引っ越し
けばけばしい都会の喧騒から遠くにいるトンビの鳴き声が聞こえて来た、私は彼女に話をしていると、雀の涙の時間しか友人たちとお別れの会をしなかった、先生が主導で行った私の初めての祭事であった。
ビルディングの群から友人の顔が見える、三角形、四角形、五角形、形の違う人達を所々見つめていた、頭の中の整理をしようとしても彼女の声は列車の駆動音がかき消す、連結部が線路の変わり目に当たり道を変える、夜の街に駅ナカから住宅街を駆け抜ける。
乱痴気騒ぎが目立つ街中にはどうしても行きたくなかった、小鳥のさえずりなんて聞こえなかっただろうが私は彼女にはなしていた、私は彼女に話していた彼女のことをはなしている。
ヒナは雑記林の中を突き進む、通りにはだれもいなかった、自然に生えた雑草と時折匂うボタンの香り、そして、満開に咲いたひまわりの黄色い花の粒が雑草の影に囲まれたひかりに当てられてせいちょうしていた。
道路に立て看板は無かった、駅のホームを出るとそこから砂利の道であった。コンクリートはなかった。豪華と言えるのは味のある木造建築の二階建てだった。私には遠く眩しいようかんじた。
「ヒナ君、歓迎するよ」
男は女性の名前を言う、どことなく優しい声に私は心をゆるしていた。いとおしい声は私へ安らぎを与えてくれたが、叉三郎は彼女にはなしていた。彼女に話しているから私には、彼女に話していた。
「東京より来ました浅井と申します」
男は彼女に話を聞いていると、彼は納得したように聞いた。
「私たちは君たちを歓迎します」
男は彼女に話した。
「こんにわ、叉三郎さん、」
叉三郎は屋敷の座布団をヒナに貸した。
石垣から森が見えるのだが、森の奥の雑木林には蛇を睨む猪の一匹が威嚇をしながら、周りのキノコを食べていた。
「あれ毒キノコよ」
私は毒キノコを食べたことがる、めまいがして吐き気がして、熱が下がらないのに体が寒くなるのだ、だから動こうにも動くだけで身体の隅々が小さく震えていた。赤いサンゴ礁のようなキノコでも食べられるのだろうか。
「都会からの長旅はきついだろうに、さあ、茶菓子の一つでも食べなさい」
道路に立て看板は無かった、駅のホームを出るとそこから砂利の道であった。コンクリートはなかった。豪華と言えるのは味のある木造建築の二階建てだった。私には遠く眩しいようかんじた。
「叉三郎さんはやさしいのですね、どおりで長男に見えます」
叉三郎は彼女の煤けた口元の赤黒いシミに目が行った。
「まあ、もう遅いし風呂に入ってから、寝よう」
叉三郎はそれだけを言うと座敷から出て行ってしまった。後には竹の喧噪とキツツキが木彫りをする声だけであった。
都会の鬱散とした空気から離れて、田舎で一人暮らしたいと考えていた、私の父は大工であったため、職人として大成したから資金は多くあった。中学は私立だった、私は都会の喧騒が合わなかったのか、気後れしていたが成績を理由に落ち込むことは無かった。
つり革を手に抱えているひとは誰もいなかった、車号の3番はとても静かだった20人にも満たない老若男女、若干男の方が多かった、女性はすっかり生気を持っていかれており髪は、わしわし、していた。
私が乗った3号車には女性はとても少なかった、しかし、それが特に私の気持ちを逆なですることも無かった、関東から中部まで行くのには時間がなかった、私のこころには列車の到着時間のことをしか考えていなかった。
大自然の奥には彼女が話していた學校があった、学び舎の奥には大きな団地が広がっていたが、逆転の減少が起きた。団地を解体し固まった土に作物をつくり生計を建てる人が多くなった。
団塊の世代は反発していたが過労には勝てず老衰する人が多かったため、じり貧となり消えた。しかし、袴を着ている人は多く文化が薄まったと感じることはまあ多少ある程度であった。




