田舎
きんきらの太陽が実家になる田舎の桜井門をてらしていた、遠巻きに見えるのは二階建ての大柄な家屋と屋根であった、屋根は瓦をこしらえた木造建築であったが手金コンクリート住宅と同様変わらない社宅であった。
彼女がこの街から聴こえる声は森羅万象の雄叫びのようだった、家は二階たての沖縄の海を連想してくれれば良いと思う、家主に話を通しているのならばこの家はどこでも立ち入って良いことになっていた。
叉三郎は口の中にあった食べ物を飲み込むと、また、新たなスイカを食べた、私はコンクリートで固められた縁側から奥が横を通った。黒猫はまじまじとその目を私に見つめる。
叉三郎はそういうと前にある煎餅をひとかじりした。林檎を生で食べたぼりとする音が聴こえるようだ。
「あれ、何かがある」
私の家にある神棚に参拝した、その、葉っぱを良く見ると陽光のヒカリを吸収して太く真っ直ぐに育っていた、私はその葉の裏が気になって一枚捲った、そこには、芋虫の幼虫が這っていた。
「何、あれ」
芋虫であることは分かっていたが、体が受け付けなかった。私は、そこで、ナメクジを思い出した、ナメクジは塩をかけると水を体から出して死ぬ。梅雨の時期にナメクジを見つけた時にいつも、行う、撃退方法である。
私は今から台所へ行くと塩をひと固まり乗っけた。砂を手に置いているようだった、容器に貼ってあるラベルには岩塩と書かれていた。私は台所から持ってきた岩塩を手の平に乗せて走る。
私が持って来た岩塩を芋虫に振りかけたが縮むことはなかった。塩をまぶす前より生き生きとしていた、私はそれが腹に立って、つい、葉っぱの上を這っている芋虫を葉っぱ事握りつぶしてしまった。
『罪悪感』は確かにあったが、芋虫と人間を比べていると『罪悪感』も薄れていく。一匹は『ピー介』と懐けた一匹は『太郎』と名を付けた。私は握りつぶした拳からは空よりも蒼の色をしている体液が零れた、本当に少しだけであった。
葉は風に揺られるだけであり、もぎ取っても分からないと感じた、太陽の陽光が当たるころには『芋虫』のことはどうでも良くなっていた。
彼女は何かをしていた、私は彼女に話をしていると、彼女の話をしていた。クスクスと笑う何かがきこえた。後ろを見たがヒトはいなかった、右を見たが誰も居なかった、左を見たが誰も居なかった。
佐々木の穂は稲とこすれていた、森の木々が、穂の吸収する栄養の浮き沈みまで好悪しているようだった。
草葉に煽られて私はもう一枚捲る、想像していた葉っぱの幹は、くっきりとした葉裏である。私が見たのは幹の部分が捻じ曲がった葉っぱが文字に見えた、ヒナが習った日本語であった。
赤い、滴るような血の色で私に語り掛けて来る、視界が狭まり私が願掛けした願いも、どこか遠くに消えてしまった。芋虫の復讐が始まったのかもしれない。
「このお姉ちゃん新しい」
私は彼女に話をしているわけではないが、見下ろした場所にいるおさげの髪をした少女を見下げていることは、ありえない。少女は走っていた、彼女が足を踏むごとに土が飛ぶと彼女を話していた。
「貴方の誰なの?」
おさげの少女は走るのを止めて私を見つめる、目は獲物を捕まえる肉食獣が狩りをする動物を見定めたときに起こる殺気、体は手が物欲しそうに中指をかじっていた、私は反射的に彼女の口から手をどける。
「!」
指が私の手を離れた、彼女はびっくりしたのか辺りを見つめていた、彼女は底辺を見るように私を見ていた、私は彼女に話をしていると、彼女は泣いてしまった、泣いてしまうとまたあやすことの繰り返しであった。
彼女がいる先にはもんがあった、門には紅色が湿気で膨れているよう感じた、彼女はそこを指さしていた、私は門の先を食い入るよう見る、幸いにも奥には格子戸が付いており中が見えるよう組み換えられていた。
立体的に見えた、前へむき出しになった木材が、そのまま、アンティークとして使われていた。備え付けの棚から辺りの床に常設された棚にボタンの華が描かれた扇子の絵が飾られていた。
「私は彼女に話している」
目を話していた、暗い行燈の行き場が話していると彼女に話していた、私は彼女に話をしていると、風蘭が私の足をすり抜けて首を撫でた。彼女の首元は鎖骨に似た大きさの肌の色を見ていると、なぜだか、彼女は知っている。
「よっしやるか」
男っぽい声で自分の体に喝を入れた。
その時に初めて自分の周りの景色が鮮明に見えた気がした。
私は彼女に話をしていると、彼女に話をしていると、おさげの頭の少女は、私の頭を叩こうとしたが背が低かったから腰の辺りを叩く結果になったが、彼女は笑う。
家は襖が多く扉と呼ばれている仕切りは無かった、襖は開いていたから換気ができそうな窓であった、吹き抜けの扉が上下になるようつくれられている、こと、開いている襖が上下になるよう開かれているからだろう、室内から縁側につづく、心地良さを感じられるだろう。
吹き抜けの扉は閉められるようになっている、断熱材があるから例え襖だけでも、鶏が卵をたくさん産みはじめる時期まで寒くない、からこの家には私が知らない未掲載情報がたくさんあるのだろう。
「いつもは古民家として個人の観光客へ貸し出しているが、今後は客入り次第だな」
彼はそれだけを言うとお手洗いを左に向かい、いつか私の前から消えてしまった、洗面台と風呂場の中に有る凹凸の凹みから木材を踏み鳴らす音が聴こえる、徹が階段を上がる音だった。
「見えていないの?」
生垣に生えている深い緑色の葉が風に煽られて葉同士がこすれる、縁側の淵から女児が覗き込んでいた、徹は横目に縁側を見ていた。
古民家と聞かされていたが制振に対して対応しているとは、建てたい土地の面積を調べその土地を平らにする、家の中心に一本の大黒柱を立て四方へ太い支柱を立てている、私がわかるのはそこまでだ。
棚の上には、人体模型、ひな人形、囲炉裏、軟骨剤、ぼんぼん、煎餅、気になったのは洋風のモノが何もなかったことだ、金はあるようだが本来はあるであろう、椅子、テレビ、カレンダー。
「風林火山は我が家の象徴だよ、風のよう速く、林のよう多く、火のよう苛烈で、山のよう大きい存在になりたいと言う、いわば社訓とあまり変わらないかな」
そう言うと、彼はひらりと掛け軸をなでた、コツンと音がして掛け軸が跳ね返る、蛙の顔をしているとクスクス笑った。
「私は家主だから触っても良いけれどヒナ駄目だよ、万が一傷でもついたら責任取れないしね、僕は買い出しに行って来るからヒナは茶菓子でも食べて待っていなさい」
ドテラを着て奥の家に行く、自身の家より小さく、比べると小屋に思える家だった、規模が小さいのだろう。24歳にもなって年上とは言い『命令口調』は癪であったが、それが家主の役割だと決めた。
掛け軸には風林火山と書いている認めた半紙は彼女に話していると彼女のことをはなしていた、掛け軸の裏には彼女と書かれていた。私は彼女に話していると私は彼女に話をしていた。
「○○さん」
掛け軸の奥には穴の開いた、鉄の扉が隠れていたのだ、黒い箇所からはひかりに当たり銀色の鈍い色を反射させる。黒い部分にはペットボトルの飲み口にある突起がぐるぐる、に似た渦巻き状の凹みがあった。
掛け軸は砂糖に似てはっきりした感触が伝わる、和紙と言うものだろう、東京の家に和紙を混ぜた張り紙に張り替える人が多かった、流行に乗った人が多くて管理人がアパートメントに住む主婦へ自慢していたのをよく覚えている。
この家に来てから全く違っていた、空気もおいしいし星は良く見える、夜行バスで見た星座を覚えているだろうか、アルタイル、ベネ、オリオン座と蛙や蝉の鳴き声、夏の大三角形を自分から見ようとしたのは初めてだ。
風鈴、灯篭、夏の華になる野花にオーダーメイドの羽ペン、私は彼女にはなしていた、私は、奥の家にはなしている、女性の家を話していた。○○が見える彼女のことをはなしていると、私の家に入ったことがある、がさつで生活感のあるシミ、青臭い香りがした。
囲炉裏には彼女の好きな琥珀色へ変化していた、昼の影の中にしか現れない限定の現象である。囲炉裏は四方を分厚の仕切で区切られて、中に煮物等の鍋を吊るすフック状の鉄があった。
料理の途中だったからか雑多に切り分けられた食材が並べられていた、並べられている食材からして、今日はもつ煮だろう。ホルモンの脂身が私の舌をそそる、私は囲炉裏の奥を調べた、囲炉裏の奥に何か硬い凹凸だ。
一度完成した料理を流してしまうのはもったいないが、その煮込み料理を洗面台から流した、当然持つが中から出て来るのでそれだけをザルへ移す、固形のモノだけを食べながら、その鍋の中を掻きまわすとまるい金属製の突起が出て来た。
金属製のドアノブと突起は同じで反時計回りに回していたが、突起の部分を持ってもしっかりと手に滲むが砂糖でべたべたしていた。
私は急いで掛け軸のところへ走る、風林火山をどかすとドアノブのひらべったい部分を黒い突起に差し込んだ。
どこかで回すと重金属がのっそり動くだいだらぼっちに似た鳴き声を発する、闇にヒカリが差し込む、ヒカリは太陽が発する輝きだった。
中から外を見ることはできないが、外から中を見ることはできた、私が見ている格子戸以外にも覗き穴が設置されていたからである。穴が漆で塗られていること、穴の幅が小さいため、元から穴をつくる設計であったことは明かであった。
「何どういうこと」
私はおどおどした態度に腹を立ったのか少女の頭を私に当てた。
するとかおりの中に埃っぽい香りが鼻にした、私は何かを引き当てた感覚に苛まれ自身の直感を当てにする。私が手にしたのは長さが30cm以上の火かき棒であった、私には女児が火かき棒を持ってくるので自然と手にした次第だ。
二階建ての注文住宅でオーダーメイドだったのだろう、掛け軸の後ろに隠し部屋を作ることが、普通の設計であると言う人がいるのであれば申し出て欲しい、私はそういうことを信じる人を信じられない。
私の手の中にある赤いコケシだけがにっこりと微笑んでいた、誰もが息苦しくもシビアな、美しい自然の中で、唯一彼女だけが笑っているのである。コケシを拾ったがそれ以上はどうすることもしないので、しばらくはズボンのポケットに入れることにした。
女児は私の腰をおもっいきり叩いた、私はびっくりして奇声を発していしまったが、恥をかかされたと微塵も思わなかった、男児と女児が屈託の無い笑顔をしていたからだろう。私も思わず許してしまう。
「じゃあね」
どこにもいなかったが、彼女の声は私の耳に残っていた、話しかけても「じゃあね」と言う他は無かった。彼女が触った腰の骨に手をやると、そこは、インフルエンザを患った時と同じ熱い感触が指先から伝わった。
「じゃあね」
しかし困惑はしていたが心地良かった、太陽が発する熱より備え付けのパソコンが発するマザーボードの熱は確かに熱いが太陽の暖かさはパソコンの熱より暖かく感じるため、ずっと感じていたいと思うのと大差はなかった。
「中に入ったのかい」
大地主がものすごい形相で私に詰め寄る、私はあっという間に肩を掴まれてしまった。父に当たるのだが、初めて会った時よりも思い詰めた感じがした、首筋が緊張していたのである。
わたしが首を全力でふっても彼は睨んだままである、その状態が数分続いた私が横を見ると、そこの火かき棒に気が付いた、怒られると思った実際私は彼女のように話がうまくないし。
彼女は『肉じゃが』が盛られている鍋には、何も仕込まれていないかみた、叔母は白い粉を入れた。肉は赤身が多いい油多めのモノであった、兄はその汁物をおいしそうに食べた。
「彼は腹が減るのが速いから先にたべているのだよ」
彼は気を利かせて言ってくれた、からだ。
「夕食は7時だよ、だから、それまでは自由時間だね」
「じゃあ見てきます」と言う。
私は逃げるようにその家から出て行った、私は家から出て行った時に思った、大きさに驚いたのだ。小学生の時に暮らしていたアパートメントの一室が私の部屋一つ分であり、その他に、兄、弟、父母が暮らす部屋があった。
私は彼から頼まれたせいの洋館をこっそり買う任務へ赴いた。
豆腐屋の屋台骨は錆びており、なぜその分譲住宅が建つのか不明であった、和色の芥子色に、鮮やかな青紫系の色、あざやかな紫系の色が混ざっていた。
暖色の太陽が交じり合い晴れていた。