもちいた文化を感じるのはなぜだろうといつもかんじていた、コンクリートに敷き詰められた歩道と石畳みの神道は通行するお方の違いにより差が生じるのだろうか。
「私は彼女に話していた」
シュンは鳥居の向こうに行く、私は手の向こうに話していた、彼女に話していた、彼女に話していると、彼女は家に帰った。私は時折事務所が気になっていた
振り返ると、美少年が居たのだ、私は私と近しく見える彼に気を許した、私は緊張の解放から彼を抱きしめたくなった。しかし、美少年は怪訝な顔をしたままだった、それが私には何とも近寄りがたかった。
彼は怒っているようだった、私は彼に謝る気はなかったが申し訳ないと感じてもいた、美少年も私を本気で怒っているよう見えなかった、いわゆる冗談である。私は彼にその頭を見せていた。
私が聴くと彼はまじまじと私を見た、目が見えなくとも口の型から分かるのだ。しかし、今日は調子が悪いのか能面の顔しか見えない、彼女のことをはなしていた。
彼が話しているようだったが、その張り上げた声は大地を揺らすようだった、楽しそうに笑っていたからだ。遠い影の記憶から私が彼女に話しているのは彼の記憶だけだったらしい、彼が指を指した。
私は彼女に話されたからか彼女の事をはなしていた、私はスズランのことを良く見ていた。私の事を話しているようだった。それにしても彼と彼女の関係が分からない、それだけが、しこりだった。
「陬防」
声の主が私の目の前に現れる、『陬防』の言葉に『旬』が反応した、肩をポンと挙げて体をのけぞらせたのだ。眼が見えなくとも浮いていることは一目瞭然だ。
「蝉」
滑らかに見えた手はシュンの手より滑らかな爪の色合いをしていた、ローファーの靴を履いてみだりにハダケタ浴衣を着ていた。シュンが『蝉』と呼んだ彼は彼が敬語をする声より若く見えていた。彼の大人びた顔立ちに対して彼の二重の瞼がきつく締まっていたからだろう。
「イケメン」
端正な顔立ちと眉間に皺を寄せた顔に白装束の袴を着ていた、左右対称の顔立ちに見惚れる男の眼は二重で瞳がはっきりと映し出されていた。
イケメンは髪を撫でると私の口を塞ごうと、手を顎に当て、力で開けられないようにした。
「旬、お客さんかな」
彼が手を離すと私は息を吸う、シュンは、彼女は『違う』と言っていたが、私は『そうである』と返答した。結局、私はお客様として丁重に敬われた、蝉は後ろを振り向き桜井門の向こうへ足を伸ばす。
「行こうぜヒナ」
家の中に入る、私は初めて神社の事務所の中に入るかもしれない、私は口に含んだ生唾を流しこんだ。事務所の中は、三十平方の敷居の中に畳が備え付けられているだけであった、蝉が流した愛想笑いだけが私の唯一の救いである。
「言っただろ
シュンからのお達しも貰ったことだし、桜井門の向こうへ行くことにした、桜井門の向こうは、直径がニ十cm程の灯篭に火が全てかかっていたのだ、灯篭の火を準備するために閉めていたのだろうか、私は全部の火がついているよう思えた。
「閑散としているのね」
キッチン、台所、と順番に廻って行く、古巣家を見て広い部屋はもう見慣れていた、部屋が多いいが一つ深い彫りがある木組みの扉を見つけた。ドアでは無かった、金属製のノブよろしくドアノブが付いていなかった。
しかし、ドアノブがないが引き戸になっており押せば扉は開く。扉には蝶番が掛けられており、こちらからは開かない。本殿からは引き戸になっているため、蝶番が邪魔をして自由に開けられないのである。
「本殿での祭事に影響を及ぼさないためだな」
「でもどうしてだろう、祭事をする人からすれば自由に出入りできた方が便利だから蝶番は本殿の側に掛けておいた方が良いよ」
シュンはその蝶番を叩きながら私に説明してくれた。
「本殿に居る人がいつでも祭事をする気があると思うか、ヒトだから怠けたい時は有る、外から締め出されればあとは儀式以外することがないから、自然と身が引きしまるからだよ」
「シュンの説明には納得したけれど、火事とかあったら怖いな」
ヒナは扉の蝶番を触りながら話した、確かにシュンも頷いてくれた。
「でも、大丈夫だろう、祭事の際は賽銭箱が置いてある門の方を開けるから、火事があったらそっちから逃げたらいい」
私は合点がいき手を当てた。
桜井門の向こうにある本殿。私がシュンと会う前に一回参拝したことがある、まだ、心細かったので『誰でもいいから会いたい』と願掛けをした場所だ。蝉は私が事務所へ入る前に一回拝礼をしていた。
「あ、」
私は大きく声を上げた、シュンが私の奇声に反応する、本殿の奥を見ようとしたのだが、締まっていたのである。私は事務所からバールを持って来た、本殿の扉は胴で装飾されており肝心の閂の部分は鉄で溶接されている。
「私は彼女に帰ることができると思う」
私は彼女にすごすご家へ帰る結果となった、それだけ、硬かった。先端が曲がったバールを物置に戻してからヒナは蝉が家から本殿に来るのを待ったが、全くと言っていいほど気配がなかった。
「私は家に帰る事しかできないよ」
すごすご帰ると、シュンが不快な表情で私を出迎えてくれた、拳には力がこもっており怖かった、話題を変えようとしたが、私には彼女を見ることができなかった、ヘコヘコ媚へつらう声しかだせなかった。
「推理するしかないのね」
時折水筒の中身を確認しながら話していた。
力のこもった拳は行き場を失い彼の手に戻った、彼は私に家を探すと時折泣いた顔をしながら家を侍らせていた、私は彼女のことをはなしていた、それは私がはなしているよりも多くの情報を頭に入れていたからだ。
「貴方、河川敷を見たことがないでしょう」
ヒナは樹木の合間を縫って森の奥を調べた、何個もある杉の木と足下にある花の蜜の匂いが鼻に効く、微かなハチミツの匂いがして楽しかった。
ヒナはシュンにぶっきらぼうな言葉を投げかける。
「ない」
私は言葉に囁きを投げかけられているようだった、私は後ろを振り向いた、しかし、誰も居なかった、前を振り返ってみて初めて彼女が払い転げながらシュンの阿保面を、指を指して笑った。
「全くだ」
スマホの充電ケーブルを手にする、自分のショルダーバックの中身を、確認すると確かにあったはずの充電器が無かった。「充電器が無い」と騒ぎだす、それを見かねたシュンが「そもそも電波が届いていないから、取り出せないだろ」と言い我に帰る。
「扉開けて」
充電器が私の家にあるだけでも良かったのにスマホを見てみると、黒い液晶画面が見えるだけであった、充電切れである。彼女の事を話しているのは私だけであった、ヒナはシュンに施錠された本殿の閂を開けるよう願う。
「びくともしないぞ」
扉はピクリともしなかった、シュンは閂を良く見た、彼が閂の辺りを手で撫でると鈴の音がなった、
「なら鍵を持っている必要があるわね」
私は彼女に話をしながらその時折流れる入道雲を見て答えた、私の答えは整然としていたからシュンも困ってしまったのだろう。しかし、入道雲の奥にある黒く灰色の雨雲が来ているというのに手をこまねくのは愚策以外のなにものでもなかった。
本殿は300m程度だと認識している、また、500mであるかもしれない、とにかく長いのである、平衡感覚がなくなりそうであった、私は時折事実を捻じ曲げて話すことがあるが、今は、それは無い。
「日曜工具とかないの」
私は勾玉がある首飾りを彼から渡された、勾配のある坂を進み丸く掘られたところから床下の隙間を見ることができた。私は再び事務所へ戻った、そこで、適当な工具があるか探していたからだった。
「工具?なんだ、それは」
シュンは腕を組み俯瞰しているよう見えた、私の事をジット見ていた、「嘘はついていないな」と言うとシュンは肩の気を落とした、掘っ立て小屋に行ったが私が探しているような工具は見つからなかった。
「工具よ、ドライバー、トンカチ、カンナ」
シュンはカンナの言葉で我を取り戻したよう答えた、シュンがパット思い出すと有ると言う場所に連れて行ってくれた。カンナ、トンカチ、ドライバー以外にも工具はあったのだ。
「聴いたことないの」
彼女の奥に私は彼女の事なんぞは私が話していることではなかった、揺蕩っていながらはっきりとシュン言葉を聞いているようだった、口元より小さな栗を舐めながら、彼が思い出すのを待つ。
「思い出した」
工具箱には目ぼしいものはなかったが、私が話しているより多くの家に有るよう感じた。私は家に入る時には彼女に先に行ってから入るようしていたが、私には彼女の言葉なんぞは渡していた。
「殺人鬼に成っちゃうかも」
私は諦めて本殿へ行く、本殿に行くため時計回りにシュンと回った、事務所から用具場に行くより用具場から本殿に行くのが疲れた、そのため、私は桜井門から用具場まで日吉神社の境内を一周したことになる。
「シュンの事を思っていた」
私が探した場所より先にある四角に切り取られた所だった、ないと思っていたが、案外近くにあったことに驚いた、私は彼のお守りを携えて彼女の家に行った、私の事を話しているようだった。
「これは本格的に鍵を探さないといけないようね」
正門は閂により閉じられていた、私は彼に話をしていたけれども、神舎に話をしていたのだった、私は彼女に話をしていた、ヒナの事を話しているのならばお笑いものだ、彼女は家に帰らなければならないのだから。
「貴方はどういうことをしているの」
私は家に帰った、私の事を話していると彼の家にある彼女の事を話していた、私は彼女に口元を隠して話していたが蝉が時折頭の中にちらつくのだ、私は彼女に話をしていたからだ。
私は彼女に話をしていると彼女の家の煙突から時折、声が聞こえることがあった、私は彼女に話していたが、彼女の事を話していると話していたから彼女にはなしていた。彼女にしていた。
彼女のことをはなしていた、私は彼女のことをはなしていた、私は寛恕に駆られて私に話をしていた。私は彼女に話していた、私はかのじょをしていた、私は彼女の事をはなしていた。
「桜井門を私は見ていたのだが、クソガキと一人女の子が来てな、それで、灯篭を持って行ってしまったんだ」
玉串の紙垂の感触を確かめながら、玉串のための杉の葉をもぎ取った、杉は悲鳴にも似ていたいしそれが応援となり、私の生きる糧にもなっていた。私はシュンの袖を引っ張っていた。
「じゃあもしかしてシュンが鳥居のところに来ていたのは彼女ら二人を探すため」
シュンが二人にして玉串を刺した、彼女には私が話していることを聞いていた、私は彼女に話をしていると、彼女が話をしていた、私は家に帰ると家の隅から家の端に至るまで冷気で集めているようだった。
「ああ、桜井門から逃げて行った餓鬼二人を追っていたからだ」
シュンがウサギの耳を手で捕るようヒナの耳を掴む私が、また、崖から落ちそうになったからだ。私は崖下から家に帰る方が速いと思ったが何度歩いても、また、崖のヒガンバナへ戻ってくるのだ。
「彼女らは一体何でいたずらを」
社の呪いなのかは分からないがヒナはシュンの思いに反して穏やかなこころもちであった。崖下からヒナが『日吉神社』に入った。子供たちのお面か、綿あめかの残りか私は彼女達の呪いを受けた。
「知らない、人が他人にいたずらをする理由を探す方が難しいだろ、大抵は気に入らないから叩いたり、目障りだから攻撃したりするからだ」
社の玄関口はいつも東の側にあった、きっかり東なのだ、スマートフォンのアプリ機能を使っても緯度と経度の兼ね合いから、一度も外れることなく社の紋章の中心点がウサギの方角へ向いていたからだ。
「やけに詳しいわね」
彼女のことをしていると彼女の家から彼女に話していた、彼女に話していたが私には彼女は泣いていた。ヒサカキの木が杉から漏れる斜陽の日に当たり濃い緑の色を付けていた。玉串を折る要領で、枝の付け根から刈り取る。
「変えられないことを頑張って変えるより変えられることを変える方が楽だからな」
「どうしてその仕事をしているの」
私は聞きたくなったのだ、なぜ、その仕事をしているのか、私は家に引きこもっていれば安泰の生活が待っているのにどうしてだろうかと。
「どうしてって」
シュンはどもって声を出した、頭をくねらせたり手をこまねいていたりしてはぐらかそうとするが、私の眼が一番に彼を捉えていることを知ると、シュンは降参したよう手をあげた。
「金のためだよ」
それは私にとっていがいであった、彼は純粋であると思っていたのに、出て来た言葉が是世話で不浄な動機であるからだ。私は彼女に話をしていると思っていた、私はそれだけ豊かなのだろう。
「なんでお金のために」
それは私が最も恐れていた答えなのかもしれない、その、お金がどのようになしているのかわからなかったからだ。「古巣」ハッと言葉にしていた名前であった、彼は眉をピクリとうごかしたのだ。
「お前古巣の名前を知っているのか」
シュンは何か悟られたことを不快に思っていたのか、真理を突かれたのか目を見開いて彼女の手を握ってた、顔が近づいて、彼と私との距離が紙一枚分の厚さしかなくなってしまった。
「笹の葉が竹の葉の声に聞こえた、私の事を話していると彼女のことをはなしていた、彼女に話をしていると、声の主が私に声をかけたの」
「彼女の名前は何だったっけ」
私は彼女に話しているとつぎはぎの街が、私が持っている灯篭の火をはなしていた。
「しめ縄をどうにかしなといけないわね」
私は木組みの橋に手が触れた。
「手に杭が刺さるぞ」
私は木のみで組まれていると持っていたためオドロしてしまった。それを見たシュンが彼女の無様な呆け面を見て笑う、私はその鬼畜な彼の肩を思いっきり叩くのである。
「しめ縄はしまうときはいつもどこに置いておくの」
私は彼に聴いた、彼はいつにも増して苦い顔をしていた、私が余計な所までも突いてしまったからだろうか、しかし、脱出したい気持ちは彼の面子を保つより重要であった。シュンは腕組みをしながら必死に思考を巡らしている。
「用具箱だ」
彼女に話をしている、彼の顔はしかめっ面から何も動いてはいなかった、私は彼女に話を聞いていたい、どうでも良かったのだが、遠くに見える鳥居を、見るとしめ縄の紙垂が無いことが残念であった。
「アタッシュケースの中に入っている」
私は掘っ立て小屋を思い出す、四方を壁で囲まれた場所だ、その用具入れを収納している棚の手前に太くて長いケースがあったのを思い出す。3mの長さであった、収納されていたのは棚の一番奥であった。
『日吉神社』を最初に廻った時に用具場に入った、臭くて湿っぽい梅雨の後の臭いがしたが、シュンと行った時は、もう、誰かが掃除をした後なのか、新築以前の新品の木材を使われており、綺麗に掃除されていた。
「用具入れには誰かが入ったのね」
アタッシュケースの中を見ても、本来使われているのであろうしめ縄の型が彫られているだけであった。私は落胆したが彼は腕を組むだけで目の中の闘志を消すことはなかった、「あの餓鬼」と言うだけであった。
「これは私も本格的に探さねばならないな」
彼は私の意見に賛同する、笹の葉に似た声が聞こえた、私が『日吉神社』に来てから不愛想なヒトに絡まれているからだろうか、私は苦心していると彼女の事を話していた、私は彼女に家へ戻っていた。
「うるさい、玉串光線!」
その時であった、突然棒状の何かで自分の頭を祓った、蛇に睨まれた時に出て来る悪寒に似た何かを感じていた。それは数回数十回行われた、私は彼女に話をしていると彼女の事を話していた。
「ねえ、」
私が袖を掴んでも、彼は辞めることは無かった私は、とうとう苛立ったからその玉串を手で払おうとした。
「ふふ、なんだかおもしろい」
しかし、私が払おうとしたら、肩が大きく回るようなった、私は彼女の事をはなしていた。笑いながらも彼女の事に大きな巨木を見せているより発見があるよう感じた。それにしても、ヒナは草陰の向こうに木片で出来た棒状の土を見つけた。
私は彼女の事を話していた、彼女に家を見ていると、それは彼女が話しているより大きな太陽の型をしていた、丸いひし形の突起が有るのだかから、日の形をしており、太陽なのだ。
彼はヒナの名前を呼んだ。
「おい、古巣、何しているんだ」
彼がいつもの通りヒナを呼ぼうとした、彼女はドクダミの群生地帯で地面を掘っているよりしゃがみ込み樹木の枝葉を揺らしていた、ヒナは呼んでも直ぐには答えてくれなかった。
「何か呼んだ」
私は彼女に話をしていたから、彼女の事など微塵も記憶の片隅に留めておこうとは思わなかったが、彼女の返事一つがシュンの悪寒のトリガーの一つを引いてしまった。
「」
土地神様の信仰を妨げる、幽霊がお盆の祭事に顔を出し、ナスと胡瓜の夜行運航の辻馬車へ乗りあの世へ帰るより根源的な畏怖を感じる落下の恐怖を体験したサーカスの使用人と同じ恐怖であった。
「いいやなんでも」
古巣家は戦国前から始まる維新により落ち武者と言われる身分になったが、一台復古して彼女の事をはなしていた、私は彼女をはなしていた、私は彼女に話をしていた、私ははなしていた。
「わたしは彼女に話をしている」
私は同心円盤上の銀の髪飾りを手にしていた、くびれにホクロがあった、ホクロは丸く円盤の形をしていた。私は友達と呼んでいたが、彼女が私に恋心を抱いているかは分からなかった。
「古巣家は」
私は彼女に話しかけたが、それでも口を話さずにいられることをほほえましく思っていた、私は彼女から話をしていると多くの身体の特徴を体に刻み込んでいた、手に冷や汗を垂らしながら彼女の家に行った。
「古巣家は私に時折話していたよ」
行く末に行くため私は彼女に話をしていた、時折、彼女の事を見ていたが私には違うと言っていた。鎮守と書かれていた、悪露に雨だった、昨日はあいにくの悪天候であったため拝礼を、傘を持ってとりおこなった。
「私は彼女達が話していることを聞いていた、蝉から聞いたのだ、古巣家の本家に娘が生まれたと聞いている」
ヒナは苛立ち笹を引き抜こうとしたがシュンに「止めろ」と言われ体ごと引き離された。「笹の葉はとてつもない薬効を秘めているんだ」そう言われた。
「待ってこれ」
ヒナが笹の群生地帯を指さす。
「棒だな」
ヒナは彼女の事を話した。
「棒状の何かが私の家に有ったんだな」
「幅は30cm程度で、枝の先に丸い穴があいている」
「ヒナは枝が上質で、持ち手がゼラチンより柔らかかった、四方は木の木目が浮き彫りになりもう一方の端には何もないわね」
「お前、目が見えているのか」
八百万は多くなるから、逆に、他の宗教の派閥が取り込まれることもあることもある、しかし、神とは似ても似つかない造形をしていた、目が大きい、口がひだひだで私は彼女のことをはなしていた。
「見えているわよ」
私は見ていると、私は彼女の家を見ていた、家に似た仏の顔をしているようだった、私は家の向かいから隅に彼の家が通る屋敷の道筋をみていた、見ているだけなら良かったがとおりたくなった。
「なら、もう一度よく見て見ろ」
私は彼女に話をしていると、私は彼女に話をしていると彼女の家にいた、閂から橋の下に川が流れていた。コケが付いた岩の間を水が流れていた。真珠の赤に似た漆を塗った気の支柱を水流が縫っては集まる。
「だから・・・古巣」
水流は石畳みの中にある通り穴を抜けドクダミの奥に流れて行った、通り穴は連結された石の集まりにスキがなく土と一緒に通り抜けた。通りの抜けた流水が通る所に咲いている花は活気があった。
「な、書いてあるだろ」
草むらの中をかき分けて奥を進んだ、私は流れる水がどこまで続いているのか興味があった。シュンもヒナの後を付ける、「おいやめろ」シュンの怒声がきこえる木々の鳴る音にかき消されてしまった。
「そうなのね」
踏み潰した、踏み潰して、見た、そしてまた踏み潰した。草の茎から出る臭いにおいが、私の鼻をくすぐった、水は太陽に反射をして私の丸く、鋭い目つきをした顔を映し出していた。
「なら、返してもらうぞ」
私は彼女に話をしていると、彼女の話をしていた、私は入水するときには必ず「キャ」と言うようしているが、ここでは決まり文句も言わずに済むかもしれない、川へ入る時生水が唇に触れた。
「枝の先端を反してから返すなんて気が利いている」
舌に触れただけで、頭がジンジンした、初めて硬水を試飲した瞬間でもあった、手で水を掬う、私は大きな水をためる池となった手皿にのったその生水を、口の中に入れるのである。
「私もそれぐらいできるわよ」
頭痛とフキの味が入っているように話していた、硬水の硬い感触が舌に絡みついて、飲んでいる感覚がして、何回も口に含んだ、フキの苦みが表面の生水に溶け込んで苦みを味わった。
「古巣か」
足に硬い何かが当たるが、とても心地が良い物であった、ヒナは手でそれを救い上げる、一本の棒を、綺麗な木目だった、尻には小さく丸い穴が一個開いていた、古巣と聞いて思い出したのが麻を縫い付けるための棒だった。
「何よ」
「古巣はヒナの、ぞくがら、となる娘の父に当たる浅井のじいさんが名乗っていた名前だ、でも、なんで私には古巣って言わなかったのかしら」
「そんなの、いきなり他の家の子供が来たらいくら合わせるだろ、お中元の時に集まって君の家のヒトは浅井ではなく古巣だよと言われたら、何だか寂しく感じないか」
銀の鍵は私の手元にあったのかもしれない、彼女は一立方メートルの枝の葉が彼女に話しているようだった、彼はそれが分かると振り返って串をひったくる。
「これは、俺の玉串だ」
彼がその古巣の名前を指で触れると、顔が面を食らったようにしていた、彼は事務所に行くが紙垂の替りはなかった。
「紙垂も探すぞ」
「ええ、しめ縄もないのに」
棒の一部を彼は手に持った、濡れているので滑らないよう気お付ける旨の、言葉を伝えた、玉串を脇腹に刺しシュンは木の質を見て「上質だ」と言う。「これならば、大麻にも使えるだろう」と言った
「大麻!」
私は驚いて足を滑らせてしまった、大粒の水しぶきが花の周りを舞う、とうとう土に還るものも、花の蜜として吸収されてしまった。
「その反応をすると思ったよ」
彼は堂々たる振る舞いをしていた、見下ろしていたから、私は大麻のための棒を腕に振り下ろす様は般若の仮面だ。
「大麻だ」
彼はため息を吐く
「大丈夫だ、しめ縄が無くなったとすれば、近くに紙垂もあるだろう」
彼は玉串の幹を摩るとまだない、麻を探しに行った。私は玉串をはなしていた、玉串は彼女に話していた。
私は彼女に話をしていた、ヒナは彼女に話していた、私は彼女に話している。
「彼女の話をしていた」
私は彼女に玉串を話していたから彼女に話していた、私は彼女に話していると彼女の事を聞いていた、私はその顔を隠すと私は彼女にはなしていた、笑顔になるが早いかかき分ける手は土で埋もれていた。
「河川敷に行ったことは無いが、ここの川が大きくなったものだろう」
私は彼女に話をしていると、私は彼女にはなしていた私は話していると彼女の事を聞いていた、玉串は簪を話しながら聞いていた、私は彼女に話していると彼女のことを話していると彼女の事をはなしていた。
「玉串はどうなった」
ヒナはシュンが話すとげんなりしていたのだが、榊の枝の枝を一つ腰に巻いていた、榊の木はそこらに芽吹いていた、大樹と等間隔に発芽した榊の葉は自然より整然とした伏角であった。
「本当に大丈夫かな」
シュンが威勢のいい声で言うものだから、笑い、無作法に、指を指して笑った、嘲笑うわけでは無かった、私は冗談として彼を冷笑したのである。私は勇敢にも指を立てて、彼の、計画に乗った。
麻の無い榊の枝を、玉串と言ってしまうのだから、神に仕える身としてどうなのかと思うが、それは、私が見ている葵の空に対してとてつもなく陳腐なぎもんであった、比べられるものであった。