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夢の叉三郎  作者: 猫八
資料
1/21

四囚人

「と、言うわけのですが、依頼をお受けしてくれませんか」

 大柄な男は人に懇願しなくても生きていける人間であった。向こうのパイプから煙を吹かしている男にエイの顔をして跪き神に懺悔する時に使う言葉を使う嵌めになっていた。

 今まで合理的な考えで生きて来た男には人の心を動かす言葉を使うのは初めての事であるからして、しどろもどろに、言葉の羅列をはく。涙ぐましい努力をして覚えた懺悔をする時の言葉はそもそも彼には必要のない言葉であった。受けてである彼は

 これもすべては最近になり発生した連続通り魔殺人事件が引き金となっていた。叉三郎は後ろに立つ彼女へ合図すると彼を一瞥し前へ出る。

「申し訳ございませんが、今日のところはお引き取り願います」

頬がこけた顔に変貌していくさまを見ることになるのはこれで48回目だった。彼は彼が退くまで緊張した、目を寄せる演技をする他なかった。

「お願いします、彼を、ピーターを捕まえてください」

 涙ぐむ女性すら私の事なんぞ聞いていないよう感じた。

 純子は彼女が従事していることを理由に『』の願いを断った。江端の顔にはしわがれた痕が残っていた。しかしそれは絶望を連想させる負の感情から来るものではなかった。

「わかりました、その依頼お受けしましょう」

 依頼者はその手が完全に廊下へ出るまで一切の力を緩めることはなかった、典型的な戦闘態勢の姿勢であった。私は若干に恐怖を感じたりはしたが、彼女には時折りコーヒーを貰っていたため頑張れる事の範囲の中であった。

「かしこまりました、私にお任せください」

 その後彼は帰って行った、彼の過ぎ去る後ろ姿はこれまでの依頼人には無い、前向きで生き生きとした、伸びた姿勢と言うものがあった。私は彼と話す以上に充足感に満たされた心持ちであったと記憶している。

「彼は大丈夫そうね」

 江端が紅茶を淹れながら嬉しそうな顔で話しかけてくれた。「ああ」と言葉にもならない低い唸る声で返すと、しわがれた老婆の体臭に似た臭いがした。それは江端の頬の広角があがった時であった。

 その時であった私は彼女の横を通り過ぎて人が一人の女性が入って来た。見た目風貌からして成人した女性にも見える。私は直感した、彼女も連続殺人鬼がピーターであると思っているたちの人間であると。

「叉三郎さんお茶が入りましたよ」

 純子が入ると彼女の後ろ姿は純子がはなすより先に話していた。コルクセットを付けた女性はバラ色のセットと薄い黒の刺繍で拭われたドレスを着ていた。

「あら、私のことは気になさらず」

 振り返った女性の顔は整っており話す声は声高なソプラノ歌手を相手へ連想させた。肌は美白ではあるがアジア特有のきめの細かい肌をしており、顎は三角形のよう整えられていた。

「って、あれ、来客が居たのですね」

 私は想わず自身が持っていた紅茶のセットを落とすよう机に置いた。

 目は天然の二重でまつ毛が長くロール状に巻かれているため全体的に深い堀が瞼の近くだけより深く見えた。そのお客人は私を見るなり胸に手を当ててスカートを脛の真ん中ぐらいまであげる。

 目をつむると首を振り「私の、いえ、何でもないわ」と言いまどろみの中の顔をするが、しかし目の奥の瞳は私をしっかり見据えていた。

それは催眠術にかかっていたにほかならない

「ああ、そうだ、彼女にもコーヒーと紅茶を」

 私は彼女に話していた。依頼主がウィンクをすると純子はハッとしてその場から撤退する。彼女がこの場から離れると彼女はホックを外した、すると彼女の顔が少し緩めた顔をしているよう見えた。

 彼女が椅子へ座るとテーブルに置かれているコーヒーを自分で飲んだ。彼女は「苦い」と言っていたが最後まで飲み干した。私はそれに感服するともう一杯をそのティーカップに注いだ。

 彼も共に座る、彼はその飲み口をつぶさに観察していた。私は彼女の事を話していると私はそんなことも有るのかと気にも止めなかったが、自分には彼女が何らかの違和感があった。

 私はクラウンピースの彫像画を見ながら彼女がコーヒーでも啜る音を聴いていた。彼女の啜る作業が終わると彼女は画集を取り出した。私はその間に口にマカロンなんかを詰め込み栄養を補給しながら緑茶を飲んだ。

「私の夫を殺した犯人を捜して欲しいの」

 彼女は私の裾を掴み私が話している、私の事などお構いなしに話すさまは自己中心的な女性である。

「夫をさがして」

 彼女は微かに途切れた声をすると私に懇願の顔をした。しかし彼女の涙袋へ涙は溜まっていなかった。私は彼女を手で椅子へ戻すと三度深呼吸をした。

「私は今でも十分若いです。でも、サーカスをしていたというのだけは正解です。私がサーカスを見て、彼が演技をし、観客がいてその群衆に私が居るのがとても嬉しかったのです」

≪トーマスとの対話≫

「で、あるからして結婚をしたのですね」

「はい、そうです。その時に彼が1カラットのダイヤモンドを私へプレゼントしてくださったのです。彼が無くなった後も私が妹と使用人と一緒に満足な生活を送れたのはこのダイヤモンドがあったからでしょう」

 叉三郎は彼女の言葉に耳をそば立て自身が話している事柄との整合性を合わせようと必死に努力していた。しかし暗雲の中にある真実を掴むにはいささか情報が足りないような気がするよう感じた。それは彼女が私を上目づかいに見て来たことからも明らかである。

「わかりました、ミス、サーカス婦人、貴方のその思いには、答えましょう。いえ、お金は結構です。犯人が捕まりましたら、ご連絡いたします」

 私が笑顔で依頼の引き受けをするとサーカス婦人は喚起した。それは喜びの感情に似ているようだが言葉には悲しみのニュアンスを含むよう感じた。そんな波乱が巻き起こる昼過ぎに叉三郎は洋館の地図と彼女が持っていたペンダントを借りた。

「ありがとうございます、私立探偵様、私は何と言ったらいいのかわかりません」

 彼女の赤いドレスのホックを外すと

「あなたこそ、とても良い演技でした。サーカスでも、お若い時にやられていましたか」

「私は今でも十分若いです。でも、サーカスをしていたというのだけは正解です」

「貴方は家の別荘を買った。そして、そこで静かに暮らしている、元はソプラノ歌手ではあるが、老齢とともに引退し、その後ノーベル平和賞を受賞した」

「私の経歴についてずいぶんよくおしらべになっているのですね」

「とうぜん、全てしらべましか、では、それだけ賢いのにも関わらずなぜ私に依頼をするのですか」

「貴方に言う必要はないわ、叉三郎、貴方は私の依頼をしっかりとこなせばよいの」

「どういうことだ」

「生活費に困っているのでしょう、私が援助してあげても良いのよ」

「そんなものに頼らない、私は依頼人の依頼料だけで生きて行く」

「まさしくさすらいのシャワーね」

「それでどんな依頼だ」

「話が速くてたすかるわ」

「彼の女性を殺した犯人を捜して欲しいの、私の彼女が酷くこの事件を怖がっているの。だから、一刻も早く事件を解決して安心させてあげたい。私は彼女の話を聴いていると昔一緒に事件を解決してくれた紳士が居ると聞いた。そこから人伝てに聴いたらその特徴の男性がこの部屋の一室を借りていることがわかったの。それでいざ参ろうとしたら私、足が竦んじゃって、それでいままでおくれたの」

「君もか・・・」

「あら、先に依頼人がいたの」

「ついさっきおんなじことを言った女性がそこの扉から外へ出ていった。つい二時間前のことだ。僕はコーヒーの一杯も飲む暇はなかったよ、婦人で大事な顧客だからね。その夫人も君と似たようなことを言って依頼をせずに帰ったが」

 彼女は左右を見て腰を浮かせ周りを伺うがここには叉三郎とマーキュリー以外は誰も居なかった。

「そうなの」

 彼女が精一杯出した言葉である。彼は額に手を当てると彼の中で何かが折れたのか下を向いてそのまま首を横へ振るだけであった。

「分かった、依頼を受けるよ」

 彼女は思いもよらない言葉に私が話したことを聞き入れては椅子から飛びあがった。

「ありがとうございます、叉三郎様。この御恩は一生忘れません」

 彼女が入れ替わりに入ると純子が入れ替わりで入って来た。

「本当に誰ですか彼女は」

 純子がそう言うと叉三郎は「彼女はとても無知で傲慢な女だ」とノートの端に書くと彼はそのノートをしまい部屋から外へでるのだった。

「誰だ、あの綺麗なお姉さんは」

 ドスの効いた中肉中背の男を思わせるしわがれた声であった。

 私はその声を聴くと即座に彼女からのもらい物を隠そうとした。しかし、それはできなかった。

 ○○県の○○は警察官の長である○○が取り締まることになっていた。私は彼に連れられ私は炎天の空であるにも関わらず私は長袖に黒いズボンをはきその場にいた。幾人の警察官とも会うが私の事を見る人はいなかった。

 私は彼女の事を話していたからか私は彼女を話していた。私は彼女を見ているが火災が起きているとかそういう類の事を見ていることは無かった。それは事件現場からは黒いシルクハットと被った、鷲と鷹の鼻を融合させた鼻を持つ男が出て来たからだった。

「全く、犯人は他殺か」

 彼はそれを不愉快に思いなじり、現場から出た後であるにも関わらず煙を吸おうと喫煙所へ行こうとしていた。

「やあ、こんにちは、ハースマさん」

 彼は充分に手を広げるとハースマの体を抱きしめるよう近づいた。ハースマ―の頭には強い喫煙に対する想念があった。それは私が彼女へその思いの丈をつづり彼へ手紙を書いたのにも関わらず、彼が恋文の感想をいわなことからも分かることだ。

「警察も随分と多忙になりまして、私はその事件を長官から依頼されまして、毎日が充実しております。期待される身とは大変ですな」

 彼はノックもなしにずけずけと家主の許可なし叉三郎が紅茶の残りを注ぐより先に。「お邪魔します」の一言もなかったが彼は捜査になると礼儀より自身が証拠を手に入れることを優先する人間であったからだった。

「それは貰いものか」

 彼女に貰ったペンダントを握りしめポケットに入れた。

「はい、先日事件の依頼をした時に女性から貰いました」

 ペンダントをしまうと彼がしてやった、「見せてくれはしないか」だだをこねる。それは得物を納めている人の服の中でさえ躊躇はなかった。彼は「見せてくれ」の一点張りであった。「止めてくれ」と言っても彼は躊躇することはなかった。

しかし彼はノックもなしにずけずけと部屋の中へ入るのだ、長い鷲のような鼻は例え旧知の仲である叉三郎の家でも入念に捜査の手がかりになる証拠を捕まえようと研ぎ澄まされる。

「君は私に言われたからとて躊躇をするような人間ではなかったな」

 私はため息交じりに服の内ポケットに入っている純銀製のペンダントとティーカップを一緒に机へ置いた。彼はそれをありがたそうに腰を折り拡大鏡でみるしまつだ。

 しかし、彼は刑事になるよりも鑑定団の職員にでもなり鑑定士として働く方が転生の才能を発揮できるのだ。

 鷲の鼻から想像できるとおり彼は目と鼻は効く癖に人間性が無いことで有名な人物であった。で、あるが私にとって彼の優秀な観察眼を無料で利用できるのはとてもおいしい話であった。

「何かわかったかい」

「びっくりして言葉もでなかった」

 彼の話した内容を要約することこうだ。

それは純銀製ではあるが傷がついておらず、中に堀が無いものであり、さらには蓋の中には何の写真も入っていなかったのだ。それどころか、正規の店舗から購入した製品であるならば必ず写真が貼られている裏の銀の溝に製品番号が書かれているはずだ。

憂鬱とした空は雲の中から太陽がのぞいていた。次第に覆われた空は雲の腹から大粒の水滴が降る。叉三郎は陰鬱な影を目に宿し街を見ていた。

 ならばと、叉三郎は部屋の中を小刻みに歩いた、トースマ刑事でも推理をする際にうむ、熱量へ鬱散とした言葉も口に出せないだろう。

「なるほど、面白い、それは面白い」

しかし、彼の秘密を一つ暴いてやったと言わんばかりだ。

「次に来て欲しいのが事件現場だ」

 彼は叉三郎の手を握ると彼を部屋から連れ出した。給仕の心配などお構いなしに雨が降る中、彼の自家用車に引きずり込んだ。

「なんだ、ハースマは忙しいんだ、邪魔はするなよ」

 彼が手を出し振り払おうとするが私は手が当たる一寸後ろで引くことができる。「君といるとなんだか希望が見え来るような気がするんだよ」

「はは、ハースマ、それは当たらないよ」

 彼が卑しそうに見る手を指で指しながら言った。「夜間の人殺しを黙認したわけでは無いがな」私は彼に商業主義的卑しい表情を向けることなどできなかった。

 事件限場は前後より後方の夜が深い森の山中で起きた。森には彼が放し飼いにし、それを暇な時ないし買い物をするのを忘れた時に狩るペットが何匹、放牧されている。寂しい田舎町にも見えた。

 しかし、トーマスの目に中腹の荒々しい断面が見える頃に、青いブルーシートが叉三郎にも見えた。

 私は彼女に話を聴いて欲しくないと言われていた男性もまた、叉三郎が見てもトースマが検分した以上に何かを発見することは無かった。

 そして叉三郎に何の意味があるのか分からないが、彼は純銀製のネックレスを首にかけ大事に守るため首に抱いた。

「事件のあらましはこうだ、事故現場に居た男が、被害者を引き殺した」

 さすがの私でも彼の横暴な態度には憤慨の態度をとらねばならなかった。彼を杖で制止させると事件現場として括られた場所を徘徊するよう見回した。

「第一発見者はいないのですか」

 髪は脂まみれ、目は生気が無く、生え際の辺りの辺りの溜まった皮脂が不潔な程溜まっており雨と交わることで、フケが一層際立っていた、やつれた青年であった。

「大丈夫ですか」

 彼は手を差し伸べると青年は睨むようなうなだれた目をしながらうつむいてしまった。しかし、叉三郎が彼の口へ持ってきたグラスと酒を注ぐと彼は白湯を飲んだほど落ち着いた。

「大丈夫です、先ほどよりは」

 青年は口を付けるとのこりは返却した。彼はそれを見て「やっと私の言葉を聴いてくれるようになった」と微笑みの顔をした。

「貴方が第一発見者と聴いていますが本当でしょうか」

 長く降った雨も通り雨で晴れて二人の事を満月が照らしてくれている。雲がかかるから時折しか見えないが月明りに照らされて鮮明に誰だか分かる。

「はい、本当です」

 彼は皮脂を脂にまみれた手でそのネックレスを手に取った。彼は横から、下から、斜めから内側、外側を見たが彼は首を振るだけであった。

 彼から若干とも取れる黄金のような精神に当てられた直後であるため息子トーマスは口を開けてしまった。微々たる彼の言葉に多少の戸惑いですらかくせなかった。

 彼の言葉に希望を失たであろう叉三郎は彼の目を見るや冷徹で寡黙な目をするようになった。それ以降一切の事柄を彼から聞いたとしても無視を続けるだけの冷徹なマシーンになってしまった。

≪動機の理由は彼が話していた白いペンダントであった。

「はあ」

 彼はそれを聴くとなじったような不服な顔をしてその場に立ちすくむ。彼は意図が分かるでもないしその場に立っていたからだった。

動機でさえも彼を善人であるという理由にはならなかった。彼を解放するのは自白以外にないと心から思うようになった。

「君は言うが夜間だからといって殺人はしていいと思うか、それともだめだと思うのかどっちだと思う、君はまさか殺人はいけないとおもうかい、今すぐこたえてくれ」

 曇りなき眼で私の事を見据えていたのは彼の決意と深淵の中から俯瞰してこちらを見る真実が発する緊張感ではないだろうか言葉の連鎖が彼の心を動かしたために他ならなかった。

「もう一度きくぞ、君は第一発見者だな、そして事件のあらましを知っていると、さらには、先ほど死んだ老齢のトースマの息子と言う事でいいんだな」

 私と彼の目はもう合っていた、彼は私に怒るような今にも飛び掛かりそうな顔をしていた。私は彼が飛び掛かっても大丈夫で拳銃に手をのばしていたからだった。

「先ほどトースマが夜間の人殺しを黙認したわけではないぞと言っていたが君はトーマスが言っていたような殺人はしてないよな」

 彼が力を込めてもう一度返事をする彼の言葉には信憑性が有るようかんじた。それは霊魂が籠った言葉を言う準備ができた合図であった。

「そいつはこれだ」

「彼が運転した車は本当に被害者と接触したのですか」

「この中には犯人は居ません」

 「私は周辺を散策するが君もどうだ」ハースマは湿った地面を足蹴なく歩く。事件現場は微かにフローラの香りがしていたのだ。

  叉三郎は煙を吹かしながらその好青年の情報を事細かに私へ話してくれた。それは煙の中から這い出る記憶の束の中の一部が彼と共有できた証拠であった。私は寒さで一瞬たりとも暖炉のそばから出てやるものかと決意した。

 私はオルゴールを使いアレンジされたお気に入りの曲とアロマキャンドルにスティック状の芳香剤を置いていた。私は彼を見ているとまどろんだ夢の中から事実だけを抜き出しているよう感じた。

 彼は急に笑い出したかと思うとしょげて目を落とす。

「それで、その女性の事を知っているのか」

 彼は首を振った。

 私は純子から貰ったデカンターを受け取りワイングラスへ赤黒い色をした炭酸を含む飲み物を淹れて渡した。もちろん、アルコールは入っていない、あくまで、赤黒い炭酸飲料である。

「やっぱりこれはいつも酸っぱいね」

 口をすぼませたが、金木犀の豊かな臭いとヒノキの大らかでどこか緊張感のある香りが彼の耳をそば立てる。

「いいや、知らない人さ」

 彼はまるで自然に言った。

「しかし、そうなると、一体だれだろうか」

 私は思考をめぐらせた、女性は大柄で横に長くため肩幅が大きい、常に相手を見透かしたような眼を二つ備えた、大らかな女性と言う、彼の情報に該当する女性はどこにもいなかった。

「では、君が会った好青年は」

 私は暖炉のそばから老人のよう年老いた彼を見ていた。

「好青年君は君に会いたくて話していたのだろう」

 叉三郎は彼の言葉に話を聴かなくとも彼の言葉を聴いているように見えた。しかし、彼からしてみたら傾聴は当たり前にしていることだった。

「それがそうでもなくってさ、彼は僕がトーマスと繋がっていることを知っていて、僕の言う事を聞けば上場酌量の余地のある人間だと思われると考えてから応じたのさ」

「それは、無責任なはなしだな」

「だろ、でも、バカじゃない・・・実際そっちの方がうまくやるよ」

「事件の方はどうだ」

「残念ながらさっぱり」

「やっぱり、目星をつけているじゃないか」

「そうだね、目星はつけているけど確かじゃない」

「そう、悲観的になるなよ」

「探偵と言われる職業をして思うのが楽観的に考えている時ほど何かを見落とす」

「そんな、流暢な」

「僕だけじゃない、他の人もね、それで廃業する店もある」

「それはこくだな」

「まあ、廃業したからとて再雇用が容易であることは事実だが、悲しいよ」

「じゃあ、今日はこのぐらいにしておくか、」

「そうだな」

「今日は止まって行きなよ」

「そうだね、お言葉に甘えよう」

「では、お布団を用意させよう」

 叉三郎は私の部屋に行くと彼女が持っていた十字のペンダントを持っていた。叉三郎が着る服と言えば専ら茶色でチェック柄の帽子とズボンに黒の上着を着た装いをするのが普通であった。

 毛色の赤と馬車が降り出る彼女の事を私は見ていたのだ。馬車は人力車より速く整然とした胸板から射出される筋肉の圧力は見る者を圧倒させて目つきの悪い運転手が何とも不気味に見えた。蒸気機関車とは似て非なる心の無い物のよう感じたからだった。


古明地家へ行く前に叉三郎は純子の手製のおにぎりを食べながら新聞の広告の一面を見ていた。電子書籍をサブスクリクション契約していない訳が無いのだが紙の容態の文も見てみたいためわざわざ買ったということである。

 「電子書籍の文章は完結で分かりやすく良いね。しかも偏見がほとんどないし、有ったとしても、本人がアップロードしている動画や信頼できる公的機関等の情報を速く見られる」

 ピーターはにこやかに笑っていたがその笑いの奥には狡猾で強かにも見える金銭の価値観が見えた。彼は目を細めると何も知らない彼女に話しかけた。そして私にもう一度話しかけたのだ。

 私はそれにこたえるよう返答したが彼女が一瞬でも輝けるよう彼の事を話していた。私はホープスマンの一件もあり彼が本当は人を殺した犯人ではないかと感じていた。しかし、その考えは彼の笑顔で一瞬に打ち砕かれたのだ。

 彼はまず私の裾を掴みそしてその裾が私にとってみれば取るにたらいものであることを確認した。そして、私が無心になり聴いていると指を立て新聞のすばらしさをご高説するのだ。

「なら全部電子書籍で良いではないか」

 私の言葉に耳を動かすと「確かに」と呟きながら頭の中で首を捻った。私のアナログステックな頭は彼が見えるわけでもなかった。

「君の言っていることは最も、しかし、世の中は紙媒体の用紙に情報を載せて発信してきた。で、あるのならば、紙の上に書かれた文字の中にしか真実が無い場合が有りうると考えることは至極当然ではないのか」

 例え仕事の下見であっても私は雄大な大地に足を運ぶことができたことに喜びを感じていた。光行と光る風を私の中へ送りこむと彼は道が見えるようでもあった。私は彼に見える程大きな体を使いどこに居るのか顕にした。

「えらく饒舌だな」

 私は感心して舌を巻いた。

 栃木の夏と言っても阿蘇山から来る偏西風がカルデア山の中腹に当たり地球の周期が太陽へ近づくに連れているからだろう。

「純子すまないが、チップを一枚はずんでくれ」

 私は彼の言葉を繰り返し言った。

「おいくらですか」

 「彼女の幻想を打ち砕いたところです」男はそう言うと、指を三本立てた。

「一部300円です」

 「と言うと君の既婚者へ酷いこと名を投げかけたのか」叉三郎は腕を差し出して新聞屋へ手を差し出した。

「一万円です」

 「泣かしてやりましたよ」彼があまりにも自慢げに言うので私は強めにかつ徹底的に彼へと言うこととなった。彼が「ちょっとチップは」と言うと私は無言で立ち去る他なかった。

「かしこまりました。お釣りが9千800円です」

 「君たちの家庭にどんな事情があるのか分からないけれど、見ず知らずの女性には言わない方が良いよ」「わかりました」叉三郎は純子をいったん見るとこちらを向いていなかったことが幸いであった。

「ありがとうございます」

 「将来君はきっと良い夫になるよ」『苦難は多いいけれど』と言う言葉を心にとどめて私は新聞を受け取った。

「どれどれ、謎の変死体発見か・・・場所はホープスマン宅と」

 叉三郎は権威があるものが着るであろう衣装をしてしまうからで私は彼を見ていることはできなかった。彼女から貰った冊子も私だけが見えるようしんなりとした所へ話していた。

「彼女に話を聞いておきたい」

 私はホープスマンを主軸に雑多な知識の連鎖が頭の中で執り行われていた。私は脳の中に彼の主軸となる人間が私の事を話しているのではないのかと考えていた。私は向かわずとも彼の事を聞いていた。

「依頼人の家だ」

 依頼人の家には彼が聴いていたであろうCDプレイヤーと彼が悶えて苦しんでいた彼の症状の痕跡が残されていた。シルクハットに綿でできたジャケットとスーツを着ていたのである。

「知っている、問題はどうして彼が殺される羽目になったと言うことさ」

 私には彼が見えている、私にはどうしても彼女と言うものがいなかった、私は彼に見えていることも私には彼が見えているような気がした。

「不運にも通り魔に刺されしまったと考えるしかないだろう」

 マックは新聞の冊子に印刷されている胸にナイフを突きつけられた婦人の写真であった。夫人は肋骨が完全に破壊されており顔には頬を掻きむしった痕、白目になった眼、全体的に顔の皮膚が垂れていて手は大きく広げていた。

「確かに、僕が知っている中で、場当たり的に人を殺す人間はそういない。この前提に立ち返って見ると、僕が知っている中で、ピーター、マリン、へんネルの三人しか知らないな」

 緩急を付ければ息遣いや彼の思いが私の中に入るようである。私は猫を見ながら彼の話を聞いていたが彼女である純子からしてみれば彼が何の証拠も持たず事件を解決するのはいつもの事だ。

 地方新聞の「カタクリ」にでも掲載されているし彼は極度の新聞嫌いであることからしてディレクターの打ち合わせも剣呑なものである。

 すると私は彼から正式に地方の新聞を頂くことにした。郵便配達をしてくれている男は私に気さくな声をかけていた。「馬鹿なのかあるいは」私はその場に顎を充てて考えこんでいた。

  夜の星には彼が思うより速く君に恋していることを届けるべきであっただろう、しかし彼には私の言葉なんぞ見えないが。

「なら、その三人の内の中の誰かの犯罪だろう」

「そうとも限らないよ、記事の内容をよく見てごらん、ホープスマンは自宅で亡くなっている。自宅には明日の商談の支度をするために、準備をしている、であろう痕跡がいくつか残されている、ホープスマン邸の屋敷の中の金品は盗まれていない、また、ヘンネルが毎回窃盗をするのは酒のためだと頭に入れておかなければならない。なぜなら、ヘンネルは重大な事件の窃盗容疑の重要参考人として法廷に召喚かれて8時にはアリバイが成立しているからだ」

 どんよりとした雨の中私たちは自身の借家に身を寄せ合った。幸いなことに午前の内に廻るべき場所へ行けたのは不幸中の幸いであった。

「なんだ、これは!」

 彼が寝室で物思いに耽る中私は朝食のエッグベネディクトでも焼こうとした。昨日の朝食は和食であったので余っている食材が洋食の食べ物しかなかったからだった。叉三郎の寝室を焦げた、卵、パンの香りが立ち昇った。

「朝食でもどう良い、何とか作れたのが洋食で申し訳ないが」

 私は彼女に話を聞いていないか

「将来君はきっと良い夫になるよ」『苦難は多いいけれど』と言う言葉を心にとどめて私は新聞を受け取った。

 私は最後にじっと彼の事を見ていた、彼には何も見えないものなどなかった、死角になる部分が私の中に無いからである。彼の顔がピクつき私は彼に話を聞いる程に筋肉のこわばりは大きくなった。

 彼が持つ体の動きがすぐさまわかるのである。何せ私は彼の体の全てを見える場所に居るため彼の心の動きの動作が私は充分良く分かるのである。私が耳を見た時に彼は手を前に出そうとしていたが同じ手を出すよう私も歩を進めると彼は後退する。

「純子がもうそろそろ帰って来るだろう」

 私は彼が最終的には次の新聞をただでくれる所まで私を良くしてくれていた。彼は巻き煙草を口にくわえて、もの思いにふけていた。私は健康状態の悪化を懸念して彼に注意をしたがやはり聞かなかった。

 彼は自室をぐるぐる回ったかと思うと立ちっぱなしで一度も椅子に座ろうとしなかった。ぐるぐる部屋の中を廻りながら体を前後に揺らしたりしていた。最後にはもたれかかったりしていたが、それは充分に熟考したうえで結論を出してからだった。

「いいや、君のおかげでインスピレーションが沸いたよ、そして、次の行動指針も。私はこの後、古明地家に行くつもりだ。君はどうするつもりだい」

 私と彼が体験した新聞屋との出来事を語りながら彼女が帰るのを待っていた。彼は「紅茶でも飲むかい」と言いながら私の空になったティーカップにお茶を注ぐ瞬間であった。白いティーポットを持っていたからそこに紅茶を淹れていて口からティーポットを淹れるのだろうと考えていた。

 公園では私が彼女に話していたからか、多くの人だかりができていたが、私が私服で入っても誰も不思議に思う人間はいなかった。そのとき、何かの気配を感じた、私は振り返るが、どこにもだれもいなかった。

 唯一、存在感だけが残っていた。

 公園に着いた時にはもう夕暮れに差し掛かっていた、古明地家のヒトに合う前に事件と仕事が舞い込んで来た、私は何分断りの電話を入れたが、多くの大金を積んでいたこと、また、その男性が大変困っていた事を鑑みて仕方なく受諾した次第である。

 公園は遊具があり、足を休める広場があり、中には河に似せた人口の川辺が存在していた。

「おじさん何やっているの?」

 そこに居たのは少女だった、少女は不敵な笑みを浮かべていた。

「こら、お嬢さん、ここは関係者以外立ち入り禁止だよ」

 私たちの会話は嚙み合わなかった。しかし、それが普通なのだと錯覚してしまう程に何かを感じていた。

 妖怪のような彼女は半ばばあたり的にその場を走り回ったり、口先だけで私のことを見つめたり、遊具を回しまわったり、惑わしたりしてはしゃいでいた。

「いいじゃん、あそんでも」

 一通り遊ぶと叉三郎は手を伸ばし、少女の頭を撫でる、私は彼女の事など何もわからないが彼女が共感できる何かを私も共感していた。

 私はため息をついた。すると、少女はどこか不安そうな顔をした。

「ここが事件現場だと、わかっていて言っているのか」

 叉三郎は彼女にそれを話すと彼女は前の立て看板をみてハッとしていた。

「貴方が、指をさしてくれた、青いベンチの看板に書いてある」

 彼女はそこまで全速力で走ったかと思うとすでに私の前まで帰って来ていた。彼女は頭を下げて謝ったかと思ったら、むくれ顔で塩対応だ。

煌めく太陽が少女の影からベンチ越しに居るおじいさんにまで当たっていた、彼から話していたことを聞くに、美少女であるからしてもし、私がそこに居れば許してしますのだが、彼は他者の追随を許さず険しい顔で、怒っていた。

「事件は解決したの」

 彼女の手が、私の手に触れた。分厚な体の一部に彼女の手が絡み合うとうっとりしていた。

「あなた小説家でしょう」

 四肢が胴体と逆方向に行こうと必死になるのも無理はなかった、私は彼女の笑顔が鋭い肉食獣になるということを前もって体験した。

「すごい、どうしてわかった」

 彼女が先よりも鋭い眼光をしていたよう感じる、彼女の目の色は夕焼けに当てられて赤色に見えた。

「貴方の、手には瘤があった、それは先天的とも言えない」

「皮の厚い第一関節を手の内側から縦から見た中心の一番大きい突起の部分の近くに水膨れができている。これは書き物をしている人が持つ特有の擦砲」

「すっごい!でも優れた小説家が描く小説ほど中途半端に書かれたら幻滅するよね」

「でも、私が思うにだけど、半端な小説家ほど妥協するのが下手だよね」

 彼が口に手を押し当て考えていた。夕暮れがおちていく、彼女が持っているものがきらりと光るまでは

「でも、私は君の方が気になる、どうして、砂煙の中でそんなに歩けるよね」

 私は彼女が慌てているようにも見えた。

彼女が地団駄を踏んでいたが、何時しかそれも消えて風変りな風の音しか聞こえなくなった。

「そうかもな」

 私が見上げた時には彼女はもうここにはいなかった、私が予告していたように彼女は、叉三郎の前から、土気色の旋毛風の中へ消えてしまった。

「トーマス刑事ご無沙汰しております」

 後には土気色の旋毛風しか私の前には無かった。

 彼女の声はだんだん遠くなりいつしかいるのかいないのかわからないほどまで霞んで聞こえる。しかし、彼女が踏んだ足跡は確かにそこにあった、それだけは誰にも変えられない事実である。

「改めてみると、ここも、意外にしけているな」

遊具はジャングルジム、まあるい気球の型をする土気色を吐く機械、龍が首を曲げた型を参照する滑り台、どうでも良い色をした柵が見えた。足場を固めるための広場に便乗して、水道管が通る水飲み場、蛇口を捻ると水が出た。人口的に造られた川辺は本当にそれが人工的な物なのかもわからない程に分からない。

 私はふと立ち止まったところに公衆電話があった。それを見ることは横に傷がついていることが気になったからである。昔は畜電する機器も興味はなかったから買わなかったが、携帯電話が使い物にならなくなる時はいつも利用していたな。

 もうこの辺りは鑑識が入念に調べ上げた後であった、刑事たちは叉三郎へ、大事な現場を明け渡したのが良い証拠である。夕日の灯りが煌びやかに映る、昔から黄泉に有るヒカリとして利用されただけの輝きだ。

「なにかわかりましたか、警部」

「いいや、全てわかったよ」

「本当だから、少しひとりにしてくれ」

「分かりました」

 横には公衆電話、そして、死体になった被害者は苦悶の表情をしながら、その電話口を見ていた。電話口になる受話は右に左に揺れていたからだった、私が思うにだが残忍な犯罪を続けるのは誰であろうかわからなかった。

「どうやってここまで来たんだろうな」

 風が当たるそれはきっと偏西風と太陽風の関係が影響しているのだろう。我々は聖母の暖かみに似た春の陽気を現すような言葉にならない風流を味わった。

「分かった、なら、一緒に行こう。けれどもまず抑えておきたいのはこの事件は前に挙げた通り魔ピーターでも、窃盗屋のネイビスでもない、全くの未知数と言うことだ、だから責任を取ることはできないつまり自己責任で行くということさ」

 ピーターの顔は良く知っていた、私は彼の寝室に行き彼が寝ている間にファイルを読んだことがある。彼は「別に構わない、なにせ、知っていたことだからね」と言ってくれたのが幸いであった。

 私は彼に話を聞いて欲しいと思い、叉三郎が好きそうな新聞広告の切り抜きや最近起こった事件について読み聞かせをした。しかし、彼は一切の見向きをしないだけでなく、新しい知的な座り方を私の前で実践し感想を聞いた。

 集中をした彼には目の前で起こる些細な事件すら目に入らなくなる性質がある。しかし、私にとってはそれによりある程度の知的好奇心を解消できるためとても優れた関係ともいえるだろう。

「通り魔ピーターでないのならば、誰なんだい」

 私がおもむろに聞くと彼は私に半紙に印字された何枚かの紙を渡した。印字した用紙はざらざらとした良く吸水する紙であった。その事件には30件以上の殺人とどの新聞会社も書いていた。

「常に競争にさらされている新聞社がこれだけ一蓮托生して残忍さを訴えるなんてよほど社会的影響が大きいようだね」

 彼は新聞社を話していることに話をしていると私は彼にしているのはしているからだ。彼は面白い程笑っていたが、私は彼の言葉をみていたことを私は彼にそれをみせると煙たげな表情をした。

「ああ、そうさ、通り魔を自称しているピーターは彼を殺す前に邸宅を警備している警備員を刺し殺してお縄になるか、何もできずに逮捕されるかのどちらかね」

 彼はおタンスの引き出しからおもむろにナイフを取り出した、私が持っていた人型のサンドバックに向けて勝手に刺し傷をつけたようであるが実際に新聞に掲載されている刺し傷と照らし合わせても、同様の箇所に切れ込みを入れた。

 彼は純子に向けてその刺し傷が有る人形を見せた。先傷は頭の頭蓋が連結している部分に一か所刺し傷がある、喉の奥の前から見えない部分に一か所、また、その他胴体に38箇所に刺し傷があった。

 喉の奥と胴体に刺した切り傷はどれも頭蓋骨に有る刺し傷より太く長い傷であった。刺した傷は厚く頭蓋を砕いたナイフより刃渡りが厚いことが容易に想像できた。

「ついて行くわよ、どこまでもね」

 純子は口を手で覆うとその傷口を手で触る。ゼラチンと凝固剤でつくった人形であるはずなのになぜだか本当の抉れた傷を見ているようだった。叉三郎は最後まで反対していたが、彼女の目に宿る輝きを見て連れて行くこととなった。

「なら、もしついていくなら、14時にはここを出よう、段取りが有る、9時にはここに戻りたいから、一服している間に二日分の食材と、日を跨ぐから身支度をお願い、それと家賃の前払いを頼むよ、何せ月すら跨ぐからね」

 彼はきびきびと働く彼女を見て彼は私の懐を除き、腰が抜けていないか確認した。それは彼がこれから来る災難を予見しているようでもあった。私は彼の願いを叶えるためにほんそうでもしようと走る。

「わかった」

 私は戦場へ志願した先兵の如く働いた。精肉店や魚屋のような生鮮食品を買うわけにはいかなかったので業務用のベルトコンベアーがひしめく倉庫から日持ちする干物ないし干し肉および煮干し等を購入するより他の選択しなどなかった。

 家賃の交渉をすると老婆の女性は涙を流し千円でもまけてくれた。あいにくの雨に漏れず頭痛がひどい。街をポンチョでもつけながら自転車を片手で運転していた。ぎらついた顔も現金を受け取る時はまるで消化器系に神経が集中した顔をしながら受け取った。

 酷い雨であった。しかし、この工程を外すことはできなかった、例えば、仕事でも片井でも遊ぶ前にやるべきことを終わらせたい、人情に似た何かであった。純子は車道の反対側を歩いていたが、マックがしている診療所の看板を見て微笑みを浮かべる。

 彼女は所定の用事を終わらせいつもの問診に行くとセピア色のグラデーションが掛かった空の下で道路より狭い歩行者用の通路を登り診療所だった。約束の時間まであと2時間あったのだ。問診をしてから帰るまでの時間を彼女はあらかじめ把握していた。

 問診をする医者の場所は○○であるが彼女はその列の幅に驚いていた。私は受付を済ますと診察をする前の待合室から外の行列に並ぼうと、すると横の事務室と書かれたところから一人の不潔そうな初老がこちらへ手招きをしていた。

「マック先生」

 彼女は叫んだ。

 彼女はその男の事を抱きしめんばかりに手を握った。

「問診をするための部屋を開けてあるそこに行きなさい」

 彼女は私の言いつけを守り私が入っているこの事務所へ入って行った。

「これから問診をします。40分前後でできると思うからしっかりと私の言う事を聞きなさい」

 私は綿棒を取り出すと鼻の奥へ突っ込んだ。最初は嫌な顔をしていたが慣れると次第に平時の顔と何ら変わらない態度をとるようなった。

白衣を脱ぐと腕は細く叉三郎の体を見た後ではもやしに思える程細かった。顔の面が寄り強調され前のめりに延びた首にイワシのよう前を見えるので、新種のペリカンに見えた。彼の学者としての地位を確立するに至った知性がその神経質な目に宿っている。

それでみられると私は彼に最後までお付き合いする根性が備わる要因にもなるのだが、彼には特に普遍的な知性が見受けられる、眼光で私を見て来るのだ。

私は蛇に睨まれた蛙に倣い彼が発信した信号を受信し改めて知的な学者が放つ哲学的な言葉のニュアンスに興味を示していた。

「わかりました」

 私は前日38.9度の熱を夜に出した後診療所を訪れる前に測ったときには39.5度まで熱が出た。前日から、嘔吐と倦怠感に駆られ私の見ている世界が歪んでいるよう見えたので彼に見て貰おう前々から段取りを組んでいたのである。

 私は看護婦に言われたあの言葉が蘇る「目的は研究だ、君は医師として患者に君の知識を披露すれば良い」マックは自身の正義に則り仕事をしていたのだった。しかし、彼の甥に言われた言葉が心に引っかかっていた。

 診療所の看護婦に取り合ってもらおうとしたら戸に『咳、風邪、倦怠感の有る方はお電話ください』と書いてあったため電話した。するとすぐに気の良さそうな中年の女性の声が電話口から聴こえた。

「倦怠感があるあめ見てください」

 私は彼女に事の事情を伝えると彼女は了承し10時から治療を行うための問診をすることで合意した。とてつもないめまいに襲われたが近くのコンビニエイスストアにでも寄りそのトイレで何時間もすごしたかえりである。

 私は問診のため10時より5分前に受付をしてくれた看護師から診療所へ入る許可をもらった。

「検査薬へ浸すのでしばらく待ってください」

 私は純子の言葉を遮るよう手を翳し言葉を遮断した。そのためか、彼女の顔には不服そうな表情をしている。

 私はその間マックと他愛もない雑談をしながら検査の結果を待つことにした。彼はお茶を持って来るようだと言われたが断った。

 吐き気もしてめまいもしていた、意識も朦朧としていたため私は最初誰が話していることすら判別ができなかったが、あの低い男らしい声と、『マック』の言葉に彼が大学の時に友人であった留学生の『マック』であるとはっきり意識することができたのである。

「マック、私が言うのもなんだけれど、疲れているのよ」

 私はマックの目の下に隈が有る事を気が付いた。

「これは確かに、君に言われるまで気が付かなかった」

 マックは消えないと分かっていても目の隈を擦った。

「貴方、泣いていたのね」

 純子は据えた目を彼に向けた。マックは驚いて純子の握っている手を見る。

「どうしてわかったんだい」

  純子はマックの手を取り私の胸元に近づけた。

「貴方の目は充血していたわよ、問診室から出て来た時には、目をはらしていなかった。けれど、検査機に綿棒を持っていく時から、こちらに戻ってくるときには目が腫れていた。きっと問診している時には涙をこらえていたので」

 マックは純子を見据えていた。

「どうしてわかった」

 彼はピーター事件の一件を頭の中に想起させていた。

「ピーターの一件から私も成長したの、彼に教えられた方法よ」

 彼女はピーター事件の一件から自宅以外の家に行くことは愚か外で並ぶことすら忌避していた事であったためだった。彼は彼の殺し方が頭からはなれなかった。

「全く、君が私の知り合いでなかったら心底、軽蔑していたよ」

 彼はどっかり隣の椅子に座った。

「事情を話して頂きませんか」と言うと彼は少し舌を唇で触ると「ちょっと無理だな」と答えた。しかし数分もすると「私の家の弟が死んだ」と言った。「心中お察しします」下を向きながら手を組みかえる事しかできなかった。「死ぬことは、避けられません。ですので分別はついています。しかし、もう一度あの子を抱けるのならば、私は何だってします」マックも涙を流した。流した涙が硬い木製の床に落ちる。「心労も溜まっているでしょう、どうでしょうか旅行などは」私はカタログを取り出した。

「いえ、そこはけっこう、しかし心労がたまっているというのは事実なのでどこかに旅行に行きたいと考えているのですが」「なら、ここはどうですか」純子はある一通の手紙を見せた。その紙には心臓にハートのマークが紐で結ばれたマークが有る紋印が押されていた。「これは家紋ですね」「分かりますか」純子は彼に中身を抜き取った表紙のみを渡していた。「この家紋は以前にも見たことが有ります。そう、確かこの心臓と目が描かれているハートマークは古明地家の印だ」

彼女は手を叩き彼の功績を称えた。「それでどうでしょうか旅行と称して○○を見るのは。叉三郎が捜査のため紹介状を警察から送ったのですがその時にお仲間さんたちも来て良いと言われたためマックに声をかけたの」彼はもう無いかもしれない旋毛の天辺を触った。「まあ、それなら、良いでしょう」「分かりました、では二週間後の朝お伺いします」彼女は問診室を出ると看護婦へ診察料を渡した。お釣が帰って来る。

 彼女は毅然とした態度で列と反対に進んだ。

「ありがとう」

 彼女は彼が持っていたペンダントを見た純子と彼の娘と叉三郎が写っていた。

「で、なんの要件だ」

 ピーターがこの犯行を遂行するだけの意志と意味を人生に持っていると心の中で思っていた。彼は叉三郎が持ってきた証拠より罪を精算する機会を一生残したまま消えて行ったことが証明された。

 私はその晩、夜の晩にピーターが身に着けていた藍の色をした薄い透明の宝石を見ていた。私が「それは叉三郎が持つべきものではないのか」と言うと叉三郎は「いいや、急ぎの用事もないから一日ぐらいなら大丈夫」と僕に助言をしてくれたため今日は純子が持つことになった。

 「そう言えば」と言うと私の部屋にも藍の花が有ることに気が付いた。藍の花とピーターが持っていた宝石を照らし合わせた。宝石が藍の花より淡いひかりの輝きを秘めていると感じた。

「もうねよう」

 私の思考はその場で途切れ真実を発掘するより自身の睡眠を優先した。戸を手で叩くと笑顔のまま床に就いた。

「私は彼が殺した犯人の死体の映像が頭から離れないんだ」

 彼はピーター殺しの容疑をかけられたのか、それとも冤罪により偽造されたのか、しかし彼から得られた答えはなんとも彼らしい言葉であった。

「私はピーターが殺した男女の検死を担当していた担当医と交流があった。その日は雪が降る珍しい日だった。その日久しぶりに休暇が取れたから火花と会いたくて電話したんだ、彼は疲れているようだったから、彼の心が休まるようはなしかけたんだ。彼がバーでいる時に彼はピーターと言う単語を漏らした。それは私の頭の中で殺人鬼のピーターと結びついた。私の勘は彼の表情を見ればすぐにわかりました、私が彼の考えていることを読み取ったと分かると彼はものうげな表情をして私に言いました、私は聞く気はなかったのですが、そのときは好奇心が勝ってしまったんだ、彼が、話した殺し方があまりにも残酷で家に帰ったら吐いてしまったよ」

 そこにあったのは勤勉で責任感が強い私が良く知っている男ではなく泣き崩れる男であった。私は彼にハンカチを渡した、涙は、症状の原因究明を優先して、拭かなかったが私は彼の声にもならない声を感じた。

「その刺し傷は

私は藍の花の土気色に似た香りを嗅いでいた。細く長い茎が淡い鈍色を愁色に輝くようだった。私はピーターの写真を彼の捜査資料が納められているファイルから自由に取り出すことを許されていた。

私が手に取ったファイルの中にあったピーターの顔はしわがれて、太った、特徴的な、男性であった。体つきは言わずもがな彼の腹に溜まった脂肪である。彼はかっと笑った口を広げ写真の枠を最大限利用し自身を大きく見せているよう私は見えた。

 暖炉の火を消して二階へあがるために蝋燭を付けて寝室に行かなければならなかった。今日に限ってはいつも歩いている階段が2倍増えていた。しかし、それは私の幻覚であると再認識させられる。

 夜風が明日の晴れと後上の少女を連想させた。

「やあ、ホープスマン」

 彼は私が思うよりも完璧に近い人間であるよう感じた。私は絵の彫刻に手を伸ばすと純子が家から外に出た証である玄関の音を聞いた。

 熱は大丈夫だろうか、先ほど体温計が鳴る音が聴こえた、きっと熱だろう。で、あるが彼女のことだから、家主の所へ行くだけではなく途中で診療所へ行き治療を受けるだろうから大丈夫だ。

 その男は中肉中背男が持つ特有の顔つきをしていたが首から下は大関すら勝てない横馬場を持っていた。彼はその扉を椅子に座る主の協力で何とか入ることができた。彼の顔は恐怖で歪んでおりとても話せるような状況ではなったと思うが渡した葉巻のちからを借りて平静を取り戻した。

 もじもじしたよう手をこねくりまわすとこのよく見えない霞み見えなくなる中から彼の言いたいことが良く伝わって来る。しかし、彼はどこからか嘘をついている風味を感じていた。

 彼女が良く通る通路の後ろから黒い影が見えた。黒い影は私の事を見据えると彼女が話していた男爵すら誘うという魂胆であった。

 彼が部屋から出て来たのは次の日の朝であった。彼は推理に置いて右に出るものは居ないと言われているがそれ以外に彼の、弱点は彼が、朝に置いて著しく記憶力が弱くなる点である。

 叉三郎は必ず朝にミネラルを摂取しなければ彼の驚異的な推理力は低下するからだった。彼にとって越させればよいと考えているだろうが、冷蔵庫は一階のキッチンの奥にしかないため一階戻らなければならいのである。

何度も購入の打診をしているが純子さんからは施設費用の上乗せの条件であるならば良いと言われ断念してしまった。しかし、不思議だったのは彼が彼女の前だけでは大人しかった事実であることがわかった。

「行こうか古明地家へ」

 叉三郎は蒸気機関車に乗り○○から○○まで乗り継いだあと○○まで行くと馬車に乗り目的地である○○まで急行した。御者には多めの賃金を渡すとしがない馬乗りは快く引き受けてくれた。

 蒼のボブヘヤ―の女性と談笑しながらも栗色の飲み物を飲んでいた。栗毛のツインヘヤーに赤い黄昏の色をしたマニキュアを塗った手を振り、肩を左右へ動かして体をくねらせながら張った指をこちらへ向けた。

「私は今回、およばれされました、古明地です」

 栗色の髪の毛をクルクルと回しながら薄皮の用紙で構成された紙に書かれている字を追っていたかと思うと、外に出て落ち葉が多く落ちている場所の下の土を掘り返し、臭いを嗅いだりしていた。

 映像は彼の目を見ながら夕焼けを見ている絵そのものであった。

「あれは何かね」

 彼は私と手がかりを探すためには封筒を見せなくてはならないのである。その封筒には彼が話していた鬱憤もたまるダークオークの木が生い茂る植林へ続く詳細な地図と少しばかりのお金、そして、三枚の手紙があった。

「あれは、私の主人です」

 叉三郎は眉間を指で叩きながら本段の奥の本に集中していた。一見すると何も無い虚空を見ているよう見えるが、彼の頭は何かを捉えているようだった。

「主人だって!あれではまるで幼児退行をした少女ではないか」

 彼女のほうれい線が掛かる、であろう線の堺を中心に外側が膨れていた。それは目元に近づくほどその膨らみは顕著になっていた。背筋の悪寒が走るとともに名前につられ少女を連想した私の思考に恐怖を感じたからだった。

「もう、僕らがこの家にいる意味はないね、行こうか純子」

 純子は彼が手を差し出すと、その手を取り玄関の近くの応接室から玄関へ行き靴を履き部屋に出た。「叉三郎!ちょっと待って」

轟く獣のような声が執筆室の奥から聴こえて来たのだった。その手にはクローバーがあった。クローバーとは比較的に三つの葉を生やすのが一般的であるが古明地が持ってきたクローバーは、四枚の葉を生やしていた。

「これは四葉のクローバーではないか、」

 叉三郎は言った張本人である純子に問い詰めた。

 試験管を揺らし彼の言葉を気にしながら、集中をし、そして完成させた薬品は揮発性で実験が終われば捨てられるのだ。

私にはいささかアットホームな職場とも言いにくいと評価した。

「全く、今日は客人が多いな」

 私は彼に話を聴いているからと私の事など分からないだろう。私は彼には彼を見ることなどできなかった。

「私が、あけてくるよ」

 マックは扉の向こうの彼に「だれですか」と聞いたが、鼻息だけしか聞こえなかった。それは開けてくれと言う合図だっただろうが、私と扉の向こうの彼が丁度ドアノブに手を掛けたからどちらにも捻れないドアが完成してしまった。

「失礼しました」

 私は彼にそのようなことなどしてはいないのにも関わらず誤った。彼は相変わらず戸棚の間に目を当てていた。後で聞いたが彼はその時、本棚の壁のシミの数を数えながら、来訪した『』に注意を向けていた。

「全く、今日は本当に客人が多いな、雨だからかな?」

 彼はため息交じりに言葉を交わすと来客者である『』も目が曇り、不敵な笑みを浮かべる始末であった。

「私は天気の話をするためにここへ来たわけではないぞ」

「そうでしたね、さん、どうぞおかけになってください」

 は彼に強く当たるが、その瞳の奥には、強かで強い意志と彼に対する敬意が込められていた。ここで言う彼とは当然、椅子へ座っている家主の叉三郎にほかならないのである。

「では、私は、肘掛け椅子に、座らせてもらうよ」

 彼は一緒に出されたコーヒーの接待に気を許したのか朗らかな顔をした。しかし、全て飲まれると、また、叉三郎へ向き直った。彼のたるんだ顔は太った子豚のような顔であったが、引き締まった顔は軍人に似た凛々しい歴戦の猛者そのものであった。

「自信が無いのでしょう」

 スポークスマンは彼に話を聴いていた、しかし、彼は私が思うほどに彼のことなど気にかけていないよう感じた。

「・・・君が思うよりも他人は気にかけていないと思う、どうしてそんなことが言える、私はただ、希望が見たいだけだ」

「その通りで、ございます、自身が無いのです」

 彼は机を叩き、身を乗り出した。彼は招待状を出すと話にあった、古明地の名前が付いた封筒を机に出した。

「また、古明地ですか」

 手をカリカリさせて、口にはホウ酸団子に似た団子の口をしていたが、私は口にするのも恥ずかしいことだ。

「古明地とは何だ」

 彼は口にするのも恥ずかしいことであるが、しかし、彼に恥ずかしいことであるが、彼にはとても気に入られようとする気がしなかった。一分あるいは一時間十分が過ぎた頃だった。

「古明地について調べて欲しい」

 彼はもじもじしながら彼の事を話していたが、私にはそれすら満足のできない事であった。私は彼に口を聴くことをしなかった。

「しかし、さんは別の依頼があったのではないのですか」

 彼はひらめいた顔をしていた、それだけでも、憂鬱な雨を晴らす気をしていたが、彼には私が。

 「叉三郎さん家内に心配を掛けたくないためどうか部屋を出る前はどうか彼女たちに一声かけてくれませんか?」

「わかりましたよ、捜査をさせないためですね」

 「ええ、問題ありません。なぜなら、興味のそそられる物証を私がこの家から得られたためもう一生、貴方が事件に巻き込まれない限りは、ここに来ることは無いでしょうから」彼は古明地の頭に手を置くと「今、君の手には二つの四葉のクローバーが有るね。それをしおりにするから私に預けてもらえないか?しおりにしたら郵送して君の手元に残すようはからうからさ」

 叉三郎は純子にそう言うと純子は叉三郎へ大切なクローバー二つを渡した。

「貴方が私に対してどのような感情を抱いているのかは存じ上げませんが、家内たちは貴方の身を案じております。私としても叉三郎が家を飛び出す際に一言だけ言ってくだされば例え神経症を発症したとしても素早く対応できると考えております」

「そういうことですか・・・わかりましたよ」

 彼女は最初こと渋っていたが叉三郎が発する穏やかな雰囲気に手が勝手に前へ出るようであった。

「理解していただきありがとうございます」

 こうして叉三郎は四葉のクローバーを専用のクリアファイルに入れ上着のポケットへ入れた。

 城の中は私たちが来た時より雨上りの土気色の香りがしていたため蛇や蛙を発見することは多かった。

 揺れ行く馬車の中であの瞳を見ていた。私たちが門を後にすると女中たちが正門前に列をなして送りだしていた。眼には鬱蒼とした葵の瞳を入れて私たちを三つの丘果てまで見送ったあの眼を。

「身をあんじてですね」

 叉三郎は私の憂鬱など無視して貸し出されたメイドと愉快な口喧嘩をしていた。「まさか、三郎、君はもしかして原生林に生命の神秘に充てられて小心的な心持ちになっているのではないか。そんなことしている暇は無いよ、僕たちは真実を探さないといけないからね」

「さようです」

 途中で一緒に馬車へ常駐しているメイドの一人が彼に同意した。

「できしたら、今提言をいたしますが、私はこれから支度を済ませて○○と言う場所に行こうと考えております。この提案が飲まれないのであれば私は即刻事務所の在る○○まで引き返します」

「承知いたしました、メイドを一人つけようと考えております」

「私の捜査の邪魔にならなければよいです。できれば身長が低い、145cm以下の、短髪で目を掻くことを癖としない人が良いです」

「…と言うことがあったんだ」

「では、理想的ですね」

 この考えを理解してくれるよう理想に合う人を厳選したが、彼女はどうしても動きたくないようで、私が待てと言う言葉には敏感であるが、進もうと言うと消極的になる女性、であった。

 ○○とは色白で絵の具の赤で塗った夕焼けが見える土地であった。私はサンドイッチを手に取ると牛の油に絡めた葉物野菜の触感を堪能しながら、田舎特有の大らかな風を堪能していた。

 「自然の神秘は世界のどんな事件よりも明快で奥が深いね」そう言い私たちは過去に筧結した事件のあらましを斜陽と共に明らかにしていった。

私は借りたメイドの一人にパンとサンドウィッチが吐いたバケットを持たせていた。「別に落としても良いけれどそうすると私たちの昼めしは無い。もし、高級な牛100%のパティーとオーガニックなレタスを食べたければ絶対に床へ落とさないことだ」と釘をさして。

「・・・・と言うことがあったんだ」

 私は彼にそのことを聴くと

さしもの叉三郎も容疑者の候補である古明地からメイドを一人、拝借しそれを巧みに利用せしめようと狡猾に振舞う胆力があるのだ。彼は私が話しても誰も信じないだろうが彼は法律にも精通していた。

しかし、私たちが留意して欲しいのは古明地家の主が『貸した』と言ったからと言い、前時代的な発想であるローマの主従関係に起こる風習の『奴隷制度』を適応したわけでは無いと言うことであった。

 ○○駅から発着される貨物列車の先頭5両には一等席となる黄金を一緒に乗せた車両が利用できるよう用意されていた。車両全般には金の装飾が施されていたが私はその黄金に目が眩むことも無く憂鬱な感情が全身を支配していた。

「見ろ、あれは○○が、黄金の馬車に乗りたいと言ったために造られた列車だ。これに今から乗るのだ。私たちは○○号に乗車し彼女の聖地である古明地の家へ行く。用意はいいかい純子君」

 叉三郎は鼻を鳴らしてみせた。すると、汽笛の音に大きく身震いした私を見ている存在を発見した。それは女性であった、黒髪の目は垂れていて、首には力がなくだらりとしている。しかし、その手は力がこもり一見りきんでいるよう見えた。

 落花生とスイカの畑が多く見える田舎の風が私の紙を時折撫でながら何本もの柱を通り過ぎて行く。西から吹いて来る風が東に抜けるその感覚を誰にも邪魔されずに感じていた。発射した列車は大きな汽笛を鳴らしながらどす黒い煙を吐いていた。

 列車は貸し切りであった。

 回る車輪も貨物の石炭も蒸気機関車には常設されている必要不可欠な設備、それら全てを指揮する車掌さえも私が思うがままとなっていた。車掌が言っていた「ここから、古明地家までは少なくとも貨物の荷台が2つ程は必要ですぜ」と。私は日が真上に昇るより先に列車が着くことの高揚感に支配されていた。

「古明地家まではまだ時間が有る。それまでゆっくりとお茶でも飲もうじゃないか」

 窓から身を乗り出している私を彼は優しくテーブルへ誘導した。

「ダ―ジリーそれともロイヤルミクティーだったら飲んでやらんこともない」

 私は興奮のあまり素がでてしまったがそれでも叉三郎は純子の手を取り椅子にすわるよう促した。それから私は彼女とないシュークリームは下から食べるか上から食べるかなどの他愛もない内容の議論で盛り上がった。

 それは今から10時の事である。

 列車が発車された時に私は固い木でできた机の上で紙を広げ執筆をしていた。純子が発車する前に執筆をしたいため、硬い木の作業机を持って来るよう車掌へ指示をしたからだ。

 「貸し切りにしては豪華絢爛だな」

 私は乗降する乗車口の堺を手で小突いた。乾いた金属の音だけが乾いた音すら上品な音へ変換していた。ブナの森林はヒノキの植林によりまるい葉とギザギザした葉が日光を吸収しようと枝を伸ばしていた。

 古明地家の周辺は最奥までブナの森林に囲まれていた。木の影から小鳥が影を話していた。森林の奥地の時折川のせせらぎの音が聴こえる。私は彼へことあるごとに動植物の事を聞いていたが彼はそれを難なく答えた。

 私はブナの木を突いた。ブナは紙細工が如く崩れ木の木片が割けた。私は初めての事で慌てているとブナの木はその形を留めずに倒れた。

「扉は金属製の合金ですね」

 執事が「さようです」と答える。

「扉は開いているのかな」

「鍵はかかっておりません、自由に開けられます」

 私たちが内向きに開けようとすると扉はびくともしなかった。

「鍵はかかっていないではないのか」

 マックは激怒して執事の胸倉を掴んだ。

「マックは礼儀に厳しいからね」

 叉三郎は屋敷をぐるりと回ろうとした。執事はそれを止めなかったため私はそれも正当な利用の方法であることを話していた。

 一周が十五分程度かかっただろうか日が落ちかけて日傘もあまり必要にならなくなった頃に私たちはまた正門へ戻って来た。

 私たち客人をもてなすための扉は堅く閉ざされていた。一度触ってから手の臭いを嗅いでも鉄が放つ独特の臭いは無かった。

「合金だね」

 叉三郎は合いの手を入れ私の思考に一つ知識を与えた。

扉は金属製の扉であった。で、あるが金属製の扉は手を掛ける取手の部分とつきだされたおできのような部分の二つしかなかった。金属部は取っての部分と鍵穴の二種類しかなかった。

「一般的なギザギザの鍵穴であるが、一見するとそうは見えない。しかし最新の丸い球場の部分をシリンダーに当てて解錠する方法もある。」

 客人に対する無礼に私の頭は噴火の寸前まで来ていた。叉三郎と純子はまだしもマックにまで、このような、試す必要などあるものだろうかと考えていた。私は何もできない無力感から最後に耳を扉に当てて中の音でも聞いてやろうとした。

 中には柱が二本にカーペットが有るようだった。その奥から若い女性特有の息遣いが有る事に気が付いた。女性が独り言のよう私に話しかけて来るような雰囲気すらあった。

「何かお気づきになりましたか」

 執事は最後に見た時より汗ばんでいるよう見えた。

 私が彼を注視すればするほど彼は唇を振るわせた。眉間の皺が彼女へ話しかけるより先にピクついたりした。

「いや、なにも」

 執事の項から出る汗が雪のように真っ白なシャツへ敷き込んだということは彼の体が汗を出すよう命令したことに、ほかないためである。私は確信した彼が何かを隠しているのだと。

「手伝うよ」

 純子の手では余るだろう大きな植木鉢の片側を私は持った。私は彼女へ話をしているとどうやら私たちは15分で着いたと思っていたが実際には一周に40分かかっていた事と扉とは別に鉄臭い匂いがしたことを教えてくれた。

「あったよ」

 叉三郎は話の腰を折る事なく彼女との議論へ取り組んだ。

 「やっぱりか」叉三郎は鍵を草むらから取るとその芯の部分をみた。それは彼が言っていたよう丸くタンブラーピンへ接書する堀の凹凸が少ない代わりに横へ丸い球場の掘りが付いている鍵であった。

「それでは古明地さんの家の中へ入らせてもらいます」

 まるで元々一つのモノが合体したかのようだった。鍵穴は私がシャープペンシルで鍵穴を整えようとするより、ドライバーピンをシャープベンシルで整えようとする方に鍵がすんなりと入った。

「外観のわりに中は広いのだな」

 外観は彼女が話しているより大きい造形をしていた、私の首がその建物を触るだけでぽっきりと俺しまうと感じるほどに。支柱は天井へ向けて太く大きく伸びていた。おそらくは大黒柱になるのであろう幅の太さをしていた。

 支柱の所々には円錐形の平べったい装飾が施されていた、装飾を起点に青白い線がレンガ造りの建物に線を引いていた。また横には『』の鍵を施した窓が三件連なっていた、付属のカーテンが半分より少しを占領していたから私は窓の様子を見られなかったのだが。

 私には彼女を見ている女性が私のことを話しかけていた。

「30分も待たされました」

 私は彼女を見ているとぼやけたりしたが、今はどうでもよかった。

 私が感じた女性の感覚は少女であった。少女は赤いバラ色のドレスを身にまとうと女性としての鎖骨を全面にさらけ出し赤の髪を揺らしながら、手袋をした手をこちらに向けた。

「お嬢さん、お父さんやお母さんはいるかな」

 マックは目の前の女の子に口を聞いた。少女はマックが話すごとにその顔をこわばらせていた。

輝いた電灯はこうこうとした明かりを灯す。しかし、彼が見るに電線と言うものは見えなかった。

「マック!」

 少女が私にお辞儀をしてきたので何とも礼儀がなっていると考えていた。しかし、私が次に言葉を発するより先に彼が私の頭を掴んだ。

「まあ、良いわよ」

私には彼女が精神的に20を超えた人間に見えた。いや、人間以外の尊さを覚えてしまったのだ。私は直感的に彼女を大人として扱った方が良いと感じた。彼女の言葉には何とも言えない重圧があったのである。

「私がこの屋敷の主である古明地だ」

 古明地が叉三郎へ近づくとその手を差し出した。叉三郎も一瞬戸惑っていたが直ぐセピア色の瞳に宿る高潔さに惹かれその手を握ることとなる。私はその様子を見て彼女と彼の仲に起こる運命的な出会いに祝砲を留め高級な煙草を吸う事でとどめた。

「古明地さん、本日は私を館のへ招待して頂き誠にありがとうございます。ご友人を招待して良いとのことでしたので私の学友であるマックと助手の純子の二人を同伴することとしました」

「叉三郎、そうであるのならば事前に言って欲しい、私たちにもいろいろと準備があるから」

 そのことばを遮り古明地は口を開いた。私は彼女の神秘的な立ち振る舞いに感化され、すっかいり医者と言う地位を忘れて萎縮、してしまったのだ。

「今回ピーターの事件でして、貴方の妹である杏さんが犯人と恋人である可能性が高いことから、説得して頂けないでしょうか」

 彼女は話をしている内に気品あるとても強かな女性であると感じた。彼女は頷いてはくれたが、私の提案には決してのらない人でもあった。私はその硬く閉ざされた心をなんども開けようとしたが、それは結果として彼女の心を堅く閉めるだけであった。

「昔でしたらドレスコードも必用ですが、今日はあなた方と私の二組しかおられないためそのような服装はならなくとも良いと事前に思うし伝えました」

 彼女にはそれなりに伝えたが私には全く伝っていなかったのでそれなりに齟齬がうまれたのである。

「これは失礼」

 彼にそのことを話してみても私は彼に有る警察の場所を知らせるだとか、そういうことを言っていた。

「いえ、結構」

 彼女は彼に部屋の鍵を渡すと彼女を部屋から出せたのなら話しても良いと言っていたのである。しかし、彼からしてみたらこれほどまでに難しいことは無いだろう、彼がこの手の方法で捜査を進めたことは無いからである。

「別に捜査をしたことが無いからと言ってできないというわけでは無い」

 私は彼女に話を聞いていると私の中にある彼の懐にはどんな鍵も開けられるピッキングツールがあるが今回は彼女から貰った鍵を使おう。

「私は彼を見ているわけではなよ」

 扉が開けられるその部屋は薄暗く誰が誰だか分からない程に暗かった。私は部屋に入る前に時刻を確認する。時刻は16時を過ぎてはいなかった。私は彼の肩を叩くと拳銃をもった。

「なるほど、給仕の出か」

 対照的に私が話している女性は黒い美しい髪を三つにまとめていた少女に話かけた。少女は私に心を癒してくれた。彼女は私の眼球をえぐる感覚が有るがそれでも精神的動揺を表に出さないよう踏ん張っていた。

 私は女性がする作法にはとめどなく理由などないと感じていた。その通りに私が雇用している女性の給仕でさえも男性と不純異性交遊をしながら、他の男とその感想を共有するぐらいのことはしていた。

 しかし、これは給仕すらこの部屋に入っていないということだろうか、私は床の凹凸がついたトレーを見ると腐ったパンの端がおいておることに気が付いた。

「はい、私はキャスパリーと言います」

 彼女は話をややこしくしないためにもスカートを託し挙げた。これは自身の職業を伝えるのではなく簡易的に自身の地位を知らしめる行為であった。

 女性は給仕がするスカートをたくし上げる作法を私たちにして見せたのは、一回の代理がなぜこのようなことをするのだろうか疑問に思うだろうが、これは彼女なりの尊厳を守る方法であると説明された。

「執事、この屋敷を案内してあげなさい」

 「かしこまりました」と声が響いた。また、鍵を探す時に執事が一周案内をしてくれたがまた、景観を見るのとは違う趣を感じた。

 我々は執事に促され部屋から退出する、叉三郎は興味のある事件だと思うのだが鼻歌を歌いながら彼女の指示に従った。しかし私は彼が部屋から出る直前に振り向きざま体を捻った。

「何かございましたか」

 彼女の部屋の奥には彼女が集めたであろう詩集が置いてあった。また後ろの本棚へ向かうにつれて彼女が持っている本の内容は歴史小説へ変貌を遂げていた。私にはその本が疎らに見えるだろうが一貫性が取れているものばかりであった。

 また、机は彼女がいつも使っていると言っていたヒノキの硬い木製の机であった。一番驚いたのがその彼女が使っている数枚の用紙の置き場所となっている机は純子が列車へ乗車中にオプションとして設置したヒノキの机と同一のものであったことだった。彼女にはどこで買ったのか、なぜその机にしたいのか聞きたかったが今はぐっと堪えることにした。

 窓から吹き抜ける風は私の鼻孔をくすぐり彼女が話している女性の影すら見えなかった。彼女は後ろから吹く風に靡かれながら扉越しに横目で見ていた。彼女の当たる光の影が西日に当てられ昼間だというのに夕方の夕日を想起する儚さを感じていた。

「それではしつれいします」

 私は前に振り返るとちょっとした遊び心から彼女の執筆室から廊下に出るとき後ろ向きに歩いた。その時に見せた彼女は終始笑顔であったが私が扉を閉める際に見えたのは悪魔のように合理的な『顔』であった。

「洋館は全容より三年も多くの時間を掛けて建設されたたてものです」

 華やかな風を纏い彼女の洋館を超えた先に私の女性が見えて来た。朝霜の時には嗅げない草木の生命力を垣間見た。草木の奥に茂タンポポとコスモスの生命力は何事にも代えられない感動を私に与えてくれた。

 豪華絢爛な家は私の目を引くモノに溢れかえっていた。目視しただけで分かる多量の黄金に一流のレンガ職人がつくる密度の高いレンガとコンクリートで固められた家の外観が私の事を見ている。

「我々はこの洋館に誇りをもっています」

 執事はこの家を見るなり彼女の事を思い出すとのことだった。赤いレンガに手を当てると涙を流した。私は身かねて外観を見る。それは君が何を見るかにもよるだろう、私は彼女と別れて庭園を散策していた。

 すると私は潮の臭いがすることがわかった。

 行くとそこには湖が広がっていた。湖にはボートが一隻、停泊していた。私は湖畔に足を入れると湖から見える川勾をオカズに列車の中で造ったおにぎりを食べた。古くより知人に教えてもらった知恵であるが遠い地方の家中で食べるのはまた違う味がした。

「使用人の殆どが東洋人ですが安い人件費で使える中国人ではなく、日本人もいますよ」

 これは叉三郎が使用人の首根っこを掴み財布と取り返すとことであった。叉三郎は彼の顔を見て使用人の顔と名前を聞きだした。数回殴ると彼は怒り顔のままどっかに行く。

「使用人それは、」

 彼は庭園の方を見た。

 マックが行った先には多くの川勾が居る湖畔が有るのだ。そこでは使用人と執事と一緒に食事をすることがあるそうだ。「私も彼のようのんびりしながら湖畔で食事をしたいものだ」と言う。

「君、もう中国に住んでいる人が安い賃金で雇えるという認識を改めるべきだ、現に世界のトップ富裕層には多くの中国人がいる」

 執事は彼女の食事を見ている思い出を聞かれるとひどく赤面した顔になったそれは彼女が彼の事を良く見ている証拠であろう。叉三郎が湖畔を見に行きたいと言うと執事は主の命令により許可をする旨を伝えてくれた。

「使用人、そういうことだ」

 彼が話をしていると使用人に執事が話していることを言う。しかし彼が言葉を理解していないからか伝わることは無かった。私は残念に思いながら彼女の居る部屋へ向かった。

「これは」

 執事もこの日中の熱さで汗をかいたのだろう、ポケットに入っていたハンカチーフで額の汗を拭いた。執事にしても彼を主人と会わせるのは心的に苦しくなる部分が有るのだろうか唇が引いていた。

 純子は古明地が話しているシガレットケースの中身がどのような物なのかと言う議論に焦点を当てていた。私は彼女に話をしているのはどうかと提案した。しかし彼女は「話をするのは今ではない」と言うのである。純子は彼女の事を見つめていた。

「杏の件ですが」

 私は傷つけた彼女の事を良く思っていないのか彼女へ飽きることは無いと言っていた。私は彼女に話を聞きながらも頷きながら相槌を打っていた。

「私は入っても良いと思います、どのような結果になろうとも」

 古明地は茶葉とコーヒー、それからマカロンのアフターサービスの最高のアフタヌーンティーを用意してくれた。私は年甲斐もなくその甘い菓子に誘惑されてしまった。

「最初は反対されていましたよね」

 古明地家が用意するコーヒーはプルーマウンテンが相場だと決まっていた。しかし、飲みなれていないのであれば、アメリカ―ノを用意する手はずはできていた。

「彼女がそれで良くなるのであれば、それでよいです」

 茶葉は緑茶であった。17時以降は飲まないらしい、今日、私は初めて来たので分からないが古明地が「叉三郎さんが良く知っていますわ」と言うので信じることにした。

「失礼します」

 「頼み事があるの」目を反らしながら彼女が伝えた。眼を反らした先には叉三郎が庭園の近くで作業員らしい人に絡んでいた。

「彼女の事なんて私にはとても理解できるものではございません」

 私は彼女に話を聞いているからか彼女の事を話していたが、私には「そうですか」と答えるだけであった。叉三郎は執事を話しているし、マックは湖畔に行きその情景を眺めているだけであった。

 「そうですか」と返すほかなかった。緊張して手元が狂うような感じがした。しかし彼女と私は同じく共感するものがあると感じた。それが何かまでは分からないが男が絡むような気がした。

「何をしているんだい」

 私たちの仲に静寂が現れた。私は重くのしかかった静かなる沈黙に食い殺されないよう紅茶を啜った。そこには中肉中背の男が土足で家に上がったのである。それは彼が言っていたピーターそのものであった。

「ピーターだ」

 彼が私たちを見るとやばいと思ったのか反対側に入り込んだ。しかし、待ち構えていた執事により肉を断裂された。また、肩を無理に動かしたからか脱臼してしまったのである。

「私には妹が居るの」

 彼女は自身がつくった静寂を切るようだった。純子は私に聴いて欲しいことがあるような面持ちの古明地に深く心を許していた。しかし、彼と私と執事がおりなすドタバタ劇に彼女も動揺を隠せないでいた。

「私たちに聴いてちょうだい、何だって解決するわよ」

 私は彼女の妹さんのことを聴いているともじもじして恥ずかしそうな動きが私の心を動かす。古明地が話していた心の動きは私にも伝わった、純子と古明地は共鳴したのだ。それだけを言い残すと彼女は下の階へ全速力で駆け出した。

「見ての通りピーターを捕まえました」

 そして私たちは夕暮れの中彼から貰った憎悪の視線を誰もが向けられることになった。

「これで、終わりか」

 マックが言った。

「なるほど、それで、ここに来るのがおそくなったのか」

 私たちは共有の個室に集まっていた。私たちは彼女が住む家の間取りを見ていた、叉三郎が古明地から貰った資料である。

「彼女の妹さんの名前は何と言うのかね」

 私は彼女に話をしながら言葉を見ていた。

「杏」

 彼女は声にもならない声で話していた。

「杏か、名前には特徴は無いな」

 マックは顎を触りながら言う。

「問題はこの依頼を受けるかどうかだ」

 マックは彼女のことを話していた。

「受けるのか叉三郎」

 叉三郎は手の親指を上げて言う。

「その通り、彼女には受理する旨を伝えている」

 純子は安心したよう胸を撫でおろす。

「で、依頼の内容は」

 彼女に対して私は声を荒げた。

「彼女の妹である、杏、を部屋から出すこと」

 私も純子も目を伏せた。天井を見ていたのは能天気な彼だけであった。

「地盤が強かったし、なにより見て頂ければこの景色が放つすばらしさを理解できるでしょう。この場所に引っ越して来たのが先月のこと、妹には事前に話していて、五年前には計画していた。必要な法的手続きの助言、依頼は横の執事がしてくれた。

 私と妹はこの私の計画に終始協力的だった。だってそうでしょう、この土地を買い上げ、洋館を建て、住むことを提案したのは彼女だから。私は否定しなかったわよ。

 最初に異変を感じたのは先月の半ば程前。私が日課である庭園を散歩していた所彼女が居ることに気が付いたの。私は声を上げようとしたけれど、なぜだかその時の彼女は言い寄れない雰囲気があったわ。それで迂回したのだけれど、戻ったときにはそこに居なかった。

 それから、いつもは生活習慣が崩れて言ったわ。ついには部屋からでなくなったの。

 事件は見ての通りだけれどここは森林を切り抜いてそこに家を建てた。その時に銃も一緒に購入したの。先週の昼下がりかしら、彼女がいつも寝る時に使う寝室から発砲する音が聴こえたの。

 私が心配になって彼女の部屋に行くことになったのだけれど、その時に「大丈夫?」って言うと「大丈夫」って言ったから私は部屋に入ることはなかった。けれど、今になって、不安になったから、娘のことだから最悪の事は無いと思うけれど、彼女を部屋から出して事情を聴いてくれないかしら。

 成功の暁には報酬をはずむわよ」

 彼は彼女と話す際に置いておいたビデオテープを回していた。

「彼女の家だろう。そのまま行けば良いじゃないか」

 彼女の家には彼の私物が置いてあった。私は彼女が話していた所であった。

「それが、そうも、いかなくて、彼女と妹は先日喧嘩をしたばかりなんだ。それから話をしていなくてな、彼女は仲直りをしたいと思っているが、妹さんは彼女が話していることをしたくないとのことだった」

「したくないことって」

「普通に姉妹がするけんかさ」

「髪を引っ張り合ったり、とか」

 「人を動かすのは欲望、また、それを律するのも己の欲望だ。外野が何を言おうと気にすることはできない、表現の自由を理由に規制をすることも憲法違反だと考えている」

「私は彼女の敵ではないよ」

 くだらないことを考えている

「叉三郎、どうするつもりだ」

 叉三郎は古明地に許可を貰いその部屋の以外にも通じるマスターキーを手に入れた。彼女の事であるからいつかは使うであろうと部屋の鍵を複製していたのだ。

「叉三郎さん、どうかよろしくお願いします」

 言葉にならない声を張り上げると私は彼女の奥へひざつき「わかりました」と声を上げた。私は彼女へ話をしていることはなかった。

 部屋を開けるとそこには、彼女が話していた妹の杏が居た。しかし彼女は片耳の部分には赤い血だまりができており赤黒い凝固しきった鮮血が首から肩まで伸びていた。少女は私に微笑みの顔を向けていたが、赤い血の前には、それすら恐ろしく見えた。

「マック直ぐに見てくれ、彼女にも話を聞いておかないと」

 マックは直ぐに彼女へ駆け寄った、私は彼女にゆっくりちかづいたりもしたが、銀色にきらめく得物を振りかざしている前には、無力と言うほかなかった。

「マック!」

 彼女が平静を取り戻した頃、叉三郎と私は同じ様に刑事である、『』に事情を聞かれていた。私と古明地家の主が売買契約を結んだのではないのかと言う疑いがかけられたが、それは、彼の誤りであることがわかった。

叉三郎が内容は話を追うごとに変化していき、彼のたわいもない昼食の話にまで発展した。また、それはホープスマンにかかった一部の容疑を晴らす結果となったのである。私は自身の胸ぽけっとから彼女の事を見ていた。

それは主に彼と私の逮捕劇の事であるが、私はそれをエキゾチックに言う事にしたが、彼の事を話しているのはとても興味深かった。彼女には申し訳ないが、彼に話を聞いているようでもあった。

「最後に彼女の部屋だけでも見てから帰ろうか」

 杏が私に注意を向けた時だった、彼が、ベッドとは反対側にあるカーテンを開けた。マックが取り押さえる時彼女が少女であることを気にも止めずに彼は上から圧し掛かる。叉三郎は抱えていたが、私には彼女が話しているよう聞こえた。

「ああ、叉三郎さん、貴方が私の事を追っているのは分かります。しかし、私には男が居るのです、どうかそれをお分かりください」

 そう言うと彼女は、ぐったり、と力を失いその場に倒れた。すでに赤く染まった血から、鉄の香りが立ち昇る。半紙をしたに置き湿った赤い液体の臭いを嗅いだ、それは、まぎれもなく血であったと記憶している。

「彼女はサラサール婦人の言葉をしっかりと守った。彼女の恋焦がれた青年は死に彼女だけが残ったのだ、最後に彼女の部屋を見ておこう」

 私は彼女の部屋を散策するとそこには紛れもなくサーカス青年と彼女の写真がバラ色の写真たてに挟み込まれていた。そこにはヒノキの木の臭いが刷り込まれ、薔薇の芳香剤が上品に思えた。

「天井の事を見ていた」

 サーカス青年を至急呼び戻した。彼は言いつけ通り○○街の○○番地に居たため、私は早急に連絡を取ることができた。執事に連れられて来た彼は全身から生気が抜けておりしなびた人参のようなしわがれた肌をしていた。そこに好青年としての面影は微塵もなかった。

「サーカスさん、先ほどすれ違った人は、貴方の彼女である杏さんで宜しいでしょうか」

 叉三郎はサーカスの目を見ながらよどみなく答える、サーカスは私に嫌疑が有ることを伝えた。しかし、私は彼の事を話していたから、私は彼に言葉をきこえていた、それを私もサーカス婦人がとても気さくな人に彼の事を見ていた。

「貴方はどうしてそこまでのことができるのですか」

 サーカス青年は胸倉を掴み彼を壁に押し当てた。私は制止すること、もしなかった場合には発砲を辞さないことを伝えた。サーカスへ厳しい言葉を浴びせたからと言って止まらなかったが、彼が手を触れると彼は次第にその力を緩めた。

「君の言っていることは分かる。しかし、過去は変えられないのだよ。彼女を正そうとした君の意志はあっぱれだが彼女には遠く及ばなかったという事さ」

 叉三郎のポケットをまさぐり彼女の写真を彼に渡す。私の行為に叉三郎は手を掴んだが私はそれを難なく振り払った。

「銃の痕跡でしょうね」

 私は彼女に話を聞いていたからか私は彼女に話を聞いていた、それはトーマス刑事も同伴してのことだった。私は彼に話を聞いていると、私はどこか血塗られた気分になっていたのだ。

「天井に向けて撃たれている」

  私が「祝い事なんてここ最近はなかったぞ」と言うと彼は上を指さした。そこには十中八九5×4.5mmの弾丸が二発見えた。私の奥にある理性が彼女が行った行為の事象を容易く知らせてくれた。

「誰かが祝砲をあげたのかな」

 私が冗談を言うと彼女は私の頭を殴りその場に蹲った。私と叉三郎は脚立を持って来て天井に埋まっている弾を二発回収した。「まだあるね」と言うと「発砲されたのは三発だった」

「あそこにはなにがありまか」

 マックが見る。

「何もない、ただの天井だよ」

 体をポンと手に置いた、それは、ある意味ではマックの気持ちを癒したがある意味で私の心をえぐる事態、になった。彼が歩を進めるごとに私の背中がムズムズしだした。それは面白い映画を見て眠れなくなり、風呂にすら入らなかった状況に良く似ていた。

「本当にそうかい?」

 私はシリンダーの中に弾が入っていることを確認すると、叉三郎がカーテンを開けた時にものすごい鮮血と汚物にまみれた黄ばんだ人形に融解した食べ物と無機物ですら腐るよう感じる酸っぱい香りが鼻の中を突き抜けるようだ。

「なんてことだ」

 私は叉三郎が分厚の窓を開けようとする事を手で止めた。その際に肉の腐った食べモノを私の前に出した時にはそれは不潔の言葉を私に浴びせる程の権利があると自認するほどに脅威を感じたのである。

「本当さ、私の視力は1を切っていなからな」

私が誰に話したとしても清潔に保てる自身が無いと考えることは自明の理だろう。

「だとすれば節穴としか言えないな」

 しかし、彼女が依頼した特殊清掃員の力も借りてこの誰も手が付けられない状況を打破したことは言う間でもないことだ。最後に私は生前の写真を見ることになった、それは、杏が姉と一緒になり笑いながら家の風景を撮っている写真である。

 今の醜悪な態度より、皮肉でまどろっこしい笑みを浮かべているが、それは、主といることによる恥ずかしさから来るものだろう。全体をピンク色に構成し、赤い装飾とコーヒーカップを置いている。

 どれもが清潔であり、彼女が不潔になったとはとても思い難いものである。

「どうしてわかったんだ」

彼はその間を探ると鹿が逃げる体制をとるのと同じように遠くに三つ目の弾丸をみつけたのだ。私がここを立ち去る時に聴いたことだが、彼女のヒノキの勉強机には黒い色のマグカップが置かれていた。

「簡単だ、今は西日がこちらを向いている、私たちは日と逆行するようにいるから夕方の逆光した日の濃い影の影響を強く受けるのだ、そのため、影の中にある弾痕は見つけづらい」

 彼が脚立を持って来て立てるとその手の中には同様の弾丸である、5×4.5mmの弾があと一つ埋め込まれていた。「ほらね」彼が自慢げに話しながらも懐中電灯の光を照らし他に埋め込まれていないか探してくれた。

「なんてこった」

 然るに彼が見つけた三つ目の弾丸は私が保管することになった。以上を踏まえて私は彼が推理にすら興味を示さなくなることが脅威である。

「まさか、祝い事などここ最近は滅多にありません」

 祝い事は一階のラウンジで行われていた、

「とすると、ここの部屋を使っている人は、成人していませんね」

「そうだね、ピーターのへたっぴ、射撃でもここまでの誤射はしないだろうね」

 顎に当たった弾丸は彼女が刺したナイフより下腹部の近くに集中していた。それは彼女の突き刺すナイフが腹に当たっていれば致命傷になることを示唆していた。私にくれた防刃素材の下着を着ていなければ私は一貫の終わりであっただろう。

「ここを使用されているご婦人は精神科医へ受信されたのでしょうか」

 叉三郎は顎に手を当てながら口を手で触っていた。彼女が話している事柄へ集中している証拠でもあった。

「いいえ、まだ、それにしてもマックさん、なぜここを使用されている方がご婦人だと分かったのでしょうか」

 洋館を一部屋一部屋回る。談話室に通され私は彼女の話をした。彼のことに集中していたから私は本事件のメモをおざなりにしてしまった。白紙より何か書いていた方が良いとのことで彼女はもう一度答えてくれた。

「いや、私は何となくあてずっぽうで言っただけですので」

 彼との列車の中で私は杏と話す機会があった。私は彼女から事情を聴くがそれは彼が行ったことと変わりなかった。しかし、彼女が見せる動揺は騒動の主体ではあるがどうにも錯乱しているように見えた。

「私、どうして、あんなにも憎んでいたのか分からないのです。なぜだかあそこから離れようとしていたの」

 私は彼女からの聴取を事細かに色彩したがそれは、到底ないおみせできる情報とは程遠かった。私は彼女に話を聞いていたからだと思う私は彼の所に話を聞いて居るところであったと記憶している。

 彼は私に彼女が話しているよう彼女と愛を確かめ合っていた。私は彼女達に注意を使用としたが、なぜ注意しようとしたのか、疑問に思いそのまま静観することにした。

私は煙草を吹かしながらも交互に事件の現場を連想していた。彼女の部屋から出て来た銃の痕をいたたまれなくなり、彼女へ話すと純子は「私のせいではない」と言うが私にはその責任に対する重大な命があると考えた。

 しかし、私の診療所に来て診察をする傍ら談笑がてらに古明地家の騒動を思い起し背筋に悪寒が走るのは何とも情けない話だ。

 で、あるが彼、叉三郎は私がそのような苦悩を話した所で楽観的に明るい未来を話すだけである。「叉三郎、どうにかならないものか」私は聞いた。「それは、次、必要になるまで忘れることさ」彼は楽観的に言う。

 しどろもどろする私の肩を叉三郎は叩いた。私はあんどするのと同時にこれほどまでに叉三郎の異能を見ているのにも関わらず会得できない自身の無知を恥じた。

 私は問診を続けると空いた時間で問診したときになぜだか呼吸の音が聴こえないような気がしたことをおもいだした。私は鮮明に記憶している肌の感触を肉厚で深く抉れた頬の傷と重ねてしまう。

「そうだな」私は俯いた。「全く、精神を治療する医者が患者である私に精神的に弱い部分をさらけ出すとは、なんとも手間がかかる」彼は煙へ火を移すと医師の目の前だと言うのに吸い始めた。

叉三郎は彼女の事を話していると時折微笑みながら私の肩を叩き時に励ましの言葉を投げかけた。「君は倹約をしすぎているのだよ、さあ、これで好きなものでも買って来るがいい」彼はその時より茶色の紙幣を数枚くれることになった。

「いや、君の言っていることはあながち間違えではないよ」

 私は一筋の光明の光が真っ直ぐと私へ当たる感覚を覚えた。私の中の靄を見透かしたようにその手には力がこもっていた」

『手紙』

 彼は唇を噛み、目を閉じた、それにつられて涙を流した。私は彼にマッシュケーキをプレゼントすると彼は受け取りこの場を退場した。最後に私の事をため息交じりに見つめて首を振る。

「まず、戸棚の背が低いことから背が低いと推察できる、しかし、使用人の可能性もあるがそれにしても豪華だ、真珠がはめられた本棚が有る部屋に使用人の部屋を要しているのはよほど信頼しているか、食客として招かれているかしかない。戸棚にはボルーペンの線があるから勉強中だと分かる、上流階級出身の人間が間違えても自身の努力を表に出すことは無い。これは使用が勉強中にマーカーペンを付けて教科書をはみ出し床についた証拠だ。以上のことからここいる人間は努力家で勤勉である。しかしそれを決して表に出そうと企むような人間ではないと考える」


 私はいくつか質問を並べながら自前のメモ用紙へ書いた。

「私たちは回答を用意した、もしこれが物語の世界であれば、我々は大きな収穫と共に家に帰り、また、それを教訓として次につなげることができるだろうが、実際にそれはできない」

 叉三郎は彼が持っている煙管から出る煙の臭いを嗅ぎながら数手先の未来を読むことに集中している。

「いくつか質問が有るのだが良いか」

 私は私しめているその影を追った。

「どうぞ」

 彼が暖炉のそばで手を差し出し話す彼は依頼人から探すよう頼まれた、私は彼に話をしていた。

「おかしな依頼人だった、彼女は私の事を見るや睨むよう顔つきを変えた。しかし、そのあとに彼女は温和な淑女らしい笑みを浮かべた。そして依頼の内容に入った。彼女は最初に自身の彼が殺されたことを伝えた。で、あるがそれを理由に犯人を特定し証拠たらしめるモノを探すよう依頼するのでは無く、妹がいるためピーターを逮捕して欲しいと言った。これは不思議なことだろう、そこからピンときたのさ、もしこの家のものが該当する女性でないのならば私は次のサンタナ夫人の家かサラマンダー家にでも行こうと考えていた。特に当たり障りのないところから話してね。でも、執事がピーターだったため私が考えていた苦労はしなくて済んだね」

「彼女さんには何という」

「彼女が拳銃を発砲したというしかないだろう」

「依頼人には手紙で送る。問題が有れば彼女たちとはこれで、おさらば、であろう」

 叉三郎は紙吹雪を落とすように手を広げた。

「以上で良いかな依頼人さん」

 彼は書体を使っての執筆に臨んだ。彼の頭の中に有る閑静なパズルは一度の淀みもなく書体を仕上げていた。

「もう書けたかい」

 私が聴くと彼は顔を上げて彼に話した。「大丈夫、もうかけたよ」彼はマックにこの一件のあらましを書いた手紙を渡した。最後に「私は手紙をポストに入れてきてくれないか、悪いが正確な切手の金額は分からないんだ。お金はあるから計算して貼りポストに入れてきてくれないか、ああ、もちん余ったお金は好きにしてもらって構わないよ。」彼が店を構えている○○から角を離れたところにポストがあった。私は角を曲がり人気が少なくなった所で封を開けた。それは朱印で厳重に密閉されていたが封の横の幅が広かったため注して取り出せば、手紙だけを抜き取る事が可能なのである。

 私は封筒から取り出した手紙を取り出すと目を丸くしてその場に飛び上がった。「やった」と言いながら独りで腕組みをするとそっと手紙を戻している。

「叉三郎、これって」

 マックは叉三郎が居る自室の扉を開いた。

「あれだけ、開けるなと言ったのにあけてしまったのだね」

 マックは冷や汗をかいた。

「否、横からちょっとのぞき見しただけさ」

『手紙』

筆記体に戻す

 彼は唇を噛み、目を閉じた、それにつられて涙を流した。私は彼にマッシュケーキをプレゼントすると彼は受け取りこの場を退場した。最後に私の事をため息交じりに見つめて首を振る。

「まず、戸棚の背が低いことから背が低いと推察できる、しかし、使用人の可能性もあるがそれにしても豪華だ、真珠がはめられた本棚が有る部屋に使用人の部屋を要しているのはよほど信頼しているか、食客として招かれているかしかない。戸棚にはブルーペンの線があるから勉強中だと分かる、上流階級出身の人間が間違えても自身の努力を表に出すことは無い。これは使用が勉強中にマーカーペンを付けて教科書をはみ出し床についた証拠だ。以上のことからここいる人間は努力家で勤勉である。しかしそれを決して表に出そうと企むような人間ではないと考える。

「何分、気分屋の面がありますから、先生に見て貰おうと思いまして診療所へ行こうと思いましたら、いつもの通り、郵送にてご連絡ください」

 彼女は微笑みながらも多くの心配ごとを抱え彼らを送り返した。

「これで良いかな」

 彼女は私に微笑み以上の笑顔を向けていた、その後ろにはおぞましい寒気のようなものを感じたが幾ら彼女を疑っても何の解決にもならないことが分かった。

「まあ、でも、良いではないか彼女の人生の終わりは最悪な結果にならなかった。これからどうにでもなるさ」

「いえ、何でも有りません。お早いご帰宅ですね」

 暗い夜道を歩ききった後だった、彼は自分の口に人差し指を当てて、私たちへ一言もしゃべらないことを、願った。私は彼の願いを理解し、了承して約束した、彼は玄関で上着を脱ぎ荷物を置いてからではなく、建物の前で蝋燭に火をつけていた。

 中に誰かが居るのだ、それはカーテンの暗闇がおりなす暗闇の色の煌めきの具合から察せされた、新作のライトを光らせ驚かせてやろうとした、が叉三郎がそれを手で止めたからに他ならない。

 事後、叉三郎へ確認を取るところ、ホープスマンは後ろむきに彼、愛用の仕事机にお腹をかかえる体制で蹲った。彼は扉越しに抜き身の拳銃を向けた、叉三郎は肩で扉を開けた、開けた時古い扉のきしむ音が聴こえホープスマンの体は仰け反ると、同時に彼の肩が上がる。

 しかし、少しも不安はなかった、それは自身の脅威に合ったときに見えた彼のお花畑に例えられる雰囲気が荒廃した煌々とする月光が熟練した犯罪の訓練を受けた人間の元に当てられた奇跡があるからだ。

 それは静かにそれでいてネズミを思わせる足さばきは泥棒のそれである、持つ手はこじれていて手癖が悪いガキの手だ、口は曲がってカモメの嘴、やさぐれた女性の髪、小さいながらもカンガルーの体を連想した、その階段下から見る彼は本物の犯罪者に見えた。

「ホープスマンさんこそ、こんな夜遅くに、私の事務所なんかに何かごようですか」

ホープスマンさん私は彼女を見ていると心拍数が上がるよう心の音が聞こえた。ホープスマンは暖炉のそばから動こうとせず私や純子のことを見ていた。と言っても私たち以外いなかったと断言する。

「こんな暗い部屋では見えにくいでしょう、今、暖炉に火をつけますね」

私は彼女がいつもしまっている薪を探すため辺りを探した。

「いえ、大丈夫ですよ」

 リボルバーのシリンダーはすでにおりていた。そこで、驚いたことに彼はこの過酷な状況でも拳銃を撃てた。しかし、ホープスマンの企みも私の介入によりあっけなく幕を閉じることになる事となった。

「そういうわけにはいきませんよ」

 おもむろに内ポケットから二丁目の拳銃をとりだした、二丁目の拳銃の先には突起が付いており、無慈悲に腹へ、突起を押し付けた。無遠慮にタンスの引き出しから書類を取り出した。

「まさかこんな時間に人が来ると思わなかったので予備の薪を切らしていました。取って来るので少々、薄暗いですが、お待ちいただいて宜しいですか、蝋燭はつけてから行きますので」

 腹へ突き立てた無慈悲な拳銃は背骨からより一層力が強まった気がする。無遠慮で冷徹な目は突起が当たる部分より鋭く鋭利であった。また、叉三郎はゆっくりと床に落ちた拳銃を取る。

 ホープスマンは給仕の如く頷く、彼は諦めたよう拳銃を床に落とした、もう床に崩れすすりなく他なかった。マックは彼に近づいて足元に落ちている拳銃を拾っていた。もう背骨も曲がってはいなかった。

「本当に大丈夫ですから、蝋燭だけでだいじょうぶです」

 手で席を促すと、自身が持っていたライターで火を付けた。蝋燭を差しいつものテーブルに乗せた。「警察はまだだったかな」彼は私を見ていた。「まだ、いたよ」私は言った。「なら、渡そうもう一匹を彼に、それはきっと彼が喜ぶ獲物だ」

「大丈夫ですよ、次持ってくるのも面倒なので今、持ってきます。ホープスマンさんはいつもの愛用の煙草を用意して待っていてください」

 降りしきる雨の日の平日だと言うのに、大犯罪者を『二人』も捕まえることができたのは非常に喜ばしいことだ。彼はそれでも、物憂げに窓の外の雨の向こうの空であったのである。

彼は温和な笑みを浮かべると彼が笑顔を浮かべている間に大柄な手を向ける。ホープスマンの居る部屋からは駆け足で降りる厚い音だけが響いていた。「彼はもうにげられないよ」

「やったよ!やったよ!」彼には彼女の事を話していたのは彼に話していたから、もう飽きてしまったのかと不安であった。彼は私の顔を見ると大笑いをしてしまった、それに私はきょとんとしていた。

「大丈夫だと言ったのに」

 私は取り上げた拳銃を彼に渡した、私の事を見ているとシリンダーの中を除いた。そこには二つの薬莢と四発分の弾丸が残っていた。私はポケットから取り出したポリ袋に入っている銃弾を見た。

 その弾丸は変形した弾と薬莢の弾薬部分がおんなじであることが分かったのだ。「これで僕の推理はより信憑性をましたかな」彼は椅子をくるくる回しながら、私の驚いた顔を待っていたようだが、私は能面のようその一部始終を見ていた。

「違うよ、犯人は一人だ」

 暖炉の背広やカーテンの揺らめき箪笥の達筆した自然の木目にわたるまで整然のそれであった。締め切った窓から打ち付けられる風の衝撃波エネルギーは燃えたかがれびの間取りを見ていた。

 しかし、私たちは暖炉を取り囲みある種子は健康に良いだとか葉の構成の割合に対する専門家の意見だとか自身の知りうる限りの知識を交換した。もう、ホープスマンは顔を赤らめ本来事務所に来た理由すら忘れているようだった。

 絨毯は金木犀の茎を織り交ぜた柏木の絨毯であった。それは畳職人から特注した最高級の絨毯であった。「おっと、踏むのは仕方ないが、優しく踏んでくれよ」純子は微笑みながら言う。

「なんだって」

 その後に彼は実況見分に置いて彼女の家に無断で入ったこと、また、彼女にリボルバーのうちの一丁を渡していたことを認めた。自白の証拠はそれ自体が事件の因果関係を証明するためではなく、一つの証拠としてしか使えないことに憤りを感じた。

「とても心臓に悪いな、そっちの掛け軸も君が買ったものかい」

 私は

 叉三郎は掛け軸が触れるか触れないかのところまで手を届かせたのであった。「それは違うよ叉三郎、私が昨日の帰り道古物商で買った骨董品だよ」

 「そんなこと言っても、古物商で買った骨董品だよ、絶対に値打ち物だよ」

 それだけ私は彼女のことを心配していたのだ。彼女は私に絶対の値打ちがあることを説明した。しかし、私は値打ちのあることの説明に異議を唱えた。

で、あるが純子は私のことをせせら笑うことしかしなかった。私は私の内声に反発して笑顔を絶やさなかったが彼女の頬を殴り飛ばしてやりたかった。叉三郎は彼女の頬を顎から口に向けて殴りつけるよう錯覚した。

彼女は目が丸くなるようだった。私は、私は純子の唇にこぶしを近づけてキスさせた。彼女は恥ずかしがっていたが、彼女は何とか至勢を立て直し私の後頭部を殴りつけようとするが私が逆に拳骨を加えてやった。

・・・・・そのような妄想をすることでしか私は平常心を保つことができなかった。

彼女は私が会った誰よりも美しかったからだった。正面から見る身体は寸分たがわず精巧につくられている、のにも関わらずなぜかストレスを感じなかった。そう彼女に顔そのものが少しいびつにできていたのだ。それが美しさの秘密だったのかもしれない。

彼女は見た目にも反して彼女の腕は筋肉質であるが細い筋肉がびっしりと張り巡らされた、筋肉質な筋肉であった。かがれびの炎が私の手に宿る気がした。

「誰かが勝手にやった結果どうでも良いことで結果を残した」「すみわけをしたいのだろうね」「何だろうね」「要素ですかね」「自分が出来ないことを他人にやらせる、自分が分からないことや理解できないことを他人にやらせてその結果を見ることができる、それが社会の面白さだと思うけどね」

掛け軸をよく見ると縮れた毛にうっすらとプラスチックの肌触りがする毛玉が手に付いた。「掛け軸は手を触れたからかもしれない」私は紙に染み出した墨の端の虫眼鏡を使い良く見た。

「掛け軸には彼女の事かもしれないわよ」

 掛け軸は紛れもなく偽物であった。何せ猫の毛玉がついていたからだ。この猫の毛玉はのっそり入ってきた猫の毛玉だった。

 彼女の家にはとても不思議だったと感じる。私が高級な腕時計であったというのは『ざら』であった。彼女に仕事を訪ねてみても「何もしていないことをしている」と言うさもありふれたような会話をしていた。可能性を鞄に入れていた。

 彼女にしておりホットミルクティーにシナモンを入れた飲み物になっていた。粉ものの香りが鼻の奥から頭の中にいた。チーズに有るまろやかさはなかった。「これの液体には美味しさをしない」「だからだったのか味がしなかった」私はしかめ顔をしながら注がれている白い液体をした。「牛乳の脂肪を抽出することで効率的なできるのかな」純子を膝の上に乗せた。

彼は一切の事を中断し私の耳が綺麗になるまで耳掃除をした。叉三郎を手が耳に当たり黄色の肌が赤くなった。「そうだ、今は暇かい」彼女を私に話をしていた。私は彼女を見ていた。

ホープスマンにも同様のものを渡した。「シナモンの良い香りです」ホープスマンは口を特注のグラスに付けその中のものを飲む、目を開け辺りを見渡した。「これほど、体から活力が沸いた日などありませんよ」「それは良かった。ホープスマンさんも今日は夜遅い就寝となります。どうか体調を崩さないようお願いします」

「ホープスマンは何もしらないよ」

 叉三郎は玄関の戸が閉じると、苦々しい顔で言った。それは私が経験してきた中でも特段人生のおける選択が、正確かつ重要でないはずなのに、それに注力し本当に大事な選択における意思決定を怠った時によくみられる現象であった。

 叉三郎は壁の中心点を叩いたり暖炉を囲う大理石の辺を手で叩いたりしながら爪を噛んだ。それは自身の内に走る感情を体でコントロールしているようにもかんじた。

「純子はどう思う?」

 叉三郎は爪を噛みながら、その意見を荒々しい声で聴いて来た。

「どうも、しないと思うが」

 私は叉三郎に手を差し出した。叉三郎は足を叩きながら私の前を、そして部屋の帽子を立てる突起のところをぐるぐると廻っていた。円を描きながら回る動きそのものは彼が持って来たガチョウと一万ポンドの矛盾を突いてくるよう感じた。

「彼には申し訳ないけれど今回の事件において彼は無関係だ。故に私ができることはなにもないことを書面で伝えなくてはならないな」

 暖炉の火の横で燃える危険を冒しながら火かき棒で薪をくべた私たちに同意を得ようと必死になっていただけに残念に思えた。私たちは6月の陽気に耐えられるだけのお金または服ないし物を持っているが、それを持っていないと思わせる彼の硬骨の顔は同情すら与えた。

 しかし灰皿の煙はまだ残っていた、彼と一緒に捨てた煙草の臭いが彼の鼻先の鼻孔をくすぐった。彼を捕まえた時もピーターはこれ以上か多く煙草の灰を残していた。

「まあ、でも私たちでできることはやってみようではないか」

 命名と横たわっていた、私は彼女には話してもらいたいと思っていたが、寛恕には暖炉の火とその丈に合ったゴシック調の制服を着ていた。純子が私に火種をくれた、ホープスマンにも彼女と同様に火を付けてやったことを思い出す。

「そうだな、ホープスマンは愛煙家だしな。そんな彼が煙草を吸えなくなるのは困ったものだ」

 「きっと彼は刑事罰を受け、そして、ホープスマンはあらぬ疑いを知ることなく、明日の朝を迎えるだろう」巻き煙草を吸う、その横顔は失礼だが、ピーターに似ていたし、ホープスマンにも似る何とも険しかった。

「純子彼に一筆書いてくれ。内容はこうだ、明日の午後13時より前に20分から30分程のお時間をいただきます。○○事件の真相を明らかにするためです。もし、お越しになるようでしたら返信の手紙を送付のうえ今日来られました、事務所までお越し下さい。使いのものがおります」

 私はこの言葉を一字一句書き留めた。彼から発せられる声は大きな流れを見ているようだった。私は彼女に彼を呼び起こしていた、私は彼に話を聞いていたからか、私がきこえる程に近くの場所に居たことを忘れていたようだ。

「分かった、認めて彼に送るよ」

 少しびくつくと彼は笑顔で微笑みながら手を鳴らした、もう食事の時間だろう、彼は私に催促すると、付き合う他なかった。ピーターには申し訳ないが私たちは、私たちで、勝利の美酒を頂こうと企むがそれを咎める人はこの世に居ないだろうと言う私なりの考えから来るものだった。

「それまでは彼が言っていた円筒形の物質でも研究しておこう。二時間前になったら言ってくれ」

 ピーターはホープスマンに成り代わっていたことから、彼らが社会的影響を与えたことは事実である。で、あるがそれは光が月に当たり銘々輝くのと同じで状態であり、それが人の心に残ることないと苛烈に書いた。書いた紙きれは端の紙切れを画鋲でクリップボードへ刺し、残していた。

偽善≪盗む≫

 夜風は涼しく彼には私の言葉の一切聞こえないように見えた。しかし私が送る週秒先に彼は私が最も期待する言葉を投げる程に、感覚が鋭敏に鋭くなっていた。私は彼が何分変化を求めない人間であるが、犯人との対面の時だけはどうにも体調が良くなること知っている。

「やあ、こんばんは、ピーターさん」

 彼がピーターだと言っていた人間が、彼の所有している金庫を開けようとした時であった。淡い赤とオレンジの火が数個も彼の周りを囲むよう聖母の光が彼を照らした。しかし、赤い火は彼の顔面を無慈悲に照らす。

「連続殺人犯、及び、自殺教唆によりピーター・ヘンネルを逮捕する」

 私は彼の手に手錠を掛けようとした。しかし彼は私が手を掛けようとした寸前に甲を振り払い、鍵を内ポケットから取り出された。その時だった扉が勢いよく蹴り、破られ、数分前までホープスマンであった男が捕まった。

「いや、お手柄ですよ、叉三郎さん、まさかピーター・ヘンネルがホープス・ハリスン氏に化けているとは思いませんでした」

 私は何が何だかわからなかった。

「ホープス氏がピーターだったのか」

 私の喉元から出た声は彼の鼓膜を打ち破るには十分なこえであった。彼は裾からコルク栓に似たスポンジ状のそれを耳に当てていた。

「そうだよ」

 叉三郎はここで微笑みを浮かべていた。それは事件の終わりを意味していたのかもしれない。彼は目から影が消えると私が向いに居るが、微笑みを私に向け笑顔でそのお礼をした。

「しかし、ホープス氏は、今は○○街の詰所で連続殺人鬼と取り調べをしているのではないのか」

 彼が夜風に当たりたいからピーターを捕まえたタンスの近くから私の居るカーテンが付いた窓辺に手を当てていた。

春の風が私の頭をすりぬけたのである。

それは風に窓から扉に抜ける法則があるため彼には風は当たったということだ。

「そうだよ、マック」

いつもは手が震えるのに今日に限っては手が震えていなかった。私は彼にその話をしていたが、彼だけではなく横に居た彼女も驚いていただろう。静謐で寡黙な青年が笑顔で花畑を見ている絵画の住人にも似ていた。

「なら、どうして、現場の証拠は、殺人事件を示唆する封筒は、海辺にうちあげられた死体はどうなる」

 捕まえたピーターはその後に死刑となるはずだったが、事件が事件であったこと、実際にホープスマンの殺人がマックの仕業ではなかったので窃盗の罪だけが彼に残ったが留置場に居た叉三郎は自身がその証拠を見つけるために行った罪と相殺し消えた。

「それは、おいおい、にしましょう。まずは、刑事!トーマス刑事!昇進おめでとうこれで君のキャリアに輝かしい経歴が一つ加えられた」

「ええ、そうしましょう、私もそしてあなたにも相応の名誉であって良いと思います」

 部下の刑事が写真家のよう興奮ぎみにシャッターを切った。私は叉三郎のポケットに血塗られた半紙が有ることを知っていた。シャッターを切るその手は興奮気味にであるが私は彼、叉三郎こそが一番対価を貰うべき人物である事は明白である。

「そうですか、そういうことなら、写りましょう」

 シャッターを切る音が私の耳にも聞こえた、私も入ろうとしたが、彼のあまりにも嬉しい顔にこの事件の栄誉は彼のモノにさせようと心が動いた。

 暖炉で温まる中私と叉三郎は刑事から感謝の言葉とほんの少しの謝礼を頂いた。そこから彼に繋がる手がかりを得た叉三郎はほんの少しの労働とはいえ耐え難い満足感に支配されていた。

 警察も彼に散々拍手を送ったが結局は自身で自身の部屋の後片付けをしなければならなかった。叉三郎の部屋から去り散らかった部屋の清掃ももう済んだ。

 警察も池の死体が古明地に迷惑をかけたことは事実であるが最大限の処置はしようとしてくれていた。時期が来れば彼の名誉はすっかり元通りとなりこの事件を知っているものは探偵事務所の面々と所属している一部の警官だけになるだろう。

 部屋の肖像画に隠してある捜査資料、電気スタンドの下にある隠し金庫などなど、あらゆる事柄を確認し終わった後、私は彼に聴いてみた

「僕は最初にピーターはこの犯行をするだけの意志と意味はないと言ったがそれは間違いのようだ、彼は私が思っている以上に残忍だ。」

「新聞屋もピーターさ、だから私は部屋へ招いた時にハラハラしていたよ、でも、何事も無くて良かった」

「じゃあ、インスピレーションが沸いたというのはどうなんだい」

「犯人は私の生活の記録と取りたかった。私の生活を記録して、まとめれば、いずれ来るであるその時に、備えて事前に準備することが可能だから。僕が重要な書類を必ず電気スタンドの下に隠すことを知られていたのは驚きだったけど、ゲームとしては面白かったよ」

「しかし、緊急事態がはっせいした、君が付いて来るものだから、私の計画はとち狂ってしまったのだ、結果的に甥との関係が修復してよかったね」

 彼は手をぱちぱち叩いた。

「先に言っとくが本当にご愁傷様としか言えないね」

 ヒラメのような顔をしていたが、彼の中にも憎悪と言うものがあるとはっきり認識した。

「古明地家へ行くために診療を投げ出したのに、か」

「今回の件だが、姿ははっきりとしていた。ピーターはあの時もうすでにホープスマンへ変装していた。私はそれを察知して当たり障りのないことを言った、それを過大評価して君が描いた時には大げさだろうと思ったが、案外そうではないのかもしれない、根が正直だったのかな」、あるが

 すると彼は指を指して言った。

「私への報酬は」 

 彼は私の心臓を指さした。

「そうだよ、マック」

「今回の事件は半ば皆に助けられながら達成することができた。今回の記録はいつものように一人の犯人に焦点を絞ると見せかけて、複数の犯人の視点が展開する事件であったと言えるだろう。私はこの場合、一つの証拠に注目を集めるのではなく、私が道中で得た証拠をその都度吟味し、精査する必要があった。そのために膨大な事件が掛かったと言えばそうだが、今になってからだと時間の無駄だったと痛感させられるよ」

「そんなことはないさ」

「最後の古明地家から私たちの家へ帰る時ピーターが恋人である杏を追いかけて来た時などはまさに私に幸運が巡って来たと思ったね。それだけではない、トースマ刑事が私たちの要望を最優先に取り入れて捜査してくれていなければ、私たちは犯人を逃していたかもしれない」

 このように彼は言っていたが、その思考も食欲の前には無力であったのか、彼の目の奥底は彼が事件の振り返りをしていた時より輝いて見えた。

 彼の名誉のために言うが今回の事件で四人の犯罪者をトースマ刑事が逮捕できたのは快挙と言うほかない。彼らが有罪判決を受けた最高裁判所の審問に立ち会ったが彼があくまでも一般人として知り得た情報が判決の決め手となったのを追記しておく。

 それを叉三郎へ証拠の新聞と写真と共に彼へ見せたが、彼は一言も発さず次の新鮮な事件に取り組んでいた。それは単に垣根を超えた事件だけ寝なく、科学の世界を沸かせた事でもわかる事だろう

 彼に対する刑罰が実行されたのは同年の4月であった。彼の手が及ぶより先に牢屋の向こう側から、こちらを永遠に覗く存在へ変貌を遂げた。彼はそれを喜んだが私は彼が残忍な殺人をしたからではなく、他国の人民を侮辱したからという理由に、何とも呆れてしまったからである。

 彼が眠たげな顔をするようになったことからも彼の心理的かつ周囲のから脅威が鳥のぞかれたことがわかるだろう彼にはなぜだか知らないが安心した時には私だけではなく純子も安心し、また、脅威を知らせてくれる警報装置が搭載されていた。

 それは犯罪を創造する海鳥達と紙一枚の差しかないようであった。

純子さんが夕方には片付けをしたらしいが、もう、後の祭りとなっていたからだ。しかし、これだけは、私が最初にこの部屋へ来る前の出来事を聴いてもはぐらかされるだけであった。叉三郎にも話をしてもらおうと採算尽くしてきたが彼は頑固に口を割らなかった。

 頑固に口を割らなかったのは彼が話を聴いてくれなかったからだろう、最後に画策したのは彼を満腹に指せてから気分を良くし言葉をはべらす作戦である。そのためには彼の好物を知る必要があった。

 それはラーメンであったが口コミに書いてあるより量は大きかった。彼は、首は細いのにも関わらず大食いであるからして、量に不安はあったが彼は難なく食べた。

湯煙の奥にあるロータリーと湯煙が立ち込める6月の夜の星空を見ていた。彼女の話を聞いていた所より狭く感じた。湯煙の熱く木を燃やした燃料の香りが立ち昇る。

私が入ろうとすると鼻の長い色白の男が私の前に割込み先に入るその後ろから夫婦の婦人とみられる恰幅の良い女性が入店をした。

私は席に入ると案内された番号の席へ座った。彼女は私を見るとまたラーメンをすすった。最奥の右から一番目と二番目に有る席に二人が並び、また話し合いながら、ラーメンを食していた。

叉三郎は前の席に居るお客に一瞥すると奥の順番席に入った。二人は、本来は有るはずである木製の仕切を取り外してあった。私たちもそれに倣い敷居を外す。その番号は3番であった。

ヒノキの良い香りと漆として使われているタイやマミャンマーの産漆樹にほんの少し良質な檜の香りがした。その番号は3番であった。その時である私は緻密な幅の狭いホックに厚手のバッグを掛けていたので床に落ちてしまった。

私たちは驚き腰を抜かした。幸いにも彼女達夫妻が来る前の出来事であったため良かったと感じた。直ぐに「すみません」と言うと自身の足の下にある窪みにおいた。顔から火が出るようではあるがそれは何より我が友人である純子の名誉が傷つかないか心配であった。

舌打ちもされたが私には彼女が、私が彼らに嫌われて済むのであればそれでよいと感じるほどに心の中の羞恥心が破裂しそうになった。あらかじめ食券から私と私の腹が好みそうな適量の値の量の麺ないしはスープの適量を頼んでいた。

土にも似た安穏とした杉の香りと同じ木のスモークを使い燻製したスモークタンならぬスモークで煎ったチャーシューとスープの上品な香りが森の源泉から暖められた体に堪えるようだった。

それはスープと体が合うようであった。他の客からなるスープの音が私の耳の奥に染み渡ってきた。しかし彼には提供される商品が作られるまで時間がかかった。

彼は一般人になり果てる。

「私には彼を話しているのは全能に近い感覚がしたよ」

 降りしきる雨の中でピーターが人を刺している所を見てしまった。その結果叉三郎はランタンを落としてしまったのだ。彼は私を押しのけて街の中に消えてしまったが、その時以来彼の憎悪に支配された、ナイフが頭からはなれなくなった。

「でも、実際にはピーターの殺人癖に気づいた時にはもう終わっていたようなものなんだ」

 その時である、叉三郎はいつものよう探偵社に帰る時見知らぬ青年を見るようなった。それは美しいと思えるような青年であったと記憶している。しかし、彼に合ってからと言うもの見張られている感覚が体をしはいした。

「なんだって」

 何度も、探偵社へ帰宅するとき何度も見てみると多くの場合は虎がらの服を着たおばさんと出会うが彼が来てからはその影も見えなくなった。

「彼の性格はしっているだろ、短気で意地っ張りで、強情な人間だ」

 石を投げられたが、その都度純子に当たらなかったことに安堵した。午後10時の音がなる頃郵便ポストを見た時に彼が私の家の近くまで来ると手渡しでその手紙をよこしたからだ。

「そうだな」

 私は夜と言うこともあり警戒はしていたが、しかし、青いチェック柄の服を来た青年を見過ごしていた。彼には明確な殺意と共に殺した被害者に向けていた憎悪を同様に向けていた。

「そんな人間に彼の話が聴けるとおもうかい」

 しかし、そこで止まっているだけであった、私は彼の事情まではしらなかったが好機を逃すほどのびりとした性格もしていなかったためすぐさま家の中へ入った。入って鍵を閉めた時に思い出したのがある一冊のノートのそんざいであった。

「ここで話をしていいものなのか」

 私はホープスマンが私の部屋に来た時と同様に金庫のノブを確かめその中にある文書が持ち出されないことを確信した。で、あるがマックに言われた通りこれからは金庫の中までしっかりと確認しよう。

「大丈夫もう新聞にも載っているしね」

 私は敷居を取り外した横から新聞をひったくった。

ホープスマンは暖炉のそばで寝首を掻くことになるとは思わなかっただろうが、叉三郎はホープスマンのそばに近づき脈を図りながら上部を圧迫し血圧を測っていた。うつらうつら目を覚ますと彼女の事を話していた。

そこから出て来たのは円盤系の存在であった、私も初めて見るが新型のUFOであろうことは想像に難くないものであった。私は近未来的かいこうから次世代型の搭乗機に載る楽しさを忘れずにはいられなかった。

 彼は、その白濁のスープを見て言った。

「こんな事件は、世界各国で起こる技術革新に比べれば、ささいなものだ、しかし、見過ごすわけにもいかない、具体的に、今日ここで助けられなかった命が次の科学を進歩させる多おおいな活躍をする機会を得られないまま廃れるなんてことは、明白な事実である」

 私は感心して首を縦に振った。

「さあ、自分はもう堪能したし次に行こうかな」

 私たちはその店から出た。

 灰色の空が私の家から出る時私はその奥にある瞳までもが透き通っているよう見える。しかし、それは彼らの協力があったからである。それ以上に私たちは潜在的意識の混沌の中で協力しあっているのかもしれない。

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