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夢の叉三郎  作者: 猫八
田舎道
18/21

瞬火

 夜の灯篭の火は私が見ているより綺麗に想う、私はシュロが聴いていた荒れ地の魔女の事すら答えていないことに気が付いた。私は灯篭の火を持って行くと登り階段の奥に有る竹林に足を運ぶ。

 灯篭から彼女が話を聞いていた。

「シュロ」

 私はマッチ箱から火を照らし彼女に話をしていた。

「お姉ちゃん」

 シュロは彼女に聞いていた、その口元はどことなく儚く見えた。

「どうしたの?シュロ」

 私は彼女に話を聞いているとその声が聞こえる場所まで行こうとした、彼女は何かを言っていたのだがボソボソと話すので聞こえなかったのだ。

「・・から」

 私は彼女に話を聞いていると、とてもではないが舐め回すような、不快な縮れた声に顔をしかめた。

「私はシュロの声が聞こえないの。シュロは私の声が聞こえるかもしれないけれど私には分からないの。もっと大きな声で話してくれない、お腹から声をだして」

 いつもでは言わない声量でシュロに言う。言った私自身でさえも大きいと思うためであった。

 竹を揺らす程の大きな声はお堀に吸収されて外に漏れなかった。シュロが微かに笑った事が大きな声に聞こえた、「何よ」とかすれた声でさえもヒナはかぼそい声で喘いでいた。

 竹の声が笹浪に聞こえた、私の耳元に漣が確かに聴こえた、頭の天辺から端にかけて痺れる感覚がした。

「もう結構よ」

 私の目尻は鈍重な微睡を孕んでいた、シュロへ向かう足取りは私が鳥居を潜りシュンに合うよりも速かった。私と彼女の頭の中にはシュロとジュンと団らんしている記憶が写り込んでいた。

 ヒナはシュロの頭に手を翳す、しかし、シュロはヒナが近づくと頭を出して腰をおろした。

「えへへ、ヒナちゃん楽しかった」

 シュロは喉元を抑えながらヒナを見つめている、私は涙が頬を伝う感触を感じながら手は震えていた。

「そうだよ」

 シュロは涙を浮かべていた、涙ぐみながら肩を震わせて大きく咳払いもした。私の手も咳払い同様、震えて身震いし焦点が定まらない。目の奥から滲む大きな窪みから涙がこぼれた。

 シュロの手がヒナの手に触れるといきなり手を引かれたように力が抜ける、竹の葉が私の耳元でささやくがシュロが良く発する声高な声はどこからも聴こえなかった、目の前に淡いひかりとなり聞こえる蛍の光明を焚いたタンポポの綿が宙へ舞うだけであった。

 竹林に飛ぶ彼女の遠吠えは私がシュロと初めて会った時でさえも聴こえなった陽気な心の声を現しているようでもある。竹林の奥の鳥居の奥には死骸になった骨があった、それは内骨と背骨が欠損していたが、その笑い声が骨だけでもわかった。

 鳥居を横に真っ直ぐ進むと逆三角形に造られたお堀が見えた、そこを今度は左に行った、私は登り階段を真っ直ぐ進むと灯篭の横の裏手に出ることができた。シュンもシュロも壇の裏に腰をおろし飲んでいた。

「シュロはどうした」

 シュンはヒナに聞いた、

「ああ、いや」

 歯切れ悪く答えてしまった、シュンが「ああ、いやって、何」と聞くとおしだまってしまった。

「まあ、いいじゃないか」

 禅は彼女の肩を叩くとそのままウィンクをした、私は咄嗟に後ろへ仰け反ると肩を竦めて泣いていた、私はそのまま家に帰ろうとしていた。

「ジュン、どうしたんだ」

 私は涙を流していた、私は家を持って居た人たちに私の家のポータブルエアコンをつけてあげようと進言したことがあるが、打ち水により賄われているとはとても考えつかなかった。

 ひんやりとした氷水が熱気を吸い取っている。

 石工の間に燃えている炎の間から熱が循環し空中へ霧散する、冬場の朝露が霜へ変わるより先に熱が湿気を奪い空へ発散されることが速かった。私のお腹が減るのは頭の回転が遅くなる瞬間より早いため急ごしらえに何かを口に運ぶ必要があった。

「どちらにしてもヒナが酸いものを食べる前に探そうか万が一彼女が竹林で迷子になっていたら面倒だから手始めに探そうか」

 赤黒い煙のよう立ち昇る味噌が具材を掻き立てるお玉と一緒に鍋の全体へ掻き混ざる、具の頭が濃厚な味噌から顔を出した。それは魚であった、魚は私が釣り堀で釣った鮎であった。

 私は口を付けた。

 芳醇な香りは私が食べたどの川魚よりおいしかった花を突き抜け碧魚の脂身の香りが口へ魚の身を運ぶことを肯定している。顔が引きつりながら飲むと蟹の殻とミソで取った味噌汁に負けない香しい味がした。

 私がミソの味を堪能している時にはシュロも禅も居なかった、彼らはヒナを置いて砂が蹴る方へ行ってしまった、下駄を履いているのは共通であったが少し斜めで被さるところに二本の抉れた土が盛っていた。

「ああ、行ったのね」

 私は汁物を飲んでいると、シュロの事を思い出していた、私は家に帰るより先に灯篭から出て来る火が強くなっている気がした。私は鳥居の門の先を見て向き治すと灯篭の火が燃える奥をみていた。

 鳥居の門が有り私には彼女が話をしているようでもあった。


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