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2-3 

 「やっと来た、か。私に切られる覚悟はできたな?」


 そういうと、彼女は自分の胸のあたりに手を当てる。

 すると、その手は彼女の体に入り込み、彼女の手が体から出てくるときには、その手に美しく燃える緋色と雄大な空色の混じった美しい剣を取り出す。

 形状は、一見細身だが、それは薄いだけであり、刃のついている部分は一般的な太さがある。

 分かりやすくするなら、剣の細さはレイピア、幅は一般的な西洋剣といった次第だ。

 ガードの部分は一般的な十字型でヒルトはうちのに比べたら華美じゃない、いや、うちの子が華美すぎるだけかな。


 「……え、痛くないのそれ?ラノベとかアニメでしか見ないよ、そんなことする人」

 「……?何を言っている。いいから貴様も剣を出せ」

 「剣?」


 そういって、ぼくは自分の手元を見るがシュナはいない。

 携帯のゲーム画面を見るが、所持品なんて欄はなく、ぼくの出会って二日の愛刀ははて、どこに行ったのか?とぼくは首をかしげる。


 「ないん、だけど……」

 「戯言を……。私は甘くないぞ?貴様の剣を奪う、貴様の命を奪ってでも」

 「待て待て待てって、あ~、ゲームだ。これはゲームだぞ。先に賞品を決めるもんだろ」


 ぼくは、彼女からただならぬ殺気を感じて、一旦話し合いに持ち込むとする。


 「黙れ、勝者はすべてを得る。敗者はすべてを奪われる。それ以外にあるか?」

 「……え?ぼく、勝っちゃうよ?」


 少々、顔がこわばっていたかもしれない。

 少々、ぎこちなかったかもしれない。

 だって、ブラフだもの、あの鋭い殺気交じりの眼光にたじろがない方が無理だって……。


 「そうか。私の前で大口をたたくのだな?まあ、夢くらいは見せてもいい。要求はなんだ?」


 乗った?

 いや、これは勝機だ。

 あとは、適当に戦闘して良い分のところ切り上げて引き出せる分の情報引き出して、ぼくが払う賠償金はなしに和平交渉すればいいだけ。

 よし、いけるぞ。

 まだ戦闘も何も始まっていないのだが、ぼくの左頬に汗が流れる。

 それに対して彼女は威圧的なクールの上位互換的目線でぼくをにらみつける。

 言葉にするなら“絶寒”とでも言おうか。

 いや、今作った造語なんだけどもそれっぽくない?


 「ぼくが負けたらその~、剣が欲しいんでしょ、まあそれでいいとして。ぼくが勝ったら!君が持ってる情報をもらう」

 「いいだろう。五体満足でいられると思うな!」


 来る!

 そういち早く察知したぼくの脳内は、すぐにぼくの足に指令を出す、右へ跳べと。

 彼女の突きが放たれるのが、ギリギリ目で追いついてわかる。

 ぼくは、その1秒後もなしに頬に痛みを覚える。

 完全によけきれてなかったか。

 数本の髪と頬の皮膚が持っていかれているのが、心配で左ほおを触れた右手からよくわかる。


 「小手調べのつもりだが……あっけないな、次は死ぬぞ」

 「あいにく様、現在手元に剣がない。かといって戦闘の取りやめをする気もないだろ。だったら……」


 ぼくはそういって、さっと踵を変えし教室から逃亡を図る。

 しかし、もちろんといった様子で彼女もぼくのあとを追い、教室から出てくる。


 「逃げるほかないだろ!」


 そう勢いよく言い放って、ぼくは今まで生きてきた人生で1、2を争う速さで彼女からの逃亡を始める。

 ひとまず……本棟に逃げ込もう、どのみちこの文化棟からだと外に出れないからな。

 ところ変わって、ぼくが逃げてきた場所は化学実験室。

 化学薬品とかなんか武器になりそうなものがあればいいけど。

 そう思って来たのはいいものの、体力のなさからもうすでに息が上がっている。

 奇襲して薬品攻撃!は、呼吸の乱れから無理そうである。

 さて、どうしようか、とぼくはいろいろと先生用の薬品庫がある部屋でガチャガチャと棚をいじりながら考える。

 まず、ぼくの勝利条件と敗北条件から見直すか。

 ぼくの勝利条件は、戦闘をいい分または相手に不利な状態に持ち込んで戦闘を終わらすこと。

 敗北条件は、ぼくが彼女に切られること。

 あの目からは完全に切るという殺意しか感じないので、もしかしたらいい分での交渉は少々きついかもしれない。

 さて、具体的な方法だがどうするか。

 一般的な方法かどうかは知らないが、落とし穴に入れてそこに水を注ぎ降伏を勧告するのが理想的な方法だ。

 下手に攻撃すると相手の逆行を買って余計なことになるかもしれないが。

 正直、シュナがいてくれればどうにかなるんじゃないかな~と思う自分がいつつも、あの剣さばきに対して、ぼく程度でいい分張れるかと言ったら微妙と返すしかないと思っている自分もいる。

 実際、今のぼくに経験値なんてなくて、始まりの村を出たばかりの主人公に等しいレベルだ。

 薬品はサブウェポン、メインはやはりシュナだ。

 シュナの回収に家まで戻るか?

 いや、明らかに学校から出るのは彼女にバレるし、それに時間がかかりすぎる。

 それに絶対お弁当食べる時間ないじゃん。

 はあ、とため息をつく。

 あれ?目くらましに棚を倒すなんてパワーのいることできないから人体模型でも投げつけようかと思ったのに、人体模型がないな。

 この学校って人体模型なかったっけ?

 そうしている間に、ガラガラと扉が開く音がする。


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